父親が呪われているので家出してガチャ屋をすることにしました

北京犬(英)

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南部辺境遠征編

114 辺境伯、音声通信機を大量に買う

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「おはようございます。通信機出来ました」

 翌日、カナタはライジン辺境伯の元に音声通信機を持ち込んだ。
本来、辺境伯にお目通りするならば、先触れを送り面会の許可をとってから本人が会いに行くという段取りが必要なのだが、カナタは辺境伯の護衛にも完全スルーでアポなし面会が可能だった。
これもカナタが辺境伯の隠し子という誤解の賜物なのだが、カナタはその有り得ない待遇を良く理解していなかった。

「おう、カナタか。
出来たって? どこに?」

 ライジン辺境伯の認識では、通信機とは部屋一つに鎮座するような代物だった。
その大きさの物は【アイテムボックス】持ちでも収納出来ないと思っていた。
実際、魔導通信機は分解された状態で運ばれて、この地で組み立てられたのだ。
しかし、カナタはそれを【ロッカー】の中に仕舞って持って来ていた。

「とりあえず、此処で良いですか?」

 カナタは小さなチェストぐらいの大きさの音声通信機、3号機と4号機の2台を、その場で【ロッカー】から出した。

「は? これがそうなのか?
それとおまえ、【アイテムボックス】持ちだったのか!」

 ライジン辺境伯にとって、その大きさは常識外れに小さかった。
魔導通信機があの大きさに収まっているのは、古代魔法文明の遺物をコピーしたものだからだ。
一つの部屋を占拠する大きさのものから単純に音声機能を切り離しただけのもの、しかも独自開発された現代の魔導具が小さなチェストサイズに収まるはずがなかった。
しかもそれが2台入っているという。

 【アイテムボックス】でもそこそこ大きめといえる容量を持つ収納スキル。
この大きさを入れられれば、商人として小さな成功が約束されるというサイズだった。

 カナタが【ロッカー】のスキルを持っていることは辺境伯も知っていた。
しかし【ロッカー】とはお世辞にも有能なスキルだとは認識されていなかった。
辺境伯は、カナタが使ったスキルが有能だったため、その上位の【アイテムボックス】だったのかと驚いたのだった。

 カナタの【ロッカー】はレベルが上がる度に容量が増えていた。
レベルの数字mの三乗という容量なので、現在レベル5で125㎥もあった。
更に、カナタの魔力量によってコマ数が決まっているようで、駅のコインロッカーの如く複数のコマが存在していた。
その使い勝手は【アイテムボックス】の上位であるかのような振る舞いを見せていた。
今は低レベルのため入れられる物の大きさに制限を受けているが、レベル10にでもなれば1コマで有能と言われるレベルの【アイテムボックス】持ちを凌駕してしまうはずだった。

 ちなみにラノベで容量サイズ無制限重量無し時間停止機能付きという高性能な【アイテムボックス】がよく登場するが、この世界でそれは勇者レベルの異世界転移者のGRスキルの話であり、この世界の一般人にはそんなGRスキル持ちは存在していなかった。

「そこなんだけど、僕のスキルは【ロッカー】なんだ。
【ロッカー】スキルはハズレと言われてバカにされてるけど、育ててレベルアップさせれば【アイテムボックス】を凌駕出来ると僕は思ってるんだ」

 カナタはここぞと【ロッカー】スキルの有能性をアピールした。
これはカナタのように【ロッカー】はハズレだと蔑まれることが無いようにという、いわばカナタのライフワークである啓蒙活動となっていた。

「そうだったのか。蔑まれているのは勿体ないな」

 ライジン辺境伯は早急な【ロッカー】スキル所持者の囲い込みを決定した。
カナタはこの話をカンザス男爵にもしてしまっているが、【ロッカー】スキルの保持者が優遇されるようになるならば、それは誰が登用しようが本望だと思っていた。
しかし、カンザス男爵とライジン辺境伯では、カナタの話の受け取り方が違っていた。
カンザス男爵はハズレスキル持ちを安く使おうと思っており、ライジン辺境伯は有能なスキルと判明した【ロッカー】スキルの所持者を優遇しようと思っていた。
当然【ロッカー】スキル所持者は優遇される方に流れることになる。

「どうしましょう?
もう一台もどこかに設置して実験した方が良ですよね?」

 カナタの提案でガーディア城塞内で出来るだけ遠い場所に音声通信機4号機が置かれた。
そちらには操作方法を知っているサキが付いて実験開始となった。

「まず、この数字を通話したい相手、ここでは4号機なので0004にダイヤルを合わせます。
そして通話の緑ボタンを押すと相手側に呼び出し音が鳴るので、向こう側でも緑ボタンを押して通話を開始します」

「こうか?」

 ライジン辺境伯がカナタの指示通りにダイヤルをセットして通話ボタンを押した。

『はいはーい、サキでーす』

 すると4号機からのサキの声が3号機の筐体脇から聞こえて来た。

「おお、繋がったのか!」

 ライジン辺境伯が声をあげる。

『はい。繋がってまーす』

 その声にサキが反応することで繋がっていることが立証された。

「そっちに、マリウスがいるはずだ。
聞こえているか?」

 ライジン辺境伯は、サキに付いて行った騎士に声をかけた。

『はい、閣下! 聞こえております』

「おお!」

 実験は大成功だった。

「一旦切ります」

 カナタは赤いボタンで通話を切る。
そして続けて長距離通信のデモンストレーションをすることにした。

「音声通信機2号機は、僕の生活拠点であるウッドランド領グラスヒルの屋敷に追いてあります。
そこにも通話出来ることを確認してください」

 辺境伯は、その有り得ない話・・・・・・に気付いた。
昨日の今日で、なぜグラスヒルまで音声通信機を運べたというのだろうか?
カナタ大失態をおかしていた。
これで辺境伯にはカナタが【転移】を使えることがバレたのだ。
だが、黙ってカナタの言う通りにした。
ここは追及するべき時ではないと判断したのだ。
辺境伯はダイヤルを0002にセットし緑の通話ボタンを押す。

『はいはーい。ララでーす。
ご主人さま、朝からどうしたの?』

「ララ、そこは今どこなのか教えて」

 カナタの質問に、ララは何のことかと疑問に持ちながらも答える。

『こちらはグラスヒルの屋敷だけど?
ご主人さま、どうしちゃったの?
通信機はまだここにしか置いてないよね?』

 ララのリアルな返答に、そこがグラスヒルであることが判明した。
まあ、カナタが前夜に打ち合わせをして口裏を合わせていなければだが、そうする意味は全く存在しなかった。
例え騙そうとしても、この後辺境伯側の手により実験をすればバレてしまうのだから。

「実は3号機の実験なんだ。
別の音声通信機からも繋がるかは実験出来てなかったからね」

 長距離通信も成功し、更に違う部分でライジン辺境伯は驚きを隠せなかった。
魔導通信機でも1対1でしか通信を繋げられないのだ。
それが1対多、数字を合わせれば何処にでも通信が出来る。
この仕組みは正に画期的なものだった。

「素晴らしい。
カナタ、これは量産できるんだな?」

 カナタはララとの通話を切りながら辺境伯に答えた。

「機能上0000から9999までの1万台しか想定してないけど出来るよ?」

 カナタは1万台でも多いと思っていたので、通信機の固有番号を4桁しか想定していなかった。
しかし、辺境伯は驚くべき数字を言い出す。

「1000台作ってくれ。
いやその前に値段を決めないとならないな。
1台白金貨3枚でどうだ?」

 1台3千万DG、1000台で300億DGの商談だった。
ライジン辺境伯はこの音声通信機の有用性を認識していた。
これによっていつでも遠隔地と会話出来るのだ。
それは軍事でも経済でも優位に立てるということだった。
この注文数に慌てたカナタは、量産機の番号を2桁増加することを決定し、試作機4台の番号も6桁に改造を施した。

 余談だが、ライジン辺境伯から王家に000000番が献上された後、貴族家から追加注文が殺到し販売制限がなされることになった。

 更に大量に増えた音声通信機から000002番にいたずら電話が続出することになったため、着信拒否機能を特別につけることとなった。
判りやすい番号で女性しか出ず、王家にかけてしまうよりリスクが低い。
そのターゲットにグラスヒルの通信機がなってしまったのだ。
この世界、まだまだ電話のモラルというものが確立していなかった。
日本でも電話の普及始めには交換手の女性を口説く人がいたそうだ。(諸説あり)
どこでも新しいおもちゃに浮かれる人続出なのは困ったものだった。

 ちなみにカナタの番号である000001番は、通信機が【ロッカー】に仕舞われていることが多いため、繋がらないことで有名だった。
だが、身内から緊急時に連絡が取れないのは問題なため、特定の番号だけは【ロッカー】内でも通じるように改造が施されていた。
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