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三章 人間という生き物の本質

29 晩御飯を作ろうか

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 さて、リーナによる晩御飯作りが始まった。
 一応料理もしねえのに一応十分すぎる水とかも積んでた訳で、そこにリーナ持ち込みの調理器具に食材が揃えば、準備だけは完璧である。

「なあ、クルージ」

「どした?」

「普通の飯食えんの、やったぜって思った訳だよ俺は。でもなんつーか、すんげえ失礼な事言おうとしてるのわかんだけどさ……大丈夫なのか?」

 グレンはいそいそと準備をするリーナを見て言う。

「なんかアイツも色々スペック高いみたいだけどさ、なんか言動とか雰囲気的に、こう……爆発とかしそうじゃね?」

「いや、そりゃねえだろ。多分アイツマジで料理うまいんじゃねえの? まあ確かにリーナからはなんとなく盛大にやらかしそうなポンコツっぽい雰囲気は漂ってるから気持ちは分かるけど」

「あ、先輩とグレンさんは携帯食料の三枚おろしでいいんでしたっけ?」

「「すんませんでした!」」

 ……いかんいかん。冗談でもこの状況でそんな事言っちゃいけねえ。マジで携帯食料を三枚に下ろして提供されそう。
 でもまあギャップが凄いのはマジなんだよな……初対面の時まさかこんなに凄い奴だとは思わなかったし。

「そういえばリーナさん。何作るんですか?」

「ビーフシチューっす」

 ……すげえ普通にガチな奴だ。

「ちなみに皆さんライス派かパン派か分かんなかったんすけど、とりあえず手間掛かんないんで合いそうなパンも買ってきたっす」

「おぉ……」

 すげえ……なにこの圧倒的有能感。
 マジで女神か何かかな?

「あ、リーナさん。ボクに何か手伝える事ありますか?」

 アリサがリーナにそう尋ねると、少し考える素振りを見せてからリーナは言う。

「じゃあ野菜切ってもらっていいっすかね?」

「あ、はい、分かりました」

「……ッ!?」

 戦慄が走った。
 え、今アリサが野菜切る様な流れになってる?

「うん、イメージ的にアリサの方は料理できそうだよな……ってどうしたクルージ」

「あ、いや……なんでも」

 ……なんでもなくはねえんだよな。
 これ大丈夫なのか? アリサに刃物持たせていいのか? いや、今日戦闘でも刃物は使ってるんだけど、そっちでは普通に使えるの分かるんだけど……だけど、なぁ。
 ……でもなんかもう止められなさそうだし、うん。祈るしかねえ、無事を。
 とまあそれはともかく。

「リーナ。俺達も何か手伝う事あるか?」

「ないっす」

「おう……」

 そう言われるともうそう言うしかないよね、うん。

「あ、そうだ。先輩たちがそれでよければ食後の皿洗いとかお願いしてもいいっすか?」

「分かった」

 まあ現実的にそれが限界だよな。
 今俺ができる事って言ったら、それこそ野菜切るか火起こすか位なもんだし。

 まあそういう事もあり俺とグレンは待機組だ。

「ちなみにお前、王都に住むようになってから自炊とかしてた?」

「いや、ほぼやってねえ」

「だろうな。でもアレだぞ? 料理できる男はモテるらしいぞ」

「マジで? じゃあ俺料理始めようかな」

 と、俺達待機組は馬車の影でそんな話をしながら時間を潰す。
 と、そこにやがてフラフラとアリサがやってきた。

「どうした?」

 するとアリサはしゅんとした表情で言う。

「あ、いや、速攻で解任されました。休んでいてくださいとの事です。後でボクも皿洗いやりますね……」

「あ、そっか……」

 なんとなく今のリーナの気持ちが分かる気がする。
 恐ろしいよな……もう、色々と。
 まあとにかく無事で良かった。

 ……これ女の子の料理に対して抱く感情じゃないよね。
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