父親が呪われているので家出してガチャ屋をすることにしました

北京犬(英)

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南部辺境遠征編

105 カナタ、辺境伯に会う

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 【次元防壁】による謎の壁でドラゴンのブレスが防がれたことは、それを目撃した人々にはニクの魔法の一部と思われたようだった。
カナタが無詠唱で【次元防壁】を張ったので、誰がやったのかわからなかったのと、【次元防壁】そのものが使うことの出来る魔術師がほぼ居ない珍しい魔法だったからだ。
さらにニクの使う魔法が、どの魔術師が使う魔法系統とも違い珍しいものだったことが、謎の壁との関係性を納得させてしまっていた。
それもそのはず、ニクの荷電粒子砲は魔法ではなくただの科学兵器だ。
だが、それを理解することの出来る知識は長い歴史の間継承されて来なかった。
謎の黒ローブの男以外には……。

 カナタはここで悪目立ちしないで済んだと思っていたが、むしろニクが目立ちまくってしまっていた。
さらにカナタは忘れていたが、自身も陣地構築で目立ってしまったので、懸念していた面倒事が向こうからやって来ることになった。

「おい、お前らはDランク冒険者だそうだな。
我が領で雇ってやる。ありがたく思え」

 勘違い貴族のお出ましだった。
この男、アフオ男爵というライジン辺境伯領が抱える小領地の代官をしている男だった。
辺境伯軍は、そんな小領地の寄子からも人を集めて軍を構成しているのだ。
おそらく遅れてやって来た第1軍か第2軍の補給部隊の者だろう。
どう見ても医療に関わるような存在ではないので衛生部隊は除外。
加えて精鋭である軍の指揮官や兵士には見えない小太り体形だった。

「興味ないんで」

 カナタたちはスルーを覚えた。
話に付き合っても面倒なら、無視して面倒になった方が楽だと学習したのだ。
カナタたちがそのまま通り過ぎようとすると、いきなり怒声が響いた。

「ふざけるな! 俺が声をかけてやってるというのに無視するのか!
おい、お前達やってしまえ!」

 アフオ男爵は、直率の兵に命じてカナタたちに危害を加えようとした。
短絡的で、プライドのみが肥大した悪い貴族の見本のようだった。
だが、ドラゴンを倒すような戦力に危害を加えられるような兵などここにはいるはずもない。
ニクにひと睨みされるだけで、兵たちは動くことも出来なかった。

「ドラゴンスレイヤーに何を言ってるんだこの人は……」

 兵たちにとっては、ふざけているのはアフオ男爵の方だった。
この世界、他人を利用し自分だけが利益を得ようと短絡的な行動に出るアホな貴族が多かった。
こういったアホは何処にでもいると思ったほうが良い世の中なのだ。

「不敬罪だ! おい捕まえろ!」

 自分の兵が怖気付いたために、今度は城塞の衛兵に命じるアフオ男爵。
スルーする衛兵。今度は衛兵にも怒鳴り散らすアフオ男爵。

「止めんか!」

 城塞にアフオ男爵を諫める大声が響いた。
その声の主は、ライジン辺境伯その人だった。
2m近い巨躯にいかにも戦闘職ですといった強靭な肉体を持つ正に戦うための将という出で立ちだった。

「この冒険者たちは今回の魔物征伐の功労者、つまり俺の客だ!
アフオ、お前は引っ込んでろ!」

 アフオ男爵のような小物の習性は、解りやすい。
長い物には巻かれろだ。
アフオ男爵は、尻尾を巻いてすごすごと逃げて行った。

「はぁ……。ありがとうございます?」

 カナタは溜め息をついて、いかにも大物と思われる貴族に礼を言う。
思わず疑問形になってしまった。
これには「あなたは誰?」という疑問と「もし思った通りの人なら、あなたの責任も重大だよね?」という問いかけが含まれていた。

「アフオが悪かったな。あれでも補給に関しては有能なのだ。
俺はライジン辺境伯だ。知っているよな?」

 カナタの態度に戸惑いながら、ライジン辺境伯が自己紹介をした。
どうやらカナタを客として歓迎するつもりなのは間違いないようだ。
カナタは警戒しつつ答える。

「名前だけは存じ上げていますよ?」

 メルティーユ王国三英雄の一人はカナタのその答えに大コケした。
ライジン辺境伯はカナタの父アラタの戦友だった。
勇者とアラタ、ライジンは共に魔王討伐に赴いた仲なのだ。
カナタはそんな身近な英雄を名前だけしか知らなかったのだ。

「おまえ、カナタだろ? ファーランド家三男の?
親父から何も聞いていないのか?」

「そうですが、特に何も聞いてませんね」

 ライジン辺境伯はがっくりと項垂れると諦めの表情で言う。

「とりあえず、俺とお前の父親は兄弟同然なんだ。
つまり、おまえは俺の子も同然だ。歓迎するぞ。
この後いろいろ処理した後に戦勝パーティーを開く。
それまでちょっと付き合え」

 ライジン辺境伯は強引にカナタを抱えると、笑いながら城塞の中へと歩き出した。

「うわー。誘拐されるー(棒読み)」

 カナタはライジン辺境伯が父の知り合いだと知り、安心して冗談を言ったのだが、それを真に受けた者がいた。

「停止せよ。マスターを離しなさい!」

 ニクが辺境伯に武器を向けていた。
さすがに荷電粒子砲ではなくミスリルの槍の方だったが……。
ライジン辺境伯は、その剣幕に慌ててカナタを離すのだった。

「ニク、大丈夫だから。
この人は敵じゃないよ?」

「おいカナタ、こいつ冗談通じないだろ。
危ねー奴だな」

 ドラゴンを倒せる最強戦力に武器を向けられ肝を冷やす辺境伯と、冗談を真に受けられて戸惑うカナタだった。
だが、いつでも自分を護ろうとするニクの行動はカナタにとって嬉しくもあった。
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