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一章 聖女さん、追放されたので冒険者を始めます。
ex 受付聖女、突如始まった面接に戦慄する
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(しっかし家広いっすねー。ボクの1Kの部屋も別に不自由してないっすけど、やっぱ一軒家広い)
まだ夕食を作り始めるには若干早くて、四人はリビングでしばらく雑談を交わしつつゆっくりと過ごす事になった。
(森の中とは言えこの敷地面積と家の大きさ、完全に豪邸っすよ。多分アンナさん……というかアンナさんの親がすげえ金持ってたんすかね。なんか良い感じの事業でもやってて)
と、そんな事を考えていると、テーブルを挟んで対面のソファーに座っていたアンナがふと思い出したように言う。
「あ、そうだ。シズクに聞いておかないといけない事あったんだ」
「ん? なんすか? 答えられる事なら答えるっすよ」
「あ、じゃあ早速。シズクもこれから私達と冒険者としてやっていく事になると思うんだけど、その上でシズクがどういう戦闘スタイルなのかなーとか。得意な事とかあるのかなーって」
(……なるほど、どっかでその質問が飛んでくると思ったっすよ)
シズクの中で僅かな緊張感が走る。
これは大事な話である。
一緒に仕事をしていく仲間に、自分の存在価値を示す重要な場である。
と、そこでシルヴィとステラがソファーから立ち上がり、アンナの元へ。
「悪い、ちょっと詰めてくれ」
「私もお邪魔します」
「え、どういう……ああ、なるほどね」
アンナはその行動の意味を理解したらしく、自分の座っていた大きめのスファーに、やや窮屈ながらも二人を招き入れる。
そしてシズクもその意味になんとなく気付いた。
(な、なんか悪乗りで……面接みたいになってないっすか?)
こう、テーブル挟んで自分の事を色々と聞かれる感じ。
ちなみに冒険者ギルドに就職した時もこんな感じだった。
だからこそ、若干緊張感が増す。
なんか迂闊な事を言えないような、そんな感じ。
「ではあなたが弊社の冒険者パーティーにどのような活躍ができるのかを、御聞かせ願えますでしょうか。資料には元聖女とありますが……あなたには一体何ができますか?」
(もう完全に悪乗りだ……)
両肘をテーブルに付けて指を組み、あえての若干低い声って感じでもう悪乗り感しか感じられない。
が、やや緊張感が走るものの、悪乗りだという事は分かっているので自分を追い詰めるような事は当然しない。
それに乗っかって、うまく自己PRをすればいい。それだけ。
それだけ……なのは分かっていたが。
(ってちょっと待って。この三人の前でアピールできる事なんてボクにあるんすか?)
大体の事なら何でもできる自信はある。
だけど自分にできる事は、多分目の前の元聖女の三人にもできる筈で。
そうなってくると、自分はこういう事ができますと強く言える何かが全然見つからない。
(な、なんか、なんかないっすか……なんでもいいから何か……)
なんとなく分かっている。
目の前の人達は此処で自分が大した事を言えなくても嫌な顔はしないでくれる。
部長を始めとしたギルドの人達と同じく、最近の自分は本当に人との巡り合わせが良すぎる。
でも、だからこそ。
(何でもいいからボクにはこれができますって、胸が張れる事を……)
ちゃんと凄いと思ってもらいたい。
だから、思考回路を焼き切れる程に動かして。
動かして。
訳が分からなくなる程に動かして。
そうして辿り着いた答えを、半ば無意識に口にする。
「べ……」
「「「べ?」」」
「ベースが……弾けるっす」
その言葉と共に、場に静寂が訪れる。
当然だ。自分でもそうなる。
(な、何言ってるんだろボク……)
突拍子も無く、完全に意味が分からない。
確かに少し自信があるけど、冒険者と関係が無さ過ぎる。
もしかすると思考回路が焼き切れる程に頭を使ったら、思考回路が焼き切れたのかもしれない。
そしてそれを聞いたアンナが、もう完全に元の調子に戻って聞いて来る。
「べ、ベースって……えーっと、楽器の話?」
「あの、聞かなかった事にして欲しいっす」
途端に恥ずかしくなって思わず顔を手で覆う。
(か、完全に変な奴と思われたっすよ今ので!)
今まで思われて無かったかどうかは知らないけど、完全にやらかした。
と、そう考えていた時だった。
「え、シズクベースやれんの?」
そんな事を言い出したのはステラだった。
「え、あ、はい。まあ一応」
「へぇ、マジかよ。俺も昔ドラム齧っててさ。話大分脱線するけど、音楽やってた奴居てちょっとテンション上がって来た!」
(な、なんか凄い食い付いてきたんすけど……)
予想外の反応に流石に動揺する中で、ステラが言う。
「と、俺達の中でこういう共通点が出てくると……なんか二度ある事は三度あったり四度あったりしそうだよな。二人はどうだ?」
ステラがそう問いかけ、まず小さく手を上げたのはシルヴィだ。
「あの、あんまり自信ないですけど、キーボードを少し」
「お、マジで!?」
「ほんとに二度ある事は三度あったっすね」
「となると……アンナは何やってたんだ?」
「やってる事前提なの!?」
と、ステラにツッコむアンナだが、軽く咳払いしてから言う。
「えーっと、趣味で軽くギターやってた」
「……ま、マジで四人共やってたっすね……」
「しかも全員被ってねえし……どんな奇跡だよこれ」
「流石にびっくりしますねこれ……」
そんな風に各々驚く中で、一拍空けてからアンナが提案する。
「えーっと……今度セッションする?」
「や、やりますか」
「そ、そうだな。やってみるか」
「あ、じゃあボク借りれそうな場所知ってるし紹介……って此処でもできるんすね」
「うん、近隣住民もいないし、結界に防音機能も一応付けてたから」
そんな訳で後日、元聖女四人でセッションする事になった。
こんな理解不能な偶然により結成されたガールズバンドがメジャーデビューして、王都レコード売り上げランキング初週7位を記録するのはもう少し先の話。
まだ夕食を作り始めるには若干早くて、四人はリビングでしばらく雑談を交わしつつゆっくりと過ごす事になった。
(森の中とは言えこの敷地面積と家の大きさ、完全に豪邸っすよ。多分アンナさん……というかアンナさんの親がすげえ金持ってたんすかね。なんか良い感じの事業でもやってて)
と、そんな事を考えていると、テーブルを挟んで対面のソファーに座っていたアンナがふと思い出したように言う。
「あ、そうだ。シズクに聞いておかないといけない事あったんだ」
「ん? なんすか? 答えられる事なら答えるっすよ」
「あ、じゃあ早速。シズクもこれから私達と冒険者としてやっていく事になると思うんだけど、その上でシズクがどういう戦闘スタイルなのかなーとか。得意な事とかあるのかなーって」
(……なるほど、どっかでその質問が飛んでくると思ったっすよ)
シズクの中で僅かな緊張感が走る。
これは大事な話である。
一緒に仕事をしていく仲間に、自分の存在価値を示す重要な場である。
と、そこでシルヴィとステラがソファーから立ち上がり、アンナの元へ。
「悪い、ちょっと詰めてくれ」
「私もお邪魔します」
「え、どういう……ああ、なるほどね」
アンナはその行動の意味を理解したらしく、自分の座っていた大きめのスファーに、やや窮屈ながらも二人を招き入れる。
そしてシズクもその意味になんとなく気付いた。
(な、なんか悪乗りで……面接みたいになってないっすか?)
こう、テーブル挟んで自分の事を色々と聞かれる感じ。
ちなみに冒険者ギルドに就職した時もこんな感じだった。
だからこそ、若干緊張感が増す。
なんか迂闊な事を言えないような、そんな感じ。
「ではあなたが弊社の冒険者パーティーにどのような活躍ができるのかを、御聞かせ願えますでしょうか。資料には元聖女とありますが……あなたには一体何ができますか?」
(もう完全に悪乗りだ……)
両肘をテーブルに付けて指を組み、あえての若干低い声って感じでもう悪乗り感しか感じられない。
が、やや緊張感が走るものの、悪乗りだという事は分かっているので自分を追い詰めるような事は当然しない。
それに乗っかって、うまく自己PRをすればいい。それだけ。
それだけ……なのは分かっていたが。
(ってちょっと待って。この三人の前でアピールできる事なんてボクにあるんすか?)
大体の事なら何でもできる自信はある。
だけど自分にできる事は、多分目の前の元聖女の三人にもできる筈で。
そうなってくると、自分はこういう事ができますと強く言える何かが全然見つからない。
(な、なんか、なんかないっすか……なんでもいいから何か……)
なんとなく分かっている。
目の前の人達は此処で自分が大した事を言えなくても嫌な顔はしないでくれる。
部長を始めとしたギルドの人達と同じく、最近の自分は本当に人との巡り合わせが良すぎる。
でも、だからこそ。
(何でもいいからボクにはこれができますって、胸が張れる事を……)
ちゃんと凄いと思ってもらいたい。
だから、思考回路を焼き切れる程に動かして。
動かして。
訳が分からなくなる程に動かして。
そうして辿り着いた答えを、半ば無意識に口にする。
「べ……」
「「「べ?」」」
「ベースが……弾けるっす」
その言葉と共に、場に静寂が訪れる。
当然だ。自分でもそうなる。
(な、何言ってるんだろボク……)
突拍子も無く、完全に意味が分からない。
確かに少し自信があるけど、冒険者と関係が無さ過ぎる。
もしかすると思考回路が焼き切れる程に頭を使ったら、思考回路が焼き切れたのかもしれない。
そしてそれを聞いたアンナが、もう完全に元の調子に戻って聞いて来る。
「べ、ベースって……えーっと、楽器の話?」
「あの、聞かなかった事にして欲しいっす」
途端に恥ずかしくなって思わず顔を手で覆う。
(か、完全に変な奴と思われたっすよ今ので!)
今まで思われて無かったかどうかは知らないけど、完全にやらかした。
と、そう考えていた時だった。
「え、シズクベースやれんの?」
そんな事を言い出したのはステラだった。
「え、あ、はい。まあ一応」
「へぇ、マジかよ。俺も昔ドラム齧っててさ。話大分脱線するけど、音楽やってた奴居てちょっとテンション上がって来た!」
(な、なんか凄い食い付いてきたんすけど……)
予想外の反応に流石に動揺する中で、ステラが言う。
「と、俺達の中でこういう共通点が出てくると……なんか二度ある事は三度あったり四度あったりしそうだよな。二人はどうだ?」
ステラがそう問いかけ、まず小さく手を上げたのはシルヴィだ。
「あの、あんまり自信ないですけど、キーボードを少し」
「お、マジで!?」
「ほんとに二度ある事は三度あったっすね」
「となると……アンナは何やってたんだ?」
「やってる事前提なの!?」
と、ステラにツッコむアンナだが、軽く咳払いしてから言う。
「えーっと、趣味で軽くギターやってた」
「……ま、マジで四人共やってたっすね……」
「しかも全員被ってねえし……どんな奇跡だよこれ」
「流石にびっくりしますねこれ……」
そんな風に各々驚く中で、一拍空けてからアンナが提案する。
「えーっと……今度セッションする?」
「や、やりますか」
「そ、そうだな。やってみるか」
「あ、じゃあボク借りれそうな場所知ってるし紹介……って此処でもできるんすね」
「うん、近隣住民もいないし、結界に防音機能も一応付けてたから」
そんな訳で後日、元聖女四人でセッションする事になった。
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