父親が呪われているので家出してガチャ屋をすることにしました

北京犬(英)

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ガチャ屋開業編

048 カナタ、オークションに参加する1

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 ウッドランド子爵家別邸から南西に向かった倉庫街俗にいう商業地区の中に、オークション会場となる建物があった。
商業区はウッドランド領と他領との交易のための物資が集積される倉庫街であり、東西南北の他領へと続く街道と直に繋がる要衝に位置していた。
そのためグラスヒルには東西南北の門に加えて南西門という物流のための最大の門が存在していた。
代わりに西門と南門は固く閉じられ、歩行者が出入りする通用門しか開いていないという変則的な運用がなされていた。

 その商業区の中心となる位置に建つのがオークション会場となる総合展示場だった。
カナタはウッドランド子爵とサーナリアが乗る馬車に便乗し、そのオークション会場に向かっていた。
カナタの護衛としてニクも乗っているが、彼女が肉ゴーレム――の進化した何か――だとは内緒のため同乗が許されている。

「そうか。聖剣は出品しないのだね」

 ウッドランド子爵がとても残念そうにカナタにこぼす。
カナタがつい漏らしてしまったのが悪いのだが、聖剣の存在を知られてしまったのは失敗だったとカナタは思っていた。
カナタは申し訳なさそうに答える。

「ええ、幸いにも必要金額に達するほどのSRアイテムを用意出来ましたので……」

 ここでカナタは言いよどんだ。
どうやってSRアイテムを用意したのかを追求されると拙いと思ったからだ。
しかし、ウッドランド子爵は、抜け目なくそこを突いて来る。

「ほう、SRアイテムを追加で用意できるとは、何か伝手があるのかね?」

 ウッドランド子爵は、カナタがURアイテムの聖剣を持っていることに加えて、SRアイテムを新たに手に入れられることに興味深々だった。
ウッドランド子爵にも、カナタの悪い噂は聞こえて来ていた。
病弱でまともなスキルも持っていないファーランド伯爵英雄家の無能なお荷物。
これはジェフリー親子が王都で流した悪意のある噂だったのだが、ファーランド伯爵家の懐具合とスキルオーブの買い漁りは有名で、ウッドランド子爵もカナタがまともなスキルを持っていないのだろうと漠然と思っていた。
しかし、実際のカナタに会ってみると、確かに病弱故に身体が年齢にしては小さかったが、その立ち振る舞いや知性は無能なお荷物という評価からはかけ離れていた。
レグザスからの報告でも、盗賊を討伐した際の身体能力や状況判断等はBランク冒険者と遜色がないという話だった。
そのためウッドランド子爵にとってカナタは、サーナリアの婿に相応しい掘り出し物だという認識となっていた。
しかも、悪い噂のせいで他の貴族家からカナタはノーマークだ。
英雄家とも縁戚になれるし、カナタの能力が明るみに出れば今後の商売にも良い影響を与えるのは間違いない。
なのでウッドランド子爵は、何の裏もなくSRアイテムを手に入れる伝手があるのかと訊ねていた。

「この街で購入した屋敷の庭にグラス系の魔物が生えてまして、それを討伐した時にSRオーブをドロップしたのです。
いやー、まさか街中の庭に魔物が生えているとは思いませんでした」

 カナタは自分のスキルがバレないように必死になって言い訳をした。
SRオーブはハズレオーブの再装填で出たものだが、ここは魔物ドロップということで言い逃れることにした。
このウッドランド領に来てから、カナタは悪意を持った人間に相当数遭遇していた。
聖剣のことを口にしてしまったのは迂闊だったと反省したカナタは、ウッドランド子爵に警戒心を抱いていたのだ。
お互いの気持ちがすれ違っているための不幸だった。
カナタがウッドランド子爵を信用するにはまだまだ時間がかかるだろう。

「おお、となるとエクストラポーションを手に入れたということだな」

「はい。それが3つありますから、それとミスリルソード他で、予定価格に達するかと」

 カナタもここは正直にエクストラポーションの存在を打ち明けた。
それによって聖剣の出品を忘れてくれたらありがたいと思ってのことだ。
つくづく聖剣の存在を教えてしまったのは失敗だった。

「エクストラポーションが3つなら、それだけで充分今回の目玉となるだろう。
カナタくんは、オークションで購入したいものはないのかね?
面白いものが沢山出品されるぞ?」

「いやー。何分借金の返済があるもので……」

 カナタもオークションには興味があった。
しかし、買えるだけの余裕がなかった。

「ならば聖剣を出品すれば「お父様!」」

 ウッドランド子爵の再三にわたる聖剣出品要請に、サーナリアが待ったをかけた。

「カナタ様がお困りですわ。
その話はもうおやめになって下さい!」

 サーナリアの剣幕にウッドランド子爵も小さくなってしまっていた。

「それと、私を盗賊から助けて下さったカナタ様に、お父様がお礼でお金を出しても良いぐらいではありませんこと?」

 さらにサーナリアが詰める。

「お礼なら、お金以上のものを用意している。今は言えんが……」

 ウッドランド子爵は、お礼はサーナリアを嫁にと言うつもりだったのだが、それを今は口に出来ないので誤魔化すしかなかった。
それによってウッドランド子爵の聖剣を売れ攻撃はおさまったのだった。
サーナリアがカナタの嫁になれば、将来聖剣はウッドランド子爵の孫の手に渡るのだし。

「ははは、お礼は居候させていただいているだけで充分ですよ」

「いいえ、もっとお礼をしなければなりません」

 サーナリアには何故か絶対にお礼をしなければならないという強い脅迫観念を抱いた。
自らの将来に繋がる大事な分岐点キーポイントであるという直感だろうか?

「そろそろオークション会場に着く。
カナタくんは、私と一緒にオークショニアの所へ行く。
そこで出品物の登録と品物の鑑定を受けてもらうことになる。
オークションの出品料は、落札価格の10%になる。
これはオークションを開催する経費と税金を含んだ額だ」

「はい。承知しています」

「結構」

 そこまでは、カナタもサーナリアから聞いて把握していた。 

「出品物を預けたらそのまま会場に行って好きなものを落札していてよいぞ。
後で売却益から天引きしておこう。
おそらくエクストラポーション3つとミスリルの剣で最低落札価格が1200万DG以上になる。
その9割までなら使っても問題ない。
くれぐれもオーバーしないように気を付けるんだぞ」

「気をつけます」

「まあ、その時は聖剣を飛び入りで出品しても良いんだぞ?」

「お父様!」

 ウッドランド子爵がどこまで本気かわからないが、カナタは落札する気がなかったのでスルーすることにした。
オークションは吊り上げ防止のため、現金が無いと落札出来ないのが常識だ。
ウッドランド子爵が言っている天引きは、出品物の最低落札価格の9割まではその金額を持っていると見做すということだった。
なので、その額を超える落札をするには、それなりの出品を追加する必要があるということだった。

 真っ直ぐ走っていた馬車が、右回りに動いたと感じたところで停車した。
どうやら馬車がオークション会場のエントランスに横付けされたようだ。

「カナタくん。グラスヒル・オークションへようこそ」

 カナタ人生初めてのオークション参加だった。
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