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三章 人間という生き物の本質
ex 最悪な未来からの逃避
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(早く……早く戻らないとッ)
リーナは負傷者を安全な場所まで連れていき、応急処置を施した後、全力で西側の防衛地点へ走っていた。
逃げている時と違って逃避スキルは効力を発揮しない。故にお世辞にも早くはなくて、そして元々特別体力があった訳でもないから、全力疾走は直ぐに息を上がらせて。それでも全力で走り続ける。
……なにかとても、嫌な予感がした。
その正体がなんなのかは分からない。
(あの黒い霧は多分アリサちゃんと先輩なら大丈夫。アリサちゃんは凄いし先輩だって強い! ……他の人だって、アリサちゃんがいて、この状況ならなにもしない筈……流石にそれは無い筈。ない筈なんだ……ッ!)
では、一体この不安はなんなのか。
それが分からないままクルージとアリサが戦っている。もしくは戦いを終えているその場所へと戻った。
そして戻って……目を見開いた。
だってそこに広がっていたのは異様で歪で、最悪な光景だったから。
「……なんで」
だから息切れした肺と喉から声を絞り出した。
こちらに気付いて戸惑いを見せる傍観者たちに向けて。
「なんで突っ立って眺めてんすか!」
黒い霧に一方的に攻撃されて動かないクルージを見殺しにしている理解のできない大人たちに向けて。
「……ッ」
そしてその村人達が動く前に、魔術を発動させた。
光の弾丸。未だ威力は低く、魔獣の動きを一瞬止める位しかできない。
……それでも、無我夢中でそれを黒い霧に向けて撃ち放った。
当然、倒せない。もう消滅仕掛けの相手だとしても、こんな攻撃では倒せない。
それでも、一瞬動きは止まった。
一瞬……故に次が来てしまう。
「……ッ!」
それでもなんとかクルージをあの場から連れ出そうと、クルージの元へ走っていた。自分の登場でようやく他の村人も動き出したが、今更動き出した時点で何も信用できない。
飛び込んででも助けないといけない。
(……助けないと)
失うわけに行かない。
アリサという自分にできた初めての友の為にも。
……自分の為にも。
(……助けないと!)
ようやく自分という人間をまともに受け入れてくれる人達と出会った。普通に仲良くしてくれて、現状足手まといなのにパーティーに入れてくれて。まだ出会って短い期間しか経っていなくても、それでも今自分のようなどうしようもなく無価値な人間の回りにしてくれている。
だから……そんな人達は誰一人失いたくはない。
それを失ってしまうような最悪な未来からは逃げ出したい。
そんな現実からは逃避したい。
そう考えた次の瞬間だった。
「……」
一瞬視界が暗転して……そして。
気が付けば黒い霧を殴り飛ばして消し飛ばした自分がそこにいた。
「は……え?」
何が起きたのか自分が一番理解できていなかった。
だけど自分の事なんてどうでもよくて。そんな事よりも考えなければならない事があって。
「せ、先輩! 大丈夫っすか!? 先輩!」
自分の事なんかより、自分の後ろで倒れて動かないクルージの方が優先すべきだ。
慌てて意識を失ってボロ雑巾のように倒れるクルージの前に屈みこむ。
(脈はある……心臓だって動いてる)
多分本当に黒い霧も力が尽きかけていたのだろう。そうでなければきっと、もうとっくに脈は止まっていた筈だ。
そこまで頑張ったのだ……きっと、受けられた筈のサポートさえ受けられれば、こうはならなかった位に。
そう考えながら、ざわつく村の人間を睨み付ける。
だけどそんな事すらしている場合ではなくて。
とにかくクルージに応急処置を施さなければならない。
そして必死にやれる事をやっていた時だった。
「……ッ!」
少し遅れて。グレンがこの場に辿り着いたのは。
そしてグレンはクルージに掛ける。
「クルージ……クソッ! おいリーナ! クルージは……クルージは大丈夫そうなのか!?」
「とりあえずなんとか……でも本当にギリギリっすよ。後少し遅かったら、間違いなく手遅れでした」
「……そうか」
そしてグレンはこんな状況にも関わらず、困惑しざわつくだけで駆け寄ってすらこない村の連中を睨み付けながら、リーナに問いかける。
「……教えてくれリーナ。ここで一体何があった」
リーナは負傷者を安全な場所まで連れていき、応急処置を施した後、全力で西側の防衛地点へ走っていた。
逃げている時と違って逃避スキルは効力を発揮しない。故にお世辞にも早くはなくて、そして元々特別体力があった訳でもないから、全力疾走は直ぐに息を上がらせて。それでも全力で走り続ける。
……なにかとても、嫌な予感がした。
その正体がなんなのかは分からない。
(あの黒い霧は多分アリサちゃんと先輩なら大丈夫。アリサちゃんは凄いし先輩だって強い! ……他の人だって、アリサちゃんがいて、この状況ならなにもしない筈……流石にそれは無い筈。ない筈なんだ……ッ!)
では、一体この不安はなんなのか。
それが分からないままクルージとアリサが戦っている。もしくは戦いを終えているその場所へと戻った。
そして戻って……目を見開いた。
だってそこに広がっていたのは異様で歪で、最悪な光景だったから。
「……なんで」
だから息切れした肺と喉から声を絞り出した。
こちらに気付いて戸惑いを見せる傍観者たちに向けて。
「なんで突っ立って眺めてんすか!」
黒い霧に一方的に攻撃されて動かないクルージを見殺しにしている理解のできない大人たちに向けて。
「……ッ」
そしてその村人達が動く前に、魔術を発動させた。
光の弾丸。未だ威力は低く、魔獣の動きを一瞬止める位しかできない。
……それでも、無我夢中でそれを黒い霧に向けて撃ち放った。
当然、倒せない。もう消滅仕掛けの相手だとしても、こんな攻撃では倒せない。
それでも、一瞬動きは止まった。
一瞬……故に次が来てしまう。
「……ッ!」
それでもなんとかクルージをあの場から連れ出そうと、クルージの元へ走っていた。自分の登場でようやく他の村人も動き出したが、今更動き出した時点で何も信用できない。
飛び込んででも助けないといけない。
(……助けないと)
失うわけに行かない。
アリサという自分にできた初めての友の為にも。
……自分の為にも。
(……助けないと!)
ようやく自分という人間をまともに受け入れてくれる人達と出会った。普通に仲良くしてくれて、現状足手まといなのにパーティーに入れてくれて。まだ出会って短い期間しか経っていなくても、それでも今自分のようなどうしようもなく無価値な人間の回りにしてくれている。
だから……そんな人達は誰一人失いたくはない。
それを失ってしまうような最悪な未来からは逃げ出したい。
そんな現実からは逃避したい。
そう考えた次の瞬間だった。
「……」
一瞬視界が暗転して……そして。
気が付けば黒い霧を殴り飛ばして消し飛ばした自分がそこにいた。
「は……え?」
何が起きたのか自分が一番理解できていなかった。
だけど自分の事なんてどうでもよくて。そんな事よりも考えなければならない事があって。
「せ、先輩! 大丈夫っすか!? 先輩!」
自分の事なんかより、自分の後ろで倒れて動かないクルージの方が優先すべきだ。
慌てて意識を失ってボロ雑巾のように倒れるクルージの前に屈みこむ。
(脈はある……心臓だって動いてる)
多分本当に黒い霧も力が尽きかけていたのだろう。そうでなければきっと、もうとっくに脈は止まっていた筈だ。
そこまで頑張ったのだ……きっと、受けられた筈のサポートさえ受けられれば、こうはならなかった位に。
そう考えながら、ざわつく村の人間を睨み付ける。
だけどそんな事すらしている場合ではなくて。
とにかくクルージに応急処置を施さなければならない。
そして必死にやれる事をやっていた時だった。
「……ッ!」
少し遅れて。グレンがこの場に辿り着いたのは。
そしてグレンはクルージに掛ける。
「クルージ……クソッ! おいリーナ! クルージは……クルージは大丈夫そうなのか!?」
「とりあえずなんとか……でも本当にギリギリっすよ。後少し遅かったら、間違いなく手遅れでした」
「……そうか」
そしてグレンはこんな状況にも関わらず、困惑しざわつくだけで駆け寄ってすらこない村の連中を睨み付けながら、リーナに問いかける。
「……教えてくれリーナ。ここで一体何があった」
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