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二章 聖女さん、新しい日常を謳歌します。
ex 聖女ちゃんと黒装束の聖女、一時休戦
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(こ、これ前も大変な事になってるっすけど、隣も相当じゃないっすか!?)
ミカにとってそれはそう簡単に露呈してはいけない事の筈だ。
喫茶店でそれが露呈した時に一触即発という風にならなかったように、この場でもそういう事にはならないとは思うけれど……それでも自分が殺そうとした相手が隣にいて、しかも正体がバレているというのは、相当エグい状況に思えた。
(こ、この場合どうフォローすれば……)
正直シルヴィ達とは仲間だし友達だけれど、ミカとも共闘したりと交友を深めている形になるので、何をどうするのが正解なのかがまるで見えてこない。
だけど……そもそもフォローなど必要なかったのかもしれない。
「……そうですね……うん、数日ぶり」
ミカはシルヴィの問いに、静かにそう答える。
自らの正体がステラとシルヴィを襲った黒装束だと告げるように。
そして一瞬驚きはしただろうけど……それでも喫茶店の時のように自らの正体が露呈して過呼吸になるような事はもう無い。
「あっさり認めるんですね」
「……認めないと、何も変わらないから。あの時は本当にすみませんでした」
そして一拍空けてからミカは言う。
「あれだけの事をしておいて、こんな簡単な謝罪しかできてないのに言うべき事では無いのは百も承知です……だけど、すみません。お願いがあります」
「良いですよ今は。多分目的は同じですし……それに、何かあっても次も捻じ伏せてみせますし」
そう言って肩を震わせたミカにシルヴィは手を触れる。
「なるほど、普通に動けている時点で大体察しましたけど、八割方解かれてますね……それなら解き方をある程度把握してると思いますし、実際自分の体に受けて残り二割の解き方を導き出したって考えれば……なんか私の通用しなかったのも、そこの人の奴が現在進行形で若干効いてるっぽいのにも説明が付きますね」
そんな独り言の様な事を呟きながら、何かを始めている。
(そ、そうだ。ミカはシルヴィさんの拘束魔術を喰らっている。それの解除っすか!?)
それができればミカが全力を振るえる。
そして自分が関わっていなかったあの山での戦いで、ステラやシルヴィは把握しているのだろう。
拘束を解けば、この状況を打開できるという事に。
そして数秒後、シルヴィは言う。
「さあ、これで魔術を使っても大丈夫だと思いますよ」
「……ありがとうございます」
言いながらミカは手を何度か握って開く。
その感覚を確かめるように。
そしてそんなミカにシルヴィは言う。
「私達があなたにやってほしい事が何か、分かりますか?」
「分かってます。私がルカ君の意識を奪います」
そう言って、心から感謝するような声音でシルヴィに言う。
「あなたも……今ルカ君を止めているあの人も。ルカ君を殺さないでくれていて、ありがとうございます」
それだけ言って、ミカは床を蹴り一気に加速する。
聖女としての強力な強化魔術に、シズクの強化魔術を乗せて、一瞬でステラとルカの元へ。
「変わります!」
「待ってた!」
最後に拳を一撃叩き込んで隙を作った瞬間、ステラがバックステップ。
そしてそこに入れ替わるように現れたミカが、跳び付き抱き着くようにタックルをかまし、勢いそのままにルカに抱き着いたまま勢いよく床に転がる。
「なんだアイツも滅茶苦茶強いじゃねえか」
おそらくこの場で唯一ミカのポテンシャルを正確に把握していなかったマルコがそう言う中、ステラが何度かバックステップを繰り返しこちらに戻ってきて、そんなステラにシルヴィは言う。
「多分これで決まりましたね」
「ああ、流石に意識落とす事位は出来る筈だ……何せ少し触れただけで一気に体力持っていかれるからな、アイツのエナジードレインは」
二人は勝利を確信しているようだった。
そしてそんな期待に応えるように……ゆっくりとミカだけが立ち上がり言った。
「終わりました。これで目を覚ましたら元に戻っている筈です」
「そうっすか……良かった」
それを聞いて。
ゆっくりとルカを背負うミカを見て胸を撫で下ろす。
なにはともあれうまくいったのなら良かったと、心の底からそう思う。
ルカとのパスが切れた時点であの動揺っぷりだったから。もし不幸な事が起きたりすれば、もう目も当てられない。
どんな言葉を掛けて良いかが分からなくなってしまうから。
「良かったぁ……飛び出してきた人の姿を見た時はどうなる事かと……良かったねぇミカちゃん……と、というかウチだけマジで何もしてねえ!」
「いやそもそもなんでシエルがこんな所に居るんだよ。あとシズクも……っていうかそこの人は誰?」
「というかシエルさん血塗れじゃないですか! 一体何がどうなったらこんな事に……ってそういえばなんか色々巻き込まれやすいって話だったような」
「まあ大体そんな感じで今に至るって感じで。シズクちゃんとミカちゃん……ああ、あの子ね。今回この三人で色々あった感じ」
「……アンナ結構苦労したんだろうなぁ」
とステラがため息混じりにそう言った時、シズクとシエルはハっとした表情になる。
(そうだ……正直話したい事とか山程あるっすけど、マジでそんな余裕ねえっすよ!)
ルカがこういう形で自分達の前へと立ち塞がった。
……では、一緒に乗り込んだ筈のアンナは今一体どうなっている?
そしてマルコがシズクに言う。
「おい。さっさとあのルカって男に回復魔術を掛けてやれ。今のアイツにそこの嬢ちゃんが言うような再生能力があるのかは分からねえが、どちらにしても一分一秒でも早く意識を取り戻して貰わねえと困るだろ。でないとアイツと一緒に突入したアンナとかいう聖女の安否が分からねえ」
「そ、そうっすね!」
「お、おいちょっと待て。アンナがアイツと此処に来てるってどういう事だ!? だってアイツは例の──」
「ボクちょっとルカさんの応急処置してくるんで! シエルさん諸々の事情の説明お願いするっす!」
「わ、分かったよ!」
「りょ、了解! ああ、マコっちゃん耳塞いでて!」
「多分アイツらの正体隠したいんだろうが……流石に一連の流れで察してるぞ例の黒装束の二人組だろ」
「うわ、此処までうまく隠してたのに!」
後ろでマフィアにミカ達の情報が露呈している事が判明するという、正直もう良いのか悪いのか良く分からない状況が展開されているが、それに関してはもう部長を含めたマフィアっぽくないマフィアの方々を信用するしかない。
だから今は目の前の事に集中する。
おそらく強敵と孤軍奮闘している筈のアンナの元へ、一分一秒でも早く到達する為に。
ミカにとってそれはそう簡単に露呈してはいけない事の筈だ。
喫茶店でそれが露呈した時に一触即発という風にならなかったように、この場でもそういう事にはならないとは思うけれど……それでも自分が殺そうとした相手が隣にいて、しかも正体がバレているというのは、相当エグい状況に思えた。
(こ、この場合どうフォローすれば……)
正直シルヴィ達とは仲間だし友達だけれど、ミカとも共闘したりと交友を深めている形になるので、何をどうするのが正解なのかがまるで見えてこない。
だけど……そもそもフォローなど必要なかったのかもしれない。
「……そうですね……うん、数日ぶり」
ミカはシルヴィの問いに、静かにそう答える。
自らの正体がステラとシルヴィを襲った黒装束だと告げるように。
そして一瞬驚きはしただろうけど……それでも喫茶店の時のように自らの正体が露呈して過呼吸になるような事はもう無い。
「あっさり認めるんですね」
「……認めないと、何も変わらないから。あの時は本当にすみませんでした」
そして一拍空けてからミカは言う。
「あれだけの事をしておいて、こんな簡単な謝罪しかできてないのに言うべき事では無いのは百も承知です……だけど、すみません。お願いがあります」
「良いですよ今は。多分目的は同じですし……それに、何かあっても次も捻じ伏せてみせますし」
そう言って肩を震わせたミカにシルヴィは手を触れる。
「なるほど、普通に動けている時点で大体察しましたけど、八割方解かれてますね……それなら解き方をある程度把握してると思いますし、実際自分の体に受けて残り二割の解き方を導き出したって考えれば……なんか私の通用しなかったのも、そこの人の奴が現在進行形で若干効いてるっぽいのにも説明が付きますね」
そんな独り言の様な事を呟きながら、何かを始めている。
(そ、そうだ。ミカはシルヴィさんの拘束魔術を喰らっている。それの解除っすか!?)
それができればミカが全力を振るえる。
そして自分が関わっていなかったあの山での戦いで、ステラやシルヴィは把握しているのだろう。
拘束を解けば、この状況を打開できるという事に。
そして数秒後、シルヴィは言う。
「さあ、これで魔術を使っても大丈夫だと思いますよ」
「……ありがとうございます」
言いながらミカは手を何度か握って開く。
その感覚を確かめるように。
そしてそんなミカにシルヴィは言う。
「私達があなたにやってほしい事が何か、分かりますか?」
「分かってます。私がルカ君の意識を奪います」
そう言って、心から感謝するような声音でシルヴィに言う。
「あなたも……今ルカ君を止めているあの人も。ルカ君を殺さないでくれていて、ありがとうございます」
それだけ言って、ミカは床を蹴り一気に加速する。
聖女としての強力な強化魔術に、シズクの強化魔術を乗せて、一瞬でステラとルカの元へ。
「変わります!」
「待ってた!」
最後に拳を一撃叩き込んで隙を作った瞬間、ステラがバックステップ。
そしてそこに入れ替わるように現れたミカが、跳び付き抱き着くようにタックルをかまし、勢いそのままにルカに抱き着いたまま勢いよく床に転がる。
「なんだアイツも滅茶苦茶強いじゃねえか」
おそらくこの場で唯一ミカのポテンシャルを正確に把握していなかったマルコがそう言う中、ステラが何度かバックステップを繰り返しこちらに戻ってきて、そんなステラにシルヴィは言う。
「多分これで決まりましたね」
「ああ、流石に意識落とす事位は出来る筈だ……何せ少し触れただけで一気に体力持っていかれるからな、アイツのエナジードレインは」
二人は勝利を確信しているようだった。
そしてそんな期待に応えるように……ゆっくりとミカだけが立ち上がり言った。
「終わりました。これで目を覚ましたら元に戻っている筈です」
「そうっすか……良かった」
それを聞いて。
ゆっくりとルカを背負うミカを見て胸を撫で下ろす。
なにはともあれうまくいったのなら良かったと、心の底からそう思う。
ルカとのパスが切れた時点であの動揺っぷりだったから。もし不幸な事が起きたりすれば、もう目も当てられない。
どんな言葉を掛けて良いかが分からなくなってしまうから。
「良かったぁ……飛び出してきた人の姿を見た時はどうなる事かと……良かったねぇミカちゃん……と、というかウチだけマジで何もしてねえ!」
「いやそもそもなんでシエルがこんな所に居るんだよ。あとシズクも……っていうかそこの人は誰?」
「というかシエルさん血塗れじゃないですか! 一体何がどうなったらこんな事に……ってそういえばなんか色々巻き込まれやすいって話だったような」
「まあ大体そんな感じで今に至るって感じで。シズクちゃんとミカちゃん……ああ、あの子ね。今回この三人で色々あった感じ」
「……アンナ結構苦労したんだろうなぁ」
とステラがため息混じりにそう言った時、シズクとシエルはハっとした表情になる。
(そうだ……正直話したい事とか山程あるっすけど、マジでそんな余裕ねえっすよ!)
ルカがこういう形で自分達の前へと立ち塞がった。
……では、一緒に乗り込んだ筈のアンナは今一体どうなっている?
そしてマルコがシズクに言う。
「おい。さっさとあのルカって男に回復魔術を掛けてやれ。今のアイツにそこの嬢ちゃんが言うような再生能力があるのかは分からねえが、どちらにしても一分一秒でも早く意識を取り戻して貰わねえと困るだろ。でないとアイツと一緒に突入したアンナとかいう聖女の安否が分からねえ」
「そ、そうっすね!」
「お、おいちょっと待て。アンナがアイツと此処に来てるってどういう事だ!? だってアイツは例の──」
「ボクちょっとルカさんの応急処置してくるんで! シエルさん諸々の事情の説明お願いするっす!」
「わ、分かったよ!」
「りょ、了解! ああ、マコっちゃん耳塞いでて!」
「多分アイツらの正体隠したいんだろうが……流石に一連の流れで察してるぞ例の黒装束の二人組だろ」
「うわ、此処までうまく隠してたのに!」
後ろでマフィアにミカ達の情報が露呈している事が判明するという、正直もう良いのか悪いのか良く分からない状況が展開されているが、それに関してはもう部長を含めたマフィアっぽくないマフィアの方々を信用するしかない。
だから今は目の前の事に集中する。
おそらく強敵と孤軍奮闘している筈のアンナの元へ、一分一秒でも早く到達する為に。
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