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二章 聖女さん、新しい日常を謳歌します。
ex 黒装束の男、目を覚ます
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「とりあえず応急処置だけでもするんで、どこかその辺に寝かせて……うっわ、すっごい怪我っすね」
改めてミカ達に近付いたシズクは、ルカの姿を目にしてそう呟いた。
まあステラの攻撃は後方から見ているだけでもえげつなかったので納得は出来るが。
(とにかく、シルヴィさんが言ってた自然治癒みたいなのは現状掛かってないっぽいっすね)
殴られた際の怪我がそのまま残っている。
意識がある間は回復し続けたのかもしれないが、今はその恩恵を得られていないらしい。
そしてシズクに促されるようにルカを寝かせたミカはシズクに言う。
「ありがとうシズク。でもいいよ、私がやるから。こっちより……えーっと、シルヴィさんでいいのかな。あっちを治療してあげて。さっき思いっきり壁に叩きつけられて怪我してるみたいだし」
言いながらミカはルカに対して回復魔術を掛け始めるが、同じようにシズクも手を伸ばした。
「いや、今結構急ぎなんで。こっちを二人掛かりでやるっすよ」
「え? なんていえば良いのかな……できるの?」
ミカが言おうとしている事は良く理解できる。
怪我人に対して複数人で回復魔術を掛ければそれだけ早く治るよね、というのは理想論だ。
普通のやり方では互いに干渉して弾かれて、まともに効果を発揮できない。
既に強化魔術を使っている人間に強化魔術を使うのも同じで、うまくやらなければ本人が使っている強化魔術と干渉して弾かれる。
故に超高難易度の技術となる。
だがそれを容易に熟せるシズクならば、回復魔術でも同じ事ができる。
「できるっすよ。まともな殴り合いができなくても、こういう事なら」
言いながら、ミカの魔術と干渉しないように術式を展開する。
「ほんとだ、うまくいってる。凄いよシズク」
「でもミカもこの人に力を供給みたいな事をしてるんすよね? だったらミカも同じことをできるんじゃないっすか?」
「いや、私のは全然違う感じのだから。こういうのは難しいかな」
そう言って苦笑いを浮かべるミカ。
そんなミカにシズクは問いかける。
「それにしても良かったんすか。誤魔化しもしないから思いっきり正体バレてるっすけど」
「……いや良くないんだけどね。でもルカ君を助ける為だから」
「……そっすか。まあなんか面倒な事になったらある程度フォローはするつもりなんで、そん時は遠慮なく頼ってほしいっすよ」
「この場合シズクはあの人達の味方じゃないと駄目なんじゃないの?」
「ボクはもうどっちもの味方をしたい感じっすから。まあ今後共仲良くしていこうって事で」
流石にもうどっちの味方だとか、両極端な事は言えない。
「……ありがと」
「そんな訳で色々厄介事が終わって、お互い時間が合う時で良いっす。シエルさんも誘ってカラオケ行くっすよ」
「聞きたい事を色々聴く為に?」
「いや、普通に遊びにっす」
「あははそっか……うん、そうだね。楽しみにしてるね」
「じゃあ頑張ってこの一件、うまく終わらせないとっすね」
「……うん」
そんなやり取りをしていた時だった。
「……ッ」
ルカが呻き声と共に、ゆっくりと瞼を開いた。
「ルカ君! 大丈夫!? 私の事分かる?」
「ミカ……様? 一体今何がどうなって…………ああ、そうか。意識を失えたのか」
脳を覚醒させるようにそんな事を呟きながら、ゆっくりと体を起こし始める。
「動ける!? 痛い所とか無い!?」
「全身が痛いですね。仕方ないとはいえ、とんでもない手数で殴り続けやがって……ってマズイ!」
完全に覚醒したように、ルカが声を上げる。
「ミカ様! 俺が意識を失ってからどれ位時間が経ちましたか!?」
とても必死な形相で。
それに若干驚きながらもミカは答える。
「1、2分程度だよ……どうかした?」
「……すみません、結構切羽詰まってる事がありまして」
そう言いながらルカはふら付きながらも立ち上がろうとする。
「あ、まだまともに動ける状態じゃ!」
「……ッ!」
回復魔術を一時中断させたミカが、倒れかかったルカを支える。
「……すみません」
「いいよ。それで……そんなに無理して立ち上がって、一体どうしたの?」
優しい声音で問いかけるミカの言葉にルカは答える。
「此処に俺と一緒に突入した奴が居ます。そして今化物染みた強さの敵を一人で任せてるような状態なんです……早く俺も行かないと」
そういうルカにシズクは言う。
「そのもう一人は……アンナさんっすよね。アンナ・ベルナール」
「……ッ!? 誰かは知らんがどうしてそれを……ッ!?」
「この人はシズク。ほら……この前の三人の仲間だよ」
「……そうか。お前がベルナールの言っていた四人目か」
「ああ、あの喫茶店でボクの話も出てたんすね」
「少しだがな……って、なんで喫茶店の一件を知っている? というかなんでミカ様と一緒に行動を――」
「まあその辺りは後で説明するよ」
そんな事よりも、とミカは言う。
「確認するよ、ルカ君。私達がやらないといけないのは二つだね……此処で起きている何かを止める事と、アンナさんを助け出す事。それでいい?」
「いや、私達ってミカ様は早く此処を出て下さい。あなたはこんな所に居ちゃいけない!」
「そういうのは話せる事全部話し終わってからにしてくれねえか、悪いけどさ」
シズク達の会話に、こちらに歩み寄ってきたスタラが割って入る。
どうやら向うは向うで、この短時間で情報の交換が終わったらしい。
全員ルカの周りに集合していた。
流石シエルとシズクは思う。
良くも悪くもこういう事に慣れ過ぎている。
そしてステラは言う。
「アンタがアンナとどういう関係かとか聞きたい事は山程あるけどさ、とにかく今それは良い。此処の事と、今のアンナの事。知ってることをできる限り簡潔に教えてくれ。全部丸く収める為によ」
改めてミカ達に近付いたシズクは、ルカの姿を目にしてそう呟いた。
まあステラの攻撃は後方から見ているだけでもえげつなかったので納得は出来るが。
(とにかく、シルヴィさんが言ってた自然治癒みたいなのは現状掛かってないっぽいっすね)
殴られた際の怪我がそのまま残っている。
意識がある間は回復し続けたのかもしれないが、今はその恩恵を得られていないらしい。
そしてシズクに促されるようにルカを寝かせたミカはシズクに言う。
「ありがとうシズク。でもいいよ、私がやるから。こっちより……えーっと、シルヴィさんでいいのかな。あっちを治療してあげて。さっき思いっきり壁に叩きつけられて怪我してるみたいだし」
言いながらミカはルカに対して回復魔術を掛け始めるが、同じようにシズクも手を伸ばした。
「いや、今結構急ぎなんで。こっちを二人掛かりでやるっすよ」
「え? なんていえば良いのかな……できるの?」
ミカが言おうとしている事は良く理解できる。
怪我人に対して複数人で回復魔術を掛ければそれだけ早く治るよね、というのは理想論だ。
普通のやり方では互いに干渉して弾かれて、まともに効果を発揮できない。
既に強化魔術を使っている人間に強化魔術を使うのも同じで、うまくやらなければ本人が使っている強化魔術と干渉して弾かれる。
故に超高難易度の技術となる。
だがそれを容易に熟せるシズクならば、回復魔術でも同じ事ができる。
「できるっすよ。まともな殴り合いができなくても、こういう事なら」
言いながら、ミカの魔術と干渉しないように術式を展開する。
「ほんとだ、うまくいってる。凄いよシズク」
「でもミカもこの人に力を供給みたいな事をしてるんすよね? だったらミカも同じことをできるんじゃないっすか?」
「いや、私のは全然違う感じのだから。こういうのは難しいかな」
そう言って苦笑いを浮かべるミカ。
そんなミカにシズクは問いかける。
「それにしても良かったんすか。誤魔化しもしないから思いっきり正体バレてるっすけど」
「……いや良くないんだけどね。でもルカ君を助ける為だから」
「……そっすか。まあなんか面倒な事になったらある程度フォローはするつもりなんで、そん時は遠慮なく頼ってほしいっすよ」
「この場合シズクはあの人達の味方じゃないと駄目なんじゃないの?」
「ボクはもうどっちもの味方をしたい感じっすから。まあ今後共仲良くしていこうって事で」
流石にもうどっちの味方だとか、両極端な事は言えない。
「……ありがと」
「そんな訳で色々厄介事が終わって、お互い時間が合う時で良いっす。シエルさんも誘ってカラオケ行くっすよ」
「聞きたい事を色々聴く為に?」
「いや、普通に遊びにっす」
「あははそっか……うん、そうだね。楽しみにしてるね」
「じゃあ頑張ってこの一件、うまく終わらせないとっすね」
「……うん」
そんなやり取りをしていた時だった。
「……ッ」
ルカが呻き声と共に、ゆっくりと瞼を開いた。
「ルカ君! 大丈夫!? 私の事分かる?」
「ミカ……様? 一体今何がどうなって…………ああ、そうか。意識を失えたのか」
脳を覚醒させるようにそんな事を呟きながら、ゆっくりと体を起こし始める。
「動ける!? 痛い所とか無い!?」
「全身が痛いですね。仕方ないとはいえ、とんでもない手数で殴り続けやがって……ってマズイ!」
完全に覚醒したように、ルカが声を上げる。
「ミカ様! 俺が意識を失ってからどれ位時間が経ちましたか!?」
とても必死な形相で。
それに若干驚きながらもミカは答える。
「1、2分程度だよ……どうかした?」
「……すみません、結構切羽詰まってる事がありまして」
そう言いながらルカはふら付きながらも立ち上がろうとする。
「あ、まだまともに動ける状態じゃ!」
「……ッ!」
回復魔術を一時中断させたミカが、倒れかかったルカを支える。
「……すみません」
「いいよ。それで……そんなに無理して立ち上がって、一体どうしたの?」
優しい声音で問いかけるミカの言葉にルカは答える。
「此処に俺と一緒に突入した奴が居ます。そして今化物染みた強さの敵を一人で任せてるような状態なんです……早く俺も行かないと」
そういうルカにシズクは言う。
「そのもう一人は……アンナさんっすよね。アンナ・ベルナール」
「……ッ!? 誰かは知らんがどうしてそれを……ッ!?」
「この人はシズク。ほら……この前の三人の仲間だよ」
「……そうか。お前がベルナールの言っていた四人目か」
「ああ、あの喫茶店でボクの話も出てたんすね」
「少しだがな……って、なんで喫茶店の一件を知っている? というかなんでミカ様と一緒に行動を――」
「まあその辺りは後で説明するよ」
そんな事よりも、とミカは言う。
「確認するよ、ルカ君。私達がやらないといけないのは二つだね……此処で起きている何かを止める事と、アンナさんを助け出す事。それでいい?」
「いや、私達ってミカ様は早く此処を出て下さい。あなたはこんな所に居ちゃいけない!」
「そういうのは話せる事全部話し終わってからにしてくれねえか、悪いけどさ」
シズク達の会話に、こちらに歩み寄ってきたスタラが割って入る。
どうやら向うは向うで、この短時間で情報の交換が終わったらしい。
全員ルカの周りに集合していた。
流石シエルとシズクは思う。
良くも悪くもこういう事に慣れ過ぎている。
そしてステラは言う。
「アンタがアンナとどういう関係かとか聞きたい事は山程あるけどさ、とにかく今それは良い。此処の事と、今のアンナの事。知ってることをできる限り簡潔に教えてくれ。全部丸く収める為によ」
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