父親が呪われているので家出してガチャ屋をすることにしました

北京犬(英)

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ウルティア国戦役編

178 カナタ、陳情に足止めされる

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「ヨーコ、何かあったのか!?」

 グリーンバレーの拠点玄関を出た先にある前庭で、馬車に乗ろうとしていたカナタは、拠点の玄関ドアを勢いよく開けて飛び出してきたヨーコに、何かあったのかと慌てて身構えてしまった。

「えーと、そこまで緊急じゃないんだけど、ご主人さまはダンジョンに入ると長いから、今のうちだと思って……」

 ヨーコは、カナタの真剣な様子に慌てて取り繕うように言う。
どうやらヨーコはスミレたちから戦闘訓練の要請を受け、カナタがダンジョンに入ることを知ったらしい。
いつ帰るか判らないカナタの出発前に、ヨーコはどうしても話したいことがあったのだ。

「それもそうか。
じゃあ、今聞いておくよ」

「ありがとう。
まず、領兵募集の件なんだけど、辺境伯様の使いがこちらグラスヒルに来たわ」

「え? ガーディアでもミネルバでもなくグラスヒルに?」

 カナタの所在で有力なのは、もちろん領都であるミネルバだ。
ガーディアはライジン辺境伯領であるため使者が来やすいという利点がある。
王国が【常設転移門】の設置を進めているなかで、一番使い易いのはカナタが実験で最初に【常設転移門】を設置したミネルバと、ライジニアから軍の緊急派遣を行うべく【常設転移門】を設置したガーディアだった。
グラスヒルは、カナタが個人的に設置したミネルバの【常設転移門】からしか行けないため選択肢としては無いはずだった。

「使者の方がミネルバの屋敷を尋ねたところ、ご主人さまが不在だったため、屋敷のメイドが次に話を伺う立場の者はヨーコだと思って、屋敷の【常設転移門】を通ってこちらグラスヒルに案内したのよ」

 ヨーコの説明にカナタは頭を抱えた。
カナタの奴隷たちは、屋敷の【常設転移門】を隣の部屋に行くが如く使っている。
そのメイドは使者をヨーコに案内しないとと思って、普通に【常設転移門】の扉を開いて案内したのだろう。
つまりカナタが個人的に【常設転移門】のネットワークを持っていることが第三者に漏洩したということだった。

「ああ、【常設転移門】の秘密がバレたのか……。
まさかメイドが第三者を案内するとは思わなかったよ」

 そこでヨーコが悪戯が成功したかのようにニヤリと笑って言う。

「それが、使者は屋敷の奥に案内されたと勘違いしたみたいなの。
使者の方には扉を開いた先の部屋から廊下に出て執務室に案内されただけに見えたのだと思う」

 確かにメイドも部屋続きだと錯覚していたのかもしれなかった。
使者もあまりに自然に案内されたので、そう感じたのだろう。
屋敷の外に出れば、そこが遠く離れたグラスヒルだと分かっただろうが、屋敷の中ならば同じ屋敷の別の部屋あるいは別棟に来たと思ったのかもしれない。
使者がミネルバまで来た【常設転移門】は馬車も通れる大型のものなので、扉一枚の【常設転移門】があるとは思っていなかったのだろう。

「危なかったなぁ。
まあライジン辺境伯臣下の信用ある人ならば知られても構わないけど、アフオ男爵という悪い前例があるから気を付けるに越したことは無い。
メイドには注意を促すことにするよ」

 カナタはそう言うとヨーコに先を促した。
本題は領兵に関することだからだ。

「使者の方の訪問理由は、辺境伯様からの言伝だったわ。
『西の門が開いた。いつでも使って良い』だそうよ」

「つまり西の辺境伯領の【常設転移門】が設置されて、王の許可も出ていつでも使えるということだね?」

 ライジン辺境伯も王国機密の【常設転移門】のことをあまり口にしないようにしているようだった。
まあ、この使者はライジニア→ミネルバと【常設転移門】を使っているので、秘密を知り得る立場だったのだが、それ以外の者に漏れないようにという配慮だろうか。

「そうなるわね。
つまり元私の国・・・へ近道が出来るようになったということ。
私たちはいつでも向かう用意があるわ」

 ヨーコの国はスヴェルナ帝国の侵略により占領され、住民は奴隷化されてしまっていた。
元兵士も捕まるか農奴化されており、苦しい生活を強いられているはずだった。
ヨーコには、元自分の国の兵士に声をかけてミネルバの領兵となってもらうという計画があった。
だが、占領地に向かう危険な旅のため、いろいろと問題があった。
当然、元王族のヨーコが行って捕まりでもしたら、どのような扱いを受けるかわからなかった。

「危険を伴うから僕も一緒に行きたいところなんだけど、帰って来るまで待ってもらえないかな?」

 しかし、ヨーコはそのカナタの要請を拒んだ。

「いいえ、私は行くわ。
サキとレナもレベルが高くなっているし、そう簡単にやられはしないわ。
それとヒューマンに偽装するのはお手の物なのよ?」

 確かに幻術によりサキたちは獣人の姿をヒューマンに偽装していたことがあった。
カナタもそれで騙されたことがあるのだ。

「でもなぁ……」

「ユキノにも来てもらって危ないところは【隠密】のスキルを使ってもらうわ。
大丈夫。私たちにまかせて」

 カナタはヨーコの決意に心が揺れたが、それでも危険だと判断していた。
カナタが一緒に行くことで何がメリットかというとニクたちの戦闘力だった。
つまり人数の増えた愛砢人形ラブラドールを護衛に付ければ良かったのだ。

「わかった。ヨーコに任せるよ。
ただし、ミュー3とラムダ4にも行ってもらう。
人数も6人ならば冒険者の1パーティ―として活動できるから丁度良い」

「ありがとう」

 ヨーコは純粋に感謝した。
そのカナタの配慮が嬉しかった。

「ミュー3とラムダ4も良いよね?」

「「マスターのご命令に従います」」

 ミュー3とラムダ4にも異存は無かった。
マスターの命令なので当たり前なのだが。

「ならばミュー3とラムダ4はヨーコに従って欲しい。
基本自由にしていて、無茶な命令は聞かなくて良いからね」

 これで彼女たちに変な縛りがなくなるようにとカナタは配慮して命令を下した。
強制力により雁字搦めになって動くに動けなくなることがあるとガンマ1に聞いていたのだ。

「さあ、これで本当に出発でいいよね?」

「ちょっと待った!」

 今度はララがやって来た。
彼女の相談はガチャ屋1号店のアイテムの残量のことだった。
カナタは【ロッカー】から1UP済みのアイテムオーブを大量に出すとララに預けた。
これは例の5万個のオーブを仕訳けた後で再装填で1UPしたHNアイテムオーブで、【鑑定】により中身を特定したものだった。

「これは高級ミノタウロス肉だからオーブのまま売って流通に乗せた方が感謝されると思う。
オーブのままならば、中身が腐る事はないからね」

 ララのガチャ屋1号店も、2号店と同じ中身保証でスキルオーブを売っていた。
つまりガチャオーブの状態で売っても中身に関する信用は高くなっていたのだ。

「わかった」

 ララはその中身の但し書きのある大量のHNアイテムオーブをマジックバッグ(シフォンマーク付)に入れるとグラスヒルのガチャ屋1号店に戻って行った。

 この何気ないやりとりが、後にカンザス領に大打撃を与えるなどとカナタたちは知る由もなかった。
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