父親が呪われているので家出してガチャ屋をすることにしました

北京犬(英)

文字の大きさ
116 / 204
南部辺境遠征編

116 ララとルル、同行する

しおりを挟む
 ライジン辺境伯にカナタが【転移】を使えることがバレたとはいえ、大っぴらに【転移】を使うわけにはいかなかった。
三英雄が後ろ盾だと言っても、敵対し人的被害が出ることまで覚悟して誘拐されてしまえば、対処はかなり困難になる。
それこそ海の向こうの他国にまで連れて行かれたら、例え三英雄でも救出が困難になってしまうだろう。

 逃げようにも隷属魔法をかけられてしまえば、例え【転移】が使えても逃走する意思自体を封じられてしまう。
誘拐する方法もいくらでもある。
薬を盛って意識を奪う、これはオレンジタウンで一度やられた手口だ。
そしてカナタの性格を利用するなら、身近な人を人質にとり行動を縛るのも効果的だった。

 今でも誘拐の危険はあるのだが、幸いバレている能力や資産程度では、三英雄に盾突いてまで欲しいかというとそうではなかった。
だが、【転移】が使えるとなると、話が変わってくる。
大博打を打ってみようかと思う輩は確実に増える。
ましてやGRスキル持ちとバレたら、誘拐犯として出て来る相手は国家だ。
GRスキルには戦争をしてでも奪う価値があるのだ。

 グリーンバレーの鉱山に行くならば、護衛のニクとサキの同行は決定だった。
そうなると、このガーディアの街で居留守を使うための人員が誰も居なくなってしまう。
HNオーブを仕入れるだけならカナタ1人がヨーコチームを【転移】で運べば良いのだが、彼女たちにはまだ鉱山の奥深くまで行く実力がなく、さすがに魔宝石採取を任せるわけにはいかなかった。
さらに、ヨーコチームが居なくなることで、例のお店の護衛不足問題が再燃してしまう。

ここガーディアの留守番は、誰か1人をこっちに呼べばどうにかなるか。
だけど護衛不足はそろそろ解消しないといけないな」

 またカナタには別の逼迫した問題があった。

「それと音声通信機量産化の手助けが必要だ。
1000台なんて僕1人じゃ手に余る。
ここは秘密を守れる従業員として奴隷を雇うしかないか……」

 この世界には契約魔法というものがあった。
契約を破れば自動的に対価が支払われることとなる魔法だ。
守秘義務を課し、契約魔法で縛れば、ある程度の機密保持は出来る。
極端な例では機密漏洩の対価に命を要求することも可能だった。
しかし、最初から機密情報を盗むつもり、つまり契約魔法により死んでもかまわないという者が入り込み、堂々と契約魔法に違反すれば機密情報は盗めてしまう。
その対価が命であっても、命を捨てる覚悟があれば良いだけなのだ。

 その点、奴隷に課す隷属魔法は、完全な機密保持が可能だった。
隷属魔法は行動や意思自体を縛ることが出来るのだ。
丁稚奉公レベルの契約奴隷でも隷属魔法が課せられるのは、逃亡を防ぐという意味合いが強かった。
何も契約違反で死んでもらおうというわけではないのだ。

 ちなみに雇用任期開けで解放された後に秘密を漏らせるのではという懸念があるが、そこは隷属魔法を解除する時に任意で記憶の消去が可能だった。
あくまでも奴隷は労働力の提供であり、そこで得たノウハウなど雇用側が漏らしたくない情報は消すことが出来た。
そこが人権を一部制限される奴隷と一般の従業員の差だった。

 尤も、そこまで長く働いた奴隷は、そのまま従業員として雇用され続けたり、雇用主に恩義を感じていたりで、普通は秘密を漏らすようなことはまずない。
漏らされるような雇用主は、よっぽど酷い扱いをしたということなのだろう。

 なのでカナタは隷属契約により口が堅い奴隷を雇おうと思ったのだ。
だが、カナタの場合は信義云々ではなく、雇用任期開けでGRスキルや【転移】を持っていることは漏らしてもらっては拙かった。
この記憶は消されても仕方がないといえる事案だろう。


◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇


「そこは私の出番ね」

 留守番が必要だし、【転移】の携行人数も増えたことだし、もう一人連れを増やすことになったカナタは、グラスヒルの屋敷で誰を連れて行こうかと皆に希望を訊ねていた。
するとララが真っ先に立候補した。

「留守番は誰でも良いだろうけど、奴隷商への同行は交渉担当の私の仕事よ?」

 いつ交渉担当になったんだとカナタは突っ込みそうになったが、そういえばララは秘書役をしていた時期があったなとカナタは思いだした。
カナタがウルティア国遠征に向かったために、最近は秘書役をすることが無かったが、この絶好の機会に張り切るのは当然のことかもしれなかった。

「ララが抜けてお店が大丈夫なら良いけど?」

「確かに……。私が抜けたらお店が……」

 ララはガチャ屋の店長代理でもあった。
余剰人員とは言えないのだ。

「獣車が手に入る前は私だった」

 ルルがここぞと立候補する。

「ガチャ屋店長代理のララ、屋敷の調理担当のカリナ、お店の護衛担当のレナとユキノ、姫で一人にするのは拙いキキョウを除けば確かにルルしか居ないか」

 カナタがルルで決まりかと思っていると、もう一人が手を挙げた。

「ちょっと、私を忘れてない?」

「あー、ヨーコがいたか」

「いたかじゃないわよ!
私の仕事は週一のハズレオーブ回収だから、それ以外は基本フリーなんだからね?」

 ハズレオーブの回収は重要任務だからヨーコを除外していたけど、確かに毎日ある仕事ではない。
だが、ルルもハズレオーブの買い取り業務がギルド委託になって専属の仕事がない。
まあ今もルル目当てで個人で売りに来る冒険者がいて対応しているようだけど、ギルドとの兼ね合いでそろそろ止めさせた方が良さそうだった。

「ヨーコにはグリーンバレーでやってもらいたい任務があるから無しね。
やっぱりルルを連れて行くよ」

 こうして留守番兼ウルティア国遠征要員として再度ルルが旅に同行することになった。

「ちょっと! 奴隷商へは私が同行するんだからね?
後でお店に戻してもらえばいいでしょ?」

 ララが奴隷商に同行することが強引に決まった。
カナタが簡単に【転移】出来るのも考えものだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います

ゆさま
ファンタジー
ベテランオッサン冒険者が、美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされてしまった。生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれて……。 懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?

九尾と契約した日。霊力ゼロの陰陽師見習いが大成するまで。

三科異邦
ファンタジー
「霊力も使えない。術式も出せない。 ……西園寺玄弥、お前は本当に陰陽師か?」 その言葉は、もう何度聞いたか分からない。 霊術学院の訓練場で、俺はただ立ち尽くしていた。 周囲では炎が舞い、水がうねり、風が刃のように走る。 同年代の陰陽師たちが、当たり前のように霊を操っている。 ――俺だけが、何もできない。 反論したい気持ちはある。 でも、できない事実は変わらない。 そんな俺が、 世界最強クラスの妖怪と契約することになるなんて―― この時は、まだ知る由もなかった。 これは―― 妖怪の王を倒すべく、九尾の葛葉や他の仲間達と力を合わせて成長していく陰陽師見習いの物語。

『冒険者をやめて田舎で隠居します 〜気づいたら最強の村になってました〜』

チャチャ
ファンタジー
> 世界には4つの大陸がある。東に魔神族、西に人族、北に獣人とドワーフ、南にエルフと妖精族——種族ごとの国が、それぞれの文化と価値観で生きていた。 その世界で唯一のSSランク冒険者・ジーク。英雄と呼ばれ続けることに疲れた彼は、突如冒険者を引退し、田舎へと姿を消した。 「もう戦いたくない、静かに暮らしたいんだ」 そう願ったはずなのに、彼の周りにはドラゴンやフェンリル、魔神族にエルフ、ドワーフ……あらゆる種族が集まり、最強の村が出来上がっていく!? のんびりしたいだけの元英雄の周囲が、どんどんカオスになっていく異世界ほのぼの(?)ファンタジー。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

処理中です...