ただキミを幸せにする為の物語 SSランクの幸運スキルを持つ俺は、パーティーを追放されたのでSSランクの不幸少女と最強のパーティーを組みます

山外大河

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三章 人間という生き物の本質

62 彼女の異常性について 下

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「……」

 グレンの表情や声音から、今からの話が自分達の思っている以上に深刻な話のように思えてしまう。
 そして深刻な話だと認識すると脳裏にちらつく。

 明らかに何かを抱えていて、自身の過去に踏み込まれないようにしているリーナが。
 隠し事が深刻な話だと決まった訳じゃ無いけれど……自然と繋がってしまう。
 そしてグレンは言う。

「お前らとは王都で会ってから今に至るまで接してきて、アリサとリーナがどういう奴なのかは大体理解したつもりだ。リーナは……まあ、すげえ奴だと思うよ。なんか歳の割にあり得ない位知識とかやれる事豊富だし、何より聞いた話じゃあり得ないような程無茶苦茶な速度で魔術習得してるときた。それも何が一種類とかじゃなくて教本一冊全種類丸々だろ……正直天才とかそういうレベルじゃねえ」

 そしてグレンは一拍空けてから少し言いにくそうに……だけどそれでも確かに俺達に言う。

「正直……異常だと俺は思うよ」

「異常って……」

 アリサが半ば反射的にそう言いだすが、それでもその言葉の続きは出てこなかった。
 俺も同じ。
 きっと俺もグレンと同じような事を考えていたから。

 ある程度拙いながらも魔術を扱う身として、リーナの成長速度が無茶苦茶だとは思う。
 そして俺以上に経験豊富な人間が。
 きっとある程度の才覚が無ければ辿り付く事の出来ない実力を持つ、俺よりも格上の冒険者であるルークも言っていた。

『いや、そんな化物染みた人間いる訳がないじゃないですか』

 そんな本当だとは微塵にも思っていないような事を。
 そしてそれが本当だと知った時の困惑した表情も。リーナの成長速度の異常性を物語っている。
 だけど……まあ、リーナの成長速度が異常だったとしてだ。

「だけどそれが何で話しにくい事になる? 色々と才能がある分には良い事だろ。つーかこれさっきの話となんの関連性が……」

 そこまで言って、言葉が詰まった。

「気付いたか?」

「……ああ」

 グレン程の洞察力が無くても、此処まで丁重に話されれば気付く事が出来た。
 だけどアリサはまだ気付く事ができていないらしく俺に聞いてくる。

「……つまりどういう事ですか?」

「……これまでの話が全部本当なら、リーナのあの成長速度は全部、何かから逃避しようとしている結果になるって話だ」

「……そういう事だ」

 グレンは俺の言葉を正解というように頷く。

「魔術以外の事に関しちゃたまたま素晴らしい才能を持っていた分野を偶然にも取り組む事になるような事が何度も何度も重なるなんていう、まだ現実的にあり得るような事だ。だからこれに関しちゃスキルの影響があったかどうかは分からねえ。だけど……魔術に関しちゃその可能性は希薄にも程があると俺は思う。多分間違いなくスキルの影響だ……何かから逃避しようとしている結果、異常に呑み込みがはやくなっちまってるんだと思う」

 そして魔術の事をそう結論付けると、自然とそれ以外の事も逃避スキルの影響で身に着けた物なんじゃないかと考えてしまう。
 ……まあどこからどこまでが逃避スキルの影響かなんてのはどうでもいいんだ。

「……リーナさん、一体何を抱えて……」

 問題なのはそれ。逃避スキルが発動して魔術師として急成長せざるを得ない程、何かから逃げている。
 ……それに。それにだ。

「魔術以外の事だったら、過去に何かあったんだろうなで一応済ませる事も出来る話だけど……現在進行形で急成長してるって事は、今も逃げ続けてるって事だよな、何かから」

 今のリーナは何も解決できずにいる。
 ……多分それを掘り下げて辿り着く答えが、リーナが王都で冒険者になった理由なのかもしれない。
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