240 / 280
三章 聖女さん、冒険者やります
34 黒装束の男、ファンボーイ
しおりを挟む
「確かに俺達が思っている以上に事が進んでいる可能性は大いにありそうだな」
ルカが冷静に言葉を返してくる。
「そして仮説が正しかったと確定すれば、その事実はこの先の行動の道標になる。だから他の三国がどうなっているのかを調べる事には大きな価値があるとは俺も思う」
そこまで私の言葉に賛同した上でルカは言う。
「だがどうやってそれを調べる。何かが起きているであろうその場所に足を踏み入れるのは大きな危険が伴う。そして仮説が正しかった場合、各国の聖女を始めとした関係者は皆マークされている筈だ。誰が行こうが無策で本丸に攻め込むような物だぞ」
「た、確かに……あ、でも私とか無関係な感じになっちゃったから適任なんじゃない?」
いや、なんかヤバい事起きてるところに一人で行くっていうのはマジで怖いんだけどさ……この前の地下の一件で一人じゃどうにもできなかったって事を経験した訳だし。
そして私の一応の提案にルカは首を振る。
「いや、先日の一件に中心人物として関わったんだ。此処に居る全員がもれなく関係者だ……ってああ、当然ミーシャさんは除いてな」
「第一無関係だとしても、アンナ一人で行かせらんねえだろ」
「そうですよ、何考えてるんですか」
「そうっすよ。誰か一人が無理する必要なんてないんすから」
「……そうだね、うん、ごめん」
深い事を何も考えずに言っちゃったけど、やっぱそういうのは良くないよね、うん。
そういうのは……やめとこ。
「で、ウチらの誰もそういう事実確認に動けないってなると……これはアレかな? 仮説が正しい事を前提として動くって事かな」
「最善かは分からないがそうなるだろうな」
「でもまあそうなっても、今の私達にはそういう事実確認をスキップできるかもしれない強力な助っ人がいるから。ね、レリアさん」
「うむ、確かに事実確認はしておいた方が良いが、トリガーとなった術式を解析できれば逆算する事もできるじゃろうし」
「そ、そういえばベルナール。あえて誰もツッコまなかったと思うんだが、その透けている女性は一体……」
「まるで幽霊ですって感じだな」
マルコさんの言葉にその場の全員が頷く。
って事はマフィアさん達の中で見えて無いの部長さんだけか……なんか不憫だよ。
まあそれはさておき……この流れ何度目か分かんないけど一応やっとこうかな。
「ガチな幽霊。さっきまで私達冒険者の仕事で動いてたんだけど、その過程で知り合ったんだ」
「おいマジで幽霊だったぞ……えぇ……」
マルコさんを筆頭に驚くマフィアの皆さん。
その中で反応が違う人が一人。
「る、ルカ君幽霊だって。ほ、本当に居るんだね……ルカ君?」
「幽霊……レリア……この状況における強力な助っ人……いや、まさか……そんな事ってあるか……?」
なんかルカが呟いてる。
まあそりゃ……アンタならそうなるよね。
寧ろ皆がならないのがアレって感じなんだよね。
そしてルカは私に言う。
「お、おいベルナール。そのお方はもしやレリア・オルフィルという名ではないか?」
「正解」
「ほ、本物なのか……いや、ベルナールが信用するに至っているなら本当に本物なのか……」
「おいルカ。誰だそのレリア・オルフィルってのは」
「し、知らないのかマルコ! 現代魔術の基礎を築いたとされる歴史に名を残す大大大天才の名をか!? お前も魔術師の端くれだろう! 端くれどころか普通に実力者だろう!」
「知らねえよ、魔術なんてのは俺達に取っちゃあくまで手段に過ぎねえ」
「とはいえ魔術に触れる物として最低限名前位は知っておいても……なあベルナール!」
その言葉に深く頷く。
別に知らなかったステラやマルコさん達をどうこういうつもりは無いけど、知っていた方が良いのは同意だようん。
……ちなみにミカはなんか気まずそうにしている。
知らなかったんだろうなぁ……。
「……めんどくせえオタクみたいになってやがるな」
「は? そういうのではないんだが?」
そう言いながらルカはこちらに、というかちょっとご機嫌な様子のレリアさんの方に歩み寄って来る。
「ほう、どうした」
「あなたには色々とお伺いしたい事があります。ですがその前に──」
そしてルカは得意の暗器技能を駆使して……色紙とサインペンを取り出す。
「──よろしければサインください」
「な、なんでそんなもん持ち歩いてんだよ……」
そういえば幽霊屋敷で色紙なんて持ち歩かないだろと言っていたステラは、普通に若干引いてる。
そんなステラにルカのアンサー。
「常日頃からいかなる状況にも対応できるよう準備を整えておくのが、あらゆる事の基本だ」
「その結果がそれか……凄い技術盛大に無駄使いしてないかそれ」
いや、違うよステラ。
これは無駄じゃない。
「ねえルカ」
「なんだ」
「色紙もう一枚あったりしない?」
「愚問だな」
そう言った次の瞬間には……ルカの手の色紙が二枚に!
っしゃあッ!
私達がそんな風に盛り上がりを見せる中、レリアさんはミカと、そしてステラ達に視線を向けて言う。
「なんかお主らも大変じゃのう」
その言葉の意図は良く分かんなかったけども!
ルカが冷静に言葉を返してくる。
「そして仮説が正しかったと確定すれば、その事実はこの先の行動の道標になる。だから他の三国がどうなっているのかを調べる事には大きな価値があるとは俺も思う」
そこまで私の言葉に賛同した上でルカは言う。
「だがどうやってそれを調べる。何かが起きているであろうその場所に足を踏み入れるのは大きな危険が伴う。そして仮説が正しかった場合、各国の聖女を始めとした関係者は皆マークされている筈だ。誰が行こうが無策で本丸に攻め込むような物だぞ」
「た、確かに……あ、でも私とか無関係な感じになっちゃったから適任なんじゃない?」
いや、なんかヤバい事起きてるところに一人で行くっていうのはマジで怖いんだけどさ……この前の地下の一件で一人じゃどうにもできなかったって事を経験した訳だし。
そして私の一応の提案にルカは首を振る。
「いや、先日の一件に中心人物として関わったんだ。此処に居る全員がもれなく関係者だ……ってああ、当然ミーシャさんは除いてな」
「第一無関係だとしても、アンナ一人で行かせらんねえだろ」
「そうですよ、何考えてるんですか」
「そうっすよ。誰か一人が無理する必要なんてないんすから」
「……そうだね、うん、ごめん」
深い事を何も考えずに言っちゃったけど、やっぱそういうのは良くないよね、うん。
そういうのは……やめとこ。
「で、ウチらの誰もそういう事実確認に動けないってなると……これはアレかな? 仮説が正しい事を前提として動くって事かな」
「最善かは分からないがそうなるだろうな」
「でもまあそうなっても、今の私達にはそういう事実確認をスキップできるかもしれない強力な助っ人がいるから。ね、レリアさん」
「うむ、確かに事実確認はしておいた方が良いが、トリガーとなった術式を解析できれば逆算する事もできるじゃろうし」
「そ、そういえばベルナール。あえて誰もツッコまなかったと思うんだが、その透けている女性は一体……」
「まるで幽霊ですって感じだな」
マルコさんの言葉にその場の全員が頷く。
って事はマフィアさん達の中で見えて無いの部長さんだけか……なんか不憫だよ。
まあそれはさておき……この流れ何度目か分かんないけど一応やっとこうかな。
「ガチな幽霊。さっきまで私達冒険者の仕事で動いてたんだけど、その過程で知り合ったんだ」
「おいマジで幽霊だったぞ……えぇ……」
マルコさんを筆頭に驚くマフィアの皆さん。
その中で反応が違う人が一人。
「る、ルカ君幽霊だって。ほ、本当に居るんだね……ルカ君?」
「幽霊……レリア……この状況における強力な助っ人……いや、まさか……そんな事ってあるか……?」
なんかルカが呟いてる。
まあそりゃ……アンタならそうなるよね。
寧ろ皆がならないのがアレって感じなんだよね。
そしてルカは私に言う。
「お、おいベルナール。そのお方はもしやレリア・オルフィルという名ではないか?」
「正解」
「ほ、本物なのか……いや、ベルナールが信用するに至っているなら本当に本物なのか……」
「おいルカ。誰だそのレリア・オルフィルってのは」
「し、知らないのかマルコ! 現代魔術の基礎を築いたとされる歴史に名を残す大大大天才の名をか!? お前も魔術師の端くれだろう! 端くれどころか普通に実力者だろう!」
「知らねえよ、魔術なんてのは俺達に取っちゃあくまで手段に過ぎねえ」
「とはいえ魔術に触れる物として最低限名前位は知っておいても……なあベルナール!」
その言葉に深く頷く。
別に知らなかったステラやマルコさん達をどうこういうつもりは無いけど、知っていた方が良いのは同意だようん。
……ちなみにミカはなんか気まずそうにしている。
知らなかったんだろうなぁ……。
「……めんどくせえオタクみたいになってやがるな」
「は? そういうのではないんだが?」
そう言いながらルカはこちらに、というかちょっとご機嫌な様子のレリアさんの方に歩み寄って来る。
「ほう、どうした」
「あなたには色々とお伺いしたい事があります。ですがその前に──」
そしてルカは得意の暗器技能を駆使して……色紙とサインペンを取り出す。
「──よろしければサインください」
「な、なんでそんなもん持ち歩いてんだよ……」
そういえば幽霊屋敷で色紙なんて持ち歩かないだろと言っていたステラは、普通に若干引いてる。
そんなステラにルカのアンサー。
「常日頃からいかなる状況にも対応できるよう準備を整えておくのが、あらゆる事の基本だ」
「その結果がそれか……凄い技術盛大に無駄使いしてないかそれ」
いや、違うよステラ。
これは無駄じゃない。
「ねえルカ」
「なんだ」
「色紙もう一枚あったりしない?」
「愚問だな」
そう言った次の瞬間には……ルカの手の色紙が二枚に!
っしゃあッ!
私達がそんな風に盛り上がりを見せる中、レリアさんはミカと、そしてステラ達に視線を向けて言う。
「なんかお主らも大変じゃのう」
その言葉の意図は良く分かんなかったけども!
0
あなたにおすすめの小説
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。
SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない?
その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。
ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。
せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。
こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。
金貨増殖バグが止まらないので、そのまま快適なスローライフを送ります
桜井正宗
ファンタジー
無能の落ちこぼれと認定された『ギルド職員』兼『ぷちドラゴン』使いの『ぷちテイマー』のヘンリーは、職員をクビとなり、国さえも追放されてしまう。
突然、空から女の子が降ってくると、キャッチしきれず女の子を地面へ激突させてしまう。それが聖女との出会いだった。
銀髪の自称聖女から『ギフト』を貰い、ヘンリーは、両手に持てない程の金貨を大量に手に入れた。これで一生遊んで暮らせると思いきや、金貨はどんどん増えていく。増殖が止まらない金貨。どんどん増えていってしまった。
聖女によれば“金貨増殖バグ”だという。幸い、元ギルド職員の権限でアイテムボックス量は無駄に多く持っていたので、そこへ保管しまくった。
大金持ちになったヘンリーは、とりあえず念願だった屋敷を買い……スローライフを始めていく!?
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……
防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました
かにくくり
ファンタジー
魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。
しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。
しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。
勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。
そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。
相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。
※小説家になろうにも掲載しています。
追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?
タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。
白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。
しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。
王妃リディアの嫉妬。
王太子レオンの盲信。
そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。
「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」
そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。
彼女はただ一言だけ残した。
「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」
誰もそれを脅しとは受け取らなかった。
だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。
聖女が降臨した日が、運命の分かれ目でした
猫乃真鶴
ファンタジー
女神に供物と祈りを捧げ、豊穣を願う祭事の最中、聖女が降臨した。
聖女とは女神の力が顕現した存在。居るだけで豊穣が約束されるのだとそう言われている。
思ってもみない奇跡に一同が驚愕する中、第一王子のロイドだけはただ一人、皆とは違った視線を聖女に向けていた。
彼の婚約者であるレイアだけがそれに気付いた。
それが良いことなのかどうなのか、レイアには分からない。
けれども、なにかが胸の内に燻っている。
聖女が降臨したその日、それが大きくなったのだった。
※このお話は、小説家になろう様にも掲載しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる