父親が呪われているので家出してガチャ屋をすることにしました

北京犬(英)

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ガチャ屋開業編

049 カナタ、オークションに参加する2

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 ウッドランド子爵に連れられてオークション会場のバックヤードに行くと、カナタはエクストラポーション5つと武具5つのSRアイテム10品をオークショニアに預けた。
オークショニアは【鑑定】スキルを持った職員にそれらを鑑定させて、本物であることを確認すると、経験に裏付けされた適正な最低落札価格を決定した。
エクストラポーションは、それぞれ300万DGから、武具は300万、250万、350万、400万、500万DGから開始となった。
その目録が魔法契約書に記載され、カナタに預かり証兼引換証書として渡された。
これはこの金額の9割までを預かり金としてオークションで使用できるという証明でもあり、後で落札金を受け取るための引換証書でもあった。
カナタがオークションで使っても良い額は(1500万+1800万)*0.9=2970万DGだった。
尤も、借金の額まで使っては本末転倒なのだが。

 カナタの出品できるSRアイテムの数は8つだったはず。
それが増えているのは、屋敷の庭で刈った魔物からドロップしたオーブを再装填してガチャを引いたからだった。
ハズレオーブ500の500連ガチャの恩恵と、Rオーブを1UPさせたものを加えて、SRオーブが合計8つ出ていた。
全てのオーブがグラス系オーブだったため、SRオーブの中身は8つともエクストラポーションだった。
なら前回の3つと合わせて11じゃないかと思うだろうが、出品数が多いことで単価が下がることを危惧し、5つしか出品しなかったのだ。
それでも予定金額には達するはずなので問題ないと判断していた。
そこらへんは世間知らずのカナタに代わってララとルルが抜け目なく指示をした。

「カナタくんの落札番号は5番だ。
欲しいものがあったら、この番号札を掲げて落札するように」

 ウッドランド子爵から手渡されたのは、5と赤く大書きされた白地の丸い板に30cmほどの棒がついた札だった。
オークションはオークショニアが最低落札価格から一定間隔で価格を吊り上げる声をあげ、その額でも落札したいという者だけが札を掲げ続け、最後に残った者が落札するというチキンレース制だった。
引き際を誤ると思った以上に落札額が上がるので、予め決めた額で引くのが賢い参加方法だった。
1品のオークションにかかる時間も短くなるので、出品数の多いこのオークションではこの方式が採用されているのだとか。

「わかりました」

 カナタは番号札を受け取ると、オークション会場に向かった。
会場にはボックス席が並んでいて、その席にも数字が書いてあった。

「こっち、こっち」

 サーナリアが手招きしている席が4番で、隣の番号札と同じ5番の席がカナタたちの席であり、既にニクが案内されて座っていた。
そこは最前列の真ん中の席だった。
席としては商品が一番よく見える特等席だった。
落札する気のないカナタに用意するにしては不相応な席だったかもしれない。

「サーナリア様も参加されるのですか?」

「そうですわ。ウッドランド子爵家うちが主催者だと言っても、落札するのは平等でないといけないでしょう?
欲しいものを先に確保なんてしていないというアピールでもあるのですわ」

「なるほど(主催者といっても、いろいろと面倒なんだな)」



 カナタがオークションの開始を待っていると、隣の席にウッドランド子爵がやって来た。
そろそろオークションが開始される時間らしい。
ウッドランド子爵が番号札を手にすると、オークショニアが舞台の上に立った。
オークショニアは【拡声】の魔道具を手にすると声を発した。

「皆さま、お待たせしました。
只今よりグラスヒル恒例の定期オークションを開催致します。
今回もグラスヒル特産のポーションから、各地より集められました珍品の数々をご紹介させていただきます。
それでは、今回最初の品はこちら!」

 オークショニアの紹介と共に最初の品が舞台上に運び込まれた。
それはグラスヒル特産のエクストラポーションだった。

「こちらの品、ご存知のとおり部位欠損も治る最上級回復薬、エクストラポーションになります。
1番出品の栄誉はK氏による出品になります。
さあ、最低落札価格はいつもの通り300万DGから」

 このグラスヒルオークションでは、エクストラポーションがいくつ出品されるかが不明なのが当たり前だった。
もしエクストラポーションが1つしか出品されていなかったら、最初の1つを落札した者にしかエクストラポーションは手に入らない。
つまり、1番出品は高値がつく。そして出品者が複数いれば、1番出品として落札されたのが誰の出品物なのかが問題となる。
同じ品でも額が違うのだから当然だ。
なのでオークショニアは、このエクストラポーションが誰の出品であるかという情報を告げる必要があった。
ここでK氏と紹介されたのはカナタだった。
さすが幸運値57。これは公平な抽選結果であり、不正も忖度も一切なかった。

「それでは、10万DGずつ上げて行きます。
310、320、330……600、610、620!
はい、16番様620万DGで落札!」

 今回、エクストラポーションが少ないと読んだのか、16番と7番の競り合いの末、16番が競り勝った。
カナタがあと4つも出品していると知ったら、16番の人はどう思うのだろうか。
それに冒険者が出品したエクストラポーションも複数あるかもしれない。
今回は競り負けた方が逆に勝ちという結果になるかもしれない。
そして各地より持ち寄られた壺だとか美術品だとか貴金属などがオークションにかけられた。
全く違う地方からやって来た商人たちにとっては、お互いの品が遠い異国の品となり価値のあるものらしく飛ぶように落札されていった。

「続いての品は、またグラスヒル特産のエクストラポーションだ!
これもK氏による出品です」

 2つ目のエクストラポーションに、オークション会場がざわついた。
16番は今回エクストラポーションは1つだと賭けて高値落札をした。
その賭けが外れたのだ。16番はがっくりと膝を折った。
逆に先ほど競り負けた7番は、満面の笑みでガッツポーズをしていた。

「それでは、300万DGから10万DGずつ上げて行きます。
310、320、330……540、550、560!
はい、7番様560万DGで落札!」

 どうせ7番は610万DGまでは出すだろうと、7番と競っていた13番が早々に降りてしまった。
1つ目と2つ目の落札額には60万DGもの差がついてしまった。

「エクストラポーションの適正価格というのがわからないな」

 カナタが何気なく呟くと、サーナリアがそれを拾って答えた。

「王都での最終価格は800万DGはいくみたいですわよ。
部位欠損が治れば人生をやり直せるということですものね」

 この世界には、国家間の戦争もあるが、それより身近にあるのが魔物との戦闘だ。
荒事により死んだり怪我をする率がかなり高い世界だ。
戦闘により腕なり脚なりを失えば第一線では戦えなくなる。
そこから復活出来るのだから、エクストラポーションは喉から手が出るほど欲しい品だろう。
それが稀に・・ドロップするのがこのグラスヒルという土地だった。

「続いての品は、またまたまたグラスヒル特産のエクストラポーションだ!
これもK氏による出品です」

 3つ目のエクストラポーションに、オークション会場がざわついた。
今度は7番ががっくりと膝を折り、13番がガッツポーズをした。
しかし、結果は思わぬ方向に行く。

「それでは、300万DGから10万DGずつ上げて行きます。
310、320、330……550、560、570!
はい、13番様570万DGで落札!」

 9番と競っていた13番が降りそこなって570万DGで落札した。
これがチキンレース制の罠なのだ。今度は13番が膝を折る番だった。
まあ、王都に持ち込めば800万DGなのだから、少し儲けが減った程度のことだ。

「まさか、3つも出品されているとは……」

 会場から落札者の怨嗟の声が聞こえて来た。
そう、エクストラポーションは稀に・・出品されるものであり、オークションの開催日によってはゼロということもあるのだ。
まさかカナタが5つも出品しているとは、この時誰も思っていなかった。
いや、ウッドランド子爵だけは出品数を知っていた。
ウッドランド子爵は、500万DGまでは札を掲げ、そこでピタリと降りていた。
それは「まだ次がある」という余裕だったのかもしれない。
これはインサイダー情報を使ったものなので紛れもないズルだった。
しかし、カナタにとっては500万DGという最低価格を維持してもらえる有難い援護射撃となっていた。

「続いての品は、またまたまたまたグラスヒル特産のエクストラポーションだ!
これもK氏による出品だーー!」

「「「またかよ!」」」

「K氏って何者だよ?」

「いや、これはエクストラポーションを手に入れるチャンスだ!」

 普段はエクストラポーションに手を出さない商人も参加しオークションは白熱した。
需要のあるエクストラポーションだからこそだが、4つ目も540万DGで落札されたのだった。

 ここでカナタが得た落札額は、既に620万+560万+570万+540万=2290万DGとなっていた。
つまり、借金1900万(+手数料の190万)を差し引いた余剰資金が200万DGあり、最低落札価格分の2100万DGを加えた2300万DG、これの9割で2070万DGをカナタはオークションに使っても問題がなかった。

「僕も少し落札してみようかな?」

 カナタは余裕が出来たことで落札に興味を持った。
その品が必要かどうかではなく、落札してみたくなってしまったのだった。
これこそ正にオークションの罠だった。
会場の雰囲気に飲まれるというのは良くあることだった。
ここにブレーキ役のララがいないのも悪い方に行ってしまう原因だった。
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