最強聖女は追放されたので冒険者になります。なおパーティーメンバーは全員同じような境遇の各国の元最強聖女となった模様。

山外大河

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一章 聖女さん、追放されたので冒険者を始めます。

62 聖女さん達、無敵のパーティー

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 ……さて、話が思いもよらぬ方向に脱線したけど訳だけど、脱線した先の話は食事中にでも取っておく事にして本題へ。
 流石に一回流れが切れたからふざけたノリで聞くのも何か違う気がするから普通に問いかける。

「それで、結局シズクはどういう戦い方をするの? ああ、別に深く考える必要とかないからね。多分だけどさっきは何言って良いのか分かんなくなってたでしょ」

「ま、まあはい。皆さんも凄いの分かってるっすから。その中で埋もれないような何かが無いかなーと思って……」

「あははやっぱり。ほんと肩の力抜いて行こうよ。別に死ぬ程お金稼ぎまくるガチ勢って訳でもないんだからさ」

「は、はい! じゃ、じゃあちょっと肩の力抜いてくっすよ」

「それでよし」

 しっかしなるほど、それで出てきたのがベースってわけね。
 実際埋もれてないし、必須な人員だったよ音楽活動的な意味では。
 まあ本当に音楽の話は置いておいて。

「で、どんな感じなんだ? 一応俺ら三人共近付かれたらぶん殴って、距離離れてたら魔術ぶっ放すような感じなんだけどよ」

「ぶん殴って……え?」

「あ、私はぶん殴るっていっても拳じゃなくて、結界を鈍器にする感じで」

「シズクは拳派? 鈍器派? もしかしてこう……なんかもっとヤバい武器とか」

「ちょ、ちょちょちょ、ちょっと待って欲しいっすよ。なんでゴリゴリに近接で殴り合いができる前提で話進んでんすか!? つーかシルヴィさんはともかくアンナさんとステラさん拳でぶん殴ってんすか!?」

「え、いや、だって近づかれたらどうするの?」

「近接もできない事は無いですけどまあ大した事できないんで、とにかく距離取るっすけど。というか距離詰められない事重視っす……え? マジで拳でぶん殴るん……すか?」

「「殴る」」

「……って事は、ドラゴンと戦った時も……」

「私は違う役割やってたんで、二体程魔術で倒した感じですけど、アンナさんとステラさんは空飛んで拳で殴ってましたよね」

「……」

 私達の話を聞いたシズクは衝撃を受けたように黙り込んで……そして、一拍空けてから震えた声で言う。

「す、すみません。明日位から格闘技習いにいくっす」

「いやしなくていいよそんな事!?」

 なんか止めないとマジで行きそうだよ!

「いやでもボクマジで近接で戦うの苦手で、これ何とかしないとボク足手纏いに……」

「大丈夫」

 結構真剣に悩んでるみたいなシズクに私は言う。

「さっきも言ったけど、ガチでやってるようなパーティーじゃないからさ。気楽に自分ができる事をやって行こうよ」

「そもそも偶々私達が前衛もできるってだけで、普通はポジション別れる物だと思いますし」

「後ろは任せた!」

 そう、二人のいう通りだと思う。
 各々比較的得意不得意はあるかもしれないけど、とりあえずオールラウンダー。
 そんなのはどう考えても稀なケースだ。

 だからその点でシズクが気に病む必要なんてない。
 それに足りない所は補い合う。
 それが本来の冒険者パーティーっぽいしね。

 そして私達の言葉で少し前向きになってくれたのかもしれない。
 シズクが吹っ切れたように言う。

「りょ、了解っす! 後ろというか後方支援、全力でやるっすよ!」

 うんうん、それで良いと思うよ。

「とりあえず後方から魔術攻撃で援護と……あと四人同時位ならそれなりの出力で強化魔術とか、その他もろもろの補助魔術を掛けれると思うっす。誰かと組んでやろうと思ったら、ボクにやれるのはそういう事っすかね」

「強化魔術……か」

 あれ他人に使うの凄い大変なんだよね。
 自分に掛けるのと比べると遥かに出力落ちるし、維持するのも大変でこっちの動きに支障がでるし。
 体力もごっそり持ってかれるし魔力も無茶苦茶持っていかれる。
 正直実践で使えるような代物じゃない。
 そんなの使う位なら、自分の動きに集中力を回した方がよっぽど成果が出る。

 ハーレムパーティーさんの所もそういう魔術を使っていたと思うけど、多分アレも本当に無いよりマシ程度の補助なんだと思う。

 ……そう考えると、あの黒装束の女の子の方。
 聖女疑惑が出ているあの子は、事強化魔術においては私より遥かに高い実力を持って居るんだと思う。
 そういうのを使いながらシルヴィトステラと戦って、尚且つ目に見えて分かる程に黒装束の男の出力が上がっていたから。

 まあとにかく……他人に掛けるタイプの強化魔術は非常にピーキーで扱い悪すぎる魔術なんだよ。

「あ、とりあえずこれなら此処で使っても問題なさそうなんで。強化魔術だけ使ってみるっすね」

 そう言ってシズクが私達に強化魔術を掛け……。

「……え、体無茶苦茶軽いんだけど」

「ほんとだ、すっごい軽いです」

「ちょっと待て。この状態で強化魔術使うと……うおおおお!? なんだこれ!? え、今俺の体に何が起きてんの!?」

 と、とにかく凄いとしか言いようがない位に体が軽い。
 流石にドラゴンとかは無理だろうけど、これだけでそれなりのモンスターなら殴り倒せそうなんだけど。

「えへへ、どうっすか? それなりに良い感じっすかね? 後はおまけ程度に回復魔術には及ばないっすけど治癒能力とかも上がってる筈なんで、カスリ傷とか位なら戦闘中に勝手に治ると思――」

「いやもう無茶苦茶凄いよシズク!」

「此処までの強化魔術、普通は人に掛けられませんよ!?」

「しかもこれ四人同時に掛けられんだろ!? いや、前衛できねえとか言ってたけど、お前後衛力は俺達の中でぶっちぎりだぞこれ!」

「え、そ、そうっすか!? ……そうっすか、えへへ」

 そう言ってシズクも笑みを浮かべる。
 いやほんと、冗談抜きで凄いんだけど。
 控えめに言って無茶苦茶。

 シズクは後衛としてとんでもない力を秘めている。
 私とシルヴィとシズクがオールラウンダーの中でそれぞれ得意不得意があったりしてバランスが取れてるのに対して、後衛専門でそのバランスを取れる。

 いや、あの……ほんとうに、凄いお方がパーティーに入りましたよ。
 で、そんなシズクがパーティーに入ったという事は。

「これもう私達……無敵じゃない?」

 なんか誰にも負ける気しないんだけど。

「確かに」

「そうだな……負ける気がしねえ」

「まあドラゴン拳でシバける人達の出力が更に上がったって考えたら……無敵っすね」

「うん、無敵のパーティー此処に結成だよ」

 冗談抜きで。

 今この世界で何が起きているのかは分からないけど。
 この四人なら何が起きても大丈夫なような、そんな気がするよ。
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