父親が呪われているので家出してガチャ屋をすることにしました

北京犬(英)

文字の大きさ
123 / 204
南部辺境遠征編

123 カナタ、肉ゴーレムを欲する

しおりを挟む
 追加で雇った10人の奴隷たちに私物を買い与えるため、カナタは服飾店に寄り雑貨屋へと来ていた。
身の回りの品や洋服、下着など取り合えず今直ぐに必要なものを手に入れるためだ。
特に予定以上に増えてしまったために必要となったのが追加の寝具だった。
奴隷購入を決め、宿舎での受け入れ準備した時に買いに行った雑貨屋では、寝具の在庫が切れてしまっていた。
連日20人分の寝具を手に入れようというのだ。
一軒の雑貨屋ではそこまでの量の在庫は持っていなかったのだ。
このような大量購入の場合、本来なら予め注文し後日取りに来るというのがこの世界では普通だった。
お城などの大量の人員を必要とする場所には、大店の商家が入り一手に納入を引き受けていたが、カナタはそんなところとの伝手は持っていなかった。

「ご主人さま、寝具でしたら私の知っているお店にあると思います」

 新たに雇用した炊事担当の女性が、寝具の心当たりがあると言うので、カナタは案内をしてもらうことにした。
そこは大通りからは外れていて目立たないが、賑わいのある繁盛しているように見える雑貨屋だった。
雑貨屋だというと語弊があるかもしれない。
そこは雑多な品物を扱っているというだけで、地球では百貨店に相当するお店なのだ。

 カナタは目的の寝具を手に入れ【ロッカー】に仕舞うと、お店を後にしようとした。
しかし、そこである物をみつけてしまった。

「え? これって!」

 それは肉ゴーレムのアイテムオーブだった。
なぜこれが肉ゴーレムのオーブであるとして売られているのかというと、オーブの出所がゴーレムマスターのドロップだったからだ。
何の系統の魔物からドロップしたのかはオーブの刻印である程度わかった。
それによりこのオーブからはほぼ間違いなくゴーレムが出るとの推測が可能だった。
肉ゴーレムになるという判断はレアリティを示す色による推測だった。
これが冒険者ギルドならば【鑑定】持ちが詳細に鑑定して系統を判断出来るのだが、街の雑貨屋で売る程度となると、そういった経験から推測することが多かった。

「買った!」

 カナタは意気揚々と、その肉ゴーレムのオーブを2つ手に入れた。
そのまま工房へと戻ったカナタは、工房の作業スペースに陣取ると早速オーブを開けることにした。

「ここで携帯ガチャ機は使えないぞ。
1UPしてしまったら、違うゴーレムが出てしまうからな」

 そう、1UPの恩恵を受けてしまったら、せっかくの肉ゴーレムがアイアンゴーレムになりかねなかったのだ。
ここでもカナタはハズレを期待するという変な行動になっていた。
それはニクと同じ愛砢人形ラブラドール狙いの肉ゴーレムなのだから、鉄ゴーレムになどなってしまっては本末転倒だったのだ。

 カナタはいそいそと肉ゴーレム(仮)のオーブを開けた。


ガチャガチャ ポン!

Nアイテム ストーンゴーレム
      石で出来たゴーレム
      手に入れた者が他人に譲渡しない限りその者に従属する
      主に力仕事や魔物から逃亡する際の囮として使われる


「は?」

 カナタはその結果に驚きを隠せなかった。
黄色いNオーブから出て来たのはストーンゴーレムだったのだ。

「なんで?」

 それもそのはずだった。
カナタの幸運値はレベルアップにより現在120となっていた。
魔物の氾濫で土魔法や掘削スキルを使いまくり、高ランクの魔物も倒しまくった。
最後はドラゴンに傷をつける――カナタが障壁を張ってそれにドラゴンが自爆した――という結果も残している。
レベルが上がらないわけがなかった。
現在カナタのレベルは20にもなっている。
それによって幸運値も大幅に上がっていたのだ。

「拙い。僕の幸運値が高すぎて中身が良くなってしまっている!」

 カナタは焦った。そして暫く考えてサキを呼びつけた。
彼女の幸運値は10より低いはずだったからだ。
サキに開けさせれば、ハズレを引いて肉ゴーレムが出るはずだとカナタは思ったのだ。

「え~? これを開けるんですか~?
悪いものが出ても知りませんよ~」

 サキには自分の運が悪いという自覚があった。
しかし、今回はその悪い方向で能力を発揮して欲しいのだ。


ガチャガチャ ポン!

Nアイテム 肉ゴーレム
      肉で出来たゴーレム
      手に入れた者が他人に譲渡しない限りその者に従属する
      主に魔物から逃亡する際の囮として使われる


「さすがサキ。安定の不運持ちだ」

 変な感じでカナタが褒める。
サキも引きつった顔で笑うしかなかった。

「これで良いんですか~?」

 そう言うとサキは首を傾げながら去って行った。

 出て来た肉ゴーレムは仮面を被り目鼻口は確認出来ない。
肉体はのっぺりとして性別の存在しない身体をしていた。
これで肉感的な身体をしていたら、別の用途で使おうという者が現れてしまうので、まあこれはこれで正解だといえる。
肉で出来ているので力も平凡で防御力は皆無だ。
そのため囮にしかならないと言われているのだ。

「よし、ここから胸のあたりのコアに魔力を流すんだったよな?」

 カナタはニクの時と同じようにシステムに魔力を流して起動させようと試みた。

「あれ?」

 カナタの【魔力探知】がシステムの反応を見つけられなかった。
つまり、この肉ゴーレムは愛砢人形ラブラドールには成り得なかったのだ。

「つまり愛砢人形ラブラドールになるのは特殊個体ということ?」

 そう簡単に超古代兵器は手に入らなかったのだ。
カナタはこの件でむしろ安心し胸を撫で下した。
ニクの戦闘力は高い。しかし、そのニクが二体揃っても持て余す気がしていたのだ。
高すぎる戦闘力は扱いに困ると漠然とだが思っていたからだ。

 つい好奇心から肉ゴーレムが愛砢人形ラブラドールになるのかを試してしまったが、実現しなくて良かったとカナタは思い直した。
新しい愛砢人形ラブラドールを手に入れて戦力化するためには**人形シリーズのオプションアイテムが必須となる。

 もし新しい**人形シリーズのアイテムを手に入れたなら、分散させるよりもニクを強化した方が良いと思われた。
必要もないのに愛砢人形ラブラドールを手に入れても、アイテムにダブりのない限り、ただの美人肉ゴーレムにしかならないのだ。
そんな肉ゴーレムをカナタは必要としていなかったし、売って好事家の慰み者にする気もなかった。

「好奇心で突っ走るのはやめよう。
それにしても、この石ゴーレムと肉ゴーレムはどうしようか。
使い道が無いぞ」

『サブスキル、【ガチャオーブ化】がアクティベートされました』

 カナタの脳裏にシステムメッセージが響いた。
それは一度開いたガチャオーブの中身をガチャオーブに仕舞うことの出来るというGRスキル【携帯ガチャ機】のサブスキルだった。
それが時空魔法のレベルアップも相まってカナタの悩みに反応して活性化したのだ。

「つまり、石ゴーレムと肉ゴーレムをオーブに戻せるということか!」

 カナタはまたまた便利スキルを覚えてしまった。
しかし、このオーブは中身固定でいくら開けても同じ物しか出ないものだった。
そこには1UPの恩恵も幸運値も影響することはなかった。

 つまりそれは運搬用としてガチャオーブにアイテムを仕舞えることを意味していた。
それがスイーツでも生肉でも音声通信機でも良かったのだ。

 まあ、カナタには【ロッカー】があるので運搬という点では必要ないものなのだが、ガチャオーブに仕舞った状態で売ることが出来るなら、その利便性は圧倒的に高くなるはずだった。
また、まだ実験もしていないが、もし自分の要らないスキルをガチャオーブに仕舞えたら……。
それは他人にスキルを譲渡出来るということを意味していた。


◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇


「はあ? 売れた?
取り置きしてくれと言ったはずだろう?」

 カナタが肉ゴーレムのオーブを買った雑貨屋に大声が響いた。

「私どもの店では取り置きはしないとお断りしたではありませんか」

「ちっ! 使えねー店だな!」

 その黒いローブを纏った男は悪態をつきながら雑貨屋を後にした。
彼、いや彼らはなぜか肉ゴーレムのオーブを買い漁っていた。
いま肉ゴーレムのオーブは買い占めにより品薄状態にあった。
その買い占めを行っているのが、この黒いローブの男の属する組織だった。

「この街は魔物の氾濫でNオーブが大量に入荷したはずなのに何処に行ったんだ?」

 まさか自分たちの組織がその魔物の氾濫に関わっていたとは知る由もなかった。
この男、組織の中では最底辺にある下っ端の存在だった。
下っ端なために予算執行の権限がなく、いちいち上司に申請をしないと購入予算を手に出来なかった。
まあ、金を前渡していたら横領されかねないと思われるほど信用がないということなのだが……。
本来なら肉ゴーレムのオーブなど早々売れるものではないことも、男に金を渡さなくても問題ないと思われていた理由だった。
だが、こんな男でも実働部隊としては便利扱いされていた。

 そして大量のNオーブの行方はカナタの所だったことは知る由もなかった。
その中には一見同じだが、ノーマルを示す黄色とは違う山吹色のオーブが含まれていたのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います

ゆさま
ファンタジー
ベテランオッサン冒険者が、美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされてしまった。生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれて……。 懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?

九尾と契約した日。霊力ゼロの陰陽師見習いが大成するまで。

三科異邦
ファンタジー
「霊力も使えない。術式も出せない。 ……西園寺玄弥、お前は本当に陰陽師か?」 その言葉は、もう何度聞いたか分からない。 霊術学院の訓練場で、俺はただ立ち尽くしていた。 周囲では炎が舞い、水がうねり、風が刃のように走る。 同年代の陰陽師たちが、当たり前のように霊を操っている。 ――俺だけが、何もできない。 反論したい気持ちはある。 でも、できない事実は変わらない。 そんな俺が、 世界最強クラスの妖怪と契約することになるなんて―― この時は、まだ知る由もなかった。 これは―― 妖怪の王を倒すべく、九尾の葛葉や他の仲間達と力を合わせて成長していく陰陽師見習いの物語。

『冒険者をやめて田舎で隠居します 〜気づいたら最強の村になってました〜』

チャチャ
ファンタジー
> 世界には4つの大陸がある。東に魔神族、西に人族、北に獣人とドワーフ、南にエルフと妖精族——種族ごとの国が、それぞれの文化と価値観で生きていた。 その世界で唯一のSSランク冒険者・ジーク。英雄と呼ばれ続けることに疲れた彼は、突如冒険者を引退し、田舎へと姿を消した。 「もう戦いたくない、静かに暮らしたいんだ」 そう願ったはずなのに、彼の周りにはドラゴンやフェンリル、魔神族にエルフ、ドワーフ……あらゆる種族が集まり、最強の村が出来上がっていく!? のんびりしたいだけの元英雄の周囲が、どんどんカオスになっていく異世界ほのぼの(?)ファンタジー。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

処理中です...