父親が呪われているので家出してガチャ屋をすることにしました

北京犬(英)

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ガチャ屋開業編

042 カナタ、鉄の値段に驚く

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 翌朝、Gランク冒険者がウッドランド子爵家別邸に冒険者ギルドの使いとして訪れ、金属インゴットの査定が完了したとの知らせを齎した。

「ご主人様、本日の予定は冒険者ギルドでのインゴット売買代金の受取になります。
そのまま冒険者ギルドにて冒険者からハズレオーブの買取を行い、その後、洋品店での買い物の予定となっています」

 昨日に続いてララが秘書役となり、甲斐甲斐しくカナタに付き添っている。

「お店はいつ直るの?」

「大工さんによると、残骸の撤去後、道路側の壁の全取り換えと新しいドアの取り付けを行うそうです。
床に損傷が無ければ、その後、棚を搬入し固定して終了なので、早くて3日になるそうです」

 カナタの質問にララは手元の資料をめくって答える。
そこまで把握しているとは、ララの秘書役も板について来たようだ。

「それなら、屋敷管理の従業員は、そのタイミングで雇えばいいか」

「え?」

 カナタが従業員の雇用を簡単に考えていることにルルは目が点になった。
そして、これは拙いと危機感を持った。
いくら奴隷――人材派遣的な緩い奴隷――を買うと言っても、仕事に合ったスキルを持っている人材がその場で直ぐに揃うとは限らない。
そうなると、お屋敷のハウスキーパー的な仕事は、誰かがやらなければならない。
ララはカナタの秘書役に収まった。ニクは護衛のような荒事以外にしか適性が無い。
そうなると必然的に、残ったルルがその役割をしなければならない。
たった1人であのお屋敷を掃除するのは勘弁して欲しい。
ルルはなるべくゴロゴロしたいのだ。

「ご主人様、奴隷にも出会いのタイミングがある。
早めに買った方が良い出会いを逃さない」

「お、おう」

 ルルが強く奴隷商行きを薦めて来た。
その目力と鬼気迫る表情に押されてカナタは頷いてしまった。

「それにハズレオーブを買うなら朝や昼じゃなく冒険者がクエストから帰ってくる夕方にするべき。
ハズレオーブを処理しようとするのはクエスト後だって決まってる」

 ルルは何も仕事をサボりたいわけではない、1人でやる作業量ではないと思っているだけだ。
それだけのためにルルは必死に奴隷商行きを薦めた。

「奴隷を買えば、また奴隷を連れて洋品店に行くことになる。
それは二度手間。
それなら、奴隷を買ってから洋品店に行くべき」

 ルルが正論を畳み掛ける。

「ルルの言う通りだ。
指摘してくれてありがとう」

 カナタは自分が世間知らずなところがあると知っているので、素直にアドバイスに従うことにした。
むしろ、積極的な意見は優柔不断な部分を補って貰えるのでありがたいとさえ思っていた。

「わかりました。
本日の予定は冒険者ギルドでのインゴット売買代金の受取。
次に北門の奴隷商に向かい、お屋敷の従業員を雇用。
その後、洋品店に向かい、洋服その他生活物資を購入。
従業員をお屋敷に連れて行って仕事を与え、
夕方に冒険者ギルドで冒険者からハズレオーブを購入ですね?」

 ララはルルの指摘がルル自身の作業量を減らすためだろうなと気付いていたが、その他の点で尤もな指摘であったので、それを採用することにした。
どうせルルに泣きつかれてララも仕事を手伝うことになる。
別にルルと張り合っても仕方ないし、カナタにとって良い結果になるなら、それで良いとララは思っていた。

「じゃあ、冒険者ギルドに向かうよ」

 カナタの号令で4人は冒険者ギルドに向かった。
カナタを中心に左にルル右にララが腕を組み、カナタの後ろからニクが続いて全周警戒をするというポジション取りが何故かお約束になっていた。
その状態でウッドランド子爵家別邸の門をくぐって街へと出たのだが、その際に門番の人にギョッとされるのはもうお約束となっていた。

 冒険者ギルドに着くと、昨日の騒動を知っている冒険者たちが、カナタたちから距離を置き遠巻きにするような態度をとった。
絡まれるよりはマシなので、カナタたちはそのままいている受付に向かうことにした。
丁度朝の受注ラッシュが終わった時間帯だったので、窓口には1人か2人しか並んでいなかった。

「次の方、あ、カナタ様ですね。
お待ちしておりました。どうぞこちらへ」

 受付嬢がそう言うと応接室まで4人を案内した。
ソファーに座るやいなや、買取担当の職員が駆けこむように現れた。

「お待たせいたしました、カナタ様。
いやー、これもルールでして、本当に申し訳ありません」

「???」

 カナタが何かと思ったら、どうやらインゴットの品質チェックや計量のことらしい。
疑うようなことをして申し訳ないということだろう。

「品質はガチャドロップの純度99%、重さも規定通りでした。
全てがこれなら私共も楽が出来るんですけどね~」

 ギルド職員が愚痴を零しながら明細書をカナタに渡す。

「銀は20kgインゴット1本50万DGで、6本で300万DGになります。
銅は20kgインゴット1本1万DGで、32本で32万DGになります。
鉄は100kgインゴット1本20万DGで、43本で860万DGになります。
〆て1192万DGですね」

「え? 銅安っす。鉄高っ!」

 この世界は白金貨、金貨、銀貨、銅貨、鉄貨といった貨幣が流通しているが、その貨幣の鋳造は何処の国でもやっていない。
モンスターからドロップする貨幣やガチャで出る貨幣がそのままDGという国際通貨となって流通している。
この貨幣は神様からもたらされたものであり、その価値はガチャドロップアイテムの相場と共に安定している。
しかし、鉄貨はその価値よりインゴットの価値の方が高いため、鋳つぶせば儲かると思う輩が後を絶たない。
それを神様が許すはずもなく、DG硬貨を鋳つぶそうとすると硬貨自体が消えて無くなってしまう。
つまり、DG硬貨を金属に鋳つぶすことは神様により禁じられていて物理的に出来ないのだ。
それでは、金属製品はどうするのか?

 一部はガチャオーブから出るアクセサリーや武器防具などのアイテムがその需要を賄っている。
しかし、職人により制作される金属製品というものも普通に存在している。
その原材料として金属の塊であるインゴットが流通し、そこからそれらの金属製品が製造されている。
銀は装飾品や銀食器、鎧の装飾などに使われ、鉄は武器や防具に加工される。
銅は銅鍋などの少ない用途でしか使われない。
融点が低いため簡単に製造出来ると銅の武器も作られなくはないが、鉄に比べて柔らかく、ガチャで出る武器が安く流通しているため、銅製武器は初心者でも手にする者がいなかった。
そうなるとわざわざ製造する者もいなくなってしまい、銅の価値がさらに下がるということになった。

 つまり、この世界では貨幣の価値と原材料の価値に大きな差異が生じているのだ。
鉄貨は最低貨幣だが、武器の材料としての需要のある鉄のインゴットは高くなる。
銅貨は鉄貨の10倍の価値があるが、あまり用途のない銅のインゴットは安くなる。
なぜ銅貨>鉄貨としたのかは神のみぞ知る、この世界の七不思議の一つだった。
この世界では電気で動く家電のようなものが無いので、電気配線やモーターで多用される銅の価値は低くなっている。
だが、もし電気を使う文化があったら、銅の価値は神様が設定した通りになるのかもしれない。

「DG硬貨にしますか? それともチャージで?」

「じゃあ、チャージで」

 ギルド職員が差し出したプレートにカナタは【お財布】をタッチした。
チャリンという軽い音で【お財布】に1192万DGが入金された。
ガチャオーブの仕入れ値は300DG×81個の2万4300DGだった。
それが1192万DGにもなった。
カナタはガチャ屋の儲けに笑いが止まらないのだった。

「鉄インゴットうまー。
だけど、鉱山があるのはグリーンバレーの方なんだよな。
ゴーレム系ガチャオーブを仕入れる要員をグリーンバレーに派遣しようかな?」

 安いハズレオーブの輸送なら盗賊も目をつけないだろうとカナタは踏んだ。
戦闘系奴隷を買って輸送させれば輸送人と護衛を兼ねて一石二鳥になるかもしれない。
HNガチャオーブで出る鉄インゴットでも1本20万DGという値段だ。
それが携帯ガチャ機で1UPのHNが確定している。
なぜかRの銅インゴットの方が1万DGになってしまうが……。
それでも300DGが1万DGだ。
投資する価値は充分にあるなとカナタは思った。
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