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三章 人間という生き物の本質
44 黒い霧
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向こうは霧の様な形状をしていて、果たして物理攻撃が通用するのかは分からない。
だけどアリサは完全に不意を突かれて反応が遅れていて。その黒い霧がアリサに危害を加えようとしているのも理解できて。
だとすれば通用するかどうかなんて考えていられない。
「っらああああああああああああああああッ!」
叫びながら構えていた刀を全力で黒い影に向けて投げつけ、そして走り出した。
投擲されたカタナは勢いよく回転しながら黒い霧へと迫り、アリサに向けて伸ばされようとしていた手に直撃する。
当然、そんなものは有効打にはならない。だけど、まともなダメージを与えられなくても、確かに直撃した。すり抜けはしなかった。
だとすればほんの少し位は動きを鈍らせられる。
そのほんの少しの時間があれば、アリサならば対応できる。
次の瞬間、アリサが動きの鈍った黒い霧をナイフで切り裂く。
「……ッ!」
だがアリサの一撃を喰らっても黒い霧は消えない。ダメージが通っているのかも分からないが、通っていたとしても一太刀では足りない。
いや、こちらからじゃよく見えなかったが、そもそも喰らったのか?
黒い霧の動きのを察するに、まさかアリサの攻撃が防がれたのか?
そしてそうこうしているその隙に、アリサの背から魔獣が迫る。
「させるかあああああああああああああッ!」
アリサの元まで辿り着いた俺は、アリサに向けて飛びかかった魔獣に対し飛び蹴りを叩き込む。
そして同時に風の魔術を発動。右手の平に風を圧縮させ、着地と同時に魔獣に向けて踏み込み、風を圧縮した掌での掌底を叩き込んで弾き飛ばした。
弾き飛ばされた魔獣はそのまま地面を転がって起き上がってこない。
だとすれば、意識を向けるべくは後方。
アリサと謎の黒い霧だ。
俺は護身用に風の魔術の発動を準備しながら後ろを振り返った。
そうして視界に映った光景は、ある意味衝撃的というべきなのかもしれない。
目の前で繰り広げられる戦いは、アリサが優勢だった。
それには驚かない。アリサがそれだけの実力者である事を知っているから。
でも、実力者だからこそ……そもそも目の前の戦いが、アリサが優勢という戦いらしい戦いになっている事が衝撃なのだ。
サンドベアーの様に固く、そもそも地上にいない時間が多く倒すのに時間が掛かる相手ならばまだ納得できる。
だが目の前の黒い霧は、消える事なくそこにいる。
真正面からアリサと対峙して、辛うじてでも戦いになっている。
つまりはそれだけの。魔獣とは比べ物にならない程の強敵という事になるのだから。
そしてその光景を目の当たりにした次の瞬間だった。
「先輩! 後ろ!」
「……ッ」
リーナの叫びに振り向くと、俺の背後に倒れていた魔獣からも同じように黒い霧が立ち上がって、人体のような形状を形成していた。
アリサと真っ向から戦って勝負になるような相手がだ。
……というかまずい。刀無しでそんな奴相手にするのはマズイ!
「クルージさん!」
次の瞬間、アリサの声と共に背後からナイフが飛んできて、黒い霧の胴体に突き刺さる。
それでも倒れない。掻き消えない。その場に顕現し続ける。
そしてナイフが突き刺さるのとほぼ同時、俺が投擲した刀が回転しながら俺の隣まで滑ってきた。
多分アリサだ。アリサが咄嗟に蹴ってこっちに回してくれた。
そして俺は足元にある刀に向けて手を伸ばす。。
それとほぼ同時、アリサのナイフでも止まらなかった黒い霧が腕を振り上げ、そして俺目掛けて振り下ろしに掛かる。
「先輩!」
リーナの声と共に俺と霧の間に半透明の薄い結界が展開される。
中、遠距離に結界を張る魔術。どうやらリーナはこの短期間でそんな物まで身に付けていたらしい。
そして次の瞬間、リーナの張った結界が黒い霧の腕により粉砕される。それだけの威力か強度不足か、それともその両方か。
だけどほんの僅かに動きは鈍る。勢いを殺せる。到達までの時間を稼げる。
それだけあれば……十分だ。
「っらああああああああああッ!」
黒い霧の腕をかわしてカウンターの一閃。
それを全力で黒い霧の胴体を切り払った。
だけどアリサは完全に不意を突かれて反応が遅れていて。その黒い霧がアリサに危害を加えようとしているのも理解できて。
だとすれば通用するかどうかなんて考えていられない。
「っらああああああああああああああああッ!」
叫びながら構えていた刀を全力で黒い影に向けて投げつけ、そして走り出した。
投擲されたカタナは勢いよく回転しながら黒い霧へと迫り、アリサに向けて伸ばされようとしていた手に直撃する。
当然、そんなものは有効打にはならない。だけど、まともなダメージを与えられなくても、確かに直撃した。すり抜けはしなかった。
だとすればほんの少し位は動きを鈍らせられる。
そのほんの少しの時間があれば、アリサならば対応できる。
次の瞬間、アリサが動きの鈍った黒い霧をナイフで切り裂く。
「……ッ!」
だがアリサの一撃を喰らっても黒い霧は消えない。ダメージが通っているのかも分からないが、通っていたとしても一太刀では足りない。
いや、こちらからじゃよく見えなかったが、そもそも喰らったのか?
黒い霧の動きのを察するに、まさかアリサの攻撃が防がれたのか?
そしてそうこうしているその隙に、アリサの背から魔獣が迫る。
「させるかあああああああああああああッ!」
アリサの元まで辿り着いた俺は、アリサに向けて飛びかかった魔獣に対し飛び蹴りを叩き込む。
そして同時に風の魔術を発動。右手の平に風を圧縮させ、着地と同時に魔獣に向けて踏み込み、風を圧縮した掌での掌底を叩き込んで弾き飛ばした。
弾き飛ばされた魔獣はそのまま地面を転がって起き上がってこない。
だとすれば、意識を向けるべくは後方。
アリサと謎の黒い霧だ。
俺は護身用に風の魔術の発動を準備しながら後ろを振り返った。
そうして視界に映った光景は、ある意味衝撃的というべきなのかもしれない。
目の前で繰り広げられる戦いは、アリサが優勢だった。
それには驚かない。アリサがそれだけの実力者である事を知っているから。
でも、実力者だからこそ……そもそも目の前の戦いが、アリサが優勢という戦いらしい戦いになっている事が衝撃なのだ。
サンドベアーの様に固く、そもそも地上にいない時間が多く倒すのに時間が掛かる相手ならばまだ納得できる。
だが目の前の黒い霧は、消える事なくそこにいる。
真正面からアリサと対峙して、辛うじてでも戦いになっている。
つまりはそれだけの。魔獣とは比べ物にならない程の強敵という事になるのだから。
そしてその光景を目の当たりにした次の瞬間だった。
「先輩! 後ろ!」
「……ッ」
リーナの叫びに振り向くと、俺の背後に倒れていた魔獣からも同じように黒い霧が立ち上がって、人体のような形状を形成していた。
アリサと真っ向から戦って勝負になるような相手がだ。
……というかまずい。刀無しでそんな奴相手にするのはマズイ!
「クルージさん!」
次の瞬間、アリサの声と共に背後からナイフが飛んできて、黒い霧の胴体に突き刺さる。
それでも倒れない。掻き消えない。その場に顕現し続ける。
そしてナイフが突き刺さるのとほぼ同時、俺が投擲した刀が回転しながら俺の隣まで滑ってきた。
多分アリサだ。アリサが咄嗟に蹴ってこっちに回してくれた。
そして俺は足元にある刀に向けて手を伸ばす。。
それとほぼ同時、アリサのナイフでも止まらなかった黒い霧が腕を振り上げ、そして俺目掛けて振り下ろしに掛かる。
「先輩!」
リーナの声と共に俺と霧の間に半透明の薄い結界が展開される。
中、遠距離に結界を張る魔術。どうやらリーナはこの短期間でそんな物まで身に付けていたらしい。
そして次の瞬間、リーナの張った結界が黒い霧の腕により粉砕される。それだけの威力か強度不足か、それともその両方か。
だけどほんの僅かに動きは鈍る。勢いを殺せる。到達までの時間を稼げる。
それだけあれば……十分だ。
「っらああああああああああッ!」
黒い霧の腕をかわしてカウンターの一閃。
それを全力で黒い霧の胴体を切り払った。
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