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三章 人間という生き物の本質
72 新しい力
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「さて、改めて確認しとくぞ」
神樹の森の入り口へと辿り着いて馬車を降りた俺達は、グレンの言葉を皮切りに作戦の確認を行う。
「俺とアリサが前衛で敵とぶつかる。クルージとリーナは後衛。俺達が捌ききれない敵の対処と、可能なら魔術で遠距離から援護してくれ」
「ああ」
「了解っす」
そう言うリーナに対して俺は言う。
「とりあえずどこまで動けるか分からねえが、基本こっちに来た敵は俺が捌く。サポート頼むぞ」
「はいっす。でも先輩も無理しちゃ駄目っすよ。一応昨日それなりに使えそうな魔術を使えるようになったんで、ある程度は先輩の負担を減らせると思うっすから」
「え、リーナさんあの後勉強してたんですか?」
「ははは、ちょっと途中目が覚めたんすよ。それで……」
そう言ってリーナは苦笑いを浮かべる。
俺も頼もしいと思って良いのか苦笑いしていいのか分からない。やっぱ昨日少し位は魔術の勉強した方がよかったんじゃねえかな?
そして苦笑いを浮かべているリーナにグレンが問いかける。
「ちなみにその昨日習得した魔術ってのを見せてもらえるか? 一応全員何ができるかは知っといた方が良いだろ」
「そうですね。今見せてもらっても大丈夫ですか?」
「いいっすよ。見ててほしいっす」
そう言ってリーナは地面に手を添える。
そしてリーナの手が発光した次の瞬間リーナの三メートル程前の地面から、高さ2メートル程の半透明の長方体が生えた。
「結界術っすね。まあさほど強度はないかもしれないっすけど、それなりの距離にそれなりの大きさで展開できるっす」
「……また一日で習得できなさそうな物覚えてきたな」
「一応こうすれば攻撃にも転用できるっすよ」
そう言ってリーナは今生やした結界を消滅させ、その後再び手が発光。
次の瞬間、地面から斜め上方向に結界が勢いよく突き上がる!
「うぉッ!?」
「どっすか?」
「い、いや、すげえよ。これいきなり地面から鈍器で殴られるようなもんだし」
「しかも多分これ、普通は真上に向けて伸びる奴を角度調整して展開させてるわけだろ? スピードも攻撃用の術式として充分使えるし……ああ、冗談抜きで凄い奴だな」
「しかも……これ一夜漬けなんですよね。ほんと凄いですよリーナさん!」
「えへへ、そうっすか? まあでも私なんてまだまだっすよ!」
そう言って嬉しそうにドヤ顔を浮かべるリーナ。
……ああ、実際に凄い。凄いよほんと。
その凄さを裏付ける逃避スキルの事に気付いた今、その成長を純粋に喜んでいいのかは分からなかったけど。
だけど俺も、アリサやグレンもその事は口にせず、前向きな方向に話を進めて行く。
「しかし実際の所強度はどんなもんなんだ?」
グレンが尋ねるとリーナは言う。
「さっきも言ったっすけど、強度は左程ないかもしれないっす。まあありがたい事に色々魔術を覚えられてはいるんすけど、今まで使ってきた攻撃魔術が魔獣の足止め程度しかできなかったみたいに、正直出力は付いて来てないっすから」
「でもリーナさんが使ってた光の球体飛ばすみたいな術、初歩的な術ですよね? これ少なくとも初心者向けの術じゃないと思いますから、形にできてる時点で最低限の強度はあるんじゃないですか」
「だといいんすけど」
「どれどれ」
そう言ってグレンは扉をノックするように、斜めに生えた結界を拳で軽く叩く。
「ああ。最低限戦闘で使っていける位の強度は現時点でもあるみてえだな」
「分かるのか?」
「まあ大雑把かもしれねえけど、音の反響の仕方とかである程度は」
「へ、へぇ……」
……リーナも凄いけど、グレンはグレンで中々に凄い事言ってないか?
「まあ分かりやすく体感してみるのが一番だと思うっすから。先輩、ちょっとこの結界全力で殴ってみてください」
「えぇ……さっき結構強度あるって言ってなかったっけ? いやまあいいけどさ」
そう言って結界に近寄りながら拳を握ると、その手をリーナに掴まれる。
「ちょ、ストップ! 先輩ストップ! 何マジになってんすか! 冗談っすよ冗談! そんな事して余計な怪我増えたらどうすんすか!」
「お、おう……なんかごめん」
謝ったけどこれ俺悪いのか?
「なんか本気でやりそうでボクも心配でしたよ」
ああ、成程。俺悪いわこれ。
「じゃあ代わりに俺が」
そう言って拳を握って前に出たのはグレンだ。
神樹の森の入り口へと辿り着いて馬車を降りた俺達は、グレンの言葉を皮切りに作戦の確認を行う。
「俺とアリサが前衛で敵とぶつかる。クルージとリーナは後衛。俺達が捌ききれない敵の対処と、可能なら魔術で遠距離から援護してくれ」
「ああ」
「了解っす」
そう言うリーナに対して俺は言う。
「とりあえずどこまで動けるか分からねえが、基本こっちに来た敵は俺が捌く。サポート頼むぞ」
「はいっす。でも先輩も無理しちゃ駄目っすよ。一応昨日それなりに使えそうな魔術を使えるようになったんで、ある程度は先輩の負担を減らせると思うっすから」
「え、リーナさんあの後勉強してたんですか?」
「ははは、ちょっと途中目が覚めたんすよ。それで……」
そう言ってリーナは苦笑いを浮かべる。
俺も頼もしいと思って良いのか苦笑いしていいのか分からない。やっぱ昨日少し位は魔術の勉強した方がよかったんじゃねえかな?
そして苦笑いを浮かべているリーナにグレンが問いかける。
「ちなみにその昨日習得した魔術ってのを見せてもらえるか? 一応全員何ができるかは知っといた方が良いだろ」
「そうですね。今見せてもらっても大丈夫ですか?」
「いいっすよ。見ててほしいっす」
そう言ってリーナは地面に手を添える。
そしてリーナの手が発光した次の瞬間リーナの三メートル程前の地面から、高さ2メートル程の半透明の長方体が生えた。
「結界術っすね。まあさほど強度はないかもしれないっすけど、それなりの距離にそれなりの大きさで展開できるっす」
「……また一日で習得できなさそうな物覚えてきたな」
「一応こうすれば攻撃にも転用できるっすよ」
そう言ってリーナは今生やした結界を消滅させ、その後再び手が発光。
次の瞬間、地面から斜め上方向に結界が勢いよく突き上がる!
「うぉッ!?」
「どっすか?」
「い、いや、すげえよ。これいきなり地面から鈍器で殴られるようなもんだし」
「しかも多分これ、普通は真上に向けて伸びる奴を角度調整して展開させてるわけだろ? スピードも攻撃用の術式として充分使えるし……ああ、冗談抜きで凄い奴だな」
「しかも……これ一夜漬けなんですよね。ほんと凄いですよリーナさん!」
「えへへ、そうっすか? まあでも私なんてまだまだっすよ!」
そう言って嬉しそうにドヤ顔を浮かべるリーナ。
……ああ、実際に凄い。凄いよほんと。
その凄さを裏付ける逃避スキルの事に気付いた今、その成長を純粋に喜んでいいのかは分からなかったけど。
だけど俺も、アリサやグレンもその事は口にせず、前向きな方向に話を進めて行く。
「しかし実際の所強度はどんなもんなんだ?」
グレンが尋ねるとリーナは言う。
「さっきも言ったっすけど、強度は左程ないかもしれないっす。まあありがたい事に色々魔術を覚えられてはいるんすけど、今まで使ってきた攻撃魔術が魔獣の足止め程度しかできなかったみたいに、正直出力は付いて来てないっすから」
「でもリーナさんが使ってた光の球体飛ばすみたいな術、初歩的な術ですよね? これ少なくとも初心者向けの術じゃないと思いますから、形にできてる時点で最低限の強度はあるんじゃないですか」
「だといいんすけど」
「どれどれ」
そう言ってグレンは扉をノックするように、斜めに生えた結界を拳で軽く叩く。
「ああ。最低限戦闘で使っていける位の強度は現時点でもあるみてえだな」
「分かるのか?」
「まあ大雑把かもしれねえけど、音の反響の仕方とかである程度は」
「へ、へぇ……」
……リーナも凄いけど、グレンはグレンで中々に凄い事言ってないか?
「まあ分かりやすく体感してみるのが一番だと思うっすから。先輩、ちょっとこの結界全力で殴ってみてください」
「えぇ……さっき結構強度あるって言ってなかったっけ? いやまあいいけどさ」
そう言って結界に近寄りながら拳を握ると、その手をリーナに掴まれる。
「ちょ、ストップ! 先輩ストップ! 何マジになってんすか! 冗談っすよ冗談! そんな事して余計な怪我増えたらどうすんすか!」
「お、おう……なんかごめん」
謝ったけどこれ俺悪いのか?
「なんか本気でやりそうでボクも心配でしたよ」
ああ、成程。俺悪いわこれ。
「じゃあ代わりに俺が」
そう言って拳を握って前に出たのはグレンだ。
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