ただキミを幸せにする為の物語 SSランクの幸運スキルを持つ俺は、パーティーを追放されたのでSSランクの不幸少女と最強のパーティーを組みます

山外大河

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三章 人間という生き物の本質

26 幸運ではない今必要な物

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 ……さて。サンドベアーは倒した。倒せた筈だ。
 これでリーナは無事。アリサもグレンも無事で。
 これで俺も無事なら完勝だ。パーティーの初陣としては完璧な物だ。
 この後……俺も無事で済むのなら。

「……ッ!?」

 さて、この荒業。
 俺とグレンが今思えば馬鹿なんじゃないかって雑談から、冗談みたいに生まれたかった荒業。
 この技を対した怪我無く修得できたのは、一重に俺の運が良かったからなのだろう。
 下手をすれば打ち出す瞬間に、俺が大怪我を負う様な技。本来ならば試作段階で当たり前の様に大怪我してもおかしくは無かったんだ。
 そして運が良かった俺達は、その阿吽の呼吸で行う動きを無事対した怪我なく覚える事ができたんだ。

 だけどこの技で最も難易度が高いのは、射出ではなく着地である。
 この超スピードを纏って宙に投げ出されている俺は、当然の事ながらこの後着地しなければならないのである。

 ……あ、これ俺死ぬんじゃないかなーと思った。

 今までは、運良く着地出来ていた。
 ああそうだ。明らかに運が良かったんだ。
 SSランクの幸運スキルに救われてきたんだ。
 ……ではそれが無い今はどうなのか。

 そりゃ死ぬって思うわって、そんな状況。

「うおおおおおおおおおおおッ!?」

 出来る? できるか着地!? 下手したら足の骨折る位じゃ済まねえぞぉ!?

 そして足が地に付きかける。

 ……くそ! もう覚悟を決めるしかねえ!

 そして……足が地に付いた。


「……ッ!」

 そしてズザザザと地面を滑る様に勢いを殺していく。
 とにかく必死に、転倒しないようにバランスを取ることに全神経を注ぎながら。
 ……そして。

「……止まった」

 無事、着地成功。
 無傷で……幸運スキル無しでもやり遂げた。

 ……できたぞ、こんな無茶苦茶な事。

「……よし」

 そして小さくガッツポーズした。
 全員無傷での完勝に。
 ……自分自身の成長に。

 ……まさかこんな事で気付くとは思わなかった。

 回りに凄い才能の奴らがいて、自分が凄いちっぽけな人間に思えて。実際ちっぽけなのだろうけど。
 ……それでも、かつては運が良くないと出来なかったことが、今はできた。
 歩みはどうしようもなく小さいのかもしれないけれど、それでも前には進めていた。
 冒険者になってから今日に至るまでで、確かに成長していたんだ。

 今までもそんな気はしていたけれど、今日は確信的にそう思った。

 俺は自然と小さく笑った。
 こんなスピードじゃ、絶対に置いていかれる。遅い。遅すぎる。届かない。
 それでも……まだ頑張れるって。
 ……そう、確信したんだ。
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