ただキミを幸せにする為の物語 SSランクの幸運スキルを持つ俺は、パーティーを追放されたのでSSランクの不幸少女と最強のパーティーを組みます

山外大河

文字の大きさ
45 / 228
二章 ごく当たり前の日常を掴む為に

32 そして導きだした最適解

しおりを挟む
 あれから俺の目隠しはそのまま、リーナがある魔術を使った。
 洗濯物を乾かす位にしか使い道が無いような初級魔術。そういえば例の魔術教本に載っていた気がする。
 まさしく実用魔術教本である。とても実用性があるね。

「とりあえず一時間もあれば乾くっす」

 ……とりあえず俺も覚えておこう。依頼を受けにいった先で雨でずぶ濡れになる事も十分に考えられるのだから。

「……とりあえずリーナさんの分のコーヒー入れますね。お砂糖どうします?」

「あ、私ブラックで」

「ほう、お前ブラック派か」

「そういう先輩も……やりますね」

 なんか目隠ししてるけど分かるよ。こいつが凄いいい表情してるの。

「分かりました。……お砂糖入れた方が美味しいんですけどね」

 アリサがポツリとそう言うが、悪いけどそれだけは否定する。
 コーヒーという奴はブラックが至極なのだ。何故ならそれがコーヒー本来の味わいだから。それ以上の感想はない。間違いなく俺はにわか。

「……そういえば先輩。コーヒー殆ど減ってませんけど飲まないんすか? もしかして見栄張ってブラックにしちゃった感じっすか?」

「見栄張るっていうか見えてないからね。俺目隠ししてるからね。マグカップどこにあんの?」

「ここっすよ」

 リーナが俺の手を掴んでマグカップへと誘導してくれた。

「あ、ありがと」

 でも何これ。介護かな?

「お待たせしました、どうぞリーナさん」

「ありがとうっすアリサちゃん。じゃあ頂くっす」

 そう言っておそらくリーナはコーヒーを飲んだ。

「うわ……にっが。にっがぁ……」

「……お前アレだろ。見栄張っただろ」

 折角ブラック好き同盟を結成できたと思ったのに。

「うぅ……ブラック平然と飲んでる人の気がしれないっすよ」

「そうですよね。苦いより甘い方が良いですよね」

「お前らよくブラック平然とおいしく飲んでる奴の前でそれ言えるな」

「だって……ブラックコーヒーですよ」

「そうっすよ」

「なにお前らブラックコーヒーになんか恨みでもあんの?」

 先程の相当やらかした俺でもまあとりあえず許してくれてる様な奴らなのに……マジでブラックお前なにしたん?

 ……そういやグレンの奴もブラックは飲めるけど加糖派だった訳で。なんか俺の周り加糖派しかいなくね?
 ……これ実はブラック派って無茶苦茶少数派なんじゃね? なんかこの流れでルーク辺りに聞いてみても「そりゃブラックなんて飲むわけ無いじゃないですか」とか平然と言ってきそう。

「……うまいんだけどなあ、ブラック」

 とりあえずその声に賛同してくれる奴と廻り合いたいとそう思った。



 とまあそんな風にコーヒーを飲みながら時間を潰した。
 やがてリーナの魔術によりびしょ濡れの衣服が回復し、ようやく俺の視界が回復した事になる。

「……ようやく光が戻ってきた」

 やってみて分かったけど、長時間視界が奪われるというのは中々独特な怖さがあった。暗所恐怖症とかではないけど、それになりそうだって思ったよ。マジで何も見えねえって怖いわ。

「残念でしたね。もういつもの服にもどってるっすよ」

「いやだからそういうのじゃねえんだって」

「だからそこまで全否定されたら傷付くっすよ!」

「えーじゃあはい。エロかったエロかった」

「……あ、うん……そうっすか」

「この流れで赤面すんの止めてくれる!?」

「……クルージさん。ほんとはやっぱりそういう目で……」

「いやだからそういうんじゃないんだって!」

「……だからその全力否定は流石に来るっすよ」

「あーもう面倒くせえ!」

 じゃあどう言えば正解なんだよこれ!

 と、まあそんな会話を続けたくないので、話を変えることにした。

「そういやリーナ」

 俺は少し気になった事を聞いてみる。

「そういやお前、昨日の依頼が駄目ならヤバい位金欠的な事言ってたと思うんだけど、お前今日こうしてて大丈夫だったのか?」

「あー思い出したく無いこと聞きますね」

 リーナは少し落ち込んだ様子で言う。

「まあ昨日結構多めに報酬貰ってるっすからね。まあ今日今すぐにヤバいって事はないっすけど、まあ本当なら今日も午後から何か仕事しないとなーって思ってた位には貯金ないっすねー」

 なんとなく予想通りである。
 今日一日アリサを探してきた訳だが、多分そんな時間は無かったんじゃないかなって思ってた。
 昼飯なんかも、俺が奢ってなかってらコイツ大丈夫だったのかなって今になって思う。

 と、そんな話の中でリーナが少々不安そうな表情で言う。

「でも今Eランクの依頼もなんか一人じゃ怖いっすからね。ほら……またいつ魔獣が出るかもしれませんし」

 ……そういえば確かにその辺どうなのだろう。
 今、東の草原に魔獣が出た。
 それは即ち、本来初心者向けの依頼である筈のEランクの依頼が、初心者にどうこうできる様な依頼では無くなっている可能性が出てきてしまった訳だ。
 ……多分いい加減ギルドも対応に追われたりしているのではないのだろうか。
 ……本来駆け出しの冒険者に任せられる筈の依頼が、任せてはいけないような状況になってしまっているのだから。

 だから極端な話、リーナが次にまたいつEランクの依頼を受けられるのかも分からなくて、仮に受けられたとして無事に帰ってこられる保証がまるでないわけだ。

 ……なんか心配になってくる。
 コイツこれから大丈夫なのだろうか。

 と、そこでアリサが自分の事を言うように言う。

「……確かにそれは心配ですね。魔獣が出てきたらリーナさんすっごい危ないでしょうし……あ、そうだ」

 そしてアリサがいい事を思い付いた様に言う。

「リーナさん。ボク達のパーティーに入りませんか?」

 そんな考えられる限り、今の状況でソロで活動するよりも遥かにまともな最適解を。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

迷宮に捨てられた俺、魔導ガチャを駆使して世界最強の大賢者へと至る〜

サイダーボウイ
ファンタジー
アスター王国ハワード伯爵家の次男ルイス・ハワードは、10歳の【魔力固定の儀】において魔法適性ゼロを言い渡され、実家を追放されてしまう。 父親の命令により、生還率が恐ろしく低い迷宮へと廃棄されたルイスは、そこで魔獣に襲われて絶体絶命のピンチに陥る。 そんなルイスの危機を救ってくれたのが、400年の時を生きる魔女エメラルドであった。 彼女が操るのは、ルイスがこれまでに目にしたことのない未発見の魔法。 その煌めく魔法の数々を目撃したルイスは、深い感動を覚える。 「今の自分が悔しいなら、生まれ変わるしかないよ」 そう告げるエメラルドのもとで、ルイスは努力によって人生を劇的に変化させていくことになる。 これは、未発見魔法の列挙に挑んだ少年が、仲間たちとの出会いを通じて成長し、やがて世界の命運を動かす最強の大賢者へと至る物語である。

《レベル∞》の万物創造スキルで追放された俺、辺境を開拓してたら気づけば神々の箱庭になっていた

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティーの雑用係だったカイは、魔王討伐後「無能」の烙印を押され追放される。全てを失い、死を覚悟して流れ着いた「忘れられた辺境」。そこで彼のハズレスキルは真の姿《万物創造》へと覚醒した。 無から有を生み、世界の理すら書き換える神の如き力。カイはまず、生きるために快適な家を、豊かな畑を、そして清らかな川を創造する。荒れ果てた土地は、みるみるうちに楽園へと姿を変えていった。 やがて、彼の元には行き場を失った獣人の少女やエルフの賢者、ドワーフの鍛冶師など、心優しき仲間たちが集い始める。これは、追放された一人の青年が、大切な仲間たちと共に理想郷を築き、やがてその地が「神々の箱庭」と呼ばれるまでの物語。

無能扱いされ、パーティーを追放されたおっさん、実はチートスキル持ちでした。戻ってきてくれ、と言ってももう遅い。田舎でゆったりスローライフ。

さら
ファンタジー
かつて勇者パーティーに所属していたジル。 だが「無能」と嘲られ、役立たずと追放されてしまう。 行くあてもなく田舎の村へ流れ着いた彼は、鍬を振るい畑を耕し、のんびり暮らすつもりだった。 ――だが、誰も知らなかった。 ジルには“世界を覆すほどのチートスキル”が隠されていたのだ。 襲いかかる魔物を一撃で粉砕し、村を脅かす街の圧力をはねのけ、いつしか彼は「英雄」と呼ばれる存在に。 「戻ってきてくれ」と泣きつく元仲間? もう遅い。 俺はこの村で、仲間と共に、気ままにスローライフを楽しむ――そう決めたんだ。 無能扱いされたおっさんが、実は最強チートで世界を揺るがす!? のんびり田舎暮らし×無双ファンタジー、ここに開幕!

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

追放された俺のスキル【整理整頓】が覚醒!もふもふフェンリルと訳あり令嬢と辺境で最強ギルドはじめます

黒崎隼人
ファンタジー
「お前の【整理整頓】なんてゴミスキル、もういらない」――勇者パーティーの雑用係だったカイは、ダンジョンの最深部で無一文で追放された。死を覚悟したその時、彼のスキルは真の能力に覚醒する。鑑定、無限収納、状態異常回復、スキル強化……森羅万象を“整理”するその力は、まさに規格外の万能チートだった! 呪われたもふもふ聖獣と、没落寸前の騎士令嬢。心優しき仲間と出会ったカイは、辺境の街で小さなギルド『クローゼット』を立ち上げる。一方、カイという“本当の勇者”を失ったパーティーは崩壊寸前に。これは、地味なスキル一つで世界を“整理整頓”していく、一人の青年の爽快成り上がり英雄譚!

地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした

有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

処理中です...