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南部辺境遠征編
121 カナタ、臣下を得る
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「それでは、ご紹介します。
戦闘スキルを持つ奴隷はこちらになります」
目の前の舞台にはまた10人の女性が並んだ。
確かにカナタが屋敷の護衛役は女性限定でと頼んだのだが、何も全員がまた女性ばかりでなくてもと思っていた。
工房には男のドワーフも雇ったので、そちらならば男の護衛役でも有りだったのだ。
女性を護衛役とすると、アホな犯罪者は嘗めて調子に乗る場合が多い。
自分の方が体格も体力的にも上だと、上から人を見ようとする心理が働くのだ。
実際、基本的には身体能力的な差が出るのは事実だった。
しかし、この世界ではジョブとスキルによりその優劣は簡単に逆転する。
女性だと嘗めてかかるからこそアホな犯罪者となるのだ。
尤も、女性で恵まれたジョブやスキルを持ち、わざわざ冒険者や騎士となる者は割合が少なく、希少であるがためにお値段は男と比較して高くなる傾向があった。
「男性はいないんだね。
工房の方は男のドワーフもいるから男でも良いんだけど?」
カナタの一言でまた男の奴隷が集められた。
しかし、またなぜか奴隷商は条件のよろしくない奴隷が多いと言う。
「申し訳ございません。
男の戦闘職の奴隷は戦争奴隷と傷痍による借金奴隷が多ございまして……」
別にカナタは戦争を起こす兵を雇いたいわけではない。
そこまで戦闘力のある奴隷でなくても構わないのだが……。
戦争奴隷とは、戦に負けて戦争捕虜となった者が、勝った国によって奴隷とされて売られた者たちだった。
このメルティーユ王国が戦争をして手に入れたわけではなく、他国で奴隷となった者が外貨獲得で売られたという経緯を持った奴隷だった。
「戦争奴隷って、どれだけ献身的に働いてもらえるの?
当たり前だけど、無理やり奴隷にされているから、奴隷の身でいるのは嫌なんだよね?
もし戦勝国の人とたまたま遇ったら隷属魔法を振り切って暴れたりしない?」
「……そんなことは、……無いはずです」
奴隷商も口ごもり、歯切れが悪かった。
命がけなら奴隷でも契約を破りかねないということだろうか。
隷属契約は行動を縛れるはずだったのだが。
「なんだか、可愛そうで縛りつけたくないな」とカナタは思ってしまった。
能力は高そうだが、戦争奴隷は止めにした。
「次は借金奴隷ですが」
戦争奴隷が退室すると、奴隷商は借金奴隷の説明をしだした。
借金奴隷に在りがちな怠惰な生活で自ら身を持ち崩したタイプはここには選ばれていなかった。
怪我や部位欠損により戦士としては第一線を退いたというタイプが数多く並んでいた。
片腕が無い、足を引きずっているなど、エクストラポーションを使えば治る者ばかりだった。
彼らは売値とジョブとスキルとレベルのアピールが書かれた札を首から下げていた。
「うーん、高いね。ここまで強かった人はいらないんだよね。
わざわざエクストラポーションを使うとなると、500万DG以上が上乗せだよね?」
カナタは誤解していた。
「(そこまで強いから奴隷落ちしてまでエクストラポーションを使いたいのですよ)」
奴隷商はそう思ったのだが、微笑ましそうな顔でスルーした。
男の奴隷は元々売る予定ではなかったのだから。
「彼らは、今回の魔物の討伐で不幸にも怪我をしてしまった者たちです。
奴隷落ちになったのも、その金で自らエクストラポーションを手に入れるためなのですよ」
つまり売れたと同時に彼らは自らエクストラポーションを手にするということだった。
なので、500万DGは元から値段に入っていて、その奴隷契約期間は怪我がない前提で査定されているのだった。
その価格分、彼らは奴隷期間中ずっと雇い主の下につくことになる。
「それならお買い得と言えばお買い得だね。
でも、さすがにここまで強い人は工房の護衛には過剰かな?」
結局カナタは女性の戦闘奴隷から選ぶこととなった。
「こちら、クエスト失敗で違約金が払えず、借金奴隷となった戦士です」
カナタが【鑑定】をかけると、戦士ジョブで剛剣スキル持ちだったが、レベルが6と低めだった。
お手頃価格で警備には向いているが、そのレベルではアホ冒険者の対応は無理かもしれなかった。
カナタはあるアイデアを使えばどうにかなりそうだと思っていたが、決定打に欠けていて悩んでしまっていた。
カナタの反応が弱いと察した奴隷商は次の奴隷の紹介に移った。
「次は犯罪奴隷です。
貴族に無礼をはたらいたとのことで奴隷落ちとなっています。
内緒ですが、その嫌疑には疑問もあり、密かに重罪を免れ此処へと来ました」
カナタは顔を顰めた。
冤罪で奴隷落ちとされた可能性が高い女性なのだ。
この世界、貴族の特権で相手が庶民だと犯罪捜査がおざなりになる場合があった。
カナタに絡んだアホ貴族などもそのような手合いだったのだ。
幸いカナタが貴族の子弟なので難を逃れられたが、庶民だとまともな裁判すら無い場合があった。
特に領主が領民相手となると悲劇が起こる確率は跳ね上がった。
どうしようもない貴族はこの世界には多々いるのだ。
この世界、学校のような人を一か所に集めて教育するような機関は存在していない。
全ては親の責任において教育がなされ、多くは個人向けの家庭教師が雇われて教育を司る。
その親によってはまともな教育が為されない場合があった。
貴族の特権意識でプライドのみが増長し、まともな人としての教育が行き届いていなくても、その生まれによって貴族と扱われてしまうのだ。
カナタの常識知らずも10年に及ぶ長年の寝たきり生活によるものだった。
教育しようにも寝たきりだったので限界があり、カナタには情操教育が優先された。
やっと起きられて学ぶ事が出来たにしても、カナタは起きてまだ1年しか経っていないのだ。
だが、カナタは人間性という面では、貴族としてはまともな教育を受けて来た方だと言える。
この冤罪女性のジョブは剣士、スキルは平凡な剣技スキル、レベルも低く良い所が何もないが、カナタの同情票は集まっていた。
カナタにはあるアイデアがあった。
【鑑定】のスキルが上がれば、ガチャオーブの中身の系統がわかるようになるのだ。
これは当たりハズレはあるが中身がほぼ推測できるということを意味していた。
そうなると、スキルオーブも開ける前に中身のスキル系統を知ることが出来るということ。
携帯ガチャ機は自動開放にしなければオーブのままで排出される。
そのスキルオーブを【鑑定】して誰かに渡せば任意のスキル系統を覚えさせることが出来るのだ。
その中身は本人の幸運値により変動するが、系統を特定できるのは強みだった。
これはカナタが父アラタから買い与えられたスキルオーブの仕組みと同じだった。
スキルガチャを引いてオーブを【鑑定】し、必要なスキル系統を持つオーブを任意の人物に与えて覚えさせる。
つまり自分たちで使うこともあるが、スキルオーブを販売することも出来るのだ。
ガチャ屋として新たな商売の元となるはずだった。
「でも、まだ(【鑑定】が)そのレベルに達してないんだよな……」
カナタは独り言ちた。
それを奴隷商は奴隷の見極めの話ととって次に移ることにした。
「続けてこちら。傭兵になります。
その契約の理念は決して主人を裏切らない事。
そのため奴隷契約での隷従も辞さないと、このような形となっております」
変わり種だった。
決して裏切らない傭兵とは面白い女性だった。
「決定」
カナタは即決した。
奴隷商は傭兵を横によけると次の紹介に移った。
「次は先の魔物討伐で怪我をした騎士です。
アフオ男爵領の騎士として従軍していたのですが、男爵を庇って大けがを負ってしまったとのことです。
しかしその結果解雇され捨てられた形です」
女性騎士は利き腕の右腕を失っていた。
そのままでは当然騎士として働くことは出来ない。
カナタは、主人のために傷を負ったなら傷を治してあげても良いだろうと憤った。
「あのアフォか!」
「ご主人さま、少し違うw」
思わずララが突っ込みを入れたが、顔が笑っている。
この惨い仕打ちの張本人は、あのカナタには嫌な思い出のあるアフオ男爵なのだ。
「彼女の借金は男性の傷痍奴隷と同じ理由ですね」
能力は申し分ないが、自ら借金をしないと傷を治してももらえなかったということだった。
部下が自分のために怪我をしたというのに、どれだけ人を不快にする人なんだろうとカナタは腹を立てた。
「怪我が治って奴隷任期が明けたらどうするの?
アフォ男爵の元に戻る?」
カナタは女性騎士に問いかけた。
その答え次第ではエクストラポーションをタダで渡すつもりだった。
「いいえ、あの男のことは見限りました。
カナタ様の勇姿は戦場で拝見いたしました。
どうか配下にお加えください。
このラキス、一生お仕えいたします」
その言葉には一辺の偽りもなさそうだった。
カナタがララの顔を伺うと、ララも頷いていた。
ララも問題ないということだろう。
「わかった。ラキスは決定。
これを使うと良い」
カナタはエキストラポーションを【ロッカー】から取り出すとラキスに与えた。
利き腕の右腕を失っていたラキスは涙を流しながらエクストラポーションを左手で受け取り胸に抱えた。
「よろしいのですか?」
その一連の出来事に奴隷商も驚いていた。
これでラキスは奴隷落ちしてまでした借金を必要としなくなったのだ。
つまり借金分を即日返済して奴隷から開放も可能なのだ。
「カナタ様に一生お仕えします」
ラキスはカナタに臣下の礼をとった。
カナタが領地を得て名実ともに男爵となった暁には臣下第一号となるだろう。
だが、これで護衛役の人選はほぼ振り出しに戻った。
ラキスはお店や工房の護衛ではなくカナタの直属となってしまったからだ。
「ラキスの奴隷契約は白紙に戻しましょう」
奴隷商がその意を汲んで宣言すると、次の奴隷を紹介する。
他6人を奴隷商は紹介したが、どれも似たり寄ったりの普通の戦闘職だった。
「この人とこの人とこの人ね」
悩むより美人から。ララがまた全てを決めた。
予定より人数が多く5人になったが、ラキスは臣下なので店舗と工房の護衛の数には入らない。
そしてそのララが選んだ3人の中にはカナタが同情した冤罪と思われる女性が含まれていた。
カナタは値段をあまり気にせず、職人5人、錬金術師1人、護衛4人の合計10人の奴隷を雇った。(ここに臣下となったラキスは入っていない)
しかし、カナタには辺境伯に音声通信機5台を売った1億5千万DGがあったので、支払いには何の問題もなかった。
この中で高かったのは傭兵だけで、他は部位欠損があったり能力が比較的低いこともありカナタには安い方だった。
特にヒナは厄介払いもあって錬金術師にしては破格だった。
尤もカナタの感覚にある奴隷の相場は、何をしても良いオールオッケーな奴隷の相場なので高すぎだったのだが……。
隷属魔法をかけてもらったカナタはラキス含めた11人とニク、サキ、ララを連れて奴隷商を後にした。
この後恒例の私物購入を行ったのは言うまでもない。
そしてとりあえず全員を工房の宿舎へと連れて行くのだった。
後にラキスへのアフオ男爵の仕打ちを耳にしたライジン辺境伯が大激怒したのは別の話。
戦闘スキルを持つ奴隷はこちらになります」
目の前の舞台にはまた10人の女性が並んだ。
確かにカナタが屋敷の護衛役は女性限定でと頼んだのだが、何も全員がまた女性ばかりでなくてもと思っていた。
工房には男のドワーフも雇ったので、そちらならば男の護衛役でも有りだったのだ。
女性を護衛役とすると、アホな犯罪者は嘗めて調子に乗る場合が多い。
自分の方が体格も体力的にも上だと、上から人を見ようとする心理が働くのだ。
実際、基本的には身体能力的な差が出るのは事実だった。
しかし、この世界ではジョブとスキルによりその優劣は簡単に逆転する。
女性だと嘗めてかかるからこそアホな犯罪者となるのだ。
尤も、女性で恵まれたジョブやスキルを持ち、わざわざ冒険者や騎士となる者は割合が少なく、希少であるがためにお値段は男と比較して高くなる傾向があった。
「男性はいないんだね。
工房の方は男のドワーフもいるから男でも良いんだけど?」
カナタの一言でまた男の奴隷が集められた。
しかし、またなぜか奴隷商は条件のよろしくない奴隷が多いと言う。
「申し訳ございません。
男の戦闘職の奴隷は戦争奴隷と傷痍による借金奴隷が多ございまして……」
別にカナタは戦争を起こす兵を雇いたいわけではない。
そこまで戦闘力のある奴隷でなくても構わないのだが……。
戦争奴隷とは、戦に負けて戦争捕虜となった者が、勝った国によって奴隷とされて売られた者たちだった。
このメルティーユ王国が戦争をして手に入れたわけではなく、他国で奴隷となった者が外貨獲得で売られたという経緯を持った奴隷だった。
「戦争奴隷って、どれだけ献身的に働いてもらえるの?
当たり前だけど、無理やり奴隷にされているから、奴隷の身でいるのは嫌なんだよね?
もし戦勝国の人とたまたま遇ったら隷属魔法を振り切って暴れたりしない?」
「……そんなことは、……無いはずです」
奴隷商も口ごもり、歯切れが悪かった。
命がけなら奴隷でも契約を破りかねないということだろうか。
隷属契約は行動を縛れるはずだったのだが。
「なんだか、可愛そうで縛りつけたくないな」とカナタは思ってしまった。
能力は高そうだが、戦争奴隷は止めにした。
「次は借金奴隷ですが」
戦争奴隷が退室すると、奴隷商は借金奴隷の説明をしだした。
借金奴隷に在りがちな怠惰な生活で自ら身を持ち崩したタイプはここには選ばれていなかった。
怪我や部位欠損により戦士としては第一線を退いたというタイプが数多く並んでいた。
片腕が無い、足を引きずっているなど、エクストラポーションを使えば治る者ばかりだった。
彼らは売値とジョブとスキルとレベルのアピールが書かれた札を首から下げていた。
「うーん、高いね。ここまで強かった人はいらないんだよね。
わざわざエクストラポーションを使うとなると、500万DG以上が上乗せだよね?」
カナタは誤解していた。
「(そこまで強いから奴隷落ちしてまでエクストラポーションを使いたいのですよ)」
奴隷商はそう思ったのだが、微笑ましそうな顔でスルーした。
男の奴隷は元々売る予定ではなかったのだから。
「彼らは、今回の魔物の討伐で不幸にも怪我をしてしまった者たちです。
奴隷落ちになったのも、その金で自らエクストラポーションを手に入れるためなのですよ」
つまり売れたと同時に彼らは自らエクストラポーションを手にするということだった。
なので、500万DGは元から値段に入っていて、その奴隷契約期間は怪我がない前提で査定されているのだった。
その価格分、彼らは奴隷期間中ずっと雇い主の下につくことになる。
「それならお買い得と言えばお買い得だね。
でも、さすがにここまで強い人は工房の護衛には過剰かな?」
結局カナタは女性の戦闘奴隷から選ぶこととなった。
「こちら、クエスト失敗で違約金が払えず、借金奴隷となった戦士です」
カナタが【鑑定】をかけると、戦士ジョブで剛剣スキル持ちだったが、レベルが6と低めだった。
お手頃価格で警備には向いているが、そのレベルではアホ冒険者の対応は無理かもしれなかった。
カナタはあるアイデアを使えばどうにかなりそうだと思っていたが、決定打に欠けていて悩んでしまっていた。
カナタの反応が弱いと察した奴隷商は次の奴隷の紹介に移った。
「次は犯罪奴隷です。
貴族に無礼をはたらいたとのことで奴隷落ちとなっています。
内緒ですが、その嫌疑には疑問もあり、密かに重罪を免れ此処へと来ました」
カナタは顔を顰めた。
冤罪で奴隷落ちとされた可能性が高い女性なのだ。
この世界、貴族の特権で相手が庶民だと犯罪捜査がおざなりになる場合があった。
カナタに絡んだアホ貴族などもそのような手合いだったのだ。
幸いカナタが貴族の子弟なので難を逃れられたが、庶民だとまともな裁判すら無い場合があった。
特に領主が領民相手となると悲劇が起こる確率は跳ね上がった。
どうしようもない貴族はこの世界には多々いるのだ。
この世界、学校のような人を一か所に集めて教育するような機関は存在していない。
全ては親の責任において教育がなされ、多くは個人向けの家庭教師が雇われて教育を司る。
その親によってはまともな教育が為されない場合があった。
貴族の特権意識でプライドのみが増長し、まともな人としての教育が行き届いていなくても、その生まれによって貴族と扱われてしまうのだ。
カナタの常識知らずも10年に及ぶ長年の寝たきり生活によるものだった。
教育しようにも寝たきりだったので限界があり、カナタには情操教育が優先された。
やっと起きられて学ぶ事が出来たにしても、カナタは起きてまだ1年しか経っていないのだ。
だが、カナタは人間性という面では、貴族としてはまともな教育を受けて来た方だと言える。
この冤罪女性のジョブは剣士、スキルは平凡な剣技スキル、レベルも低く良い所が何もないが、カナタの同情票は集まっていた。
カナタにはあるアイデアがあった。
【鑑定】のスキルが上がれば、ガチャオーブの中身の系統がわかるようになるのだ。
これは当たりハズレはあるが中身がほぼ推測できるということを意味していた。
そうなると、スキルオーブも開ける前に中身のスキル系統を知ることが出来るということ。
携帯ガチャ機は自動開放にしなければオーブのままで排出される。
そのスキルオーブを【鑑定】して誰かに渡せば任意のスキル系統を覚えさせることが出来るのだ。
その中身は本人の幸運値により変動するが、系統を特定できるのは強みだった。
これはカナタが父アラタから買い与えられたスキルオーブの仕組みと同じだった。
スキルガチャを引いてオーブを【鑑定】し、必要なスキル系統を持つオーブを任意の人物に与えて覚えさせる。
つまり自分たちで使うこともあるが、スキルオーブを販売することも出来るのだ。
ガチャ屋として新たな商売の元となるはずだった。
「でも、まだ(【鑑定】が)そのレベルに達してないんだよな……」
カナタは独り言ちた。
それを奴隷商は奴隷の見極めの話ととって次に移ることにした。
「続けてこちら。傭兵になります。
その契約の理念は決して主人を裏切らない事。
そのため奴隷契約での隷従も辞さないと、このような形となっております」
変わり種だった。
決して裏切らない傭兵とは面白い女性だった。
「決定」
カナタは即決した。
奴隷商は傭兵を横によけると次の紹介に移った。
「次は先の魔物討伐で怪我をした騎士です。
アフオ男爵領の騎士として従軍していたのですが、男爵を庇って大けがを負ってしまったとのことです。
しかしその結果解雇され捨てられた形です」
女性騎士は利き腕の右腕を失っていた。
そのままでは当然騎士として働くことは出来ない。
カナタは、主人のために傷を負ったなら傷を治してあげても良いだろうと憤った。
「あのアフォか!」
「ご主人さま、少し違うw」
思わずララが突っ込みを入れたが、顔が笑っている。
この惨い仕打ちの張本人は、あのカナタには嫌な思い出のあるアフオ男爵なのだ。
「彼女の借金は男性の傷痍奴隷と同じ理由ですね」
能力は申し分ないが、自ら借金をしないと傷を治してももらえなかったということだった。
部下が自分のために怪我をしたというのに、どれだけ人を不快にする人なんだろうとカナタは腹を立てた。
「怪我が治って奴隷任期が明けたらどうするの?
アフォ男爵の元に戻る?」
カナタは女性騎士に問いかけた。
その答え次第ではエクストラポーションをタダで渡すつもりだった。
「いいえ、あの男のことは見限りました。
カナタ様の勇姿は戦場で拝見いたしました。
どうか配下にお加えください。
このラキス、一生お仕えいたします」
その言葉には一辺の偽りもなさそうだった。
カナタがララの顔を伺うと、ララも頷いていた。
ララも問題ないということだろう。
「わかった。ラキスは決定。
これを使うと良い」
カナタはエキストラポーションを【ロッカー】から取り出すとラキスに与えた。
利き腕の右腕を失っていたラキスは涙を流しながらエクストラポーションを左手で受け取り胸に抱えた。
「よろしいのですか?」
その一連の出来事に奴隷商も驚いていた。
これでラキスは奴隷落ちしてまでした借金を必要としなくなったのだ。
つまり借金分を即日返済して奴隷から開放も可能なのだ。
「カナタ様に一生お仕えします」
ラキスはカナタに臣下の礼をとった。
カナタが領地を得て名実ともに男爵となった暁には臣下第一号となるだろう。
だが、これで護衛役の人選はほぼ振り出しに戻った。
ラキスはお店や工房の護衛ではなくカナタの直属となってしまったからだ。
「ラキスの奴隷契約は白紙に戻しましょう」
奴隷商がその意を汲んで宣言すると、次の奴隷を紹介する。
他6人を奴隷商は紹介したが、どれも似たり寄ったりの普通の戦闘職だった。
「この人とこの人とこの人ね」
悩むより美人から。ララがまた全てを決めた。
予定より人数が多く5人になったが、ラキスは臣下なので店舗と工房の護衛の数には入らない。
そしてそのララが選んだ3人の中にはカナタが同情した冤罪と思われる女性が含まれていた。
カナタは値段をあまり気にせず、職人5人、錬金術師1人、護衛4人の合計10人の奴隷を雇った。(ここに臣下となったラキスは入っていない)
しかし、カナタには辺境伯に音声通信機5台を売った1億5千万DGがあったので、支払いには何の問題もなかった。
この中で高かったのは傭兵だけで、他は部位欠損があったり能力が比較的低いこともありカナタには安い方だった。
特にヒナは厄介払いもあって錬金術師にしては破格だった。
尤もカナタの感覚にある奴隷の相場は、何をしても良いオールオッケーな奴隷の相場なので高すぎだったのだが……。
隷属魔法をかけてもらったカナタはラキス含めた11人とニク、サキ、ララを連れて奴隷商を後にした。
この後恒例の私物購入を行ったのは言うまでもない。
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