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一章 聖女さん、追放されたので冒険者を始めます。
53 聖女さん達、踏み止まる
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「世界的な何か……それってつまり何かを企んでいる誰かがいて、その為に私達を同時期に追放させたって事?」
「俺はその可能性もあるんじゃねえかって思ってる。過去の歴史を遡って考えても愚かな権力者って奴は山のように出てくるが、今回のパターンみたいな酷いケースはそうあるもんじゃねえと思っている。だから実際の所は王のご乱心ってよりは誰かが無理矢理そうなるように暗躍してたって感じで」
「む、無理矢理そうなるように暗躍って……そんな事できるんですかね?」
「まあ無理では無いでしょ」
シルヴィの言葉に私は答える。
「極端な話を言えば、強力な魔術で主要な人間全員を洗脳して回ればそれで終わるよ」
「そういう事だ。それにしたって無茶苦茶な話だとは思うが、ガチで私情全開で追放されまくってるってのよりはよっぽど現実味があるとは思わねえか」
「確かに、そっちの方が現実味がありそうだね」
……とはいえ。
「あくまで比較的にだけど」
結局アホの色恋沙汰に巻き込まれて追放された説よりも現実味があるってだけ。
「まあ確かに仮にそうだとしても、それはそれで現実味はねえしな……」
「魔術でどうにかするってのにも限度があるっすからね……」
「というか流石にそういう異常は私達なら気付きそうだし」
思い返してみるけど、あのアホを含めた周囲の人間はいつも通りだった。
アホがいつも通りアホな事を言ってこの結果になっている。
流石に度が過ぎたとは思ってるけど、あのアホならやりかねない。
「……まああくまで第三者がそう思ったってだけの話だ。実際マジでただのご乱心が重なっただけの可能性もある」
「なんか良く分かんないけど……そうであってほしいよね」
「いやそれはそれで嫌じゃないっすか?」
「いや、嫌だけど……まあ逆にアホのご乱心じゃなきゃ洒落にならない事に発展しちゃってる可能性もある訳だし」
「まあそうだな。洒落にならねえ世界の危機って奴だよ」
「ぐ、具体的にどう危ないのかは分かんないですけどね」
……本当にそう。
誰かが暗躍みたいな事をしていたとして、そうする事で何をしようとしているのかは分からない。
そして調べるのも難しいと思う。
私達は各々国を追放されていて。
それが本気でただのアホのご乱心だった場合、調べても何も見つからない可能性だって大きくて。
正直不当に追放されているし、何なら未だに国内に持ち家で済んでいる私が言うのもなんだけど、あの国に戻るのは普通に犯罪だ。
何かあっても力でねじ伏せる自信があっても……リスクが大きい。
だからもう私達は新しい人生を歩みだしてる状態な訳だから……綺麗にあのアホ絡みの事を忘れられるように、普通にご乱心であってほしいと思う。
思うけど。
「でももし本当に誰かが暗躍した結果が今だったら……あの黒装束の二人もそれこそ同じような立場なのかも」
女の子の方がおそらく聖女。
そして男の方は、確かに殺意は向けて来たけど、明らかに悪人とはかけ離れた倫理観を持っていた。
「例えばだけど……暗躍している何かに対抗する為の何かをしていた、とか」
「な、なんだか徐々にピースが嵌って行ってる感じがしますね」
シルヴィがそう言うけど……綺麗に嵌れば=洒落にならない事態かもしれないって事だから、正直嵌んないで欲しいんだけど。
「それに……」
そして同じくピースを埋めるようにクライドさんが何かを言おうとしたけど。
「……いや、何でもねえ」
どこか思いとどまるように、そこから先の事は言おうとはしなかった。
「え、なんか分かったんじゃないんすか部長」
「いーや。何も分からねえよ。つーか何話しても憶測に憶測を重ねていくだけだ。結局答えなんて見えてこねえ」
そしてこの話を一旦締めるようにクライドさんは言う。
「まあこれは助言程度に思ってくれればいいが……下手に動くなよ。あくまで今の話は全部憶測にすぎねえんだ。下手に動いて空振りだったらそれこそ洒落で済まねえぞ」
さっき私が少し危惧した事をクライドさんは言ってくれる。
だけど……まあ、言われなくても動かない。
「その辺は大丈夫。流石に目に見えて何かが起きたんだとしたら動くかもしれないけど……まあ、ここまで不確定な事が多くてリスクばかりなんだったら何もしない。別に私、世の為人の為に自分犠牲に出来るような立派な人間じゃないからさ」
私が正義の味方でもやっていたら話は別かもしれないけど……うん、結局の所私はそういう人間じゃないから。
まず自分が居て。
その周りに関係性を持った人間が居て。
その延長線上に世界がある。
だから……私が動くにはまだ早い。
そして幸いと言って良いのかは分からないけどシルヴィとステラも大体そういう考えみたいだった。
「わ、私もそうですね……その、もし本当にそうだってなったら何かをするとは思いますけど……今はまだ動かないかなって」
「俺も同感だな。何より……俺、今の生活気に入ってるからさ。それ壊すような真似はしたくねえんだ」
二人も私に続いてそう言ってくれた。
……良かった。一回様子見てくるとか言い出したらどう止めようって頭悩ませる所だったよ。
そしてシズクも同じみたいだった。
「ボクもそうすね。今の生活というか……その、この職場気に入ってるっすから。もう此処を今飛び出す気にはなれねえっすね」
「今弾き出されそうだけどな」
「あの……ほんと、マジで頼むっすよ部長」
と、まあ私達のそんな反応を見て、クライドさんはどこか安心したように言う。
「まあとにかく、あまり変な事に首突っ込まねえで、この国での新しい生活をエンジョイしてってくれよ、冒険者さん」
……そう、もう私達の新しい生活は始まっているんだ。
今回の事について全く何も考えなくていい訳じゃないと思うけど……それでも。
今はこれからの新しい生活を楽しんでいこうと思うよ。
「俺はその可能性もあるんじゃねえかって思ってる。過去の歴史を遡って考えても愚かな権力者って奴は山のように出てくるが、今回のパターンみたいな酷いケースはそうあるもんじゃねえと思っている。だから実際の所は王のご乱心ってよりは誰かが無理矢理そうなるように暗躍してたって感じで」
「む、無理矢理そうなるように暗躍って……そんな事できるんですかね?」
「まあ無理では無いでしょ」
シルヴィの言葉に私は答える。
「極端な話を言えば、強力な魔術で主要な人間全員を洗脳して回ればそれで終わるよ」
「そういう事だ。それにしたって無茶苦茶な話だとは思うが、ガチで私情全開で追放されまくってるってのよりはよっぽど現実味があるとは思わねえか」
「確かに、そっちの方が現実味がありそうだね」
……とはいえ。
「あくまで比較的にだけど」
結局アホの色恋沙汰に巻き込まれて追放された説よりも現実味があるってだけ。
「まあ確かに仮にそうだとしても、それはそれで現実味はねえしな……」
「魔術でどうにかするってのにも限度があるっすからね……」
「というか流石にそういう異常は私達なら気付きそうだし」
思い返してみるけど、あのアホを含めた周囲の人間はいつも通りだった。
アホがいつも通りアホな事を言ってこの結果になっている。
流石に度が過ぎたとは思ってるけど、あのアホならやりかねない。
「……まああくまで第三者がそう思ったってだけの話だ。実際マジでただのご乱心が重なっただけの可能性もある」
「なんか良く分かんないけど……そうであってほしいよね」
「いやそれはそれで嫌じゃないっすか?」
「いや、嫌だけど……まあ逆にアホのご乱心じゃなきゃ洒落にならない事に発展しちゃってる可能性もある訳だし」
「まあそうだな。洒落にならねえ世界の危機って奴だよ」
「ぐ、具体的にどう危ないのかは分かんないですけどね」
……本当にそう。
誰かが暗躍みたいな事をしていたとして、そうする事で何をしようとしているのかは分からない。
そして調べるのも難しいと思う。
私達は各々国を追放されていて。
それが本気でただのアホのご乱心だった場合、調べても何も見つからない可能性だって大きくて。
正直不当に追放されているし、何なら未だに国内に持ち家で済んでいる私が言うのもなんだけど、あの国に戻るのは普通に犯罪だ。
何かあっても力でねじ伏せる自信があっても……リスクが大きい。
だからもう私達は新しい人生を歩みだしてる状態な訳だから……綺麗にあのアホ絡みの事を忘れられるように、普通にご乱心であってほしいと思う。
思うけど。
「でももし本当に誰かが暗躍した結果が今だったら……あの黒装束の二人もそれこそ同じような立場なのかも」
女の子の方がおそらく聖女。
そして男の方は、確かに殺意は向けて来たけど、明らかに悪人とはかけ離れた倫理観を持っていた。
「例えばだけど……暗躍している何かに対抗する為の何かをしていた、とか」
「な、なんだか徐々にピースが嵌って行ってる感じがしますね」
シルヴィがそう言うけど……綺麗に嵌れば=洒落にならない事態かもしれないって事だから、正直嵌んないで欲しいんだけど。
「それに……」
そして同じくピースを埋めるようにクライドさんが何かを言おうとしたけど。
「……いや、何でもねえ」
どこか思いとどまるように、そこから先の事は言おうとはしなかった。
「え、なんか分かったんじゃないんすか部長」
「いーや。何も分からねえよ。つーか何話しても憶測に憶測を重ねていくだけだ。結局答えなんて見えてこねえ」
そしてこの話を一旦締めるようにクライドさんは言う。
「まあこれは助言程度に思ってくれればいいが……下手に動くなよ。あくまで今の話は全部憶測にすぎねえんだ。下手に動いて空振りだったらそれこそ洒落で済まねえぞ」
さっき私が少し危惧した事をクライドさんは言ってくれる。
だけど……まあ、言われなくても動かない。
「その辺は大丈夫。流石に目に見えて何かが起きたんだとしたら動くかもしれないけど……まあ、ここまで不確定な事が多くてリスクばかりなんだったら何もしない。別に私、世の為人の為に自分犠牲に出来るような立派な人間じゃないからさ」
私が正義の味方でもやっていたら話は別かもしれないけど……うん、結局の所私はそういう人間じゃないから。
まず自分が居て。
その周りに関係性を持った人間が居て。
その延長線上に世界がある。
だから……私が動くにはまだ早い。
そして幸いと言って良いのかは分からないけどシルヴィとステラも大体そういう考えみたいだった。
「わ、私もそうですね……その、もし本当にそうだってなったら何かをするとは思いますけど……今はまだ動かないかなって」
「俺も同感だな。何より……俺、今の生活気に入ってるからさ。それ壊すような真似はしたくねえんだ」
二人も私に続いてそう言ってくれた。
……良かった。一回様子見てくるとか言い出したらどう止めようって頭悩ませる所だったよ。
そしてシズクも同じみたいだった。
「ボクもそうすね。今の生活というか……その、この職場気に入ってるっすから。もう此処を今飛び出す気にはなれねえっすね」
「今弾き出されそうだけどな」
「あの……ほんと、マジで頼むっすよ部長」
と、まあ私達のそんな反応を見て、クライドさんはどこか安心したように言う。
「まあとにかく、あまり変な事に首突っ込まねえで、この国での新しい生活をエンジョイしてってくれよ、冒険者さん」
……そう、もう私達の新しい生活は始まっているんだ。
今回の事について全く何も考えなくていい訳じゃないと思うけど……それでも。
今はこれからの新しい生活を楽しんでいこうと思うよ。
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