ただキミを幸せにする為の物語 SSランクの幸運スキルを持つ俺は、パーティーを追放されたのでSSランクの不幸少女と最強のパーティーを組みます

山外大河

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三章 人間という生き物の本質

25 アクロバティックコンビネーション 下

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「「「……ッ」」」

 サンドベアーが三体いる。
 別にその可能性を失念していた訳ではない。その可能性だって考えてはいた。
 だけど見えなかった。地上に出ては来なかった。こんな近くまで近づかれているとは思わなかった。
 だけど可能性は十分にあった。

 モンスターも生き物なのだから。
 こちらにアリサやリーナの様な、いわば規格外の存在がいる様に。
 速度も。肺活量も。何もかもが通常のサンドベアーと比較すれば常軌を逸している個体だっていてもおかしくはない。
 そんな個体が俺達に気付かれる前に、まず後方支援担当のリーナを潰しに来た。

 まずい、とサンドベアーが跳び出してきた瞬間に思った。
 跳び出したサンドベアーはその勢いでリーナへと向かって攻撃してくる。
 Sランクの逃避スキルを持つリーナならそれは回避できるかもしれないが、それにしたって確実性はない。今すぐにでもあのサンドベアーは潰さなければならない。
 位置的に。いくらアリサでも間に合わない。
 俺達の立ち位置にしても、アリサの立ち位置にしても、ある程度一線を超える様な速度でなければ到達できない。

 そう考えればやる事は一つだった。

 まずいと思った瞬間にはもう動いていた。
 こういう時に取れる策を。逆に言えばこういう特位でしか使えない手段を俺は有していたから。
 俺達は有していたから。
 それが頭に有ったから、反射的に体が動いた。

「グレン!」

「おう!」

 お互い声を上げながら、阿吽の呼吸で動いた。
 俺は軽く跳びあがり膝を畳んで、きっとグレンはハンマーに術式を付与する。 
 そして俺は足の裏をグレンのハンマーに付けた。

「歯ぁ喰い縛れクルージ!」

「オオオオオオオオオッ!」

 そしてグレンがハンマーを振るった瞬間、爆発的な推進力を得た俺の体がサンドベアー目掛けて飛んでいく。
 言わば人間大砲。

「先輩!?」

 既に逃避スキルの恩恵を受けつつ回避を始めていたリーナが目を見開く。
 ……リーナが早急に動いている事で、サンドベアーの攻撃がリーナに届くまでの。届く可能性があるまでの時間はある程度伸びている。
 ……それだけあれば間に合う。

 ……潰せる!

 そして刀を構えた俺は、サンドベアーを上回る速度でサンドベアの元へと到達する。

「っらあああああああああああああああああああああッ!」

 そして速度と風を刀に乗せ、全力の一閃を放つ。
 恐らく俺が今放てる中で、最高速にして最大火力の一撃を。
 一撃で倒せるかどうかは分からないが、少なくとも一撃で止める事はできる一撃を。

 そして、一閃。
 サンドベアーが急速に力を失ったかのように地面に倒れ伏せる。

 ……倒したぞ。俺も一撃で。
 いや、正確には俺達で、なんだけども。
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