ただキミを幸せにする為の物語 SSランクの幸運スキルを持つ俺は、パーティーを追放されたのでSSランクの不幸少女と最強のパーティーを組みます

山外大河

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三章 人間という生き物の本質

21 身勝手に利用するという事

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 さて、そんな会話などを交わしながら馬車はラーンの村へと進んでいく。
 そしてそんな中でアリサがそういえばという風に俺に言う。

「そういえばクルージさん。さっきボクちょっといい事思い付いたんですよ」

「いいこと?」

 なんだろうか?
 アリサの言葉にそう返すと、アリサは言う。

「はい。いいことです」

 そう言って笑みを浮かべたアリサは、一拍空けてから言う。

「今、クルージさんはラーンの村であんまりいいイメージで通ってないんですよね?」

「まあ、あんまりどころか最悪だわな」

「まあ疫病神扱いっすからね。盛大な勘違いっすよ」

「そうですよね。勘違いからそんな最悪な印象が広まっています」

 だけど、とアリサは言う。

「それなら……ボクがそれ間違いですって証明できないですかね?」

「……」

「ほら、ボクはSSランクの不運スキル持ちな訳でして。そんなボクがいてもなんの問題もないんですって分かってもらえれば……色々と、うまく行ってくれないですかね?」

 ……なんだかとっても聞き覚えのある話だった。
 それはきっとグレンが思い付いた案と同じような物で、計画の是非をアリサ本人に確認しなければならないと考えていた物で。
 それを、アリサ本人に告げられた。

「……実はさっき、そういう話をグレンとしてた。そうすりゃなんとかなるんじゃないのかって」

 俺はアリサの言葉にそう答える。
 別に今初めてそんな考えに思い至ったと、そういう風に装っても良かったと思う。
 だけど俺がそうしなかったのは……なんだかずるい気がしたからだ。
 アリサが自分から申し出てくれるのと、俺達がアリサに協力を頼むのでは、同じ事でも打って変わる程状況が違う。
 アリサのは純粋な善意だ。俺に向けてくれたある意味自己犠牲の様な、そんな善意。
 だけど俺達がアリサに告げるとすれば、いくらアリサの了承を得て初めて行うとしても。こちらにそんな悪意はなくても。どれだけ取り繕っても人の不幸を利用しようとしているという事に他ならない。

 だから、そんな話を俺達はアリサにしようとしていたのだから。
 きっと、ただ手を差し伸べて貰ったというだけで終わらせては行けない。
 そんな綺麗な話で終わらせちゃいけない。
 でなければ手を差し伸べて貰う資格などない。
 そして俺はそれを話した上でアリサに言う。

「……いいのか? 多分それで俺の関係性が回復しても、お前には良い事なんて何もないぞ。第一あの人達はそういう事に神経質なんだ。下手したら危ないかもしれない」

「……いいですよ」

 俺達がそういう話を出したという事がどういう事なのか分かっていないのか。それとも分かった上でそう答えてくれているのか。それは分からない。
 だけどとにかくアリサは言ったんだ。

「それでクルージさんが仲直りしたい人達と仲直りできるなら、それは多分ボクにとっても良い事ですよ」

 と、そんな善性の塊の様な言葉を。優しい笑みを浮かべて。

「……アリサ」

 そしてアリサはその後、少し苦笑いを浮かべて言う。

「あ、でもそれで危険な事になっちゃったら……その、守ってくれると嬉しいなーとは思います」

「……ああ、そん時は俺が守るよ」

 もしそうなったら……俺は何をしてでもアリサを守る。
 そのつもりだ。

 ……何をしてでも。
 ……一体俺は何をするつもりで、何ができるつもりなのだろうか?

 と、そんなやり取りをしていた時だった。

 突然馬車が止められた。

「おいどうしたグレン!」

「降りろお前ら! 長旅に一度は必ず付きもののモンスターの襲撃だ!」

「あーまあそりゃどっかで一回は遭遇するわな!」

「じゃあ行きますよ、クルージさん! リーナさん!」

 そう言って真っ先にアリサが馬車を跳び出していく。

「よし、俺達も――」

「先輩」

 と、馬車を出ようとした時、背後からリーナに呼び止められた。

「どうした?」

「さっきの話なんすけど……ちゃんと先輩とグレンさんは、その話をアリサちゃんにするつもりだったんすよね?」

 真剣な表情でリーナは問う。

「勝手に利用しようとした様な、そんなんじゃないんすよね?」

「当たり前だろ。聞いてみて駄目ならそれまで。アイツの不運を自分勝手に利用なんてしていい訳がねえだろ」

「……そうっすか」

 リーナは軽く一息付いてから言う。

「まあ先輩の事だから心配ないかなって思ったっすけど、それ聞けて安心っす。もしそのつもりじゃなかったら後で顔面ぶん殴ってたっすよ」

「怖いなぁ、具体的で」

「それで許されるんなら安くないっすか?」

「……まあ、そうだろうな」

 もしそんな事を私利私欲でやったのだとすれば、本来そんな事で済む話では無い筈だから。

「あーでも私は許す許さないの立場じゃないっすかね?」

「いや、お前は多分そういう立場だろうよ」

 俺がアリサに対して身勝手な事をして、それにお前が激情して俺を殴ったとして、俺はお前には文句は言えない。
 もうアリサとリーナはそういう間柄だと俺は思うし、多分それが放たれていればリーナの場合本当にアリサの事を思っての事だってのが分かるから。
 ……だからまず間違いなく、リーナはそういう立場に立てる。立っている人間だ。

 ……というかコイツ、そんな状況になっても俺の事、殴るだけで許してくれんのかよ。優しいなコイツ。

 ……まあでも、結局そうならなかったのだから今はもう良い。

「……いくぞ、リーナ」

「はいっす。さあやるっすよー。新生パーティーの初陣っす」

 そして俺達はアリサに遅れて馬車を跳び出した。
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