199 / 228
四章 冒険者達の休日
15 鈍感馬鹿野郎の真相
しおりを挟む
それからしばらくして、俺達はグレンの工房兼自宅を出た。
結局グレンは工房を出るまではずっとあんな調子で、俺達の前でおかしな反応を取り続けていた。
だから工房を出てすぐにグレンに問いかける事にした。
……問いかけてまともな答えが返ってくるかは分からないけれど。
「なあ、グレン。ちょっといいか?」
「なんだ? ……なんて言わねえよ。お前らが今改まって聞きたい事が何か位は理解してるつもりだ」
この展開を予想していたという風な様子でそう言ったグレンは言う。
「俺がどうしてあの露骨に奇想天外な事が起きている空間で素っ頓狂な言動ばかりしてたか……みたいな話だろ?」
「え? なんすか……自覚してたんすか?」
「ボク完全に心に何か悪い影響でも与えてるのかなって思ってましたよ」
「そんな精神乗っ取られるみてえな悪影響はねえよ。起きてることは自覚してるし全部演技だ演技」
「成程……演技、ね」
ひとまずグレンが心身共に無事なようで、それは安心する。
……まああの誰かは心身ぶっ壊すような悪い奴には見えないから、心配するだけ野暮な話なんだけど。
でも……だからこそだ。
「でもなんでそんな演技してたんだ? いや……俺らも最初は粗相が有ったらやべえって思って演技してたけどさ、正直あの……なんだろ。幽霊? 全くお前に害与えたりしてねえだろ。なのにお前まであんな気付かないフリみたいな演技しなくても……」
「確かにな。工房の中に居る誰か……まあ妥当な説を上げるとすりゃ俺の前に居た奴の霊だろうな。殺人事件があったって話だし、未練でも残ってんだろ」
殺人事件……そういや、そういう類いの事故物件だったな。
そしてグレンは続ける。
「で、そいつが別に悪霊じゃねえって事は分かってる。まあ思える訳ねえよな……それはなんとなく俺だって分かるよ」
「だったらなんで……それこそ演技してたら失礼じゃねえか?」
「ごもっとも……まあ正直礼言わないといけねえ立場なんじゃねえかなって思う。だけどよ……」
そしてグレンは一拍空けてから言う。
「幽霊とか余裕余裕って思ってたけど実際遭遇して分かった……俺、心霊現象の類いマジで無理っぽいんだわ。こ、このままどんどんお近付きになるの怖いから……気付かねえフリしてんだ」
そういうグレンの表情はどこか青ざめている。
多分マジでそんな感じなのだろう。
とりあえず納得。
しかしグレンにそんな弱点が……よし、夏に騙して肝試し連れて行こう。
「ちなみになんすけど、グレンさんは前々から幽霊が居る事を知ってたんすよね?」
「ま、まあ住んでるからな」
「私達にそれ内緒で連れてったって事は……これ完全に私達驚かせるつもりだったっすよね?」
「……ノーコメントで」
「「「……」」」
騙して肝試し連れてったろ!
ちなみに後で聞いたらアリサもリーナも同意見だった。
夏が楽しみだなぁ!
結局グレンは工房を出るまではずっとあんな調子で、俺達の前でおかしな反応を取り続けていた。
だから工房を出てすぐにグレンに問いかける事にした。
……問いかけてまともな答えが返ってくるかは分からないけれど。
「なあ、グレン。ちょっといいか?」
「なんだ? ……なんて言わねえよ。お前らが今改まって聞きたい事が何か位は理解してるつもりだ」
この展開を予想していたという風な様子でそう言ったグレンは言う。
「俺がどうしてあの露骨に奇想天外な事が起きている空間で素っ頓狂な言動ばかりしてたか……みたいな話だろ?」
「え? なんすか……自覚してたんすか?」
「ボク完全に心に何か悪い影響でも与えてるのかなって思ってましたよ」
「そんな精神乗っ取られるみてえな悪影響はねえよ。起きてることは自覚してるし全部演技だ演技」
「成程……演技、ね」
ひとまずグレンが心身共に無事なようで、それは安心する。
……まああの誰かは心身ぶっ壊すような悪い奴には見えないから、心配するだけ野暮な話なんだけど。
でも……だからこそだ。
「でもなんでそんな演技してたんだ? いや……俺らも最初は粗相が有ったらやべえって思って演技してたけどさ、正直あの……なんだろ。幽霊? 全くお前に害与えたりしてねえだろ。なのにお前まであんな気付かないフリみたいな演技しなくても……」
「確かにな。工房の中に居る誰か……まあ妥当な説を上げるとすりゃ俺の前に居た奴の霊だろうな。殺人事件があったって話だし、未練でも残ってんだろ」
殺人事件……そういや、そういう類いの事故物件だったな。
そしてグレンは続ける。
「で、そいつが別に悪霊じゃねえって事は分かってる。まあ思える訳ねえよな……それはなんとなく俺だって分かるよ」
「だったらなんで……それこそ演技してたら失礼じゃねえか?」
「ごもっとも……まあ正直礼言わないといけねえ立場なんじゃねえかなって思う。だけどよ……」
そしてグレンは一拍空けてから言う。
「幽霊とか余裕余裕って思ってたけど実際遭遇して分かった……俺、心霊現象の類いマジで無理っぽいんだわ。こ、このままどんどんお近付きになるの怖いから……気付かねえフリしてんだ」
そういうグレンの表情はどこか青ざめている。
多分マジでそんな感じなのだろう。
とりあえず納得。
しかしグレンにそんな弱点が……よし、夏に騙して肝試し連れて行こう。
「ちなみになんすけど、グレンさんは前々から幽霊が居る事を知ってたんすよね?」
「ま、まあ住んでるからな」
「私達にそれ内緒で連れてったって事は……これ完全に私達驚かせるつもりだったっすよね?」
「……ノーコメントで」
「「「……」」」
騙して肝試し連れてったろ!
ちなみに後で聞いたらアリサもリーナも同意見だった。
夏が楽しみだなぁ!
0
あなたにおすすめの小説
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
迷宮に捨てられた俺、魔導ガチャを駆使して世界最強の大賢者へと至る〜
サイダーボウイ
ファンタジー
アスター王国ハワード伯爵家の次男ルイス・ハワードは、10歳の【魔力固定の儀】において魔法適性ゼロを言い渡され、実家を追放されてしまう。
父親の命令により、生還率が恐ろしく低い迷宮へと廃棄されたルイスは、そこで魔獣に襲われて絶体絶命のピンチに陥る。
そんなルイスの危機を救ってくれたのが、400年の時を生きる魔女エメラルドであった。
彼女が操るのは、ルイスがこれまでに目にしたことのない未発見の魔法。
その煌めく魔法の数々を目撃したルイスは、深い感動を覚える。
「今の自分が悔しいなら、生まれ変わるしかないよ」
そう告げるエメラルドのもとで、ルイスは努力によって人生を劇的に変化させていくことになる。
これは、未発見魔法の列挙に挑んだ少年が、仲間たちとの出会いを通じて成長し、やがて世界の命運を動かす最強の大賢者へと至る物語である。
《レベル∞》の万物創造スキルで追放された俺、辺境を開拓してたら気づけば神々の箱庭になっていた
夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティーの雑用係だったカイは、魔王討伐後「無能」の烙印を押され追放される。全てを失い、死を覚悟して流れ着いた「忘れられた辺境」。そこで彼のハズレスキルは真の姿《万物創造》へと覚醒した。
無から有を生み、世界の理すら書き換える神の如き力。カイはまず、生きるために快適な家を、豊かな畑を、そして清らかな川を創造する。荒れ果てた土地は、みるみるうちに楽園へと姿を変えていった。
やがて、彼の元には行き場を失った獣人の少女やエルフの賢者、ドワーフの鍛冶師など、心優しき仲間たちが集い始める。これは、追放された一人の青年が、大切な仲間たちと共に理想郷を築き、やがてその地が「神々の箱庭」と呼ばれるまでの物語。
無能扱いされ、パーティーを追放されたおっさん、実はチートスキル持ちでした。戻ってきてくれ、と言ってももう遅い。田舎でゆったりスローライフ。
さら
ファンタジー
かつて勇者パーティーに所属していたジル。
だが「無能」と嘲られ、役立たずと追放されてしまう。
行くあてもなく田舎の村へ流れ着いた彼は、鍬を振るい畑を耕し、のんびり暮らすつもりだった。
――だが、誰も知らなかった。
ジルには“世界を覆すほどのチートスキル”が隠されていたのだ。
襲いかかる魔物を一撃で粉砕し、村を脅かす街の圧力をはねのけ、いつしか彼は「英雄」と呼ばれる存在に。
「戻ってきてくれ」と泣きつく元仲間? もう遅い。
俺はこの村で、仲間と共に、気ままにスローライフを楽しむ――そう決めたんだ。
無能扱いされたおっさんが、実は最強チートで世界を揺るがす!?
のんびり田舎暮らし×無双ファンタジー、ここに開幕!
異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!
椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。
しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。
身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。
そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!
追放された俺のスキル【整理整頓】が覚醒!もふもふフェンリルと訳あり令嬢と辺境で最強ギルドはじめます
黒崎隼人
ファンタジー
「お前の【整理整頓】なんてゴミスキル、もういらない」――勇者パーティーの雑用係だったカイは、ダンジョンの最深部で無一文で追放された。死を覚悟したその時、彼のスキルは真の能力に覚醒する。鑑定、無限収納、状態異常回復、スキル強化……森羅万象を“整理”するその力は、まさに規格外の万能チートだった! 呪われたもふもふ聖獣と、没落寸前の騎士令嬢。心優しき仲間と出会ったカイは、辺境の街で小さなギルド『クローゼット』を立ち上げる。一方、カイという“本当の勇者”を失ったパーティーは崩壊寸前に。これは、地味なスキル一つで世界を“整理整頓”していく、一人の青年の爽快成り上がり英雄譚!
地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした
有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる