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南部辺境遠征編
120 カナタ、マッドサイエンティストに会う
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「何? 私を買いたいだなんて、貴族の変態坊ちゃんなの?
こんな身だから、身体ぐらいしか使い道はないよ?」
錬金術師は10代後半に見える若い女性だった。
顔には大きな火傷痕、両腕は手首の先から無くなっていた。
その女性はやさぐれた態度で悪態をついていた。
カナタは女性に危険な印象を持ったが、錬金術師がどうしても必要なので、働く気があるのか訊ねてみることにした。
「錬金術師として魔導具工房で働いてくれるなら、エクストラポーションを用意する。
働く気がある?」
カナタの問いかけに、女性は目を見開き食いつくように答えた。
「働く、働く。だから直ぐ治してよ」
その勢いは尋常なものではなかった。
そこに女性をじっくり観察していたララが口を挟んだ。
「嘘ね。働く気なんかないわ」
「え? そうなの?」
カナタは世間知らずなところがあるので、素直に信じ込むところだった。
カナタは人生のほとんどをベッドで寝た切りで過ごしており、そこでの知識は本によるものしかなかった。
勇者の身体を得て1年、やっとまともに動き回れるようになったところで、いきなり家の外に放り出された。
そんなカナタが世間を知り尽くしているわけがなかった。
カナタに従う女性たちも、姫という世間知らずから、学校もなくまともな教育を受けられない庶民まで勢ぞろいなので、常識という観点からはかけ離れていた。
そんな環境なので、カナタの世間知らずはまだまだどこで出て来るかわからなかった。
まあ、最近はライジン辺境伯という幾分まともな大人と接しているので、次第に改善されるかもしれなかったが。
「女はいくらでも嘘をつくものよ?」
それはカナタには禁句だった。信じてしまって女性不審になりかねない。
この中世ヨーロッパぐらいの文明度の世界ではデマで魔女狩りだって起こり得るのだ。
尤も、ララには確信があった。
カナタに隠れて女性が舌を出したのを目撃したのだから。
女性はララの指摘に「チッ」と舌打ちをして悪い顔になった。
「嘘なんだ。
じゃあ、治ったら何がしたいの?
そのやりたいことのために仕事をする気はないの?」
カナタはあくまでも真っ直ぐだった。
その純真な目に当てられた女性は、バツが悪そうに眼を晒すと目的を話しはじめた。
やさぐれていても案外素直だった。
「研究よ。
いつか私はこの世界で電話を実現させたいの。
携帯の無い世の中なんて耐えられないのよ!」
この女性、異世界転生者だった。
ずっと世間との疎外感に悩んでいて、精神の拠り所を携帯電話の実現に委ねてしまっていた。
一方カナタは知らないはずの単語を聞かされたのだが、多田野信の知識ですんなり理解出来てしまっていた。
何より電話という単語を理解してくれる唯一の存在に出会い喜んだ。
「それは今回の仕事につながるものなんだけど?
僕は音声通信機と呼んでいる魔導電話を創ったんだよ」
女性の首が勢いよくカナタの方を向いた。
そして狂気の浮かんだ目でブツブツと呟きはじめた。
「そうか……、何もリチウムイオン電池をつくる必要はなかったんだ。
ここは魔法世界……。魔法でどうにかすれば良かったんだ」
どうやらリチウムイオン電池を作ろうとして爆発事後を起こしたということらしい。
いきなりそれはないだろう。
地球でも巨大な無線機から固定電話、巨大なショルダーフォンを経てやっと手のひらサイズの携帯電話になったのだ。
まさか、いきなりスマートフォンを作ろうとしていたのだろうか?
カナタもララもその様子にドン引きした。
そして、この女性は危険だという認識で一致した。
カナタの脳裏には知らないはずの「マッドサイエンティスト」という単語が浮かんでいた。
「やる。仕事をやるから魔導電話に関わらせて!」
その目は真剣そのものだった。
そこには本気で仕事をするという意欲が感じられた。
「ご主人さま、どうするの?」
「魔道電話の存在を知られたからには、例え彼女が他に売られたとしても、この後ずっと粘着されると思う。
ならばうちで雇った方が得策かもしれない」
カナタはこの女性を雇うことにした。
ただし、条件をつけて。
その条件とは、終身奴隷ということと仕事第一の厳守だった。
ただ、ガス抜きをしないとどうなるかわからなかったので、仕事さえすれば少しは研究も認めるという飴も与えるものだった
「やる。喜んでやる」
女性の名はヒナというキラキラネームだった。
それはこの世界の両親に付けられた名前ではなく、前世の名前だった。
お婆さんになった時にその名前は……と密かに思われている流行りの名前だが、本人はお気に入りだった。
彼女が真面目に働くと決意した理由は研究のことはもちろん、電話や携帯という単語を理解するカナタを同じ異世界転生者の仲間だと認識したからだった。
この世界で話しが通じるというのは貴重な存在であり、彼女の疎外感を埋めるものだったのだ。
「本っ当によろしいのですか?」
奴隷商から再三の確認を受けたが、カナタのヒナを買う意志は変わらなかった。
何よりヒナの錬金術のレベルは隠蔽されていたのだが勇者級だったのだから。
おそらく奴隷商も本当の能力を把握していない。
「次は戦闘職をお願いします」
「わかりました」
奴隷商はカナタの意志が固いとわかると説得を諦めることにした。
だが「返品不可ですからね」と付け加えることを忘れなかった。
どれだけ迷惑を受け続けたのだろうか?
こんな身だから、身体ぐらいしか使い道はないよ?」
錬金術師は10代後半に見える若い女性だった。
顔には大きな火傷痕、両腕は手首の先から無くなっていた。
その女性はやさぐれた態度で悪態をついていた。
カナタは女性に危険な印象を持ったが、錬金術師がどうしても必要なので、働く気があるのか訊ねてみることにした。
「錬金術師として魔導具工房で働いてくれるなら、エクストラポーションを用意する。
働く気がある?」
カナタの問いかけに、女性は目を見開き食いつくように答えた。
「働く、働く。だから直ぐ治してよ」
その勢いは尋常なものではなかった。
そこに女性をじっくり観察していたララが口を挟んだ。
「嘘ね。働く気なんかないわ」
「え? そうなの?」
カナタは世間知らずなところがあるので、素直に信じ込むところだった。
カナタは人生のほとんどをベッドで寝た切りで過ごしており、そこでの知識は本によるものしかなかった。
勇者の身体を得て1年、やっとまともに動き回れるようになったところで、いきなり家の外に放り出された。
そんなカナタが世間を知り尽くしているわけがなかった。
カナタに従う女性たちも、姫という世間知らずから、学校もなくまともな教育を受けられない庶民まで勢ぞろいなので、常識という観点からはかけ離れていた。
そんな環境なので、カナタの世間知らずはまだまだどこで出て来るかわからなかった。
まあ、最近はライジン辺境伯という幾分まともな大人と接しているので、次第に改善されるかもしれなかったが。
「女はいくらでも嘘をつくものよ?」
それはカナタには禁句だった。信じてしまって女性不審になりかねない。
この中世ヨーロッパぐらいの文明度の世界ではデマで魔女狩りだって起こり得るのだ。
尤も、ララには確信があった。
カナタに隠れて女性が舌を出したのを目撃したのだから。
女性はララの指摘に「チッ」と舌打ちをして悪い顔になった。
「嘘なんだ。
じゃあ、治ったら何がしたいの?
そのやりたいことのために仕事をする気はないの?」
カナタはあくまでも真っ直ぐだった。
その純真な目に当てられた女性は、バツが悪そうに眼を晒すと目的を話しはじめた。
やさぐれていても案外素直だった。
「研究よ。
いつか私はこの世界で電話を実現させたいの。
携帯の無い世の中なんて耐えられないのよ!」
この女性、異世界転生者だった。
ずっと世間との疎外感に悩んでいて、精神の拠り所を携帯電話の実現に委ねてしまっていた。
一方カナタは知らないはずの単語を聞かされたのだが、多田野信の知識ですんなり理解出来てしまっていた。
何より電話という単語を理解してくれる唯一の存在に出会い喜んだ。
「それは今回の仕事につながるものなんだけど?
僕は音声通信機と呼んでいる魔導電話を創ったんだよ」
女性の首が勢いよくカナタの方を向いた。
そして狂気の浮かんだ目でブツブツと呟きはじめた。
「そうか……、何もリチウムイオン電池をつくる必要はなかったんだ。
ここは魔法世界……。魔法でどうにかすれば良かったんだ」
どうやらリチウムイオン電池を作ろうとして爆発事後を起こしたということらしい。
いきなりそれはないだろう。
地球でも巨大な無線機から固定電話、巨大なショルダーフォンを経てやっと手のひらサイズの携帯電話になったのだ。
まさか、いきなりスマートフォンを作ろうとしていたのだろうか?
カナタもララもその様子にドン引きした。
そして、この女性は危険だという認識で一致した。
カナタの脳裏には知らないはずの「マッドサイエンティスト」という単語が浮かんでいた。
「やる。仕事をやるから魔導電話に関わらせて!」
その目は真剣そのものだった。
そこには本気で仕事をするという意欲が感じられた。
「ご主人さま、どうするの?」
「魔道電話の存在を知られたからには、例え彼女が他に売られたとしても、この後ずっと粘着されると思う。
ならばうちで雇った方が得策かもしれない」
カナタはこの女性を雇うことにした。
ただし、条件をつけて。
その条件とは、終身奴隷ということと仕事第一の厳守だった。
ただ、ガス抜きをしないとどうなるかわからなかったので、仕事さえすれば少しは研究も認めるという飴も与えるものだった
「やる。喜んでやる」
女性の名はヒナというキラキラネームだった。
それはこの世界の両親に付けられた名前ではなく、前世の名前だった。
お婆さんになった時にその名前は……と密かに思われている流行りの名前だが、本人はお気に入りだった。
彼女が真面目に働くと決意した理由は研究のことはもちろん、電話や携帯という単語を理解するカナタを同じ異世界転生者の仲間だと認識したからだった。
この世界で話しが通じるというのは貴重な存在であり、彼女の疎外感を埋めるものだったのだ。
「本っ当によろしいのですか?」
奴隷商から再三の確認を受けたが、カナタのヒナを買う意志は変わらなかった。
何よりヒナの錬金術のレベルは隠蔽されていたのだが勇者級だったのだから。
おそらく奴隷商も本当の能力を把握していない。
「次は戦闘職をお願いします」
「わかりました」
奴隷商はカナタの意志が固いとわかると説得を諦めることにした。
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