ただキミを幸せにする為の物語 SSランクの幸運スキルを持つ俺は、パーティーを追放されたのでSSランクの不幸少女と最強のパーティーを組みます

山外大河

文字の大きさ
97 / 228
三章 人間という生き物の本質

44 黒い霧

しおりを挟む
 向こうは霧の様な形状をしていて、果たして物理攻撃が通用するのかは分からない。
 だけどアリサは完全に不意を突かれて反応が遅れていて。その黒い霧がアリサに危害を加えようとしているのも理解できて。
 だとすれば通用するかどうかなんて考えていられない。

「っらああああああああああああああああッ!」

 叫びながら構えていた刀を全力で黒い影に向けて投げつけ、そして走り出した。
 投擲されたカタナは勢いよく回転しながら黒い霧へと迫り、アリサに向けて伸ばされようとしていた手に直撃する。
 当然、そんなものは有効打にはならない。だけど、まともなダメージを与えられなくても、確かに直撃した。すり抜けはしなかった。
 だとすればほんの少し位は動きを鈍らせられる。
 そのほんの少しの時間があれば、アリサならば対応できる。

 次の瞬間、アリサが動きの鈍った黒い霧をナイフで切り裂く。

「……ッ!」

 だがアリサの一撃を喰らっても黒い霧は消えない。ダメージが通っているのかも分からないが、通っていたとしても一太刀では足りない。
 いや、こちらからじゃよく見えなかったが、そもそも喰らったのか?
 黒い霧の動きのを察するに、まさかアリサの攻撃が防がれたのか?

 そしてそうこうしているその隙に、アリサの背から魔獣が迫る。

「させるかあああああああああああああッ!」

 アリサの元まで辿り着いた俺は、アリサに向けて飛びかかった魔獣に対し飛び蹴りを叩き込む。
 そして同時に風の魔術を発動。右手の平に風を圧縮させ、着地と同時に魔獣に向けて踏み込み、風を圧縮した掌での掌底を叩き込んで弾き飛ばした。
 弾き飛ばされた魔獣はそのまま地面を転がって起き上がってこない。
 だとすれば、意識を向けるべくは後方。
 アリサと謎の黒い霧だ。

 俺は護身用に風の魔術の発動を準備しながら後ろを振り返った。

 そうして視界に映った光景は、ある意味衝撃的というべきなのかもしれない。

 目の前で繰り広げられる戦いは、アリサが優勢だった。
 それには驚かない。アリサがそれだけの実力者である事を知っているから。
 でも、実力者だからこそ……そもそも目の前の戦いが、アリサが優勢という戦いらしい戦いになっている事が衝撃なのだ。
 サンドベアーの様に固く、そもそも地上にいない時間が多く倒すのに時間が掛かる相手ならばまだ納得できる。
 だが目の前の黒い霧は、消える事なくそこにいる。
 真正面からアリサと対峙して、辛うじてでも戦いになっている。

 つまりはそれだけの。魔獣とは比べ物にならない程の強敵という事になるのだから。

 そしてその光景を目の当たりにした次の瞬間だった。

「先輩! 後ろ!」

「……ッ」

 リーナの叫びに振り向くと、俺の背後に倒れていた魔獣からも同じように黒い霧が立ち上がって、人体のような形状を形成していた。
 アリサと真っ向から戦って勝負になるような相手がだ。

 ……というかまずい。刀無しでそんな奴相手にするのはマズイ!

「クルージさん!」

 次の瞬間、アリサの声と共に背後からナイフが飛んできて、黒い霧の胴体に突き刺さる。
 それでも倒れない。掻き消えない。その場に顕現し続ける。
 そしてナイフが突き刺さるのとほぼ同時、俺が投擲した刀が回転しながら俺の隣まで滑ってきた。
 多分アリサだ。アリサが咄嗟に蹴ってこっちに回してくれた。

 そして俺は足元にある刀に向けて手を伸ばす。。
 それとほぼ同時、アリサのナイフでも止まらなかった黒い霧が腕を振り上げ、そして俺目掛けて振り下ろしに掛かる。

「先輩!」

 リーナの声と共に俺と霧の間に半透明の薄い結界が展開される。
 中、遠距離に結界を張る魔術。どうやらリーナはこの短期間でそんな物まで身に付けていたらしい。
 そして次の瞬間、リーナの張った結界が黒い霧の腕により粉砕される。それだけの威力か強度不足か、それともその両方か。
 だけどほんの僅かに動きは鈍る。勢いを殺せる。到達までの時間を稼げる。
 それだけあれば……十分だ。

「っらああああああああああッ!」

 黒い霧の腕をかわしてカウンターの一閃。
 それを全力で黒い霧の胴体を切り払った。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

迷宮に捨てられた俺、魔導ガチャを駆使して世界最強の大賢者へと至る〜

サイダーボウイ
ファンタジー
アスター王国ハワード伯爵家の次男ルイス・ハワードは、10歳の【魔力固定の儀】において魔法適性ゼロを言い渡され、実家を追放されてしまう。 父親の命令により、生還率が恐ろしく低い迷宮へと廃棄されたルイスは、そこで魔獣に襲われて絶体絶命のピンチに陥る。 そんなルイスの危機を救ってくれたのが、400年の時を生きる魔女エメラルドであった。 彼女が操るのは、ルイスがこれまでに目にしたことのない未発見の魔法。 その煌めく魔法の数々を目撃したルイスは、深い感動を覚える。 「今の自分が悔しいなら、生まれ変わるしかないよ」 そう告げるエメラルドのもとで、ルイスは努力によって人生を劇的に変化させていくことになる。 これは、未発見魔法の列挙に挑んだ少年が、仲間たちとの出会いを通じて成長し、やがて世界の命運を動かす最強の大賢者へと至る物語である。

《レベル∞》の万物創造スキルで追放された俺、辺境を開拓してたら気づけば神々の箱庭になっていた

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティーの雑用係だったカイは、魔王討伐後「無能」の烙印を押され追放される。全てを失い、死を覚悟して流れ着いた「忘れられた辺境」。そこで彼のハズレスキルは真の姿《万物創造》へと覚醒した。 無から有を生み、世界の理すら書き換える神の如き力。カイはまず、生きるために快適な家を、豊かな畑を、そして清らかな川を創造する。荒れ果てた土地は、みるみるうちに楽園へと姿を変えていった。 やがて、彼の元には行き場を失った獣人の少女やエルフの賢者、ドワーフの鍛冶師など、心優しき仲間たちが集い始める。これは、追放された一人の青年が、大切な仲間たちと共に理想郷を築き、やがてその地が「神々の箱庭」と呼ばれるまでの物語。

無能扱いされ、パーティーを追放されたおっさん、実はチートスキル持ちでした。戻ってきてくれ、と言ってももう遅い。田舎でゆったりスローライフ。

さら
ファンタジー
かつて勇者パーティーに所属していたジル。 だが「無能」と嘲られ、役立たずと追放されてしまう。 行くあてもなく田舎の村へ流れ着いた彼は、鍬を振るい畑を耕し、のんびり暮らすつもりだった。 ――だが、誰も知らなかった。 ジルには“世界を覆すほどのチートスキル”が隠されていたのだ。 襲いかかる魔物を一撃で粉砕し、村を脅かす街の圧力をはねのけ、いつしか彼は「英雄」と呼ばれる存在に。 「戻ってきてくれ」と泣きつく元仲間? もう遅い。 俺はこの村で、仲間と共に、気ままにスローライフを楽しむ――そう決めたんだ。 無能扱いされたおっさんが、実は最強チートで世界を揺るがす!? のんびり田舎暮らし×無双ファンタジー、ここに開幕!

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

追放された俺のスキル【整理整頓】が覚醒!もふもふフェンリルと訳あり令嬢と辺境で最強ギルドはじめます

黒崎隼人
ファンタジー
「お前の【整理整頓】なんてゴミスキル、もういらない」――勇者パーティーの雑用係だったカイは、ダンジョンの最深部で無一文で追放された。死を覚悟したその時、彼のスキルは真の能力に覚醒する。鑑定、無限収納、状態異常回復、スキル強化……森羅万象を“整理”するその力は、まさに規格外の万能チートだった! 呪われたもふもふ聖獣と、没落寸前の騎士令嬢。心優しき仲間と出会ったカイは、辺境の街で小さなギルド『クローゼット』を立ち上げる。一方、カイという“本当の勇者”を失ったパーティーは崩壊寸前に。これは、地味なスキル一つで世界を“整理整頓”していく、一人の青年の爽快成り上がり英雄譚!

地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした

有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

処理中です...