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家出編
039 カナタ、気付く
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受付嬢さんが提示した4軒の物件は、どれも同じような条件だった。
問題となったのは、間口5mという条件のみ。
そのような狭い間口の物件は7000万DGもするものには通常は無いからなのだが、たまたま唯一条件にあった物件があった。
大通り沿いの狭い間口に店舗部分があり、その奥に広大な土地と豪邸が建っているという、変則的な物件がそれだった。
大貴族のお妾さんのための店舗に偽装した物件だったらしく、その大貴族が亡くなってお妾さんも引っ越したため売り物件となっていた。
カナタとしては、その店舗部分だけで良かったのだが、受付嬢が勝手に気を回し7000万DGの予算を最大に投じた結果、この無駄なオマケがついた物件が紛れ込んでしまった。
「土地の総面積は、みんなほとんど同じなんですね。
それなら、店舗部分が使いやすいそこでいいかも。
他は大店舗ばかりだしね」
カナタは貴族のお坊ちゃんなので、世間知らずなところがある。
店舗部分だけの物件は無いのかと訊ねれば、他の物件が出て来ただろうに、予算枠いっぱいで抽出されたその4軒から選んでしまった。
ララとルルもカナタが何をしようとしているのかを詳しく知らなかったので、意見を言うことも無くスルーした。
当然ニクも我関せずという態度だった。
「現地を見なくてもよろしいのですか?」
「あれでしょ?」
カナタが指差した先にその店舗はあった。
カナタが選んだ店舗は、商業ギルドの受付からも見える右斜向かいだった。
「立地は最高。外観も良し。何の問題もないかな?」
商業ギルドの左隣は冒険者ギルドなので、カナタの選んだ店舗はガチャ屋として仕入れにもアイテム販売にも好立地だと言えた。
カナタの出した条件に合致した事に加え、まさにその立地で選んだと言っても過言ではない。
問題は7000万DGという価格が適性なのかという点なのだが、他の店舗もほぼ同じ価格帯だったので、カナタはそんなもんだと納得していた。
カナタにとって盲点だったのは、そんな価格でなくても他にも良い物件はあるということだけだが、世間知らずのカナタには知る由もなかった。
これは受付嬢さんのミスではなく、カナタが望んだ条件が尋常ではなかっただけの悲劇だった。
重要人物と思われるカナタの矜持を傷付けてはいけない。受付嬢さんはその思いで最高の物件をお勧めしたのだった。
「それでは、この書類にサインを」
「はい」
カナタは土地建物の売買契約書に何の躊躇もせずサインをした。
「お支払いは、現金ですか? それとも【お財布】引き落としで?」
「引き落としで」
受付嬢さんが提示したタブレット――後ろのギルド専用口座の機械にケーブルで繋がっている――に、カナタが【お財布】をタッチする。
するとチャリンという軽い音が鳴って7000万DGが引き落とされた。
その瞬間、売買契約書が眩い光に包まれ、魔法による売買契約が結ばれた。
これは、この世界で最も安全で権威のある契約方法だった。
これでカナタは正式に件の土地建物の所有者となった。
「それでは、これが建物の魔法鍵になります」
カナタは、魔法鍵を手にすると意気揚々とガチャ屋(予定)の店舗へと向かった。
「ご主人様、お店を買ってどうするの?」
ララが「ガチャ屋ガチャ屋」と呟いているカナタに小首を傾げて訊く。
「ほら、ガチャオーブから出たアイテムを売るお店を開くんだよ。
ハズレオーブを冒険者から買って、付加価値をつけて開けて売る。
その差額で儲けるんだ」
そうカナタが意気揚々と話すのを、ルルが不思議そうにして訊ねる。
「ご主人様、儲けてどうするの?」
「儲けたお金でファーランドに帰るつもりだ。
ファーランドまでは遠いから、旅費が必要だろ?」
ララが何かに気付いたように顔色を変える。そして恐る恐るカナタに訊く。
「ご主人様、7000万DGあれば帰れたのでは?」
「あ……」
カナタはガチャ屋を開くということで頭がいっぱいになっていて、肝心の旅費が既に溜まっていたことに頭が回っていなかった。
本末転倒だった。
しかし、そうなると店員として所持している奴隷のララとルルの存在意義がなくなってしまう。
彼女たちを働かせるためにも、やっぱりガチャ屋は必要だった。
残金も3000万DG以上ある。
ファーランドに帰ろうと思えば帰れるお金はもう既にあった。
「いや、こんなに体調が良いのも、実家から離れているおかげだ。
不可抗力だったけど、僕はもうしばらく家出を続けることにするよ」
カナタのガチャ屋生活はもうしばらく続くようだ。
問題となったのは、間口5mという条件のみ。
そのような狭い間口の物件は7000万DGもするものには通常は無いからなのだが、たまたま唯一条件にあった物件があった。
大通り沿いの狭い間口に店舗部分があり、その奥に広大な土地と豪邸が建っているという、変則的な物件がそれだった。
大貴族のお妾さんのための店舗に偽装した物件だったらしく、その大貴族が亡くなってお妾さんも引っ越したため売り物件となっていた。
カナタとしては、その店舗部分だけで良かったのだが、受付嬢が勝手に気を回し7000万DGの予算を最大に投じた結果、この無駄なオマケがついた物件が紛れ込んでしまった。
「土地の総面積は、みんなほとんど同じなんですね。
それなら、店舗部分が使いやすいそこでいいかも。
他は大店舗ばかりだしね」
カナタは貴族のお坊ちゃんなので、世間知らずなところがある。
店舗部分だけの物件は無いのかと訊ねれば、他の物件が出て来ただろうに、予算枠いっぱいで抽出されたその4軒から選んでしまった。
ララとルルもカナタが何をしようとしているのかを詳しく知らなかったので、意見を言うことも無くスルーした。
当然ニクも我関せずという態度だった。
「現地を見なくてもよろしいのですか?」
「あれでしょ?」
カナタが指差した先にその店舗はあった。
カナタが選んだ店舗は、商業ギルドの受付からも見える右斜向かいだった。
「立地は最高。外観も良し。何の問題もないかな?」
商業ギルドの左隣は冒険者ギルドなので、カナタの選んだ店舗はガチャ屋として仕入れにもアイテム販売にも好立地だと言えた。
カナタの出した条件に合致した事に加え、まさにその立地で選んだと言っても過言ではない。
問題は7000万DGという価格が適性なのかという点なのだが、他の店舗もほぼ同じ価格帯だったので、カナタはそんなもんだと納得していた。
カナタにとって盲点だったのは、そんな価格でなくても他にも良い物件はあるということだけだが、世間知らずのカナタには知る由もなかった。
これは受付嬢さんのミスではなく、カナタが望んだ条件が尋常ではなかっただけの悲劇だった。
重要人物と思われるカナタの矜持を傷付けてはいけない。受付嬢さんはその思いで最高の物件をお勧めしたのだった。
「それでは、この書類にサインを」
「はい」
カナタは土地建物の売買契約書に何の躊躇もせずサインをした。
「お支払いは、現金ですか? それとも【お財布】引き落としで?」
「引き落としで」
受付嬢さんが提示したタブレット――後ろのギルド専用口座の機械にケーブルで繋がっている――に、カナタが【お財布】をタッチする。
するとチャリンという軽い音が鳴って7000万DGが引き落とされた。
その瞬間、売買契約書が眩い光に包まれ、魔法による売買契約が結ばれた。
これは、この世界で最も安全で権威のある契約方法だった。
これでカナタは正式に件の土地建物の所有者となった。
「それでは、これが建物の魔法鍵になります」
カナタは、魔法鍵を手にすると意気揚々とガチャ屋(予定)の店舗へと向かった。
「ご主人様、お店を買ってどうするの?」
ララが「ガチャ屋ガチャ屋」と呟いているカナタに小首を傾げて訊く。
「ほら、ガチャオーブから出たアイテムを売るお店を開くんだよ。
ハズレオーブを冒険者から買って、付加価値をつけて開けて売る。
その差額で儲けるんだ」
そうカナタが意気揚々と話すのを、ルルが不思議そうにして訊ねる。
「ご主人様、儲けてどうするの?」
「儲けたお金でファーランドに帰るつもりだ。
ファーランドまでは遠いから、旅費が必要だろ?」
ララが何かに気付いたように顔色を変える。そして恐る恐るカナタに訊く。
「ご主人様、7000万DGあれば帰れたのでは?」
「あ……」
カナタはガチャ屋を開くということで頭がいっぱいになっていて、肝心の旅費が既に溜まっていたことに頭が回っていなかった。
本末転倒だった。
しかし、そうなると店員として所持している奴隷のララとルルの存在意義がなくなってしまう。
彼女たちを働かせるためにも、やっぱりガチャ屋は必要だった。
残金も3000万DG以上ある。
ファーランドに帰ろうと思えば帰れるお金はもう既にあった。
「いや、こんなに体調が良いのも、実家から離れているおかげだ。
不可抗力だったけど、僕はもうしばらく家出を続けることにするよ」
カナタのガチャ屋生活はもうしばらく続くようだ。
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