仲の良い幼馴染の兄弟が姉妹だった話

山外大河

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二章 これまでの事、これからの事

10 親友だからこそ 下

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 渚のそんな問いかけ。
 きっこちらが望んだ形に着地させようと思えばさせられるような、そんな問いかけ。
 それに俺は答えた。

「多分碌でも無い事を言っているかもしれねえけど……その回答は、待ってくれるか?」

「……え?」

 言わせるだけ言わせておいて、この返答だ。
 多分というかきっと、自覚がある通り本当に碌でも無い回答だと思う。
 それでも、俺は此処で俺の望むような決着の付け方をしてはいけない。

「こ、この流れで? …………も、もしかして明人、他に好きな子とか……」

「いや、他の誰かと揺れ動いたりとか、そういう余裕がねえ位には、お前の事しか考えてねえ」

「じゃあ……じゃあさ」

 渚は少々不安そうに言う。

「元々男として見てたから、そういう風に気持ち切り替えられない、とか?」

「半分位正解なんだと思う」

 本当に、その位は正解だ。

「なあ、渚。俺達はこれまで間違いなく親友同士だったよな」

「うん、そうだね。今でもそうだと思ってるよ。色々変わっちゃったけどさ」

「そうだ、変わったんだ。変わった途端にこれなんだ」

 結局のところ此処に行きつく。
 いざこういう場面になると、やっぱりこの考えは払拭できない。

「お前が女だって分かった途端に、掌返すようにそういう気持ち向けんのは違うだろ。あまりにも不誠実だと思うんだ。それは軽すぎるだろ色々と……今のお前の事、お世辞にもちゃんと理解できてるって言えねえのに……今のままそれに返事するのは、本当に良くない気がする」

 こんな事を言っているけど、例えば所謂一目惚れみたいな事を。
 容姿だけを見て誰かと付き合うような事を、俺は否定するつもりは無い。
 寧ろ俺だって多分、相手が渚じゃ無ければそれでも良いんだ。
 きっと難しい事も何も考えないと思う。
 だけど、相手が渚だからこそ。

「渚相手だからこそ……そんな軽い判断はしたくねえ。ちゃんと今のお前を見て知ってから……そういう事を、考えたい」

 そんな生半可な気持ちで、そういう関係になろうなんて思っちゃいけない気がする。
 そして俺の言葉に対して渚は、少し間を空けてから呟く。

「…………そっか」 

 どこか噛み締めるように。
 そして渚は意地の悪い笑みを浮かべてから言う。
「確かに碌でも無い事いってるかもね。理由はどうであれ女の子をキープしてるみたいなもんだよ」

「……まあ我ながら酷い事言ってるんじゃないかなって思うけど」

「なんてね。いいよそれでも。捕まえといてよ私の事」

 そう言って渚は立ち上がる。

「理由はどうであれ女の子をキープしてるのは事実だけどその理由は汲むよ。ちゃんと私は明人の考えている事、分かってるから」

 そして俺の前に立って笑みを浮かべる。

「明人にとっては色々と変わっちゃったかもしれないけど、私にとってはずっと明人は変わってない訳だしね」

「渚……」

「そんな訳で、話も付いたし戻ろうか」

 そう言って渚は俺に手を差し出してくる。

「クレーンゲームで何か捕ってよ。男同士で誕生日プレゼント送り合うような仲じゃなかったけどさ……私は女の子な訳で。離れて行っちゃわないように好感度稼ごうよ」

「やれるだけの事はやらせてもらいます」

 そう答えながら、渚の手を取って立ち上がった。

「じゃあまずは色々と物色だ。なんか良いのあるかな」

「ちなみに男として俺達とつるんでた時に話してた趣味嗜好的な奴って……やっぱ演技だったりする? それによってこの先狙う物とか変わるだろ」

「その辺は、此処からの私の一挙一動を見て掴み取ってよ。分かるんじゃないかな、明人なら」

「上等」

 そんな訳で、吐き出すべき事は全部吐き出して。
 何か関係性が大きく変わった訳では無いけれど……肩の力が抜けた気がした。
 今日一日迷走していた気がする秋瀬渚という親友の見え方が、今日一番にクリアに見えた。
 そんな気がする。
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