父親が呪われているので家出してガチャ屋をすることにしました

北京犬(英)

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ガチャ屋開業編

044 カナタ、金策に走る

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 カナタは1900万DGを稼ぐために金策に走ることとなった。
手持ちの金貨銀貨銅貨をかき集めると、【お財布】に残っていた90万DGを含めて手元に120万DGの現金があった。
これらのお金は生活費として確保していたものなので、これに手を出すのは最後の最後にしようとカナタは決意した。

「とりあえず、未整理だった盗賊のアジトで手に入れた戦利品を売ってしまおう」

 これは盗賊を討伐した特典のようなものだった。
盗賊の資産は明確な所有者がわからない限り、討伐した者に所有権が移るというのがこの国の法律だった。
もし所有者が判明したとしても、所有者は討伐者に礼金を払わなければその物品を取り戻すことが出来ない決まりだった。
その所有権の証明をするにも煩雑な手続きや証拠の提示が必要なため、その家の家紋が入っている形見の品であるとかの余程の事情が無い限りは、そのまま討伐者が処分してしまって良く、今までもそのように処理されて来た。
カナタも後で仕訳けてから売りに出そうと思っていたのだが、緊急でお金が必要になったので、そこは冒険者ギルドに丸投げしようと思っていた。

 カナタはララとルルに腕を組まれニクが後方で警戒する中、新たなメイドを後ろに2人従えて冒険者ギルドにやって来た。
この2人のメイドは、奴隷商で雇うことが決まっていた21歳と15歳のメイドだった。
カルロスが、この2人の契約は決定事項なのだから、もう連れて行ってくれと言うので引き取ったのだ。
奴隷契約魔法で所有権も移っているので、今後5年間を目途に2人はカナタの奴隷となった。
その契約が特別な契約オールオッケーだとはカナタは気付いていないのだが……。
性的なお仕事をさせてもかまわないのに、それをしないでメイドとしてのみ使うというなんとも贅沢なメイドだった。

 21歳のメイドは、カリナという名で、身長は165cm、肩までの茶髪に茶色いアーモンドアイと呼ばれる少し吊り上がった目をしていた。
スタイル抜群、キリッとした感じの美人でいかにも出来そうなメイドだ。
そんな彼女がなぜ奴隷になったのかは、カナタの【図鑑】には載っていなかった。

 15歳のメイドは、ユキノという名で、身長は148cm、黒く長い髪をポニーテールに結っていた。
目の色も黒でくりっとした大きな目をしていて、まだ子供っぽい印象を与える。
なぜ【隠密】スキルを持っているのかは、これも【図鑑】には載っていなくて謎だ。

 彼女たちには、途中の洋品店で出来合いのメイド服を購入し着させていた。
奴隷商での衣装は、さすがに貫頭衣とまでは酷くはなかったが、経費を節約したそこそこ粗末なものだった。
そのまま引き連れるのは可哀想だと、さすがに鈍感なカナタも学習していたのだ。
後日オーダー品のメイド服を購入するのは確定事項だ。
1900万DGの支払いが無ければカナタならオーダーしているところだった。
ついでにララとルルとニクにも約束だった予備の服を買ったのは言うまでもない。
いくらお金が必要でも、そこでケチるわけにはいかないのが男というものだった。


ギーギギギー

 カナタが冒険者ギルドのスイングドアをくぐると、昼間っから飲んでいる連中の目が一斉にカナタたちに向けられた。
そして、幼児――カナタは7歳児に見える体格――に美少女5人という集団に目を見開く冒険者たち。

「おい、増えてるぞ」

「ああ、増えたな」

 カナタたちの耳には届かないヒソヒソ話が冒険者ギルドに蔓延はびこる。
カナタは、それを無視するとカウンターを一瞥し、買取窓口の1つがいているのを見て、そこに向かった。
その窓口の受付嬢さんがカナタを認識すると笑顔を向けて応対した。

「こんにちは。冒険者ギルドにようこそ。
今日はどういった御用件でしょうか?」

 カナタもいろいろ・・・・有名になったので、子供だと思って侮られることがなくなって来ていた。

「盗賊を討伐したときの戦利品があるんだけど、まとめて売りたいと思って。
いろいろごっちゃになってるので、どこか広い場所に出したいんだけど」

「わかりました。どうぞこちらへ」

 受付嬢さんは盗賊討伐の本当の話――ここ界隈の噂ではレグザスがやったことになっている――を聞いていたので、カナタたちの事情を察して直ぐに倉庫へと案内してくれた。

「では、どうぞ」

 受付嬢さんが促すと、カナタは【ロッカー】から盗賊のアジトから持って来た戦利品を出した。
カナタの【ロッカー】スキルは現在3m×3m×3mの容量があった。
結構気にせずアイテムを放り込んでいたのだが、カナタは容量以上に入っているような気がしてならなかった。
それもそのはずで、3m×3m×3mという容量は1コマの容量にすぎなかったのだ。
カナタの【ロッカー】スキルはコインロッカーのように複数の扉があったのだ。
その扉を無意識に使い分けていたため、フォルダー分けをするかのように開く扉毎に中身を区別して使っていたのだ。
ハズレオーブはここ、オーブから出たインゴットはここ、オーブから出たアイテムはここ、盗賊の戦利品はここと違う扉に入れていたことにカナタは最近気付いたばかりだった。
なので、中身がゴチャ混ぜになることなく、盗賊からの戦利品のみを簡単に取り出すことが出来た。

「遺品となるような特徴の物はありませんね」

 受付嬢さんが戦利品の数々をざっと見まわして判断する。
遺品を勝手に売ってしまうと、後で面倒なことになるため、注意が必要なのだ。

「宝飾品類はデザインで持ち主が判るかもしれませんので、リスト化してギルド網に登録します。
なので、3か月の公示期間が過ぎるまでは買い取ることが出来ません。
ギルドで買い取れるのは、単体の宝石と魔宝石、燃料石、各種属性石ですね。
剣や鎧といった武具は中古として引き取りますので、あまり値段はつかないです」

 受付嬢さんが、それで良いかというように上目遣いで訊ねて来る。
身長の低いカナタに上目遣い攻撃をするために、わざわざしゃがみ込むとはあざとい。
短いタイトスカートからチラリと太もも攻撃もしていたのだが、11歳のカナタにはまるで効いていなかった。
それに引っかかったわけではないのだが、カナタはその条件をすんなり肯定する。

「それでお願いします」

 早急にお金が必要だが、それでも金で焦ることもないのがお坊ちゃん育ちのカナタだった。
カナタの病気――といっても父親の呪いのせいだが――で貧乏だったファーランド家の苦労など知る由もなかった。

「査定に1日いただきますが、よろしいですか?」

「はい」

 期限までまだ1週間あるので1日なら問題はなかった。



 冒険者ギルドを出たカナタたちは、通りに面した壁が壊されたガチャ屋店舗まで来ていた。
冒険者ギルドの斜向かいなため、移動距離は大したことが無い。
そこでカナタたちは店の一角にシートを敷いてガチャ屋仮店舗を開くことにした。

「ルルはそっちでハズレオーブの買取をして。
はい、これ」

 カナタがルルに手渡したのは、『ハズレオーブ買い〼 300DG』という看板だった。
〼がこの世界の人に通用するのかは疑問だが、看板は人見知り系のルルには有難いグッズだろう。

「これが買取資金ね」

 続いてルルには蓋のついた木箱が渡された。所謂宝箱と呼ばれる形の木箱だ。
木箱の中にはぎっしりと大銅貨と銀貨が入っていた。
これは【お財布】の機能で好きな硬貨を自由に取り出せるため可能となっている。
大銅貨は銅貨10枚分の価値がある。
銅貨1枚で10DG。大銅貨1枚なら100DGになる。
300DGを銅貨で払うと30枚数えなければならないが、大銅貨なら3枚でいい。
複数持ち込まれたならば1000DGの銀貨で支払う。
枚数を少なくして手間を省くために大銅貨と銀貨を用意したのだ。
【お財布】を使えばもっと簡単だが、少額取引は貨幣で行った方がトラブルが少ない。
そういった事情を考慮した結果が大銅貨と銀貨だった。カナタは優しかった。
ルルは看板を冒険者ギルドに向けて主張するとじっと冒険者の来店を待つのだった。

「ララ、こっちに売り物を並べて。
カナタが冒険者に売れそうな武器、防具、ポーションなどのアイテムを【ロッカー】から取り出し始めた。
値段は、この表を目安にしてね」

 カナタはララにアイテムの値段表を渡した。
その値段は、市場価格の1割引きといった感じだ。
こういった繊細な対応が出来るのがララだった。

「こっちの担当はカリナね」

 そこは大人の下着コーナーだった。
カリナは21歳なのでアダルトコーナーでも問題はない。
立ち寄った冒険者が女性に見栄を張ってプレゼントしようと購入することを期待している。
こっちの値段は市場価格と同じで値引きなし。
勢いで買わせる利益率の高い商品となっている。

「あと、この剣を客寄せで飾っておいて」

 それはSRアイテムとして出たミスリルの剣だった。
これを金貨27枚という破格の値札をつけて飾った。相場で言えば金貨3枚は安い。
この界隈で金貨27枚――270万DG――をポンと払える冒険者はレグザスの『カリストの栄光』メンバーぐらいのものだ。
おいそれとは売れなくても目玉品として冒険者の目を引くことは間違いない。
尤も悪目立ちすると強盗が寄って来るというのは、この店の惨状が良い例となっているのだが……。
なので警備としてニクに睨みを効かせてもらうことにした。
あの件は子悪党にはインパクトがあっただろう。
レグザスのおかげでウッドランド子爵が後ろ盾であるという認識も広まったので、早々手を出す者は現れないだろう。

「じゃあ、店をよろしくね。
僕は裏でガチャを開けて商品を補充するからね」

 ルルが購入したハズレオーブはユキノに裏へと運んでもらう。
そのオーブから出たアイテムは、重いものはニクが、軽いものならそのままユキノが店頭に運ぶ。
今日1日はそれで様子を見るつもりだ。

 もしも売り上げが芳しくなければ、カナタは課金ガチャに手を出すという手段も視野に入れていた。
SR確率5%ガチャなら1回10万DGで引ける。
10連ガチャにすればSR確率が10%に上がり、10%×10=100%で1つはSRが出てもおかしくない。
(実際には毎回10%の繰り返しなので確率は変わりません)
100万DGのSR確率10%10連ガチャに、1UPの恩恵が乗ればURが1つ出るかもしれない。
現在の幸運値は57もあるのでカナタは根拠のない自信を持っていた。
神様の加護も加われば、御都合主義的に望んだものが手に入る可能性は高い。

「とりあえず、未開放のガチャを開けようか。
まずは嵩張らないエッチな下着が出る虫系HNオーブからかな」

 売上第一号がエッチな下着だったのを見て、カナタは商品の補充を行うためガチャを開ける。
どうやらハズレオーブを売って儲かったお金で気を良くして、そのまま高級下着を購入していったようだ。
100DGの価値しかないと思われているハズレオーブを300DGで10個も売れば財布の紐も緩むのだろう。
払った3000DGがそのまま他の商品の売り上げとして戻ってくる。
良いサイクルが出来上がっているとカナタはニヤリとした。
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