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二章 聖女さん、新しい日常を謳歌します。
ex 受付聖女達、歪さ満点仮設四人パーティー
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「……ルカ君とのパスが切れた」
ミカは震えた声で静かにそう呟く。
「パス?」
「なんの事だ」
シエルとマルコは何の事か分かっていないようだが、一応アンナ達の戦いの話を聞いているシズクには理解できる。
恐らくルカは何らかの魔術でミカから力を供給されている。
だからそれに勘づいたアンナは、空間を断絶させてパスを断ち切りルカとの戦いに勝利した。
そしてその後、その以上を察したようにミカがアンナ達の元へと飛んできた訳だ。
……つまり。
「ルカさんがピンチなんすね」
「……」
ミカは静かにそう頷いた。
そしてまだ動揺してまともな会話が出来そうにないミカに変わって、色々と察する事が出来たシズクが言う。
「シエルさんは知ってると思うっすけど、アンナさんと一緒に突入している男の人とミカには面識があるっす。で、ミカはその人のピンチを察する事ができる訳なんすよ……そしてその人の元への長距離の転移もできるっす」
結構大雑把だがざっくりと説明。
「……って事は此処は連中のアジトか。ってちょっと待て、具体的にアジトの位置は把握してねえが、相当な距離が離れてんじゃねえか? それを軽々と飛んだって事なのか? 一体お前は……」
「まあそこはそれ程重要じゃないと思うよマコっちゃん」
そう言ってシエルがそれ以上話題が広がらないようにしてくれる。
……ミカは今分かっている情報だけでも、多分シズク達四人よりも厄介な境遇に立たされている。
それを表に出すのには慎重にならざるを得ない。
やはりこれまで色々と巻き込まれ続けて、それでも元気に生き続けているだけあって、その辺りのバランス感覚は抜群に高い。
そしてシエルは言う。
「今はこれからどうするかってのを、さっさと話し合った方がいいと思うよ」
「まあそうだろうな……既に敵陣の中に入っちまってる訳だし。気ぃ抜いたらいつ殺されるか分かったもんじゃねえからな」
と、そんなマルコの声を聞いて、ミカが力ない声で言う。
「……ごめんなさい」
「あ?」
「……巻き込んでしまって」
ほぼ間違いなく、あの時ミカは一人で飛ぶつもりだったのだろう。
急な事で気が動転してという理由もあるかもしれないが、ルカ程の実力者に何かが起きてしまう程の危険地帯にシズク達を巻き込みたくなかったのかもしれない。
……まあそもそもだ。
「元々ウチ達も此処に来る予定だったんだからさ、気にしなくてもいいよ」
「というかミカが一人で行って何か良くない事があったら嫌じゃないっすか。寧ろ巻き込んでくれてよかったっす」
「ほんとそれだよ! シズクちゃんも良く捕まえた!」
シズクをそう褒めるシエル。
だけどその後、少し真剣な声音でマルコに言う。
「ごめんね、無理に巻き込んで」
「あ?」
「ウチやシズクちゃんは巻き込まれに行った。だけどマルコを巻き込んだのはウチだからさ。色々とごめん」
この場に連れてきた事への謝罪。
だけどその謝罪をマルコは鼻で笑う。
「勘違いすんな。俺も直感で巻き込まれに行ったんだよ。お前らに何かあったらバカに何言われるか分かったもんじゃねえからな!」
「……ありがと」
「おう」
そして仕切り治すようにマルコが言う。
「で、どうする。多分お前らに此処から逃げろなんて言っても聞かねえだろうから、進む事になる訳だが……俺達の目標はルカって奴を助け出すって事でいいのか?」
「……ありがとうございます」
ミカが静かに礼を言い、そこにシエルが付け加える。
「あとルカさんが危ないって事は、あっちゃんも危ないって事なんだよね。だからあっちゃんも無事助け出す」
「それにステラさんもこの場所を特定できているなら突入してそうだし……シルヴィさんも分からないですけど何となくいそうだし。その二人もっすね」
「ん? おいおい待て待て。なんか俺の知らねえ登場人物が二人も増えたぞ! なんだそのステラとシルヴィって奴ら……って思いだした! あのバカが言ってたアンナって奴と同じ境遇の聖女だ! 待て! ソイツらも此処にきてるのか!?」
「一人は高確率でね。もう一人は……こうして同じ事件に巻き込まれて同じ場所にいる聖女がこんなにいる時点で、なんかいてもおかしくないよね」
「聖女が四人、か……聖女大集合じゃねえか」
(いや、正確には多分五人なんすけどね……)
「ほんと、最近世の中無茶苦茶すぎやしねえか……」
無茶苦茶な状況に半ば呆れるようにため息を付いた後、話を纏める。
「……よし。じゃあとりあえずやる事纏めるぞ。これから俺達は危機的状況にあるお前らの知人を全員助け出して、無事全員で帰る。その過程で可能なら……ていうかできる限りこの計画も潰す。それでいいか!」
「意義なーし」
「まあやらないといけない事全部纏めたらそうなるっすね」
「……ありがとうございます!」
突入までの経緯は想定外だったが、無事この場の全員が同じ方向を向いている。
とはいえ。
(アンナさんと同格のルカさんをマズい状況に追い込む相手に、このメンツで行けるっすかね?)
怪我人の一般人。
魔術を制限された高確率で聖女の女の子。
実力不明のマフィアの構成員。
……そして自分。
果たしてどこまでやれるか。
……だが。
「そうなったら善は急げだ。おい、そのルカって奴は近くに居るのか?」
「空間が歪んでいて転移先がズレましたけど……結構近くに居ます」
「ならさっさと行こう。ダッシュで行こう」
此処に居る三人は、きっとそれが分かっていても臆せず立っている。
うまくやれるんじゃないかと思わせてくれる。
だったら自分も迷いは捨てろ。
限りなく理想に近い形で今回の一件を終わらせる為に。
誰も死なせない為に。
「そんな訳で、シズクちゃん。強化魔術頼める?」
「はいっす!」
自分も出せる限りの全力で戦っていこう。
こうして。
元聖女と王女とマフィアとケーキ屋の一般人という、歪さが服を着て歩いた
ような仮設四人パーティーが動き出した。
ミカは震えた声で静かにそう呟く。
「パス?」
「なんの事だ」
シエルとマルコは何の事か分かっていないようだが、一応アンナ達の戦いの話を聞いているシズクには理解できる。
恐らくルカは何らかの魔術でミカから力を供給されている。
だからそれに勘づいたアンナは、空間を断絶させてパスを断ち切りルカとの戦いに勝利した。
そしてその後、その以上を察したようにミカがアンナ達の元へと飛んできた訳だ。
……つまり。
「ルカさんがピンチなんすね」
「……」
ミカは静かにそう頷いた。
そしてまだ動揺してまともな会話が出来そうにないミカに変わって、色々と察する事が出来たシズクが言う。
「シエルさんは知ってると思うっすけど、アンナさんと一緒に突入している男の人とミカには面識があるっす。で、ミカはその人のピンチを察する事ができる訳なんすよ……そしてその人の元への長距離の転移もできるっす」
結構大雑把だがざっくりと説明。
「……って事は此処は連中のアジトか。ってちょっと待て、具体的にアジトの位置は把握してねえが、相当な距離が離れてんじゃねえか? それを軽々と飛んだって事なのか? 一体お前は……」
「まあそこはそれ程重要じゃないと思うよマコっちゃん」
そう言ってシエルがそれ以上話題が広がらないようにしてくれる。
……ミカは今分かっている情報だけでも、多分シズク達四人よりも厄介な境遇に立たされている。
それを表に出すのには慎重にならざるを得ない。
やはりこれまで色々と巻き込まれ続けて、それでも元気に生き続けているだけあって、その辺りのバランス感覚は抜群に高い。
そしてシエルは言う。
「今はこれからどうするかってのを、さっさと話し合った方がいいと思うよ」
「まあそうだろうな……既に敵陣の中に入っちまってる訳だし。気ぃ抜いたらいつ殺されるか分かったもんじゃねえからな」
と、そんなマルコの声を聞いて、ミカが力ない声で言う。
「……ごめんなさい」
「あ?」
「……巻き込んでしまって」
ほぼ間違いなく、あの時ミカは一人で飛ぶつもりだったのだろう。
急な事で気が動転してという理由もあるかもしれないが、ルカ程の実力者に何かが起きてしまう程の危険地帯にシズク達を巻き込みたくなかったのかもしれない。
……まあそもそもだ。
「元々ウチ達も此処に来る予定だったんだからさ、気にしなくてもいいよ」
「というかミカが一人で行って何か良くない事があったら嫌じゃないっすか。寧ろ巻き込んでくれてよかったっす」
「ほんとそれだよ! シズクちゃんも良く捕まえた!」
シズクをそう褒めるシエル。
だけどその後、少し真剣な声音でマルコに言う。
「ごめんね、無理に巻き込んで」
「あ?」
「ウチやシズクちゃんは巻き込まれに行った。だけどマルコを巻き込んだのはウチだからさ。色々とごめん」
この場に連れてきた事への謝罪。
だけどその謝罪をマルコは鼻で笑う。
「勘違いすんな。俺も直感で巻き込まれに行ったんだよ。お前らに何かあったらバカに何言われるか分かったもんじゃねえからな!」
「……ありがと」
「おう」
そして仕切り治すようにマルコが言う。
「で、どうする。多分お前らに此処から逃げろなんて言っても聞かねえだろうから、進む事になる訳だが……俺達の目標はルカって奴を助け出すって事でいいのか?」
「……ありがとうございます」
ミカが静かに礼を言い、そこにシエルが付け加える。
「あとルカさんが危ないって事は、あっちゃんも危ないって事なんだよね。だからあっちゃんも無事助け出す」
「それにステラさんもこの場所を特定できているなら突入してそうだし……シルヴィさんも分からないですけど何となくいそうだし。その二人もっすね」
「ん? おいおい待て待て。なんか俺の知らねえ登場人物が二人も増えたぞ! なんだそのステラとシルヴィって奴ら……って思いだした! あのバカが言ってたアンナって奴と同じ境遇の聖女だ! 待て! ソイツらも此処にきてるのか!?」
「一人は高確率でね。もう一人は……こうして同じ事件に巻き込まれて同じ場所にいる聖女がこんなにいる時点で、なんかいてもおかしくないよね」
「聖女が四人、か……聖女大集合じゃねえか」
(いや、正確には多分五人なんすけどね……)
「ほんと、最近世の中無茶苦茶すぎやしねえか……」
無茶苦茶な状況に半ば呆れるようにため息を付いた後、話を纏める。
「……よし。じゃあとりあえずやる事纏めるぞ。これから俺達は危機的状況にあるお前らの知人を全員助け出して、無事全員で帰る。その過程で可能なら……ていうかできる限りこの計画も潰す。それでいいか!」
「意義なーし」
「まあやらないといけない事全部纏めたらそうなるっすね」
「……ありがとうございます!」
突入までの経緯は想定外だったが、無事この場の全員が同じ方向を向いている。
とはいえ。
(アンナさんと同格のルカさんをマズい状況に追い込む相手に、このメンツで行けるっすかね?)
怪我人の一般人。
魔術を制限された高確率で聖女の女の子。
実力不明のマフィアの構成員。
……そして自分。
果たしてどこまでやれるか。
……だが。
「そうなったら善は急げだ。おい、そのルカって奴は近くに居るのか?」
「空間が歪んでいて転移先がズレましたけど……結構近くに居ます」
「ならさっさと行こう。ダッシュで行こう」
此処に居る三人は、きっとそれが分かっていても臆せず立っている。
うまくやれるんじゃないかと思わせてくれる。
だったら自分も迷いは捨てろ。
限りなく理想に近い形で今回の一件を終わらせる為に。
誰も死なせない為に。
「そんな訳で、シズクちゃん。強化魔術頼める?」
「はいっす!」
自分も出せる限りの全力で戦っていこう。
こうして。
元聖女と王女とマフィアとケーキ屋の一般人という、歪さが服を着て歩いた
ような仮設四人パーティーが動き出した。
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