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二章 聖女さん、新しい日常を謳歌します。
ex 受付聖女達、動き出す
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その後、ルカが今の状況を簡潔に教えてくれた。
シズク達も把握している今回の一件の概要に加え、今自分達が戦っている相手の事を。
まず冗談のように強い男とアンナが交戦しているという事。
自分がその男に敗れて操られていたという事。
そしてその男も誰かに操られていて、その操っている誰かが明らかに次元の違う魔術を使っているという事。
この空間の事や、アンナ達のいる位置情報。
それらを簡潔に述べた所でステラとシルヴィが言う。
「だったらもう此処で悠長に話聞いてる場合じゃねえな。一秒でも早くアンナを助けに行かねえと」
「シズクさんの強化魔術もありますし、流石になんとかなる筈です」
そう言って動き出そうとするステラとシルヴィだが、ルカが静止する。
「待て。無策ではおそらく勝てんぞ」
「今の俺達の力があってもか? 聞いた感じやたらと頑丈みたいだけど、今の俺達ならそれも貫けるんじゃねえか?」
「さっきの俺との戦いを忘れたか。あの重ね掛けされた強化魔術は俺のではなく敵の物だ。つまり同等かそれ以上の自己再生能力を持ち合わせていてもおかしくない訳だ」
「……それは厄介っすね」
攻撃を通す事ができても、倒しきれずに再生する。
優位に戦いを進める事ができてもそれは一時的で、どこかでじり貧になってしまう。
そしてその攻略法を思いついたのか、マルコが言う。
「ならさっきみてえな感じで意識奪っちまえばいいんじゃねえか? さっきのエナジードレインなら肉体のダメージ関係なく意識を落とせる事はもう立証済みだしな」
「ふざけるな、ミカ様をあんな化物にぶつけられる訳――」
「いいよ、それでも」
ミカが言う。
「いや、いいわけ──」
「いいの。心配してくれてありがと、ルカ君」
ルカに回復魔術を掛けながらミカは言う。
「アンナさんにも、アンナさんの所に行こうとするシルヴィさんやステラさんにも一杯迷惑を掛けたし、シズクにだって怪我とかしてほしくないし。私が行って色々とうまく行くかもしれないなら、私は行くよ」
「ミカ様……」
そしてルカは悩むような表情を浮かべた後、ミカに言う。
「なら俺が全力でお守り──」
「シエルさん。マルコさん。ルカ君の事……お願いできますか?」
「え!?」
そんな声を上げるルカを尻目にシエルとマルコは言う。
「了解。任された」
「まああの馬鹿達との作戦行動ならともかく、俺一人じゃ此処に居ても足手纏いな感じもするからな。コイツの安全は俺が責任持って確保する」
「おい、勝手に話を進めるな……と言いたい所だが。足手纏い、か」
「おいなんだ俺の事ディスってんのか?」
「違う、俺の事だ」
そう言ってルカは自分の掌に視線を向ける。
そして感覚を確かめるように何度か手を握り、そして静かに呟く。
「確かに俺が行くと返ってミカ様を危険に晒すか」
……実際、そうなるとシズクは思う。
ステラがボコボコにした怪我はまだ殆ど治っていないし、エナジードレインで吸収された体力もそう簡単には戻らないだろうから、まともに戦える状態じゃない。
そして……ルカがそういう状態でも戦おうとしていたように。
ルカに危機が迫ったら、ミカは自分の身を顧みずに動くだろうから。
その判断は、きっと正しい。
そしてそういう判断を下したルカは、ステラとシルヴィに視線を向けて言う。
「お前らに何かを頼める立場ではないのは百も承知だが……ミカ様を頼む」
「ああ、任せてくれ」
「今後どうなるかは分からないですけど、少なくとも今は味方みたいですからね」
「……助かる」
「え、ちょ、ボクには何も無いんすか!?」
「お前……いや、キミの場合彼女らと一括りにはできないだろう。争った間柄な訳でもない。寧ろ状況を察するにミカ様が世話になったみたいで……ありがとう。悪いがもう少しだけミカ様の事を頼む」
「ああ、スルーされてんのかと思ったっすよ。まあ任せてっ欲しいっす。なんかもう友達みたいな感じっすから」
「友達……そうか」
ルイカがどこか安心したような表情を浮かべる。
それが何に対する安堵なのかは分からないけれど、とにかくこれでやる事は決まった。
「じゃあ四人共、事が終わったらどこかで合流しようよ」
「それなら俺らのアジトに来い。そこでコイツの治療もしてる」
言いながらマルコがルカを担ぎ上げる。
「了解っす。じゃあ終わったら向かうんで」
「おいアジトって……さっきシエルの話聞いた感じだとマフィアのアジトなんだろ?」
「そ、そんな軽々しく足踏み入れて良い所なんですか?」
「こんな所に足踏み入れてるような人達が何言ってるんすか」
「えーシズクちゃんだってビビリまくってたじゃん」
「それ此処でカミングアウトするんすか!?」
と、そんな恥ずかしさを誤魔化すように言う。
「じゃ、じゃあとにかく決める事全部決めたんで。さっさと行くっすよ」
「だな」
「ですね」
「行ってくるね、ルカ君」
そう言って四人は動き出そうとする。
そんな四人に、最後に一言ルカが言う。
「すまない、最後に一つ」
「なんすか?」
「ベルナールにすまなかったと言っておいてくれ。俺が役割を果たせなかった所為で、アイツは今窮地に陥っている」
「承ったっす」
「……では、よろしく頼む」
その言葉に静かに全員で頷いて、四人は走り出す。
各々が元々持つ高い出力の強化魔術にシズクの強化魔術を乗せた、最速の移動速度で。
孤軍奮闘しているアンナ・ベルナールを助ける為に。
シズク達も把握している今回の一件の概要に加え、今自分達が戦っている相手の事を。
まず冗談のように強い男とアンナが交戦しているという事。
自分がその男に敗れて操られていたという事。
そしてその男も誰かに操られていて、その操っている誰かが明らかに次元の違う魔術を使っているという事。
この空間の事や、アンナ達のいる位置情報。
それらを簡潔に述べた所でステラとシルヴィが言う。
「だったらもう此処で悠長に話聞いてる場合じゃねえな。一秒でも早くアンナを助けに行かねえと」
「シズクさんの強化魔術もありますし、流石になんとかなる筈です」
そう言って動き出そうとするステラとシルヴィだが、ルカが静止する。
「待て。無策ではおそらく勝てんぞ」
「今の俺達の力があってもか? 聞いた感じやたらと頑丈みたいだけど、今の俺達ならそれも貫けるんじゃねえか?」
「さっきの俺との戦いを忘れたか。あの重ね掛けされた強化魔術は俺のではなく敵の物だ。つまり同等かそれ以上の自己再生能力を持ち合わせていてもおかしくない訳だ」
「……それは厄介っすね」
攻撃を通す事ができても、倒しきれずに再生する。
優位に戦いを進める事ができてもそれは一時的で、どこかでじり貧になってしまう。
そしてその攻略法を思いついたのか、マルコが言う。
「ならさっきみてえな感じで意識奪っちまえばいいんじゃねえか? さっきのエナジードレインなら肉体のダメージ関係なく意識を落とせる事はもう立証済みだしな」
「ふざけるな、ミカ様をあんな化物にぶつけられる訳――」
「いいよ、それでも」
ミカが言う。
「いや、いいわけ──」
「いいの。心配してくれてありがと、ルカ君」
ルカに回復魔術を掛けながらミカは言う。
「アンナさんにも、アンナさんの所に行こうとするシルヴィさんやステラさんにも一杯迷惑を掛けたし、シズクにだって怪我とかしてほしくないし。私が行って色々とうまく行くかもしれないなら、私は行くよ」
「ミカ様……」
そしてルカは悩むような表情を浮かべた後、ミカに言う。
「なら俺が全力でお守り──」
「シエルさん。マルコさん。ルカ君の事……お願いできますか?」
「え!?」
そんな声を上げるルカを尻目にシエルとマルコは言う。
「了解。任された」
「まああの馬鹿達との作戦行動ならともかく、俺一人じゃ此処に居ても足手纏いな感じもするからな。コイツの安全は俺が責任持って確保する」
「おい、勝手に話を進めるな……と言いたい所だが。足手纏い、か」
「おいなんだ俺の事ディスってんのか?」
「違う、俺の事だ」
そう言ってルカは自分の掌に視線を向ける。
そして感覚を確かめるように何度か手を握り、そして静かに呟く。
「確かに俺が行くと返ってミカ様を危険に晒すか」
……実際、そうなるとシズクは思う。
ステラがボコボコにした怪我はまだ殆ど治っていないし、エナジードレインで吸収された体力もそう簡単には戻らないだろうから、まともに戦える状態じゃない。
そして……ルカがそういう状態でも戦おうとしていたように。
ルカに危機が迫ったら、ミカは自分の身を顧みずに動くだろうから。
その判断は、きっと正しい。
そしてそういう判断を下したルカは、ステラとシルヴィに視線を向けて言う。
「お前らに何かを頼める立場ではないのは百も承知だが……ミカ様を頼む」
「ああ、任せてくれ」
「今後どうなるかは分からないですけど、少なくとも今は味方みたいですからね」
「……助かる」
「え、ちょ、ボクには何も無いんすか!?」
「お前……いや、キミの場合彼女らと一括りにはできないだろう。争った間柄な訳でもない。寧ろ状況を察するにミカ様が世話になったみたいで……ありがとう。悪いがもう少しだけミカ様の事を頼む」
「ああ、スルーされてんのかと思ったっすよ。まあ任せてっ欲しいっす。なんかもう友達みたいな感じっすから」
「友達……そうか」
ルイカがどこか安心したような表情を浮かべる。
それが何に対する安堵なのかは分からないけれど、とにかくこれでやる事は決まった。
「じゃあ四人共、事が終わったらどこかで合流しようよ」
「それなら俺らのアジトに来い。そこでコイツの治療もしてる」
言いながらマルコがルカを担ぎ上げる。
「了解っす。じゃあ終わったら向かうんで」
「おいアジトって……さっきシエルの話聞いた感じだとマフィアのアジトなんだろ?」
「そ、そんな軽々しく足踏み入れて良い所なんですか?」
「こんな所に足踏み入れてるような人達が何言ってるんすか」
「えーシズクちゃんだってビビリまくってたじゃん」
「それ此処でカミングアウトするんすか!?」
と、そんな恥ずかしさを誤魔化すように言う。
「じゃ、じゃあとにかく決める事全部決めたんで。さっさと行くっすよ」
「だな」
「ですね」
「行ってくるね、ルカ君」
そう言って四人は動き出そうとする。
そんな四人に、最後に一言ルカが言う。
「すまない、最後に一つ」
「なんすか?」
「ベルナールにすまなかったと言っておいてくれ。俺が役割を果たせなかった所為で、アイツは今窮地に陥っている」
「承ったっす」
「……では、よろしく頼む」
その言葉に静かに全員で頷いて、四人は走り出す。
各々が元々持つ高い出力の強化魔術にシズクの強化魔術を乗せた、最速の移動速度で。
孤軍奮闘しているアンナ・ベルナールを助ける為に。
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