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二章 ごく当たり前の日常を掴む為に
6 俺がしてやりたい事。
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「では、俺はこれで」
アリサが来たのを見て、ルークが俺の肩にポンと手を置いてからその場を離れていく。
なにそれ、どういうサイン?
そしてルークと入れ替わるようにアリサが俺の前へとやってくる。
「すみません、待ちましたか?」
「いや、俺もさっき来たとこ」
うん、だから待ってる時間は短かったよ。
その短い時間が無茶苦茶濃く感じたけれど。
「なら良かったです。ところでなんだか騒がしかったみたいなんですけど、何かありました?」
「いや、ない。何もなかった。マジで何もなかったぞ、うん」
「……クルージさん、何か隠してませんか?」
「いや、何も隠してないぞ別に」
嘘である。無茶苦茶隠してある。
だって言える? 言えないだろさっきのやり取りは。
「むぅ……なんか怪しいですね」
うん、分かるよ。自分で自分の声聞こえる訳だから思うけど、俺の誤魔化し方、完全に誤魔化してる奴の言い方だもんな。無茶苦茶何か隠してる感満載だもんな。
だけどアリサは一拍空けてから言う。
「まあ別にいいですよ、嘘だったとしても。クルージさんの嘘なら多分悪い嘘じゃないでしょうし」
そう言ってアリサは笑みを浮かべた。
「……」
それを見て改めて思うよ。
確かに下心だとか、邪な気持ちなんてのは否定できない。アリサという可愛いくて性格も良くて、話の波長が合う様な。一緒に居てどこか楽しい女の子と一緒に居られる今の状況に優越感を感じていない訳がない。きっとクルージという人間の原動力の幾許かは、そういった所にあるのだと思う。
だけどやっぱり何よりも……こういう何気ない笑顔を曇らせたくないんだなって。
そういう事を言ってくれる様な優しい女の子を不幸になんてしたくないんだって。
だから俺はアリサの隣りにいるんだって。
そう、確信が持てた。
「えーっと、どうしました? ボク変な事言いましたかね?」
俺が黙っていたのが気になったのだろう。
アリサがそう聞いてくる。
なのでとりあえず俺は率直な気持ちを言葉にして返した。
「変な事なんて言ってねえよ。ありがとな、そう思ってくれて」
「え、あ、はい……どういたしまして」
なんか少し顔を赤くしてアリサがそう言った。
自分が言った事を改めて脳内で復唱でもしたのかもしれない。中々言いにくい事を言ってたと思うよ。
……言われた俺はすげえ嬉しいけど。
そしてアリサは誤魔化す様に無理矢理話題を変える。
「と、とにかく依頼受けに行きましょう!」
「ああ、そうだな」
そんなやり取りを交わしながら、俺達は依頼を受ける為に受付近くへと足取りを向けた。
……しかし、改めてなんとかならねえかなと思った事が一つ。
アリサが俺の元に来た時も。
今こうして先導して進んでいる時も。
やはり何人かはアリサから距離を離す様に逃げていくんだ。道を空けるとかでは無く、露骨にそういう風に見える様に。
俺のスキルがギルド内に伝わった様に。俺がアリサとパーティを組んでいる=俺と居ればアリサの不運スキルを相殺できるという様な感じで伝わっていてもおかしくないのに。お見舞いに来たルークの言葉を聞く限りだと伝わっている筈なのに。
……それなのに、アリサを避ける人がいる。
できる事ならそれをどうにかする術を探したかった。
アリサはそれを特になんとも思っていなさそうだった。端から見ればそう取れる程度には、そういう事による感情の起伏が見られなかった。
そしてそれが隠しているのではないのだとすれば……そんなのは悪質な感覚の麻痺でしかない。
だからアリサが解決しなければならない問題は山の様にあると思うけども、その中でも二つ。とにかくお俺がどうにかしてやりたい事。
アリサが人を避けなくてもいいように。
アリサが人から避けられないように。
この二つ。人間関係の話。
そう簡単にはどうにかならないのは分かってる。どうすればいいのかも分からない。
だけどとにかく、どうにかしたいと。そう改めて思ったんだ。
アリサが来たのを見て、ルークが俺の肩にポンと手を置いてからその場を離れていく。
なにそれ、どういうサイン?
そしてルークと入れ替わるようにアリサが俺の前へとやってくる。
「すみません、待ちましたか?」
「いや、俺もさっき来たとこ」
うん、だから待ってる時間は短かったよ。
その短い時間が無茶苦茶濃く感じたけれど。
「なら良かったです。ところでなんだか騒がしかったみたいなんですけど、何かありました?」
「いや、ない。何もなかった。マジで何もなかったぞ、うん」
「……クルージさん、何か隠してませんか?」
「いや、何も隠してないぞ別に」
嘘である。無茶苦茶隠してある。
だって言える? 言えないだろさっきのやり取りは。
「むぅ……なんか怪しいですね」
うん、分かるよ。自分で自分の声聞こえる訳だから思うけど、俺の誤魔化し方、完全に誤魔化してる奴の言い方だもんな。無茶苦茶何か隠してる感満載だもんな。
だけどアリサは一拍空けてから言う。
「まあ別にいいですよ、嘘だったとしても。クルージさんの嘘なら多分悪い嘘じゃないでしょうし」
そう言ってアリサは笑みを浮かべた。
「……」
それを見て改めて思うよ。
確かに下心だとか、邪な気持ちなんてのは否定できない。アリサという可愛いくて性格も良くて、話の波長が合う様な。一緒に居てどこか楽しい女の子と一緒に居られる今の状況に優越感を感じていない訳がない。きっとクルージという人間の原動力の幾許かは、そういった所にあるのだと思う。
だけどやっぱり何よりも……こういう何気ない笑顔を曇らせたくないんだなって。
そういう事を言ってくれる様な優しい女の子を不幸になんてしたくないんだって。
だから俺はアリサの隣りにいるんだって。
そう、確信が持てた。
「えーっと、どうしました? ボク変な事言いましたかね?」
俺が黙っていたのが気になったのだろう。
アリサがそう聞いてくる。
なのでとりあえず俺は率直な気持ちを言葉にして返した。
「変な事なんて言ってねえよ。ありがとな、そう思ってくれて」
「え、あ、はい……どういたしまして」
なんか少し顔を赤くしてアリサがそう言った。
自分が言った事を改めて脳内で復唱でもしたのかもしれない。中々言いにくい事を言ってたと思うよ。
……言われた俺はすげえ嬉しいけど。
そしてアリサは誤魔化す様に無理矢理話題を変える。
「と、とにかく依頼受けに行きましょう!」
「ああ、そうだな」
そんなやり取りを交わしながら、俺達は依頼を受ける為に受付近くへと足取りを向けた。
……しかし、改めてなんとかならねえかなと思った事が一つ。
アリサが俺の元に来た時も。
今こうして先導して進んでいる時も。
やはり何人かはアリサから距離を離す様に逃げていくんだ。道を空けるとかでは無く、露骨にそういう風に見える様に。
俺のスキルがギルド内に伝わった様に。俺がアリサとパーティを組んでいる=俺と居ればアリサの不運スキルを相殺できるという様な感じで伝わっていてもおかしくないのに。お見舞いに来たルークの言葉を聞く限りだと伝わっている筈なのに。
……それなのに、アリサを避ける人がいる。
できる事ならそれをどうにかする術を探したかった。
アリサはそれを特になんとも思っていなさそうだった。端から見ればそう取れる程度には、そういう事による感情の起伏が見られなかった。
そしてそれが隠しているのではないのだとすれば……そんなのは悪質な感覚の麻痺でしかない。
だからアリサが解決しなければならない問題は山の様にあると思うけども、その中でも二つ。とにかくお俺がどうにかしてやりたい事。
アリサが人を避けなくてもいいように。
アリサが人から避けられないように。
この二つ。人間関係の話。
そう簡単にはどうにかならないのは分かってる。どうすればいいのかも分からない。
だけどとにかく、どうにかしたいと。そう改めて思ったんだ。
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