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三章 人間という生き物の本質
48 せめてこんな時位は
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結論だけを言ってしまえば、俺ではまだ力不足だった。
「……ぐァッ!」
黒い霧の攻撃をもろに喰らって弾き飛ばされた。
威力はもう大した事は無い。攻撃を加え続けた結果、向こうも満身創痍なのだろう。動きは酷く鈍く力も入っていない。
だけどそれは俺も同じで。
途中でリーナの魔術が切れたけれど、それでも二体は倒した。あと一歩だった。それでもそこが今の俺の限界で。
体に力が入らなくて。全身に激痛が走り続けていて。倒れたまた立ち上がれない。
一対三。その戦いは一切の言い訳のしようもなく、俺の敗北だ。
だけど……それはあくまで一対三の戦いにおいての話。
視界の先でほぼ同時に村の連中が、自分達が担当していた黒い霧を倒しきったのが見えた。
数人で囲んで一体を相手にしていた事もあり、まだ殆どの奴らが戦闘続行能力を有しているのは間違いない。
そして本当にゆっくりと、力無くこちらに向かってくる最後の黒い霧はもう魔獣以下の戦闘能力しか残っていない。
つまり俺達の勝利だ。
後ものの十数秒で勝負は決まる。
……誰かが動いてさえくれれば。
「……は?」
分かりきっていた筈だ。何もおかしな事では無い筈だ。
だけど……それでもそんな声が出た。
誰も動かない。ただ黙ってこちらを見ているだけ。
「……ッ」
多分きっと……期待していたんだ。期待したかったんだ。
せめてこんな皆で一丸にならないといけない時位は……誰か一人位動いてくれるって。
だけど……それすらも。
「……くそッ!」
駄目だ! 立て……立つんだ!
もう立たないと殺される。立って俺が倒さないと俺は殺される!
そして俺が死んだらアリサは……ッ。
だけどそもそも、一人で立てるなら最初からそうしていて。
「くそぉ……ッ!」
気が付けば全く動けないまま、俺を見下ろすように黒い霧がそこにいて。腕を振り上げた。
そうなっても誰も動かない。
それどころか……一人が口角を上げたのが見えた。
そしてそれが見えた次の瞬間、腕が振り下ろされ全身に激痛が走り。それが何度か続いて。
俺の意識はブラックアウトした。
「……ぐァッ!」
黒い霧の攻撃をもろに喰らって弾き飛ばされた。
威力はもう大した事は無い。攻撃を加え続けた結果、向こうも満身創痍なのだろう。動きは酷く鈍く力も入っていない。
だけどそれは俺も同じで。
途中でリーナの魔術が切れたけれど、それでも二体は倒した。あと一歩だった。それでもそこが今の俺の限界で。
体に力が入らなくて。全身に激痛が走り続けていて。倒れたまた立ち上がれない。
一対三。その戦いは一切の言い訳のしようもなく、俺の敗北だ。
だけど……それはあくまで一対三の戦いにおいての話。
視界の先でほぼ同時に村の連中が、自分達が担当していた黒い霧を倒しきったのが見えた。
数人で囲んで一体を相手にしていた事もあり、まだ殆どの奴らが戦闘続行能力を有しているのは間違いない。
そして本当にゆっくりと、力無くこちらに向かってくる最後の黒い霧はもう魔獣以下の戦闘能力しか残っていない。
つまり俺達の勝利だ。
後ものの十数秒で勝負は決まる。
……誰かが動いてさえくれれば。
「……は?」
分かりきっていた筈だ。何もおかしな事では無い筈だ。
だけど……それでもそんな声が出た。
誰も動かない。ただ黙ってこちらを見ているだけ。
「……ッ」
多分きっと……期待していたんだ。期待したかったんだ。
せめてこんな皆で一丸にならないといけない時位は……誰か一人位動いてくれるって。
だけど……それすらも。
「……くそッ!」
駄目だ! 立て……立つんだ!
もう立たないと殺される。立って俺が倒さないと俺は殺される!
そして俺が死んだらアリサは……ッ。
だけどそもそも、一人で立てるなら最初からそうしていて。
「くそぉ……ッ!」
気が付けば全く動けないまま、俺を見下ろすように黒い霧がそこにいて。腕を振り上げた。
そうなっても誰も動かない。
それどころか……一人が口角を上げたのが見えた。
そしてそれが見えた次の瞬間、腕が振り下ろされ全身に激痛が走り。それが何度か続いて。
俺の意識はブラックアウトした。
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