父親が呪われているので家出してガチャ屋をすることにしました

北京犬(英)

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ガチャ屋開業編

065 カナタ、仲間に頼ることを知る

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 一仕事終えたカナタは、ある事に気付いた。

「ステータスが落ちていない?」

 前回の滞在時、ここグリーンバレーでは、カナタは呪いの影響でステータスの低下にみまわれていた。
しかし、今回はどうやらそれが無いようなのだ。
そのため【ファイアボール】の威力が高いこと高いこと。
カナタも想定外のことだったのは、そんな原因があった。
実は、カナタの父アラタが王都へ行っていたため距離が開いたせいだったのだが、カナタにはそんなことは知る由もなかった。

「ああ、しまった。
もしステータスが低下していたら【転移】で帰れなかったかもしれなかったんだ!」

 まあ2日も歩けばステータス低下の境界に到着するので、なんとかなったのだが……。

「いや、むしろレベルアップ分で【転移】が使用可能かどうか確認できればよかったのか!」

 カナタは前回のグリーンバレー滞在時からレベルが3つ上がっていた。
そのステータス上昇分で呪いの低下分を相殺できれば、【転移】もそのまま使えたかもしれなかった。
その実験が出来なかったのは、むしろ不幸だったのかもしれなかった。

「ご主人さま、ここにはまた何度も来るんでしょ?
だったら、その確認は他の時でいいじゃないですか。
何も全てを一度に熟す必要はないんですよ?」

 ヨーコの慰めでカナタもそれはそうだなと気を取り直すことが出来た。
しかし、今後は何らかのトラブルの最中に、ステータスが低下する可能性も視野に入れなければならなかった。
そうなると、避けられるトラブルも避けられないということに成り兼ねなかった。

「そうだね。
しかし、もしもの事を考えたら、僕はもっとレベルアップした方が良いのかもしれないね」

 レベルアップすれば、呪いの影響を相対的に小さく出来るはずだった。
カナタ自身が狙われる立場だと理解できたので、自衛のために強くなることは必須となった。
ニクでも対処出来ないような敵が現れたとき、カナタ1人だったとき、カナタ自身が対処しなければならなくなるのだ。

「ご主人さまは、もっと仲間に任せても良いのよ?
ニク以外にもユキノもサキもレナも戦えるってことを覚えておいて欲しいわ。
もちろん私も戦えるのよ?」

 ヨーコが何でも自分で抱え込みそうな様子のカナタを心配して言う。
今はお店の自衛をサキやレナの戦闘職に任せているけど、店員のララやルルが戦えるようになっても良かったのだ。
そうすれば、もっと人を自由に動かせる。
つまり、カナタたちは全員がレベルアップして戦力を底上げするべきだったのだ。

「わかった。
皆でレベルアップ出来るように頑張ろう」

 カナタも自分で抱え込むのをやめて、皆を頼ろうと思った。
今までカナタは寝たきりだったため、自分一人の世界で生きて来たと思っていた。
しかしそれは間違いで、寝たきりの時でさえ専属メイドが4人も交代で世話をしてくれていたのだ。

「誰かの手を借りるのは悪いことではないんだね」

 カナタは何か吹っ切れたような気がした。

「ところで、何処かレベルアップに便利な場所はないかな?」

 カナタの知識ではレベル上げといえばダンジョンとか、ゴブリンの集落の殲滅なのだが、この近辺の事情をカナタは知らなさ過ぎた。

「ゴーレムドロップのガチャオーブが存在しているので、ここら辺に地下鉱山や地下迷宮ダンジョンがあっても不思議じゃないわね」

 ヨーコもこのあたりの事情は知らなかった。
しかし、グリーンバレーのバレーという地名から、谷の逆である山岳地があるはず。
山岳地には鉱山があり、鉱山があればそこに繋がる形で地下迷宮ダンジョンがあるかもと思ったのだ。

「そういや、ゴーレムドロップに下位のゴーレムが出るガチャオーブがあったはずだ」

 そう、そこから出て来た肉ゴーレムがニクなのだ。
あのカナタにニクをもたらした山賊どもは、このグリーンバレー所属の冒険者だったはず。
肉ゴーレムのガチャオーブは、その拠点の冒険者ギルドで手に入れたか、もしくは自らゴーレムを刈って手に入れたはずなのだ。
冒険者ギルドに行けば、囮用のガチャオーブがそのまま販売されているかもしれない。

「あれ? 肉ゴーレムのシステムを起動すれば、ニクと同等の戦力が2人になる?」

 この時カナタは強力な戦力を手に入れる禁断の方法に気付いてしまった。
それがシステムがもたらす波乱の幕開けとも知らずに。
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