父親が呪われているので家出してガチャ屋をすることにしました

北京犬(英)

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南部辺境遠征編

112 カナタ、褒賞にハズレオーブを希望する

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「終わりました。ありがとうございます」

 魔導通信機はこちら側でも燃料石の魔力をガシガシと消費していた。
国の重要設備として王国から後で予算がつくにしても、S級魔物10体分に相当するだけの燃料石を購入または魔力充填するとなると、市場価格に大きな影響を与え混乱を招くことになるのは間違いがなかった。

「燃料石の魔力ですが、申し訳ないので僕が充填しておきました」

「は?」

 ライジン辺境伯は、耳を疑った。
簡単に充填と言うが、その総魔力量はS級魔物10体分に相当する。
それが空になったとすると、その仕事量は魔力充填業従事者100人が2週間はぶっ通しで仕事をしなければならない作業量だった。
それをカナタはいとも簡単に充填しておいたと言う。
これはカナタの尋常ならざる魔力量の賜物だったのだが、それが異常なことなのだとは、カナタ自身は気付いていなかった。

「はぁ(こいつはそんなやつだったな……)」

 そう溜め息をつくと、ライジン辺境伯は考えるのを諦めた。
カナタは規格外、もう驚くのはやめた方が良いと判断したのだ。

「で、アラタと話して褒賞の件は決まったのか?」

 メルティーユ国王が採決したので、カナタの男爵位叙爵は確定だった。
領地を南部辺境伯領から割譲することも確定事項。
従者二名の騎士爵位叙爵もライジン辺境伯の裁量で決定している。
だが、武功賞1、2、3位ともなると、それ以外に大金を与えなければ辺境伯の矜持が疑われる。
ライジン辺境伯のお勧めはドラゴンからドロップしたSRオーブ20個、ここで出せる最も高価な褒賞だった。

「はい。父様と相談して決めました。
ノーマルのガチャオーブを全部ください」

「は?」

 カナタが要求したのは所謂ハズレオーブと呼ばれ、ギルドでは1個100DGで取引される最低ランクのオーブだった。
魔物はランクが上がれば上がるほどドロップするガチャオーブの数が増える傾向があった。
そのドロップのうちでも高レアリティのオーブは数が少ない。
だが、最低ランクのNオーブ所謂ハズレオーブならば大量に落ちているものなのだ。
今回1万超えの魔物を討伐したことで、おそらく5万個ぐらいはドロップしているはずだった。

 冒険者はオーブを背嚢リュックに収めて、己の力で街へと持ち帰らねばならない。
だが、魔物を倒しに行く先は街から遠いことが常だ。
そのため高ランクの魔物を倒した後、高レアリティオーブのみを回収して、ハズレオーブは荷物となるので捨て置かれることが多々あった。
これがギルドでハズレオーブの回収量が少なくなる原因だった。

 だが、今回のような魔物の氾濫では、魔物の方から街へと襲い掛かってくるので、全てのガチャオーブを拾い集めることが出来るのだ。

 余談だが、捨て置かれたハズレオーブは後に魔物が呑み込んで回収してしまう。
それが高ランクモンスターを倒した時に多数のガチャオーブがドロップする原因だと巷では言われている。

 だが、そうなるとその魔物の特性を持ったガチャオーブ――例えば動物系なら肉や毛皮が出るとか――しかドロップしない説明がつかなかった。
例えば動物系の魔物のハズレオーブを植物系が呑み込んだとする。
その植物系魔物を倒した時、植物系魔物が本来持っていたオーブに、呑み込んだ動物系魔物のオーブがそのままドロップしなければおかしいのだ。

 この不思議はカナタの携帯ガチャ機によりガチャオーブが1UPして中身どころかオーブの色(レアリティ)まで変わることにも言えた。
ガチャの不思議全ては神様の思し召しということなのだろう。

「いや、それじゃ褒賞額が功績に見合わん!」

 ライジン辺境伯は、ハズレオーブの個数と単価を思い浮かべて安すぎると判断した。
ドラゴンのSRオーブなら、1個で1千万DGはするだろう。
ドラゴンという高価素材にSRという希少性が乗るのだ、安めの魔物のSRオーブとは訳が違う。
それを20個渡そうというのだから、褒賞は2億DG以上の予定だったと見て良い。
それが1個100DGのハズレオーブ5万個、つまり500万DGとなると、明らかに褒賞額が低すぎた。

「えー、でもハズレオーブが欲しいんだよなぁ」

 カナタがガチャ屋という変わった商売をしていることは、辺境伯が各地に放っている間者から耳に入っていた。
1個100DGの価値しかないはずのハズレオーブを330DG(ギルド手数料込み)で仕入れて、オーブから出て来たアイテムを売って商売とする。
それはガチャを開いて330DG以上のアイテムを出さなければ商売になりようがないはずだった。
店頭に並ぶ商品はハズレオーブを開いたNアイテムではなく、一つ上のHNアイテムが中心。
カナタがなんらかの手段で1UPしたアイテムを手に入れていることは間違いがなかった。
辺境伯は、その報告をカナタとアラタが魔導通信をしている間に受けていた。
カナタが枡形を作り始めた時からカナタの素性をディーンから聞き出した。
そして直ぐに各地の間者に調べさせ、高い魔法便を使ってまで報告させた成果の一つがこれだった。

「(つまり500万DGを5千万DG相当にする手段がカナタにはあるということか)」

 それが何なのか詮索することをライジン辺境伯は諦めた。
そこはアラタと相談して話さないとカナタたちが決めたのだろうからだ。

「わかった。それにドラゴンのSRオーブ10個と、他の魔物のHNオーブ5千個もつけよう」

 カナタの褒賞は男爵位叙爵、領地割譲、従者二名の騎士爵位叙爵、そしてドラゴンのSRオーブ10個とHNオーブ5千個、Nオーブ全て推定5万個となった。
辺境伯の計算では、ドラゴンのSRオーブ20個分の2億DG相当と、カナタの能力を使ったあとで同等となるはずだった。
だが、カナタの携帯ガチャ機には1万連ガチャの恩恵があり、GRアイテムがドロップする可能性があるとは辺境伯は夢にも思っていなかった。
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