最強聖女は追放されたので冒険者になります。なおパーティーメンバーは全員同じような境遇の各国の元最強聖女となった模様。

山外大河

文字の大きさ
209 / 280
三章 聖女さん、冒険者やります

4 聖女さん達、依頼を受ける

しおりを挟む
 色々あったけど気を取り直して私達は今日受ける依頼選びへ。
 クエストボードに張られた依頼書を眺め始める。
 うん、この前の時は駆け出しなのにとんでもない依頼を選んだんだよね。結果シズクが謹慎処分という……今思い返しても、結構申し訳ないよ。
 ちょっとでも報酬が良い感じなのを選ばないと。
 ……って、ちょっと待った。

「ねえシズク」

「なんすか? なんか良いのあったっすか?」

「いや、私達三人はこの前Aランクの冒険者になった訳だけど……シズクはその時に冒険者になった感じで……つまりFランクって事だよね」

「そうなるっすね……ああ、成程。言いたい事分かったっす」

 シズクは一拍空けてから言う。

「皆さんだけなら普通にAランク相当の依頼を受けれるけど、そこにFランクのボクが居た場合どうなるのかって話っすね」

「うん、そういう事」

 いや、まあこのメンバーなら此処にある様な依頼ならどれでもこなせるんだろうけどさ、システム的にそれはやっちゃいけない訳で。
 今の私達という条件で選べる依頼の基準という奴を頭に入れておく必要がある。
 そして流石は現役受付嬢。その辺りの事情をすぐに説明してくれる。

「一応ボクみたいなFランでも上のランクのパーティーに加わればある程度依頼の選びようが出てくるっす。上のランクの人のパーティーに入れるという判断が、そのままある程度の信用情報になるって事っす。まあ当然その場合でも初回はある程度の制限が掛かったりするんで……ちょっと待ってください。Aランクの冒険者三人の所に依頼達成回数0の冒険者が一人加入した場合の初回の上限は……」

 そこまで言って、少々言いにくそうにシズクは言う。

「Cランクっすね」

「Cランクか……このメンツでCランクか……」

「なんかこう、思っていた感じよりガクって落ちますね、難易度が」

「ご、ごめんっす。その辺はほんと申し訳ないなと……」

「いや、まあ構わねえよ。そもそもCランクでもそこそこ報酬出るしな」

「ちょっと拍子抜けしてるだけで、別に私達は強い敵を求める戦闘狂みたいな感じじゃないですらね。取り急ぎ生活費が危ないシズクさんがCランクの報酬額で大丈夫そうなら全然良いんじゃないですか?」

「よし、じゃあ選ぶのはCランクで報酬が良い感じの奴だね。そんな訳でシズクも探して探して」

「は、はいっす!」

 そんな訳で本日の仕事はCランクの依頼に決定。
 前回よりも大幅に楽な仕事だ。
 さっさと片付けて、報酬も信用情報も手に入れちゃおう。

 ……そして。

「とりあえずこれなんてどうですか?」

 シルヴィが指差した依頼書に皆で視線を向け、代表してステラがそれを読み上げる。

「えーっとなになに。廃棄した別荘に忘れ物をしたから取ってきて欲しい……なんだこれ」

「場所的に普通に魔物が出る所っすね」

「つまり以前は周囲に結界を張って使ってた場所なんだろうね。でも今はその結界が無くなっていて、普通に敷地内にも魔物が居るかもしれないから近づけないと」

「まあ道中も魔物が出るだろうからな。ちなみにシルヴィはなんでこの依頼選んだんだ?」

「ああ、私が見た感じで一番報酬が多かったんで。正直Cランク程度だったら、中身気にする必要ないかなって思ってよく見てなかったです」

「なるほど、雑な判断かもしれないけど一理あるね」

 正直、Cランクならどう転んでもこの前の依頼以上って事は無いだろうから。

「私はこの依頼でもいいかな。二人は?」

「まあ俺も良いと思うぜ」

「ボクも賛成っす」

「じゃあこれで決まり」

「四人での初仕事ですね!」

 そんな訳で私達四人の初仕事は、忘れ物を取りに行く事になった。

 ……なんか仕事っていうよりお使いみたいだよ。
しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。

SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない? その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。 ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。 せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。 こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。

金貨増殖バグが止まらないので、そのまま快適なスローライフを送ります

桜井正宗
ファンタジー
 無能の落ちこぼれと認定された『ギルド職員』兼『ぷちドラゴン』使いの『ぷちテイマー』のヘンリーは、職員をクビとなり、国さえも追放されてしまう。  突然、空から女の子が降ってくると、キャッチしきれず女の子を地面へ激突させてしまう。それが聖女との出会いだった。  銀髪の自称聖女から『ギフト』を貰い、ヘンリーは、両手に持てない程の金貨を大量に手に入れた。これで一生遊んで暮らせると思いきや、金貨はどんどん増えていく。増殖が止まらない金貨。どんどん増えていってしまった。  聖女によれば“金貨増殖バグ”だという。幸い、元ギルド職員の権限でアイテムボックス量は無駄に多く持っていたので、そこへ保管しまくった。  大金持ちになったヘンリーは、とりあえず念願だった屋敷を買い……スローライフを始めていく!?

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました

かにくくり
ファンタジー
 魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。  しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。  しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。  勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。  そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。  相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。 ※小説家になろうにも掲載しています。

追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?

タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。 白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。 しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。 王妃リディアの嫉妬。 王太子レオンの盲信。 そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。 「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」 そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。 彼女はただ一言だけ残した。 「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」 誰もそれを脅しとは受け取らなかった。 だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。

聖女が降臨した日が、運命の分かれ目でした

猫乃真鶴
ファンタジー
女神に供物と祈りを捧げ、豊穣を願う祭事の最中、聖女が降臨した。 聖女とは女神の力が顕現した存在。居るだけで豊穣が約束されるのだとそう言われている。 思ってもみない奇跡に一同が驚愕する中、第一王子のロイドだけはただ一人、皆とは違った視線を聖女に向けていた。 彼の婚約者であるレイアだけがそれに気付いた。 それが良いことなのかどうなのか、レイアには分からない。 けれども、なにかが胸の内に燻っている。 聖女が降臨したその日、それが大きくなったのだった。 ※このお話は、小説家になろう様にも掲載しています

処理中です...