63 / 280
一章 聖女さん、追放されたので冒険者を始めます。
54 聖女さん達、四人パーティー
しおりを挟む
さて、色々きな臭い話になってきたものの、一応あの場での憶測に憶測を重ねる話は一旦終いとなって。
依頼品の納品と報酬の受け取りという本来の流れも終えていた私達はギルドを後にする事にした。
「えーっと、なんか流れでそのまま一緒に出て来たけど、シズクは残ってなくて良かったの?」
シズクとは元々納品が終わった後で話す手筈になっていたから一緒に違和感なく出て来たけど……冷静に考えるとちょっと待てって感じになる。
「ほら、その……言いにくいけど謹慎とかクビとかってのは確定してないんだよね? なら今日って普通に仕事じゃないの?」
「ああ、ボク実は今日午前上がりだったんすよ」
「でももう思いっきり午後ですよね? どうしてギルドに居たんですか?」
「あーそれなんすけどね……個人的に皆さんと少し話したいなーって思って。まあ半分位はもう話しちゃった気がするっすけど」
「まあお互い元聖女ってのがはっきりしたからな。俺らの場合話して置きたい事っていうか確認しておきたい事ってなると、その話になるだろうし」
「まあそういう事っす。いやービビったっすよ。もしかしたらって思ったらマジだったんすから」
いやもう、本当にね。
まあもう聖女だった事にというより、聖女追放され過ぎっていう方にビビってる感じあるんだけども。
「それで、半分位は話したって事は、残り半分はまだって事だよね?」
「そうっすね……じゃあ、えーっと、色々と回りくどい話するのも面倒なんで単刀直入に」
そしてシズクは一拍空けてから私達に言う。
「あの、もし謹慎とかクビになったらその間冒険者やろうと思ってるんで。その、もし良かったらって感じなんすけど、ボクをパーティーに入れてくれないっすか!?」
「あ、いいよ」
「あ、ありがとうっす……って、そ、即答!? え、えーっと、頼んでるボクが言うのも何なんすけど、もうちょっと悩んでも良いんじゃないっすか? 一緒に仕事していく仲間増やす訳っすから」
その言葉にステラとシルヴィが答える。
「まあ最初からもし何かあったら声かけようって話してからな」
「そうですね。なので大歓迎です」
「そ、そうだったんすか……や、優しいっすね……」
「いや、自分達の所為で立場危ういかもしれないって考えてて、私達しーらねってスタンス取り出したらヤバい奴でしょ」
「い、いや、三人はちゃんと依頼を受けるときにボクの事心配してくれたじゃないっすか。それでもボクが話を通した。それはもう普通にボクの責任なんで。別に放り出してもヤバくはないっすよ」
シズクはそう言った後、少々慌てて言う。
「あ、でも、今はちょっと放り出さないでくれると助かるっすよ!」
「大丈夫大丈夫。そんな事しないから」
「そもそもシズクさんが凄い力を持ってるのは分かりますから。居てくれたら心強いですからね」
「冒険者って聞いた話じゃ大体三人か四人位でパーティー組むんだろ? シズクが居たら考えられる限り最強のパーティー結成って感じになるからな」
そう、二人の言う通りだ。
確かに声を掛ける切っ掛けは責任とかそういう事もない訳じゃない気がするけど、そもそもシズクの力は凄くて。
もしもう一人誰かをパーティーに入れるならまず間違いなくシズクだって言える。
実力的にも、境遇的にもね。
「そんな訳で、これからよろしく」
「あ、ありがとうございます! これからよろしくっす! ……まあクビとか謹慎になったらって話っすけど」
「いや、良くて謹慎って話だろ?」
「世の中諦めが肝心って事もありますよ」
「……現実逃避って奴っす。や、やめたくねー!」
「結構今の仕事愛着持ってるんだね」
「まあそれなりにっすけど」
……そういえば。
「それでちょっと聞いてみたかったんだけど、なんでシズクは受付嬢やってたの?」
「あ、確かにちょっと気になりますね」
「確かに。俺は副業みてえな感じだけど、アンナやシルヴィはいきなり本業冒険者だからな」
「あ、ステラさんは違うんすか?」
「ああ、俺近くの店でウェイトレスやっててよ。で、色々あって副業で冒険者始めたって訳だ」
「あーそうなんすか。ウェイトレスってなんか意外っすね」
「あ、そっか……意外か……まあそうだよな」
ステラが落ち込んでる……マズい!
私とシルヴィは瞬時にアイコンタクトを取って動き出す。
「あ、ほら! 私達みたいな力を持ってる人がウェイトレスやってるって意外って事ですよ。私達も最初はそう思いましたから」
「そ、そういう事か……」
そうシルヴィがフォローをしている隙に、私はシズクの手を引いて引き寄せて、耳元で言う。
「……そういうのステラの地雷だから気を付けて」
「……あ、そ、そうっすね……なんとなく把握したっす」
どうやら意図は伝わったらしく、シズクもシルヴィのフォローに乗っかる。
「そ、そういう事っす。ボクも最初冒険者やろうって思ってたんで」
「え? じゃあなんで受付嬢やる事にしたの?」
「そうっすね……最初は冒険者になろうって思って冒険者ギルドに行ったんすよ。そしたらなんか和気藹々と良い感じな雰囲気してて、なんか良いなーって思って。理由なんてそんなもんっすよ」
「なんか思った以上に普通の理由だった」
「就職動機に意外性求められても困るっすよ」
……確かに。
「いや、でもマジでパーティーに入れてくれてありがとうっす。実は今月の給料趣味とかに結構ぶっこんじゃってて貯金とかなかったし、職失うのは死活問題っすからね……」
……凄く現実的な悩み抱えてるよ。
そしてその悩みを暴露した後、シズクは軽く咳払いしてから言う。
「まあそんな訳なんで、精一杯頑張るんで、これからよろしくっす!」
「よろしく」
「よろしくおねがいします」
「おう、よろしくな!」
こうして、多分シズクは謹慎かクビになるので私達のパーティーに入る事になった。
……あの、ほんと謹慎程度で終わってくれるといいね。
依頼品の納品と報酬の受け取りという本来の流れも終えていた私達はギルドを後にする事にした。
「えーっと、なんか流れでそのまま一緒に出て来たけど、シズクは残ってなくて良かったの?」
シズクとは元々納品が終わった後で話す手筈になっていたから一緒に違和感なく出て来たけど……冷静に考えるとちょっと待てって感じになる。
「ほら、その……言いにくいけど謹慎とかクビとかってのは確定してないんだよね? なら今日って普通に仕事じゃないの?」
「ああ、ボク実は今日午前上がりだったんすよ」
「でももう思いっきり午後ですよね? どうしてギルドに居たんですか?」
「あーそれなんすけどね……個人的に皆さんと少し話したいなーって思って。まあ半分位はもう話しちゃった気がするっすけど」
「まあお互い元聖女ってのがはっきりしたからな。俺らの場合話して置きたい事っていうか確認しておきたい事ってなると、その話になるだろうし」
「まあそういう事っす。いやービビったっすよ。もしかしたらって思ったらマジだったんすから」
いやもう、本当にね。
まあもう聖女だった事にというより、聖女追放され過ぎっていう方にビビってる感じあるんだけども。
「それで、半分位は話したって事は、残り半分はまだって事だよね?」
「そうっすね……じゃあ、えーっと、色々と回りくどい話するのも面倒なんで単刀直入に」
そしてシズクは一拍空けてから私達に言う。
「あの、もし謹慎とかクビになったらその間冒険者やろうと思ってるんで。その、もし良かったらって感じなんすけど、ボクをパーティーに入れてくれないっすか!?」
「あ、いいよ」
「あ、ありがとうっす……って、そ、即答!? え、えーっと、頼んでるボクが言うのも何なんすけど、もうちょっと悩んでも良いんじゃないっすか? 一緒に仕事していく仲間増やす訳っすから」
その言葉にステラとシルヴィが答える。
「まあ最初からもし何かあったら声かけようって話してからな」
「そうですね。なので大歓迎です」
「そ、そうだったんすか……や、優しいっすね……」
「いや、自分達の所為で立場危ういかもしれないって考えてて、私達しーらねってスタンス取り出したらヤバい奴でしょ」
「い、いや、三人はちゃんと依頼を受けるときにボクの事心配してくれたじゃないっすか。それでもボクが話を通した。それはもう普通にボクの責任なんで。別に放り出してもヤバくはないっすよ」
シズクはそう言った後、少々慌てて言う。
「あ、でも、今はちょっと放り出さないでくれると助かるっすよ!」
「大丈夫大丈夫。そんな事しないから」
「そもそもシズクさんが凄い力を持ってるのは分かりますから。居てくれたら心強いですからね」
「冒険者って聞いた話じゃ大体三人か四人位でパーティー組むんだろ? シズクが居たら考えられる限り最強のパーティー結成って感じになるからな」
そう、二人の言う通りだ。
確かに声を掛ける切っ掛けは責任とかそういう事もない訳じゃない気がするけど、そもそもシズクの力は凄くて。
もしもう一人誰かをパーティーに入れるならまず間違いなくシズクだって言える。
実力的にも、境遇的にもね。
「そんな訳で、これからよろしく」
「あ、ありがとうございます! これからよろしくっす! ……まあクビとか謹慎になったらって話っすけど」
「いや、良くて謹慎って話だろ?」
「世の中諦めが肝心って事もありますよ」
「……現実逃避って奴っす。や、やめたくねー!」
「結構今の仕事愛着持ってるんだね」
「まあそれなりにっすけど」
……そういえば。
「それでちょっと聞いてみたかったんだけど、なんでシズクは受付嬢やってたの?」
「あ、確かにちょっと気になりますね」
「確かに。俺は副業みてえな感じだけど、アンナやシルヴィはいきなり本業冒険者だからな」
「あ、ステラさんは違うんすか?」
「ああ、俺近くの店でウェイトレスやっててよ。で、色々あって副業で冒険者始めたって訳だ」
「あーそうなんすか。ウェイトレスってなんか意外っすね」
「あ、そっか……意外か……まあそうだよな」
ステラが落ち込んでる……マズい!
私とシルヴィは瞬時にアイコンタクトを取って動き出す。
「あ、ほら! 私達みたいな力を持ってる人がウェイトレスやってるって意外って事ですよ。私達も最初はそう思いましたから」
「そ、そういう事か……」
そうシルヴィがフォローをしている隙に、私はシズクの手を引いて引き寄せて、耳元で言う。
「……そういうのステラの地雷だから気を付けて」
「……あ、そ、そうっすね……なんとなく把握したっす」
どうやら意図は伝わったらしく、シズクもシルヴィのフォローに乗っかる。
「そ、そういう事っす。ボクも最初冒険者やろうって思ってたんで」
「え? じゃあなんで受付嬢やる事にしたの?」
「そうっすね……最初は冒険者になろうって思って冒険者ギルドに行ったんすよ。そしたらなんか和気藹々と良い感じな雰囲気してて、なんか良いなーって思って。理由なんてそんなもんっすよ」
「なんか思った以上に普通の理由だった」
「就職動機に意外性求められても困るっすよ」
……確かに。
「いや、でもマジでパーティーに入れてくれてありがとうっす。実は今月の給料趣味とかに結構ぶっこんじゃってて貯金とかなかったし、職失うのは死活問題っすからね……」
……凄く現実的な悩み抱えてるよ。
そしてその悩みを暴露した後、シズクは軽く咳払いしてから言う。
「まあそんな訳なんで、精一杯頑張るんで、これからよろしくっす!」
「よろしく」
「よろしくおねがいします」
「おう、よろしくな!」
こうして、多分シズクは謹慎かクビになるので私達のパーティーに入る事になった。
……あの、ほんと謹慎程度で終わってくれるといいね。
10
あなたにおすすめの小説
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。
SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない?
その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。
ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。
せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。
こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。
金貨増殖バグが止まらないので、そのまま快適なスローライフを送ります
桜井正宗
ファンタジー
無能の落ちこぼれと認定された『ギルド職員』兼『ぷちドラゴン』使いの『ぷちテイマー』のヘンリーは、職員をクビとなり、国さえも追放されてしまう。
突然、空から女の子が降ってくると、キャッチしきれず女の子を地面へ激突させてしまう。それが聖女との出会いだった。
銀髪の自称聖女から『ギフト』を貰い、ヘンリーは、両手に持てない程の金貨を大量に手に入れた。これで一生遊んで暮らせると思いきや、金貨はどんどん増えていく。増殖が止まらない金貨。どんどん増えていってしまった。
聖女によれば“金貨増殖バグ”だという。幸い、元ギルド職員の権限でアイテムボックス量は無駄に多く持っていたので、そこへ保管しまくった。
大金持ちになったヘンリーは、とりあえず念願だった屋敷を買い……スローライフを始めていく!?
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……
防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました
かにくくり
ファンタジー
魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。
しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。
しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。
勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。
そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。
相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。
※小説家になろうにも掲載しています。
追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?
タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。
白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。
しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。
王妃リディアの嫉妬。
王太子レオンの盲信。
そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。
「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」
そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。
彼女はただ一言だけ残した。
「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」
誰もそれを脅しとは受け取らなかった。
だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。
聖女が降臨した日が、運命の分かれ目でした
猫乃真鶴
ファンタジー
女神に供物と祈りを捧げ、豊穣を願う祭事の最中、聖女が降臨した。
聖女とは女神の力が顕現した存在。居るだけで豊穣が約束されるのだとそう言われている。
思ってもみない奇跡に一同が驚愕する中、第一王子のロイドだけはただ一人、皆とは違った視線を聖女に向けていた。
彼の婚約者であるレイアだけがそれに気付いた。
それが良いことなのかどうなのか、レイアには分からない。
けれども、なにかが胸の内に燻っている。
聖女が降臨したその日、それが大きくなったのだった。
※このお話は、小説家になろう様にも掲載しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる