最強聖女は追放されたので冒険者になります。なおパーティーメンバーは全員同じような境遇の各国の元最強聖女となった模様。

山外大河

文字の大きさ
91 / 280
二章 聖女さん、新しい日常を謳歌します。

11 黒装束の男、提案する

しおりを挟む
「……そういえば聖女の加護云々などと余計な事を言って墓穴を掘っていたな。あの状況的に隠すのは無理か」

 苦笑いを浮かべて男は言う。

「確かにその通りだ。身元が割れるから何処の国かとは言えないが……あの人は聖女だ」

「そっか……やっぱりあの子も聖女なんだ」

 予想通り、あの子は聖女だった。
 ……そしてあの子が聖女だとすれば、何処かの国の中で結界の維持をしているんじゃなくて、あんな場所で何かをしていたのなら、きっと現役じゃない。
 そして現役ではないとすれば……あの子も私達と同じパターンな可能性もある。

 そしてその事を深く掘り下げようとした所で、男はこれまでの冷静で落ち着いた表情を崩して言う。

「……あの子も?」

「……」

 しまった思わず他にも聖女を知っているというか、私が聖女ですって取れるような事言っちゃったよ。
 まあ隠す事でもないし……それに、今気付いた。

「……実は私達も聖女なんだ」

 今この状況では、私達が聖女である事をオープンにした方が良いという事に。
 だってそうだ。

 今までの私と目の前の男との関係性は何かをやっていた実行犯と偶然見かけた目撃者だとか、命懸けで戦った相手だとか、関係性としてはとても遠い物になる訳だけど。
 それは今私達で共有されている情報での話。

 もし私達四人が追放された理由があんなアホみたいな理由じゃなくて、大きな問題が裏で起きていたとして。それと同じ事が目の前の男と一緒に居た女の子にも起きていたとして。
 ……私達が同じ問題を抱えている元聖女という情報を出せば、私達は偶然トラブルに巻き込まれた被害者から同じ問題を抱える関係者へと変わる。
 そうすれば私が知りたい情報だって、流れてきてもおかしくない。
 そして……目の前の男が本当は善人だと仮定して、同じ問題を抱えているのだとすれば、共有すべき情報は共有するべきだと思う。

 だから……私達の情報を、此処で前に押し出す事にする。

「……」

 そして男は私の突然のカミングアウトに黙り込むも、やがて考えが纏まったかのように呟く。

「……なるほど、そう来たか。いや、来てしまったというべきか」

 そんな明確に良くない事が起きたと思わせるような不穏な言葉を。
 そして一拍空けてから男は言う。

「すまないが一つ、図々しい提案がある」

「どうぞ? 言ってみてよ」

「……当然此処から先もお前の質問には答えられる範囲で応える。だが、いくつか俺からも質問させてはくれないか? 僅かな可能性として考えていたお前らが聖女なのではないかという話が本当なのだと確定してしまった以上、どうやら俺にもお前達から得なくてはならない情報があるらしい」

 そして、と男は言う。

「それを聞いた上で俺からも伝えなければならない事が見えてくるかもしれない」

「つまりお互いが持ってる情報の擦り合わせをしようって事だね」

「……そういう事だ。お互い全ての事を話せるわけでは無いだろうが……少なくともこちらは、こうなった以上多少は開示できる情報の幅が広がった……で、どうだ? こちらからも少し質問してもいいか?」

「どうぞ。私はもう一回聞いたしね。次はそっちの番」

「では第一の質問だ」

 男は私に問いかけてくる。

「お前らがなんらかの理由で国を追われているか否か。そしてそうなるに至った経緯を、話せる範囲で話して欲しい」

 まずはそんなこれまで色々な人に何度も話してきた、こちらの身の上事情について。
しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。

SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない? その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。 ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。 せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。 こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。

金貨増殖バグが止まらないので、そのまま快適なスローライフを送ります

桜井正宗
ファンタジー
 無能の落ちこぼれと認定された『ギルド職員』兼『ぷちドラゴン』使いの『ぷちテイマー』のヘンリーは、職員をクビとなり、国さえも追放されてしまう。  突然、空から女の子が降ってくると、キャッチしきれず女の子を地面へ激突させてしまう。それが聖女との出会いだった。  銀髪の自称聖女から『ギフト』を貰い、ヘンリーは、両手に持てない程の金貨を大量に手に入れた。これで一生遊んで暮らせると思いきや、金貨はどんどん増えていく。増殖が止まらない金貨。どんどん増えていってしまった。  聖女によれば“金貨増殖バグ”だという。幸い、元ギルド職員の権限でアイテムボックス量は無駄に多く持っていたので、そこへ保管しまくった。  大金持ちになったヘンリーは、とりあえず念願だった屋敷を買い……スローライフを始めていく!?

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました

かにくくり
ファンタジー
 魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。  しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。  しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。  勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。  そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。  相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。 ※小説家になろうにも掲載しています。

追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?

タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。 白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。 しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。 王妃リディアの嫉妬。 王太子レオンの盲信。 そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。 「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」 そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。 彼女はただ一言だけ残した。 「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」 誰もそれを脅しとは受け取らなかった。 だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。

聖女が降臨した日が、運命の分かれ目でした

猫乃真鶴
ファンタジー
女神に供物と祈りを捧げ、豊穣を願う祭事の最中、聖女が降臨した。 聖女とは女神の力が顕現した存在。居るだけで豊穣が約束されるのだとそう言われている。 思ってもみない奇跡に一同が驚愕する中、第一王子のロイドだけはただ一人、皆とは違った視線を聖女に向けていた。 彼の婚約者であるレイアだけがそれに気付いた。 それが良いことなのかどうなのか、レイアには分からない。 けれども、なにかが胸の内に燻っている。 聖女が降臨したその日、それが大きくなったのだった。 ※このお話は、小説家になろう様にも掲載しています

処理中です...