父親が呪われているので家出してガチャ屋をすることにしました

北京犬(英)

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南部辺境遠征編

119 カナタ、職人を雇う

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 新しい工房区画を創ると同時にカナタは自分たちの工房を中央通り沿いの正に中心地に建てた。
5×5で区画割りされたど真ん中とその西側の2区画分だ。
道は旧城壁に開けた門から外門まで南北に縦断する馬車3台分の中央通りと、それと並行して馬車1台分の通りが東1区画向こうに1本、西2区画向こうに1本あった。
東西を横断する道は3区画目に馬車2台分の大通りがあり、その他区画ごとに馬車1台分の通りが3本走っていた。

 つまり、カナタの工房区画は中央通りと東で、大通りと南で接する角地だった。
しかも、2区画繋げて使えるのは、中央通り西側にある5区画のみだった。
カナタはここに新たな工房兼拠点を手に入れたのだった。
工房はカナタの土魔法と錬金術であっと言う間に建てることが出来た。
デザインや間取りはカナタの独断だが、後で文句を言われても簡単に直せるので問題はなかった。

「さて、ここらでララを迎えに行かないと、また怒られるな」

 カナタは奴隷商へ行くと言ってララをガーディアに連れて来たのに、その役目を果たせないままグラスヒルの屋敷に送り返していた。
彼女はガチャ屋の店長代理でもあるので、この区画が完成するまでやることも無く連れまわすわけにはいかなかったのだ。
代わりに連れて来たルルもただのお留守番であり、ガーディアには観光の目玉があるわけでもないので暇を持て余し、グラスヒルに帰って行った。
「オレンジタウンのスイーツが食べたかった」とルルには珍しい長文の愚痴を言いながら……。
カナタが慌ててオレンジタウンでスイーツを購入して屋敷の冷蔵庫に補充することになったのは言うまでもない。
まあ、毎日転移でグラスヒルの屋敷とは行き来していたので、ララとルルもそれに付いて来たり帰ったりとしていたわけだが。

 今日はいよいよ奴隷商へと向かう日だった。
工房区画を作らされるはめになって数日後、本来の目的が達成出来ないとゴネたカナタに、辺境伯が奴隷商に人材確保の要請をしてくれていた。
その奴隷たちを紹介してもらえるのが今日だった。
なのでララをまた連れて来なければ、怒られてしまうのだ。

 カナタは【転移】でサクッとララを連れて来ると辺境伯に紹介された奴隷商へとやって来た。
準備期間が1週間以上もあったため、ライジニアからも奴隷を連れてきてくれたそうだ。
期待に胸を膨らませてカナタはララを加えたいつもの4人で奴隷商の中に入った。

「ようこそお越しくださいました。
ささ、こちらへどうぞ」

 さすが辺境伯の紹介、カナタたちはVIP待遇でお店に通された。
そこは豪華な調度品の揃った舞台付きの応接室で、普段なら貴族を通す部屋だった。
いや、カナタは書類上は男爵に叙爵された貴族家当主で合っているのだが、いかんせん見た目が7歳児程度に見える子供だった。
その子供を恭しく案内するのだから、余程辺境伯の紹介が利いているのだろうとカナタは思っていた。
実際はカナタがこのガーディアの街を魔物の脅威から救った第2武功賞だという噂を聞いての扱いなのだが、知らぬは本人ばかりだった。

閣下ライジン辺境伯からお話は伺っております。
家具や木工の職人と魔導具加工のできる錬金術師、それと戦闘奴隷をお求めだとか。
領都ライジニアからも選りすぐりを集めて来ましたので、どうぞお品定めください」

 話が通っていて何の説明も必要でなくとても楽だとカナタは喜んだ。

「まずは家具、木工職人から」

 舞台に次々と奴隷が連れて来られた。
合計10人。なぜか全員が女性だ。

「男はいないの?
腕が良ければ男でも良いんだけど」

 カナタがそう言うと奴隷商は驚愕した顔になり慌てだした。

「おい、女性がお望みだって話じゃなかったのか?」

 何やら小声で番頭に確認を取っているが、全部聞こえていた。
どうやら話がきちんと伝わっていなかったようだ。

「申し訳ございません。
男性も見繕って参りますが、あまり状態がよろしくございませんのでご了承を」

 そう言って連れて来られたのはアル中ぎみの酒臭いドワーフと片腕を失ったドワーフだった。
奴隷なのに酒が飲めるとは、さすが人材派遣業的な奴隷制度だとカナタは感心した。
そして合計12人の候補が舞台に立つことになった。

「左から4人が木工職人で、その他6人が家具職人のジョブ持ちです。
ドワーフの2人は鍛冶師のジョブですが、家具製造のスキルがあります」

 カナタはこの前手に入れたばかりの【鑑定】スキルを使って奴隷たちのステータスを見た。
女性たちは全員関連ジョブでスキル持ちだった。
だがドワーフの2人は、見た目でもわかっていたアル中の状態異常と部位欠損が示されていた。

「女性は甲乙付けがたいかも。
一人ちみっ子がいるけど、ドワーフなのね」

 このドワーフのちみっ子は掘り出し物だった。
家具職人のジョブだが、鍛冶見習いのスキルがあった。
ゆくゆくは鍛冶工房を任せられるかもしれない。

「とりあえずこの子は決定で」

 カナタは1人目をドワーフのちみっ子に決め、そう口にした時にふと気付いた。
このドワーフのちみっ子の氏族名と部位欠損のドワーフの氏族名が一緒だった。

「もしかして、この子とこのドワーフは家族?」

「良くわかりましたね。
怪我がもとで借金奴隷となりましたが、元は優秀な職人だったようです。
片腕が無くとも指導役にはなりましょう。
孫もその巻き添えで奴隷になったくちでございます」

 部位欠損ならカナタはエクストラポーションを持っているので治せる。
それだけの価値がドワーフの爺さんにあるのかはわからないが、カナタは家族の絆に弱かった。
孫と離れ離れは辛いだろう。

「元は優秀な職人というところに賭けるか。
じゃあ、こっちのドワーフも決定で」

「おい、こんな片腕を雇うなら俺を雇え!」

 もう一人の酔っぱらいドワーフが声を上げた。
奴隷商で奴隷の方からアピールするのはあまりマナーの良くない行為だった。
奴隷商が慌てて諫めようとしたが、ドワーフは構わずにアピールを続ける。

「俺を酔っぱらいと侮るなよ?
俺は酒が入れば入るほど腕が良くなる。
それがドワーフってもんなんだが、わからない奴が多くてな。
もっと飲ませろと言ったんだが、飲ませてもらえなくてな。
仕事が減ってこんなことになった」

「(腕が良いなら酔っていても仕事は来るだろう
でもそうでないということは……)
僕がお酒の匂いがダメだから残念です」

 カナタは酔っぱらいドワーフを断った。
となると必然的に女性から選ぶことになるのだが、ほぼ同列で甲乙つけがたかった。
カナタが悩んでいると、美人秘書のつもりのララが無い眼鏡をキリっと上げて口を開いた。

「ご主人さまは、美人がお望みです」

 ララがとんでもないことを言い出した。
まさか女性限定はララの指図かもしれなかった。

「この人とこの人とこの人に決めます。
今後も事業は拡大されることでしょう。
今回はご縁がありませんでしたが、その時売れ残っていたら他の6人も買うことになるかもしれません」

 カナタが唖然としている隙にララが勝手に美人順で3人を選出した。
まあ、そこでしか序列をつけられなかったのは事実で、ララは憎まれ役をやってくれたのかもしれなかった。
いや、カナタが美人好きだとカナタをだしにしているから逆か……。
しかし、おかげですんなり家具木工職人5人が決まった。

「続いて錬金術師ですが、申し訳ございません。
1人しか見つかりませんでした。
しかも条件が悪すぎますので、あまりお勧めできません」

 才能ある錬金術師ならば、何かトラブルがあって奴隷落ちしそうでも、いくらでも救済するパトロンが現れて奴隷落ちするようなことはない。
職業としては花形であり、給料も良いので借金で首がまわらなくなるということにも成り難い。
犯罪奴隷でもない限り、滅多に出物があるわけがなかったのだ。
錬金術師として見習いであっても、奴隷とはならずにいくらでも就職先があった。

「その悪い条件とは?」

 聞いてみなければわからないのでカナタは先を促した。

「はい。錬金術実験の事故で両腕を失い顔にやけどを負っています。
エクストラポーションを使えば復帰可能ですが、それをするだけの価値がないと見なされました」

 カナタは思った。エクストラポーションを使う価値がないとはどういうことなのだろうと。
普段なら奴隷商がお勧めしないような奴隷を雇おうとは思わないのだが、なんだか気になってしまい訊ねた。

「なぜ価値がないと?」

「それは、変な研究ばかりして仕事をしないのです。
奴隷になった今でも平気で命令を破ります」

「命令に抗えるんだ……」

 とんでもない変人だった。
だが、音声通信機には、魔力導線の配線などの錬金術を必要とする作業がある。
量産化のためにはどうしても錬金術師は必要なのだ。

「とりあえず、会わせてもらえますか?」

 カナタはその錬金術師に興味が湧いて面会だけはしようと思った。
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