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第75話 レオン VS 〈暗黒騎士〉エリオット
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エリオットの手にした剣からは、黒い煙のような闇の炎がほとばしった。刃先はまるで生きているかのように揺らぎ、闇の力が剣技に絡みつく。
「暗黒剣技、闇焔の業火よ……!」
彼の剣は幾度も切りつける度に、黒炎が渦を巻いて敵を焼き尽くす。熱風が吹き荒れ、兵士たちはその猛威に一歩も動けずにいる。
対してレオンは、無造作に剣を構えるだけ。だが、一見隙だらけのその姿は、見る者が見れば、一分の隙も無いことがわかる。
彼の周囲には、【原初の力】による、見えない結界が瞬時に展開される。
黒炎がレオンに迫った瞬間、破裂音とともに激しい閃光が走る。しかし黒炎は結界に弾かれ、レオンの身には届かない。
「こしゃくなやつめ! これならどうだ!」
剣と剣が何度も交わり、火花と光が飛び散る。エリオットの闇の剣技はただ強烈なだけではなく、巧妙に隙を狙う冷徹な攻撃だった。
だがレオンは慌てずに、そのすべてを、いとも簡単に受け流していく。
「へぇ、少しは剣を使えるようになったじゃないか、オーク君!」
懐かしい悪口が飛び出す。オークジェネラルくらいには成長しているかもしれない。
「俺を舐めるなぁぁあああ!」
「おやおや? 怖かったら逃げてもいいんだぞ? ほら、いつぞやのように、他を見捨てて敵前逃亡しないのか?」
相次ぐレオンの挑発に激昂したエリオットは、猛烈に連続して剣を振るう。斬撃の軌跡から黒炎が噴き出し、砦の瓦礫をも焼き崩していく。しかし、レオンは一歩も動かず、周囲に漂う【原初の力】がその全てを防ぎ、黒炎は触れることができなかった。
「無駄だ、エリオット。お前の闇の炎は、俺には届かない」
レオンの声は、あくまで静かで冷ややかだった。
「うるさい……!」
苛立ちに駆られたエリオットが剣を振り下ろす。その瞬間、レオンの周囲の空間がわずかに歪み、レオンに振り下ろされたはずの剣は、大きく空振り、エリオットはバランスを崩す。そこをレオンが無造作にエリオットを蹴り飛ばす。
さらにレオンが手をかざすと、エリオットの身体が弾かれるように吹き飛んだ。地面を転がり、瓦礫を巻き込んで止まる。
「ぐっ……な、何だ、今のは……!」
「さあな? 忠告しておくが、無理に踏み込めば、吹き飛ばされるぞ?」
レオンは涼しい顔のまま、さらに【原初の力】で周囲の重力を歪める。エリオットが立ち上がろうとするたび、目には見えぬ重圧が押し付けられ、動きが鈍る。まるで空気そのものが鎖のように絡みつくかのようだった。
「どうした、オーク君。動けないのか? 少しは力をつけたと思ったが、その程度か? なんだ、五年前と大して変わらんじゃないか、予想通り、いや、予想以下だ。がっかりだな」
レオンはわざと嘲笑交じりに声をかける。
「貴様ああああぁぁぁ!!」
その異様な光景を、ラグナルは呆然と見つめていた。
(ば、馬鹿な……あの闇の力を、まるで意に介さず……!?)
驚愕はすぐに別の感情へと変わる。
レオンのその力、かつて自分と剣を交えた時には、まったく見せていなかった。
(あの時は……手を抜いていたのか……!? 俺との戦いでは、本気すら出していなかった……?)
胸の奥が燃えるような怒りに包まれる。
遊ばれていた。舐められていた。まるで、自分が「相手にすらされていなかった」と突き付けられるような屈辱。
「……ふざけるな……ふざけるなよ、貴様……!」
ラグナルは拳を握り締め、唇を震わせながら、戦いを凝視する。
怒り狂ったエリオットは、必死に力を振り絞って重圧を突破し、再び剣を振るう。だがレオンは一切慌てず、受け流し、躱す。そして、隙をついて再び【原初の力】を解放する。
「もう一度、飛んでみるか?」
その瞬間、再び彼の体が宙に浮く。エリオットはまたしても吹き飛ばされた。
「ぐっ……おのれ、貴様……!」
砦の瓦礫を揺らす激闘の中、二人の戦いはまさに光と闇の激突だった。闇の炎をまとった剣技を繰り出しながらも、闇の炎はレオンの【原初の力】に弾かれ、まったく通じない。激しくぶつかり合う剣の火花の中で、エリオットの眉根が深く寄る。
「この……貴様め……!」
エリオットの怒りは限界に達し、苛立ちが、彼の声を震わせ、目つきは憎悪に染まっていく。闇の炎は狂い、剣の動きも荒々しくなり、理性が揺らぎ始めていた。
一方のレオンは冷静そのもの。相手の感情の乱れを見逃すことなく、鋭い視線で隙を見極める。
「どうした? 随分と隙だらけだぞ、オーク君」
レオンの声は、挑発に満ちた冷たい刃そのものだった。
「ま、所詮こんなもんだろうな」
その言葉と同時に、レオンの剣が鋭く閃き、エリオットの左腕を狙う。鋭い一撃が走り、左腕は半ばから断ち切られた。
「ぐっ……!」
激痛とともにエリオットは剣を落とし、呆然と腕を見つめる。鮮血が地面に滴り落ちる。
これで〈暗黒騎士〉も終りかと思われたその瞬間、黒装束の集団が素早く駆け寄り、魔法の障壁を展開して守りを固めた。撤退の合図を送る敵が、苦痛に顔が歪むエリオットを守りつつ、後退を始める。
騎士団が追撃に移ろうとした刹那、敵の魔術師たちが一斉に呪文を唱え、激しい魔法攻撃を放った。閃光と爆風が前線を覆い、追撃の足を止められた騎士団はやむなく後退を余儀なくされる。煙と魔力の渦が晴れると、〈暗黒騎士〉エリオットは、敵の護衛に守られながら消えていった。
(逃げられたか……)
レオンは苦々しい思いで、辺りを見回す。黒装束の集団と戦っていた騎士たちも、負傷し、疲弊していた。
「……次は逃がさん、決着をつけてやる」
レオンの低く呟いた声が風に乗って消えていった。
空はいまだ曇天のまま暗く、静かに雨が落ちてきていた。
「暗黒剣技、闇焔の業火よ……!」
彼の剣は幾度も切りつける度に、黒炎が渦を巻いて敵を焼き尽くす。熱風が吹き荒れ、兵士たちはその猛威に一歩も動けずにいる。
対してレオンは、無造作に剣を構えるだけ。だが、一見隙だらけのその姿は、見る者が見れば、一分の隙も無いことがわかる。
彼の周囲には、【原初の力】による、見えない結界が瞬時に展開される。
黒炎がレオンに迫った瞬間、破裂音とともに激しい閃光が走る。しかし黒炎は結界に弾かれ、レオンの身には届かない。
「こしゃくなやつめ! これならどうだ!」
剣と剣が何度も交わり、火花と光が飛び散る。エリオットの闇の剣技はただ強烈なだけではなく、巧妙に隙を狙う冷徹な攻撃だった。
だがレオンは慌てずに、そのすべてを、いとも簡単に受け流していく。
「へぇ、少しは剣を使えるようになったじゃないか、オーク君!」
懐かしい悪口が飛び出す。オークジェネラルくらいには成長しているかもしれない。
「俺を舐めるなぁぁあああ!」
「おやおや? 怖かったら逃げてもいいんだぞ? ほら、いつぞやのように、他を見捨てて敵前逃亡しないのか?」
相次ぐレオンの挑発に激昂したエリオットは、猛烈に連続して剣を振るう。斬撃の軌跡から黒炎が噴き出し、砦の瓦礫をも焼き崩していく。しかし、レオンは一歩も動かず、周囲に漂う【原初の力】がその全てを防ぎ、黒炎は触れることができなかった。
「無駄だ、エリオット。お前の闇の炎は、俺には届かない」
レオンの声は、あくまで静かで冷ややかだった。
「うるさい……!」
苛立ちに駆られたエリオットが剣を振り下ろす。その瞬間、レオンの周囲の空間がわずかに歪み、レオンに振り下ろされたはずの剣は、大きく空振り、エリオットはバランスを崩す。そこをレオンが無造作にエリオットを蹴り飛ばす。
さらにレオンが手をかざすと、エリオットの身体が弾かれるように吹き飛んだ。地面を転がり、瓦礫を巻き込んで止まる。
「ぐっ……な、何だ、今のは……!」
「さあな? 忠告しておくが、無理に踏み込めば、吹き飛ばされるぞ?」
レオンは涼しい顔のまま、さらに【原初の力】で周囲の重力を歪める。エリオットが立ち上がろうとするたび、目には見えぬ重圧が押し付けられ、動きが鈍る。まるで空気そのものが鎖のように絡みつくかのようだった。
「どうした、オーク君。動けないのか? 少しは力をつけたと思ったが、その程度か? なんだ、五年前と大して変わらんじゃないか、予想通り、いや、予想以下だ。がっかりだな」
レオンはわざと嘲笑交じりに声をかける。
「貴様ああああぁぁぁ!!」
その異様な光景を、ラグナルは呆然と見つめていた。
(ば、馬鹿な……あの闇の力を、まるで意に介さず……!?)
驚愕はすぐに別の感情へと変わる。
レオンのその力、かつて自分と剣を交えた時には、まったく見せていなかった。
(あの時は……手を抜いていたのか……!? 俺との戦いでは、本気すら出していなかった……?)
胸の奥が燃えるような怒りに包まれる。
遊ばれていた。舐められていた。まるで、自分が「相手にすらされていなかった」と突き付けられるような屈辱。
「……ふざけるな……ふざけるなよ、貴様……!」
ラグナルは拳を握り締め、唇を震わせながら、戦いを凝視する。
怒り狂ったエリオットは、必死に力を振り絞って重圧を突破し、再び剣を振るう。だがレオンは一切慌てず、受け流し、躱す。そして、隙をついて再び【原初の力】を解放する。
「もう一度、飛んでみるか?」
その瞬間、再び彼の体が宙に浮く。エリオットはまたしても吹き飛ばされた。
「ぐっ……おのれ、貴様……!」
砦の瓦礫を揺らす激闘の中、二人の戦いはまさに光と闇の激突だった。闇の炎をまとった剣技を繰り出しながらも、闇の炎はレオンの【原初の力】に弾かれ、まったく通じない。激しくぶつかり合う剣の火花の中で、エリオットの眉根が深く寄る。
「この……貴様め……!」
エリオットの怒りは限界に達し、苛立ちが、彼の声を震わせ、目つきは憎悪に染まっていく。闇の炎は狂い、剣の動きも荒々しくなり、理性が揺らぎ始めていた。
一方のレオンは冷静そのもの。相手の感情の乱れを見逃すことなく、鋭い視線で隙を見極める。
「どうした? 随分と隙だらけだぞ、オーク君」
レオンの声は、挑発に満ちた冷たい刃そのものだった。
「ま、所詮こんなもんだろうな」
その言葉と同時に、レオンの剣が鋭く閃き、エリオットの左腕を狙う。鋭い一撃が走り、左腕は半ばから断ち切られた。
「ぐっ……!」
激痛とともにエリオットは剣を落とし、呆然と腕を見つめる。鮮血が地面に滴り落ちる。
これで〈暗黒騎士〉も終りかと思われたその瞬間、黒装束の集団が素早く駆け寄り、魔法の障壁を展開して守りを固めた。撤退の合図を送る敵が、苦痛に顔が歪むエリオットを守りつつ、後退を始める。
騎士団が追撃に移ろうとした刹那、敵の魔術師たちが一斉に呪文を唱え、激しい魔法攻撃を放った。閃光と爆風が前線を覆い、追撃の足を止められた騎士団はやむなく後退を余儀なくされる。煙と魔力の渦が晴れると、〈暗黒騎士〉エリオットは、敵の護衛に守られながら消えていった。
(逃げられたか……)
レオンは苦々しい思いで、辺りを見回す。黒装束の集団と戦っていた騎士たちも、負傷し、疲弊していた。
「……次は逃がさん、決着をつけてやる」
レオンの低く呟いた声が風に乗って消えていった。
空はいまだ曇天のまま暗く、静かに雨が落ちてきていた。
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