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一章 幸運少年と不幸少女
6 アリサの実力
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そして二人で冒険者ギルドにまで戻ると、また嫌な視線を向けられた。
当然と言えば当然だ。関わったらマズい二人が一緒になって歩いているのだから。
そうして歩いた先で俺達は、今受けられる依頼を受付嬢に紹介してもらった。
こういうギルドで働く側の人間は、こちらの事を把握していても特別邪険に扱ったりはしない。その辺プロだなぁと思う。
そして依頼をこなしに行く為に不足していたアイテムを買いそろえ出発する。
今日受けた依頼は、つい最近から王都近くの森に生息して繁殖し始め、生態系を荒らす魔獣の討伐である。
とりあえず20体を討伐し、その証拠に倒した魔獣の角を持ちかえれば依頼達成だ。
依頼のランクはCランク。
その森まで一時間程掛けて歩き、到着。
森の前で少しだけ小休憩を取ってから、俺達は森の中へと入っていく。
「で、そういえばアリサ。お前の戦闘スタイルは?」
森の中を歩きながら聞いてみた。
今回、中々レアケースなパーティーの結成の仕方をした為、冷静に考えれば互いが互いの冒険者としての実力や戦闘スタイルを知らないでいる。
「ナイフでズバズバーってやっちゃうタイプって言えば分かりますか?」
「アバウトすぎて殆ど分からん」
だけど前衛という事だけは分かった。
「クルージさんは?」
「刀でザクザクーって感じだ」
「アバウトすぎて全然分かんないんですけど」
「お前が言うなよ」
まあともあれ、俺達のパーティーに後方支援役など存在しない事は分かった。
……後は一緒に戦いながら合わせていくしかないだろう。
「しかし20体討伐でOKって言ってましたけど、一体この森には全部でどれだけ魔獣が居るんですかね?」
「さあな。でも20体減らせばある程度抑えられる様な数なんだろうよ。何百体もいて20体なんて討伐しても焼け石に水だからな」
「あー確かにそうですね。でもそうなってくると、逆にそんなにいないんなら20体探すの難しくないですかね?」
「多分それに関しちゃ大丈夫だ。魔獣は住んでいる所を自分の縄張りにする。で、アイツら基本的に鼻がいいから足を踏み入れた侵入者である人間を潰しに勝手に出てくる」
「なるほど、つまりボク達は魔獣ホイホイって訳ですね」
「その例え嫌だなぁ」
ともあれ本当にそんな物である。
だからこそ気を付けなければならない。
森の奥に足を踏み入れた瞬間から……俺達は奴らにとっての外敵として認識されているのだから。
そして……足音が聞こえた。
「……ッ! 来るぞ!」
「はい!」
次の瞬間、木々の間から150センチ近い大きさの狼の様な魔獣が3匹跳び出してくる。
「……ッ」
大きさだけで言えばアリサよりデカイ。想像以上だ。威圧感が凄い。
しかも数で上回れている。これは戦いにくいぞ。
……ましてや今の俺にはいつも俺の身を守っていた運気が一般的な値にまで落ちていたのだから。
それでも、小さく息を付いてカタナを強く握り、そして……跳びかかってきた魔獣に向けて振りぬいた。
手に残るのは確かな手応え。耳に届くのは魔獣の断末魔。
だけど気を抜くな。まだ二体。
それも二体共アリサの方に行きやがったッ!
「アリサ!」
瞬時に体制を整え、アリサの方に視線を向ける。
そして次の瞬間聞こえたのは断末魔だ。
「……すげえ」
視界の先で、アリサは逆手に持った二本のナイフで二体の魔獣の息の根を止めていた。
一瞬。息の根を止める直前しか見えなかったが、それでも自分よりも格上の冒険者である事はすぐに分かった。
……コイツ、強いぞ。
そしてアリサは今まさに魔獣の息の根を止めたナイフを……すげえ勢いでこっちに向けて投げてきた!?
「うわっ!?」
俺がそんな声を上げる中、アリサが投げたナイフは俺の隣りを通過し……後方から魔獣の悲鳴が聞こえてきた。
……足音を殺して、いつの間にか近づかれていたんだ。
「クルージさん!」
「あ、ああ!」
俺は改めてそちらに振り返り、アリサのナイフで満身創痍になっている魔獣の息の根を止める。
「わ、わりい、助かった、アリ――」
言いながら振り返る。
「――サさん?」
「なんで急にさん付けで読んでるんですか」
この僅かな時間に魔獣の死骸が2体増えていた。
そりゃね、さん付けもしたくなるって。
……まってアリサ強すぎじゃない!?
そもそも俺には新たに魔獣が近づいてきているのも分からなかったわけで……でも多分アリサはそれにも気付いていたみたいで。
……もしかするとSランクの依頼を受ける程強かったアレックス達と、同じ位の実力を持っているのかもしれない。
不幸なんてスキルを持っていなければ。
実力相応のパーティーに入れれば。
そういうトップクラスで活躍できるような人間なのかもしれない。
「まあとにかくこれで6体ですね。いえーい」
そう言ってアリサはハイタッチを求めてくる。
……なんかそれに返す程の働きをしていない気がするんだけど、まあ求められたのだからやっておく。
そして俺達はひとまずの襲撃を乗り切り、お互いの手を合わせた。
当然と言えば当然だ。関わったらマズい二人が一緒になって歩いているのだから。
そうして歩いた先で俺達は、今受けられる依頼を受付嬢に紹介してもらった。
こういうギルドで働く側の人間は、こちらの事を把握していても特別邪険に扱ったりはしない。その辺プロだなぁと思う。
そして依頼をこなしに行く為に不足していたアイテムを買いそろえ出発する。
今日受けた依頼は、つい最近から王都近くの森に生息して繁殖し始め、生態系を荒らす魔獣の討伐である。
とりあえず20体を討伐し、その証拠に倒した魔獣の角を持ちかえれば依頼達成だ。
依頼のランクはCランク。
その森まで一時間程掛けて歩き、到着。
森の前で少しだけ小休憩を取ってから、俺達は森の中へと入っていく。
「で、そういえばアリサ。お前の戦闘スタイルは?」
森の中を歩きながら聞いてみた。
今回、中々レアケースなパーティーの結成の仕方をした為、冷静に考えれば互いが互いの冒険者としての実力や戦闘スタイルを知らないでいる。
「ナイフでズバズバーってやっちゃうタイプって言えば分かりますか?」
「アバウトすぎて殆ど分からん」
だけど前衛という事だけは分かった。
「クルージさんは?」
「刀でザクザクーって感じだ」
「アバウトすぎて全然分かんないんですけど」
「お前が言うなよ」
まあともあれ、俺達のパーティーに後方支援役など存在しない事は分かった。
……後は一緒に戦いながら合わせていくしかないだろう。
「しかし20体討伐でOKって言ってましたけど、一体この森には全部でどれだけ魔獣が居るんですかね?」
「さあな。でも20体減らせばある程度抑えられる様な数なんだろうよ。何百体もいて20体なんて討伐しても焼け石に水だからな」
「あー確かにそうですね。でもそうなってくると、逆にそんなにいないんなら20体探すの難しくないですかね?」
「多分それに関しちゃ大丈夫だ。魔獣は住んでいる所を自分の縄張りにする。で、アイツら基本的に鼻がいいから足を踏み入れた侵入者である人間を潰しに勝手に出てくる」
「なるほど、つまりボク達は魔獣ホイホイって訳ですね」
「その例え嫌だなぁ」
ともあれ本当にそんな物である。
だからこそ気を付けなければならない。
森の奥に足を踏み入れた瞬間から……俺達は奴らにとっての外敵として認識されているのだから。
そして……足音が聞こえた。
「……ッ! 来るぞ!」
「はい!」
次の瞬間、木々の間から150センチ近い大きさの狼の様な魔獣が3匹跳び出してくる。
「……ッ」
大きさだけで言えばアリサよりデカイ。想像以上だ。威圧感が凄い。
しかも数で上回れている。これは戦いにくいぞ。
……ましてや今の俺にはいつも俺の身を守っていた運気が一般的な値にまで落ちていたのだから。
それでも、小さく息を付いてカタナを強く握り、そして……跳びかかってきた魔獣に向けて振りぬいた。
手に残るのは確かな手応え。耳に届くのは魔獣の断末魔。
だけど気を抜くな。まだ二体。
それも二体共アリサの方に行きやがったッ!
「アリサ!」
瞬時に体制を整え、アリサの方に視線を向ける。
そして次の瞬間聞こえたのは断末魔だ。
「……すげえ」
視界の先で、アリサは逆手に持った二本のナイフで二体の魔獣の息の根を止めていた。
一瞬。息の根を止める直前しか見えなかったが、それでも自分よりも格上の冒険者である事はすぐに分かった。
……コイツ、強いぞ。
そしてアリサは今まさに魔獣の息の根を止めたナイフを……すげえ勢いでこっちに向けて投げてきた!?
「うわっ!?」
俺がそんな声を上げる中、アリサが投げたナイフは俺の隣りを通過し……後方から魔獣の悲鳴が聞こえてきた。
……足音を殺して、いつの間にか近づかれていたんだ。
「クルージさん!」
「あ、ああ!」
俺は改めてそちらに振り返り、アリサのナイフで満身創痍になっている魔獣の息の根を止める。
「わ、わりい、助かった、アリ――」
言いながら振り返る。
「――サさん?」
「なんで急にさん付けで読んでるんですか」
この僅かな時間に魔獣の死骸が2体増えていた。
そりゃね、さん付けもしたくなるって。
……まってアリサ強すぎじゃない!?
そもそも俺には新たに魔獣が近づいてきているのも分からなかったわけで……でも多分アリサはそれにも気付いていたみたいで。
……もしかするとSランクの依頼を受ける程強かったアレックス達と、同じ位の実力を持っているのかもしれない。
不幸なんてスキルを持っていなければ。
実力相応のパーティーに入れれば。
そういうトップクラスで活躍できるような人間なのかもしれない。
「まあとにかくこれで6体ですね。いえーい」
そう言ってアリサはハイタッチを求めてくる。
……なんかそれに返す程の働きをしていない気がするんだけど、まあ求められたのだからやっておく。
そして俺達はひとまずの襲撃を乗り切り、お互いの手を合わせた。
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