ただキミを幸せにする為の物語 SSランクの幸運スキルを持つ俺は、パーティーを追放されたのでSSランクの不幸少女と最強のパーティーを組みます

山外大河

文字の大きさ
1 / 228
一章 幸運少年と不幸少女

1 疫病神としての追放

しおりを挟む
 俺は人並み外れた幸運の持ち主だ。
 ……幸運の持ち主の筈である。

「クビクビクビクビィッ! お前はクビッ! 疫病神はパーティーから追放!」

 そんな幸運の持ち主である筈の俺は、Sランクの高難易度クエストを終えた直後にパーティーのリーダーである戦士、アレックスから物凄い勢いでそう言い渡される。
 何事かと思い、先の激戦を共に乗りきった仲間である残り二人。魔術師のクロウと弓使いのユアンに視線を向けてみるが、二人は俺を擁護する所か深く頷いた。

 つまり俺以外の三人は全員俺をクビにしたがっている訳だ。

 ギルドから依頼を受注してそれを達成する事を生業とする冒険者にとって仕事仲間……所謂パーティの存在は必要不可欠だ。
 依頼をより効率よく確実にこなす為という理由もあるが、ソロでは余程名の知れた冒険者で無ければ受けられる仕事も限られてくる。
 故に割と冗談抜きで冒険者としては死活問題な訳で、俺は流石に三人に抗議する。

「ちょ、急になんだよ三人とも! 俺が一体何したってんだよ!」

 アレックスと同じく戦士として前衛を務める俺の動きは、自分で言うのもなんだが決して悪いものではなかったと思える。
 悪くなかった所か、今回の討伐対象だったダークドラゴンにトドメを刺したのは他ならぬ俺である。
 それなのに俺が何故クビにならなければならないのか。意味が分からなかった。
 だから俺は徹底的に抗議してやるつもりだった。

「んなもんお前のスキルに聞いてみろや! いいかクルージ! 俺達はもう我慢の限界だわマジでよ!」

「……」

 だけど意味が分かってしまったから。それ以上は強く言えなくなってしまった。

 人間は生まれつきスキルという能力をその身に宿す。
 FランクからSSランク。そしてEX。そのランクが高ければ高い程強力な力で希少な物となる。
 俺のスキルは『幸運』。ランクはSS。
 文字通り幸運を齎すスキルの訳だけれど。本来はその筈なのだけれど。俺の場合、そうとも言いきれない現象が発生しているのだ。
 いや、現象というよりはまだ疑惑段階かもしれないけれど。いずれにしても大きな不利益は起きている。

 一緒に行動している他者の運気を吸い取っている説である。
 今日の戦いだって心当たりはあった。疫病神と呼ばれる心当たりは確かにあった。

 俺に対して殆ど攻撃が飛んでこない。
 代わりにアレックス達三人には攻撃が集中し、それどころか運がなかったと思わざるを得ない様な激しく強力な攻撃が雨の様に振る。
 アレックス達は俺より一段二段上の実力者だ。故に辛うじてどうにかなりはした。

 だけど結果がどうであれ、俺を除く三人の過程が酷い物であった事は間違いないのだ。

 だから、何も言えない。
 ……きっと俺のせいだから。

「俺達はお前が幸運のスキル持ちで、しかもSSランクだっていうから仲間に誘ったのに何だよクソ! いつもいつもお前は不幸しか持ってこねえじゃねえか!」

「……」

 考えてみればアレックス達は辛抱した方なのかもしれない。
 寧ろ毎回毎回迷惑ばかり掛けているのに、俺が何をしたなんて言葉が出てくる俺の方がどうしようもなかった。
 一瞬意味が分からなかった俺の方がどうかしていた。

「……悪い。分かったよ。俺はパーティから抜ける。今まで世話になった」

 だからそんな言葉は自然と出てきた。

「おう、さっさとどっか行けお前は。お前が俺達の近くにいるだけで命がいくつあっても足りねえ」

「……悪い。じゃあな」

 そうして俺は一人になった。
 またしても一人になった。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

《レベル∞》の万物創造スキルで追放された俺、辺境を開拓してたら気づけば神々の箱庭になっていた

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティーの雑用係だったカイは、魔王討伐後「無能」の烙印を押され追放される。全てを失い、死を覚悟して流れ着いた「忘れられた辺境」。そこで彼のハズレスキルは真の姿《万物創造》へと覚醒した。 無から有を生み、世界の理すら書き換える神の如き力。カイはまず、生きるために快適な家を、豊かな畑を、そして清らかな川を創造する。荒れ果てた土地は、みるみるうちに楽園へと姿を変えていった。 やがて、彼の元には行き場を失った獣人の少女やエルフの賢者、ドワーフの鍛冶師など、心優しき仲間たちが集い始める。これは、追放された一人の青年が、大切な仲間たちと共に理想郷を築き、やがてその地が「神々の箱庭」と呼ばれるまでの物語。

無能扱いされ、パーティーを追放されたおっさん、実はチートスキル持ちでした。戻ってきてくれ、と言ってももう遅い。田舎でゆったりスローライフ。

さら
ファンタジー
かつて勇者パーティーに所属していたジル。 だが「無能」と嘲られ、役立たずと追放されてしまう。 行くあてもなく田舎の村へ流れ着いた彼は、鍬を振るい畑を耕し、のんびり暮らすつもりだった。 ――だが、誰も知らなかった。 ジルには“世界を覆すほどのチートスキル”が隠されていたのだ。 襲いかかる魔物を一撃で粉砕し、村を脅かす街の圧力をはねのけ、いつしか彼は「英雄」と呼ばれる存在に。 「戻ってきてくれ」と泣きつく元仲間? もう遅い。 俺はこの村で、仲間と共に、気ままにスローライフを楽しむ――そう決めたんだ。 無能扱いされたおっさんが、実は最強チートで世界を揺るがす!? のんびり田舎暮らし×無双ファンタジー、ここに開幕!

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

転生したら、伯爵家の嫡子で勝ち組!だけど脳内に神様ぽいのが囁いて、色々依頼する。これって異世界ブラック企業?それとも社畜?誰か助けて

ゆうた
ファンタジー
森の国編 ヴェルトゥール王国戦記  大学2年生の誠一は、大学生活をまったりと過ごしていた。 それが何の因果か、異世界に突然、転生してしまった。  生まれも育ちも恵まれた環境の伯爵家の嫡男に転生したから、 まったりのんびりライフを楽しもうとしていた。  しかし、なぜか脳に直接、神様ぽいのから、四六時中、依頼がくる。 無視すると、身体中がキリキリと痛むし、うるさいしで、依頼をこなす。 これって異世界ブラック企業?神様の社畜的な感じ?  依頼をこなしてると、いつの間か英雄扱いで、 いろんな所から依頼がひっきりなし舞い込む。 誰かこの悪循環、何とかして! まったりどころか、ヘロヘロな毎日!誰か助けて

【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。 この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。 ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。 少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。 更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。 そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。 少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。 どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。 少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。 冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。 すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く… 果たして、その可能性とは⁉ HOTランキングは、最高は2位でした。 皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°. でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )

文字変換の勇者 ~ステータス改竄して生き残ります~

カタナヅキ
ファンタジー
高校の受験を間近に迫った少年「霧崎レア」彼は学校の帰宅の最中、車の衝突事故に巻き込まれそうになる。そんな彼を救い出そうと通りがかった4人の高校生が駆けつけるが、唐突に彼等の足元に「魔法陣」が誕生し、謎の光に飲み込まれてしまう。 気付いたときには5人は見知らぬ中世風の城の中に存在し、彼等の目の前には老人の集団が居た。老人達の話によると現在の彼等が存在する場所は「異世界」であり、元の世界に戻るためには自分達に協力し、世界征服を狙う「魔人族」と呼ばれる存在を倒すように協力を願われる。 だが、世界を救う勇者として召喚されたはずの人間には特別な能力が授かっているはずなのだが、伝承では勇者の人数は「4人」のはずであり、1人だけ他の人間と比べると能力が低かったレアは召喚に巻き込まれた一般人だと判断されて城から追放されてしまう―― ――しかし、追い出されたレアの持っていた能力こそが彼等を上回る性能を誇り、彼は自分の力を利用してステータスを改竄し、名前を変化させる事で物体を変化させ、空想上の武器や物語のキャラクターを作り出せる事に気付く。

地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした

有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

処理中です...