ただキミを幸せにする為の物語 SSランクの幸運スキルを持つ俺は、パーティーを追放されたのでSSランクの不幸少女と最強のパーティーを組みます

山外大河

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三章 人間という生き物の本質

47 要の有無 下

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 向こうの戦力はこちらとは違い、比較的精鋭揃いだと言える。
 だけどそれでも確信を持って言える。向こうで一対一で戦えるのはグレンだけ。他の連中はやはり複数人で囲まなければ対処できない。そうなれば一人で四体も相手にできるアリサという要の有無はあまりにも大きい。
 そしてそもそも俺達は魔獣を倒すという本来の目的を果たす時にも、あまりにも大きくアリサの恩恵を受けていて。向こうはそれもなくて。
 故にこちらに黒い霧が現れた段階で残っていた、アリサ以外の戦力と同等の物を、その時まで向こう側が残せているかも定かではなくて。
 つまり……つまり向こうは最悪な戦況になっている可能性が高くて。
 だとすれば。

 ……最悪、グレンが死ぬ。

「……ッ」

 何か……なんでもいい。
 策を打たなければならない。
 一分一秒でも早く……ッ!

 そう考えながら、必死になって走った。
 グレン達のいる東側に向けてではない。
 真正面。今まさに四体の内の一人を消滅させたアリサの元へ。
 そして黒い霧の背後から飛びかかり、一体に切り抜けるように一太刀を浴びせる。

 それでは倒しきれなかったものの、ダメージは与えられた筈だ。
 そしてアリサと合流する。

「クルージさん、怪我とかしてないですか!?」

「大丈夫だ! アリサお前は!?」

「ボクも大丈夫です!」

 そう言ってアリサは俺と背中合わせになるようにして、そして言う。

「とにかくここからも怪我とか無しで切り抜けましょう! とりあえずボク達二人掛かりで-ー」

「いや、コイツらは俺一人でやる! お前は東側に行ってくれ!」

「……え?」

「東側も同じ状況になってたらグレンが死ぬかもしれねえ! それだけは絶対に駄目だ!」

「……ッ」

 アリサも状況を把握したのか、声にならない声を出す。
 だけどすぐには頷かない。

「……ちょ、ちょっと待ってください!」

 そうアリサが何かを言い掛けた時、二体の黒い霧が俺達に向けて腕を振り下ろしてくる。
 俺はそれをかわして反撃を叩き込みながら、アリサの方を向いて言う。

「……頼む。俺が行った所で多分何も変えられねえんだ」

 その時、俺がどんな声音で。どんな表情を浮かべていたかは俺にはよく分からない。
 分からないけれど、視界の先のアリサは何かを感じ取ったようにハッとした表情を浮かべていて。
 連続して放たれる黒い霧の攻撃をかわして反撃を加えていたアリサは、最後に一撃ナイフで黒い霧を切りつけた後、踵を返す。

「すぐなんとかして戻ってきます!」

 そう言ってアリサは勢いよく東側へと向かってくれた。
 それでも間に合うか分からない。分からないけれどそれでも……これで大丈夫かもしれないと思う事はできる。アリサが間に合いさえすればどうにかなるだろうから。

 ……そうなれば後はこっちをどうにかする事を考えよう。
 俺は黒い霧の攻撃を躱しながら改めて状況を再確認する。

 目の前には黒い霧が三体。
 いずれもある程度はアリサがダメージを蓄積させてくれている筈で。それでもあり、俺が合流した時に切り付けた奴はやや動きが鈍くなっている。
 それでも強敵で。そんな奴らが三体もいて。そして他の連中は他の連中でそれぞれ黒い霧の対処に終われていて加勢は期待できない。
 正真正銘、俺一人対、謎の化物三体だ。
 だとすればこれは間違いなく死戦。圧倒的劣勢。
 だけど死ぬわけにはいかない。
 ……俺が死ねばアリサがどうなるか分かっているから。
 とにかく死ねない。

 死んでたまるか。

「三対一、上等だ!」

 そして俺は黒い霧の攻撃を躱し、全力で刀で切りかかった。
 また無事四人で顔を合わせる為に。
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