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彼の日の桃の香
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本日最終コマとなる帝国史の講義が終了した。先生が講義室を出るのを合図に放課後が始まる。ざわついた講義室の中、習った箇所を復習する者、教科書を片付けながら伸びをする者、クラブ活動に向かう者、放課後の過ごし方は様々だ。
帝国史は必修教科である為、講義後は自然と5人のまま行動することが多いが、今日はラミエラが不安そうな表情を浮かべてそそくさと立ち上がった。
「これから、彼と話し合いなの。先に行くわね。」
彼とは、婚約者のことだろう。乗馬祭前に浮気をされたということだったが、それ以来ラミエラは少し元気がない。私と殿下の関係とは違って、ラミエラと婚約者は恋人関係であったから、許したいけど許せないような、そんな複雑な感情があるのだろう。
私たちは特にあれこれ余計なことは言わず、ファイト!とだけエールを送って手を振った。
「私は商会から品物が届いたから、皆様に配ってくるわ!」
ヘーゼの言う商会は、ヘーゼの父、ピアーズ男爵の商会のことで、ヘーゼが校内で注文を受け、それを商会に送ってもらっている。校内でまで商売をするヘーゼの商売魂に感心しつつ、私も時折お世話になっている。
ローズが使い始めたラベンダーのヘアオイルがとても香しく、あっという間に学校中に広まり、大繁盛しているようだ。ラミエラと打って変わってキラキラと恋人にでも会いに行くような顔をして講義室を出て行った。
「私たちは寮に帰る?」
ローズがくるりと私の方へ振り返った。
私が返事をする前に、じゃあさ、とシャンテが私たちの前に立ち、組んだ手を指を伸ばすように前に突き出した。
「ピアノの練習、聞きに来る?レッスン室取ってあるんだ。」
「まぁ、邪魔にならない?」
ローズの目が輝く。私もローズもシャンテのピアノが大好きなので、とても嬉しく、光栄なお誘いだった。
12月の試験が終わると音楽科生による演奏会がある。その為の練習なのだろう。
「全然。聴いてくれる人がいた方が気合も入るよ。」
「ふふ、それなら、お言葉に甘えましょうか、ジェニー。」
私も上機嫌でこくこく頷く。
レッスン室のある音楽棟は本校舎とは別の建物になっている。シャンテがG寮を選んだのは、この音楽棟に1番近い寮だからだと聞いたことがある。
入ってすぐは小規模の音楽ホールになっており、脇に入っていくと、リハ室やレッスン室が並ぶ。
シャンテは入り口の管理人さんに予約の確認を取ってレッスン室の鍵を受け取ると、こっちだよ、と私とローズを2階に案内してくれた。廊下を挟んで左右に5部屋ずつ、合計10部屋用意されたレッスン室の8と書かれたドアを開けた。他の部屋にもすでに何人か入っている。
シャンテの練習を見に来るのは初めてではなかったが、この音楽棟は音楽家特有の高尚感というべきか、とにかく何か本校舎と空気が違っていて、来る度に少し身が固くなる。
シャンテが部屋の隅に椅子を並べてくれて、どうぞと促されるまま、私とローズはそこに座った。
堂々とたたずむグランドピアノが近く、迫力がある。
「お菓子を食べたらうるさいわよね?」
恐る恐るローズが言うと、別にいいよ、と軽く答えるシャンテ。
「ていうか、俺にもちょうだい。お腹すいたー。」
良かった、と嬉しそうに鞄を開くローズに、私は、お腹でも鳴りそうだったのかしら?と少し可笑しくなり、笑いを抑えるためにシャンテに話題を振った。
「今日は何を弾くの?」
「えぇー、秘密。」
「どうせ聴くのだから、別に今言ってもいいでしょ。」
「せっかくのリサイタルなんだから、お楽しみに。」
練習を聴くだけのつもりで来たのに、私とローズの為に弾いてくれるとでも言うのだろうか。なんとも贅沢だ。
ローズがお菓子の包みを開くと、ふわっと甘い香りが広がった。包みの中はクッキーで、ローズが1枚ずつ私とシャンテに配ってくれた。おぉ、とシャンテが口を開く。
「何これ?すごい甘い香り。」
「桃のクッキーなんですって。ヘーゼのお父様が商売繁盛のお礼にって、送ってくださったらしいわ。」
「桃?」
首をかしげるシャンテに私が補足した。
「東洋で多く採れる果物よ。」
へー、とシャンテは興味津々にクッキーを口に運んでは見つめた。
「この香りを嗅ぐと、昔の事を思い出すわねぇ。」
クッキーを頬張りながら、ふふ、と微笑むローズに、私も同意した。恐らく同じ事を思い出しているのだろう。
* * * * *
皇太子殿下との婚約式を終えた後、もうどうにもならないのだなと私は半ば諦め、毎日が憂鬱になり、どんどん何に対しての興味も薄れていった。
そもそも半年前の皇太子殿下主催のお茶会、あれに出席してしまったのが良くなかった。
お父様は皇帝陛下と旧友で、よく子どもたちの顔を見たいと陛下に言われていたようだが、頑なに断っていた。というのも、私やお兄様が皇族に無礼を働く可能性があると懸念していたのだ。
確かに私たちはおべっかが得意ではないが、皇城には興味があった。歴史的な建造物や美術品の数々、多種多様な庭園の植物たち、それらを見てみたいねとお兄様と私は前々からよく話していた。そこで届いたお茶会の招待状を理由にお兄様がお父様を説得し、登城することが叶ったのだ。
失敗したと気がついたのは、それから1週間後だ。皇太子殿下から城に遊びにきて欲しいという内容の手紙が、お兄様と私宛に届いた。
お父様はちゃんと行儀よくしていられたのだなと喜んでいたが、お兄様はいち早く警戒した。何を、というのは婚約した今になって分かる。
仮病の細工をしてくれたり、皇太子殿下に素っ気ない態度を取っていたらしいお兄様の努力もむなしく、結局婚約を申し込まれ、式まで済ませてしまった。
もうすぐ皇太子妃になるための妃教育も始まる。そうしたらお兄様との時間も、キャルとの時間も、ローズとの時間も減ってしまうのだろう。そして淑女教育に力を入れられ、私の好む分野は後回しにされるのだ。
ため息が止まらない。
そんな中、大好きな親友から手紙が届いた。
薔薇の香りのする便箋に綴られた内容は、気を落とさないでという励ましと、どうせ顔で選んだのよという皇太子殿下の悪口と、殿下に好意を抱く令嬢を紹介してみたらどうかしら?という提案。
なるほど。
「何がなるほど?」
ぽつりと呟いた言葉をエルお兄様が拾って、私の顔を覗き込んできた。
サンルームの窓を通り抜けて降り注ぐ太陽の光が、お兄様の青い瞳を海のように揺らす。たぶん私の瞳も同じだろう。
「それは、ローズからの手紙?」
「えぇ。皇太子殿下と他の令嬢をくっつけてはどうかと。」
「……。」
軽く握った手を口元に当て、考える仕草を見せるお兄様。
「反対?」
「そうではないけど、ジェニーを見初めておいて、他の令嬢に目が行くとは思えないな。」
小さい頃からお父様によく言い聞かせられた。ガンガルド家は代々由緒正しい家門と美しい容姿で、人がごみのように寄ってくる。近づいてきた男はみんな獣だ。近づいてこない男は注意深い獣だ、と。
さすがに全てが真実だとは思っていないが、血を濃く受け継いだお父様、同じくお父様似のお兄様とキャルを見ると、容姿については自覚せざるをえない。
1度しか顔を合わせていない上、大して話もしていない皇太子殿下が私に婚約を申し込んできた理由は、容易に想像がついた。
「お兄様は、結婚するならいくら外見が良くても愛想の無い女より、自分を慕ってくれる愛嬌のある方の方が良いと思わない?」
私がそう聞くと、お兄様は首を傾げた。
「さぁ?私はそういうのは分からないな。」
私もです、お兄様。でも、恋愛小説に出てくるようなヒロインは大体感情表現が豊かだし、お兄様は置いておいて、一般的にはそういう女性がモテるのではないだろうか。
「でも、そういうことなら協力するよ。」
「協力?」
「殿下に宛がう令嬢に、殿下の好意を向けなければいけないだろう?生物は大体、異性の放つ匂いに惹かれるんだ。香水なんて物が人気なんだから、恐らく人も例外ではないだろう。つまり、その令嬢に、殿下の好む香りの香水をかけて会わせてみたらどうだろう?」
にこにこ話すお兄様は、なんだか楽しそうだ。
「ジェニーは、殿下がどんな物を好むのかリサーチしておいで。私が香水を作ってみよう。」
「ふふ、それは楽しみ。ローズには良いご令嬢がいないか聞いてみるわ。」
「彼女なら適任者を見つけてくれそうだ。」
私の隣に腰かけたお兄様は私の額に優しくキスを落とす。私はお兄様の肩に頭を預けた。
* * * * *
帝国史は必修教科である為、講義後は自然と5人のまま行動することが多いが、今日はラミエラが不安そうな表情を浮かべてそそくさと立ち上がった。
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彼とは、婚約者のことだろう。乗馬祭前に浮気をされたということだったが、それ以来ラミエラは少し元気がない。私と殿下の関係とは違って、ラミエラと婚約者は恋人関係であったから、許したいけど許せないような、そんな複雑な感情があるのだろう。
私たちは特にあれこれ余計なことは言わず、ファイト!とだけエールを送って手を振った。
「私は商会から品物が届いたから、皆様に配ってくるわ!」
ヘーゼの言う商会は、ヘーゼの父、ピアーズ男爵の商会のことで、ヘーゼが校内で注文を受け、それを商会に送ってもらっている。校内でまで商売をするヘーゼの商売魂に感心しつつ、私も時折お世話になっている。
ローズが使い始めたラベンダーのヘアオイルがとても香しく、あっという間に学校中に広まり、大繁盛しているようだ。ラミエラと打って変わってキラキラと恋人にでも会いに行くような顔をして講義室を出て行った。
「私たちは寮に帰る?」
ローズがくるりと私の方へ振り返った。
私が返事をする前に、じゃあさ、とシャンテが私たちの前に立ち、組んだ手を指を伸ばすように前に突き出した。
「ピアノの練習、聞きに来る?レッスン室取ってあるんだ。」
「まぁ、邪魔にならない?」
ローズの目が輝く。私もローズもシャンテのピアノが大好きなので、とても嬉しく、光栄なお誘いだった。
12月の試験が終わると音楽科生による演奏会がある。その為の練習なのだろう。
「全然。聴いてくれる人がいた方が気合も入るよ。」
「ふふ、それなら、お言葉に甘えましょうか、ジェニー。」
私も上機嫌でこくこく頷く。
レッスン室のある音楽棟は本校舎とは別の建物になっている。シャンテがG寮を選んだのは、この音楽棟に1番近い寮だからだと聞いたことがある。
入ってすぐは小規模の音楽ホールになっており、脇に入っていくと、リハ室やレッスン室が並ぶ。
シャンテは入り口の管理人さんに予約の確認を取ってレッスン室の鍵を受け取ると、こっちだよ、と私とローズを2階に案内してくれた。廊下を挟んで左右に5部屋ずつ、合計10部屋用意されたレッスン室の8と書かれたドアを開けた。他の部屋にもすでに何人か入っている。
シャンテの練習を見に来るのは初めてではなかったが、この音楽棟は音楽家特有の高尚感というべきか、とにかく何か本校舎と空気が違っていて、来る度に少し身が固くなる。
シャンテが部屋の隅に椅子を並べてくれて、どうぞと促されるまま、私とローズはそこに座った。
堂々とたたずむグランドピアノが近く、迫力がある。
「お菓子を食べたらうるさいわよね?」
恐る恐るローズが言うと、別にいいよ、と軽く答えるシャンテ。
「ていうか、俺にもちょうだい。お腹すいたー。」
良かった、と嬉しそうに鞄を開くローズに、私は、お腹でも鳴りそうだったのかしら?と少し可笑しくなり、笑いを抑えるためにシャンテに話題を振った。
「今日は何を弾くの?」
「えぇー、秘密。」
「どうせ聴くのだから、別に今言ってもいいでしょ。」
「せっかくのリサイタルなんだから、お楽しみに。」
練習を聴くだけのつもりで来たのに、私とローズの為に弾いてくれるとでも言うのだろうか。なんとも贅沢だ。
ローズがお菓子の包みを開くと、ふわっと甘い香りが広がった。包みの中はクッキーで、ローズが1枚ずつ私とシャンテに配ってくれた。おぉ、とシャンテが口を開く。
「何これ?すごい甘い香り。」
「桃のクッキーなんですって。ヘーゼのお父様が商売繁盛のお礼にって、送ってくださったらしいわ。」
「桃?」
首をかしげるシャンテに私が補足した。
「東洋で多く採れる果物よ。」
へー、とシャンテは興味津々にクッキーを口に運んでは見つめた。
「この香りを嗅ぐと、昔の事を思い出すわねぇ。」
クッキーを頬張りながら、ふふ、と微笑むローズに、私も同意した。恐らく同じ事を思い出しているのだろう。
* * * * *
皇太子殿下との婚約式を終えた後、もうどうにもならないのだなと私は半ば諦め、毎日が憂鬱になり、どんどん何に対しての興味も薄れていった。
そもそも半年前の皇太子殿下主催のお茶会、あれに出席してしまったのが良くなかった。
お父様は皇帝陛下と旧友で、よく子どもたちの顔を見たいと陛下に言われていたようだが、頑なに断っていた。というのも、私やお兄様が皇族に無礼を働く可能性があると懸念していたのだ。
確かに私たちはおべっかが得意ではないが、皇城には興味があった。歴史的な建造物や美術品の数々、多種多様な庭園の植物たち、それらを見てみたいねとお兄様と私は前々からよく話していた。そこで届いたお茶会の招待状を理由にお兄様がお父様を説得し、登城することが叶ったのだ。
失敗したと気がついたのは、それから1週間後だ。皇太子殿下から城に遊びにきて欲しいという内容の手紙が、お兄様と私宛に届いた。
お父様はちゃんと行儀よくしていられたのだなと喜んでいたが、お兄様はいち早く警戒した。何を、というのは婚約した今になって分かる。
仮病の細工をしてくれたり、皇太子殿下に素っ気ない態度を取っていたらしいお兄様の努力もむなしく、結局婚約を申し込まれ、式まで済ませてしまった。
もうすぐ皇太子妃になるための妃教育も始まる。そうしたらお兄様との時間も、キャルとの時間も、ローズとの時間も減ってしまうのだろう。そして淑女教育に力を入れられ、私の好む分野は後回しにされるのだ。
ため息が止まらない。
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薔薇の香りのする便箋に綴られた内容は、気を落とさないでという励ましと、どうせ顔で選んだのよという皇太子殿下の悪口と、殿下に好意を抱く令嬢を紹介してみたらどうかしら?という提案。
なるほど。
「何がなるほど?」
ぽつりと呟いた言葉をエルお兄様が拾って、私の顔を覗き込んできた。
サンルームの窓を通り抜けて降り注ぐ太陽の光が、お兄様の青い瞳を海のように揺らす。たぶん私の瞳も同じだろう。
「それは、ローズからの手紙?」
「えぇ。皇太子殿下と他の令嬢をくっつけてはどうかと。」
「……。」
軽く握った手を口元に当て、考える仕草を見せるお兄様。
「反対?」
「そうではないけど、ジェニーを見初めておいて、他の令嬢に目が行くとは思えないな。」
小さい頃からお父様によく言い聞かせられた。ガンガルド家は代々由緒正しい家門と美しい容姿で、人がごみのように寄ってくる。近づいてきた男はみんな獣だ。近づいてこない男は注意深い獣だ、と。
さすがに全てが真実だとは思っていないが、血を濃く受け継いだお父様、同じくお父様似のお兄様とキャルを見ると、容姿については自覚せざるをえない。
1度しか顔を合わせていない上、大して話もしていない皇太子殿下が私に婚約を申し込んできた理由は、容易に想像がついた。
「お兄様は、結婚するならいくら外見が良くても愛想の無い女より、自分を慕ってくれる愛嬌のある方の方が良いと思わない?」
私がそう聞くと、お兄様は首を傾げた。
「さぁ?私はそういうのは分からないな。」
私もです、お兄様。でも、恋愛小説に出てくるようなヒロインは大体感情表現が豊かだし、お兄様は置いておいて、一般的にはそういう女性がモテるのではないだろうか。
「でも、そういうことなら協力するよ。」
「協力?」
「殿下に宛がう令嬢に、殿下の好意を向けなければいけないだろう?生物は大体、異性の放つ匂いに惹かれるんだ。香水なんて物が人気なんだから、恐らく人も例外ではないだろう。つまり、その令嬢に、殿下の好む香りの香水をかけて会わせてみたらどうだろう?」
にこにこ話すお兄様は、なんだか楽しそうだ。
「ジェニーは、殿下がどんな物を好むのかリサーチしておいで。私が香水を作ってみよう。」
「ふふ、それは楽しみ。ローズには良いご令嬢がいないか聞いてみるわ。」
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