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六章 君ガ為のカタストロフィ
41 イルミナティ Ⅱ
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……ふざけんなよ。
「精霊は資源なんかじゃねえ! この世界の人間までそんなふざけた事言いやがんのかよ! 精霊術なんて力を使える事以外はどう考えたって普通の女の子だろうが!」
多分誠一に押さえられていなければ、俺はまた目の前の男に殴りかかっていたのだろう。そんな勢いで前のめりになり声を荒げさせた。
だがそんな俺の言葉に対し特に動じた様子もなく、男は俺に言葉を返す。
「そうだとも」
それは俺の主張を肯定する言葉。
自らが提示した筈の答えを否定する言葉。
「精霊は資源などではない。勝るとも劣らず。我々人類と同等の存在だと認識している。だから精霊を資源だとみなす異世界の人間は正直頭がおかしいと思うよ」
「だったら、さっきあなたが言ってた精霊が生まれてくる目的ってのは何? 自分で資源だって言ってたよね」
そうだ。この僅かなやり取りの中で男の言葉は止まった酷く矛盾している。宮村の言う通り、目の前の男は確かに精霊の事を資源と言ったのだ。
それに対して男はこう言う。
「精霊が資源ではないというのは、我々人間の倫理に基づいた答えにすぎん。そして人間の出した答えがこの世界の意思と同じになるかといえば、そうとは限らない。故に精霊が資源という考えはこの世界の『人間』は誰も持ってはいないと思うが、それは真実とは異なる、そうであってほしいという願望でしかないわけだ」
「お、おいちょっと待てよ」
誠一が男の話に割って入る。
「話が飛躍しすぎて訳わかんねえ。世界の意思ってのはなんだ!? なんかこう……神みたいな何かがいて、そいつが精霊を資源だとか馬鹿げた事言ってんのか!?」
「そうだ」
男は誠一の言葉に頷く。
「その意思を神と呼んでいいのかどうかは分からないが、大雑把に考えればそういう事だという認識で結構だ。我々人類の出した結論と逆行する考えを世界そのものは抱いている」
「だからそれに大人しく従ってますって言いてぇのかてめえは」
仮に。仮にだ。今までの話が全部本当だったとして、それでもその話から導き出される答えは一つしかない。だから言ってやる。
「この際世界の意思だとかそういうのは良くわかんねえけど認めてやるよ。もうこっちは何も知らねえ状態から異世界見てきて異能バトルで何度も死にかけて、挙句の果てに知らない内に自分の記憶が何度も書き換えられてるなんて事を経験してんだ。今更何があっても受け入れてやる。だけど……それを認めたからって、てめえが本当に精霊を資源じゃねえと思ってんなら従わねえだろ! 抗うだろ! それとも何か? 精霊が資源じゃねえとか言っときながら宗教みてえにその神様みてえなのを信仰してんのかてめえは!」
仮に。絶対に認めたくはないが、精霊が資源として生まれてくるのが本当だったとしよう。
だけどそれをどう受け入れるかは俺達人間次第だ。どんな形で生まれてこようと、俺達が対等な存在だと思えば精霊は対等な存在になり得るんだ。
それをコイツは……精霊が資源じゃないと言っておきながら、結果的に精霊を虐げてる。
そんな馬鹿な話があるか。
それに対し男は言葉を返してくる。
「そんなもの信仰する訳がないだろう。それ故に我々も抗うさ。いくらだって抗い続けてやる」
「抗い続けてる? 何言ってんだてめえらは精霊を――」
「暴走させている」
男は俺の言葉に被せて掻き消す様にそう言って、俺に問いかける。
「……どうやらキミは少し勘違いをしているようだ。精霊が資源で、我々がその意思に従ったとする。その結果が精霊を三十億人近い人間を死に追いやった生物兵器の様にする事だったとすれば……果たしてそれは資源か?」
少なくとも、と男は続ける。
「キミが見てきた異世界の人間は、精霊を使って集団自殺をするような運用の仕方をしていたか?」
「……ッ!?」
違う。異世界の人間は精霊を、自分達の利益の為に扱っている。
無理矢理精霊と契約を結ぶことにより、精霊術という異能の力を手に入れ、ドール化した精霊を飲まず食わずで働かせる労働力にする。
分かりやすい程に人間にとって資源として利益になる風に運用している。
精霊を暴走させるなんて事は……きっと不利益しか生まない。
「最初に言ったと思うが、精霊が暴走する事によって発生するメリットなんてのは何もない。精霊が暴走する事で喜ぶ者などどこにもいやしない。我々も可能であるならば精霊を暴走などさせていないさ」
「つまりあなた達は……不可抗力っていいたいのかな?」
「不可抗力……まあそんな所だな」
「それで……アンタ達の目的はなんだ。精霊を暴走させるのが不可抗力だったとして、アンタらはそんな事をしてまで一体何をしたかったんだ」
「抗う為だ」
「抗う?」
「そうだ。抗って守り通さなければならない。世界曰く醜い失敗作のこの世界の人類を」
そしてその意味深な言葉に続けるように、男は更に謎を重ねる。
「それこそが我々の目的であり……精霊と交わした約束だよ」
「精霊は資源なんかじゃねえ! この世界の人間までそんなふざけた事言いやがんのかよ! 精霊術なんて力を使える事以外はどう考えたって普通の女の子だろうが!」
多分誠一に押さえられていなければ、俺はまた目の前の男に殴りかかっていたのだろう。そんな勢いで前のめりになり声を荒げさせた。
だがそんな俺の言葉に対し特に動じた様子もなく、男は俺に言葉を返す。
「そうだとも」
それは俺の主張を肯定する言葉。
自らが提示した筈の答えを否定する言葉。
「精霊は資源などではない。勝るとも劣らず。我々人類と同等の存在だと認識している。だから精霊を資源だとみなす異世界の人間は正直頭がおかしいと思うよ」
「だったら、さっきあなたが言ってた精霊が生まれてくる目的ってのは何? 自分で資源だって言ってたよね」
そうだ。この僅かなやり取りの中で男の言葉は止まった酷く矛盾している。宮村の言う通り、目の前の男は確かに精霊の事を資源と言ったのだ。
それに対して男はこう言う。
「精霊が資源ではないというのは、我々人間の倫理に基づいた答えにすぎん。そして人間の出した答えがこの世界の意思と同じになるかといえば、そうとは限らない。故に精霊が資源という考えはこの世界の『人間』は誰も持ってはいないと思うが、それは真実とは異なる、そうであってほしいという願望でしかないわけだ」
「お、おいちょっと待てよ」
誠一が男の話に割って入る。
「話が飛躍しすぎて訳わかんねえ。世界の意思ってのはなんだ!? なんかこう……神みたいな何かがいて、そいつが精霊を資源だとか馬鹿げた事言ってんのか!?」
「そうだ」
男は誠一の言葉に頷く。
「その意思を神と呼んでいいのかどうかは分からないが、大雑把に考えればそういう事だという認識で結構だ。我々人類の出した結論と逆行する考えを世界そのものは抱いている」
「だからそれに大人しく従ってますって言いてぇのかてめえは」
仮に。仮にだ。今までの話が全部本当だったとして、それでもその話から導き出される答えは一つしかない。だから言ってやる。
「この際世界の意思だとかそういうのは良くわかんねえけど認めてやるよ。もうこっちは何も知らねえ状態から異世界見てきて異能バトルで何度も死にかけて、挙句の果てに知らない内に自分の記憶が何度も書き換えられてるなんて事を経験してんだ。今更何があっても受け入れてやる。だけど……それを認めたからって、てめえが本当に精霊を資源じゃねえと思ってんなら従わねえだろ! 抗うだろ! それとも何か? 精霊が資源じゃねえとか言っときながら宗教みてえにその神様みてえなのを信仰してんのかてめえは!」
仮に。絶対に認めたくはないが、精霊が資源として生まれてくるのが本当だったとしよう。
だけどそれをどう受け入れるかは俺達人間次第だ。どんな形で生まれてこようと、俺達が対等な存在だと思えば精霊は対等な存在になり得るんだ。
それをコイツは……精霊が資源じゃないと言っておきながら、結果的に精霊を虐げてる。
そんな馬鹿な話があるか。
それに対し男は言葉を返してくる。
「そんなもの信仰する訳がないだろう。それ故に我々も抗うさ。いくらだって抗い続けてやる」
「抗い続けてる? 何言ってんだてめえらは精霊を――」
「暴走させている」
男は俺の言葉に被せて掻き消す様にそう言って、俺に問いかける。
「……どうやらキミは少し勘違いをしているようだ。精霊が資源で、我々がその意思に従ったとする。その結果が精霊を三十億人近い人間を死に追いやった生物兵器の様にする事だったとすれば……果たしてそれは資源か?」
少なくとも、と男は続ける。
「キミが見てきた異世界の人間は、精霊を使って集団自殺をするような運用の仕方をしていたか?」
「……ッ!?」
違う。異世界の人間は精霊を、自分達の利益の為に扱っている。
無理矢理精霊と契約を結ぶことにより、精霊術という異能の力を手に入れ、ドール化した精霊を飲まず食わずで働かせる労働力にする。
分かりやすい程に人間にとって資源として利益になる風に運用している。
精霊を暴走させるなんて事は……きっと不利益しか生まない。
「最初に言ったと思うが、精霊が暴走する事によって発生するメリットなんてのは何もない。精霊が暴走する事で喜ぶ者などどこにもいやしない。我々も可能であるならば精霊を暴走などさせていないさ」
「つまりあなた達は……不可抗力っていいたいのかな?」
「不可抗力……まあそんな所だな」
「それで……アンタ達の目的はなんだ。精霊を暴走させるのが不可抗力だったとして、アンタらはそんな事をしてまで一体何をしたかったんだ」
「抗う為だ」
「抗う?」
「そうだ。抗って守り通さなければならない。世界曰く醜い失敗作のこの世界の人類を」
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「それこそが我々の目的であり……精霊と交わした約束だよ」
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