父親が呪われているので家出してガチャ屋をすることにしました

北京犬(英)

文字の大きさ
122 / 204
南部辺境遠征編

122 カナタ、追加で雇う

しおりを挟む
お知らせ

 第103話でカナタがミスリルのショートソードを使用していましたが、95話でカナタが装備していたのはヒヒイロカネの刀でした。
作者の思い違いによる完全なミスです。すみません。
しかし、話の都合上はミスリルのショートソードである必要があるため、95話でミスリルのショートソードを装備したことに変更しました。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 カナタは工房に奴隷たちを連れて来ると、部位欠損のあるドワーフと錬金術師のヒナにエクストラポーションを与えて部位欠損を治した。
ラキスに与えたところを奴隷商には見られていたが、さすがにエクストラポーションを複数持っているなどとは知らせるわけにはいかなかったのだ。

 ラキスは奴隷商でエクストラポーションを使い、右腕を取り戻し涙を流していた。
そしてカナタへの忠誠を深めたのだった。
それと同じことがまた目の前で起こっていた。

「このゴンゾ、この御恩は一生忘れませぬ」

 まさか自分にまでエクストラポーションが用意されるとは思って居なかったドワーフ――名はゴンゾといった――は、感謝で涙を流した。
指導役と聞いていたので治してもらえるとは思っていなかったのだ。
その孫であるリリムもカナタに感謝し崇拝することとなった。

 一方、錬金術師のヒナは治してもらえたことを当然のこととして受け取り、カナタに粘着することを決意していた。

「ぐふふ。これは良いご主人さまを得たようです」

 ヒナは見た目は10代後半なのだが中身はプラス25ぐらいの精神なのだ。
この世界に0歳から転生しているので、その分年齢を重ねていた。
見た目よりも中身は駄目なおば……熟女だった。
だが仕事をしてくれる気になっているのは良いことだった。

 カナタは雇った奴隷10人を工房の宿舎に割り振った。
おいおい作業を任せられたらとカナタは思っていた。
だが、ゴンゾはそうではなかった。
カナタからの恩義に張り切って今日にも仕事を始めようとしていた。

「俺たちはこれを作れば良いのだな?」

 ゴンゾが早速、工房に置いてあった作りかけの音声通信機を弄り回していた。
カナタは筐体を金属と木で作っていたのだが、今後は全て木で行こうと思っていた。

「今後筐体は全て家具として作りたいと思ってるんだ。
なので家具や木工のスキル持ちを雇ったんだ」

「数は?」

 これはスキル持ちの数の事ではなく生産しなければならない数のことだった。
職人さんは得てして言葉が足りないことが多々あるのだ。

「とりあえず1000台の発注を受けている」

 カナタはその言外の言葉を察して正解を答えた。
その数にゴンゾは考え込むと呟いた。

「5人で1日3台が限度だな。
俺が1台半とリリムが半分、他の3人で1台だな」

 日産3台では全ての納入に1年かかってしまう。
いや、追加発注があればもっとかかるだろう。

「スキルを使っても?」

「カナタ様は、自分だといくつぐらい作れるんだ?」

「材料(魔宝石)があれば4台かな?」

 それも他のことをやった片手間の話である。
ゴンゾは呆れた顔になった。
それは筐体だけの話ではなく、中身の魔宝石から錬金術による配線作業まで含まれているのだから。
今、工房に置いてある音声通信機も、魔宝石不足で完成していないだけだった。

「あの奴隷商で売っていた他の女たちも雇った方が良いだろう」

 カナタは慌ててあの残った6人を雇いに奴隷商へと赴くのだった。
これで日産5台。ゴンゾによればそれでも足りないらしい。
そして重要な指摘がララから齎される。

「これだけ人数が増えると食事の用意もままなりませんよ?」

 今の段階でも工房の人数は16人となる。
炊事担当が必要だった。

「料理と清掃スキルのある奴隷を4人お願いします!」

 奴隷商が追加で奴隷を連れて来ると、当然の如くララが美人から選んだ。

「いや、そこは能力で選ぼう。
カリナみたいに料理の腕が良い人を選ぼうよ」

「スキルを持っていれば、そうそう差はありません。
カリナの料理が美味しいのは、むしろその料理のレシピに理由があります」

 カナタは知らなかった。
カナタの知らない知識によって齎されたレシピは、そのスキルを凌駕しカリナにも恩恵を与えていた。
そのことにカナタは気付いていおらず、カリナの腕が良いのだと思っていたのだ。
この世界では人によって味が違うということがスキルによってあまり起こり得ないのだった。
独自な味を作れるのはそれこそ料理スキルの上位スキルのみだったのだ。
このような奴隷商には、そんな王宮で雇われるようなレベルの料理人がりいるわけがなかった。

「知らなかったよ」

「ならばよろしいですね?」

 ララにとってはカナタこそが一番。
カナタの周囲に侍る女性は美人でなければならないと思い込んでいた。
そこにはオールオッケーなお手付き有りの思想が根強く存在していた。
だが、まだカナタは11歳である。
肉体は7歳と言っても良いぐらい小さい。
いったいララは何を望んでいるというのだろうか?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

僕の異世界攻略〜神の修行でブラッシュアップ〜

リョウ
ファンタジー
 僕は十年程闘病の末、あの世に。  そこで出会った神様に手違いで寿命が縮められたという説明をされ、地球で幸せな転生をする事になった…が何故か異世界転生してしまう。なんでだ?  幸い優しい両親と、兄と姉に囲まれ事なきを得たのだが、兄達が優秀で僕はいずれ家を出てかなきゃいけないみたい。そんな空気を読んだ僕は将来の為努力をしはじめるのだが……。   ※画像はAI作成しました。 ※現在毎日2話投稿。11時と19時にしております。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双

四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。 「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。 教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。 友達もなく、未来への希望もない。 そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。 突如として芽生えた“成長システム”。 努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。 筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。 昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。 「なんであいつが……?」 「昨日まで笑いものだったはずだろ!」 周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。 陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。 だが、これはただのサクセスストーリーではない。 嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。 陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。 「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」 かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。 最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。 物語は、まだ始まったばかりだ。

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

処理中です...