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彼の日の桃の香
♠️(2)
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地理の先生は東洋の大国出身で、俺と同じ黒髪に、この国では珍しい一重瞼の持ち主だ。あちこち旅をするのが好きで、時々講義内容そっちのけで旅先の話を始める。
まぁ、今がまさにその状況な訳だが。講義終了の鐘を無視して、先生の話は止まらない。
俺同様あくびが止まらない生徒陣の中、俺の隣にいるエルだけは、本来の講義内容よりも楽しそうにメモを取りながら聞いていた。
度々手を上げて質問をするせいで先生も喜び、話が余計に長くなる。
好奇心の化け物め、と心の中で罵る。
どうやら先生は夏に久しぶりの里帰りをしたらしい。どうして夏の話を11月の今話すのかというと、ちょうど講義で先生の大国の話がちらっと出たからだ。そこから、そういえば、と逸脱してしまった。
俺は話の終わりを待ちながら肩肘をついて、皮肉にも暇潰しに教科書を捲っている。そんな時だった。耳が勝手に"桃"という単語を捕らえた。
桃は、東洋の大国では邪気を払うと信じられており、昔はその実が不老長寿の果物として重宝されていたらしい。
そんな豆知識はさておき、桃と聞いて俺はふと昔のことを思い出した。
そういえば子供の頃に、ジェニエッタとローズにイタズラをされたことがあったなぁ。
あれはジェニエッタの皇太子妃教育が始まった頃の話だったか。ジェニエッタにとっては、婚約破棄を目論む作戦の1つに過ぎないのだろうが、そんなことを考えているだろうとは夢にも思っていなかった俺にとっては、少し特別な思い出だった。
* * * * *
皇太子妃教育の為に登城したジェニエッタを出迎えに行くと、ジェニエッタは一見快く俺のエスコートを受けているようで、その視線は酷く冷めていた。
無理に婚約を押し付けてしまった自覚はあった。
立太子された時から婚約者をどうするかという話が上がっていて、初めてジェニエッタに会った茶会もそれの一環だった。出席者の中から婚約者を選ぶようにと母上に言われた俺は、迷わずジェニエッタの名前を母上に告げた。
皇太子に対して物怖じせず、仮面を被ることなく素のジェニエッタとして接してくれた。それがどんなに冷たい態度であろうが、正直な姿勢が信用に値すると本能で感じたのだと思う。皇太子妃になる者は、彼女以外に考えられなかった。
まぁ、しかし、皇太子の婚約者に選ばれたとなれば、家族総出で喜んで貰えるなんて考えていたのは、俺のエゴに他ならない。家族総出で喜んだのは、むしろ皇家の方だ。
そんなわけで、ジェニエッタに冷めた視線を向けられるのは、仕方のないことだった。
徐々に打ち解けてくれればと、そう願っていた。
俺には自分の授業があるので妃教育を見ているわけにはいかないが、授業と授業の間の休憩時間になると、母上に温室に来るようにと呼ばれた。
母上の温室では色とりどりの花が植えられ、小さな噴水から流れ出る水音にはとても癒される。
その中でテーブルにお菓子を並べ、笑顔でお茶を飲む母上とジェニエッタは、まるで女神の絵画のような美しさだった。
この子と結婚するのかと思うと自然と胸が高鳴り、紅潮するのが自分でも分かった。
「キース、来ましたね。」
「お待たせしました、母上。」
「うふふ、待っていたのは私じゃないわ。」
母上はちらりとジェニエッタに目配せする。
ジェニエッタの頭には、ここの温室の花で作ったであろう花冠が乗せられている。大人びた印象だったが、ちゃんと子供らしい一面もあるのだな、と少し安心した。
「これからジェニエッタの教育後、少しでも2人の時間をとりなさい。キースの授業は時間をずらすよう言付けてあります。」
"2人の時間"という言葉にドキリとしたが、皇太子らしく顔に出さないように気をつけて、分かりましたと応えた。
俺の返事に満足そうに頷く母上は、ではあとは2人でゆっくりお話しなさい、とその場を後にした。
しばし沈黙が流れる。
ソファは一人掛け用の物が2つと2人掛け用が1つ。母上はジェニエッタと2人掛け用の物に並んで座っていたが、はたして俺がそこに座っていいものかどうか。
俺が悩んでいることを知ってか知らずか、ジェニエッタはそ知らぬ顔で花冠を外して、お菓子に手を伸ばす。
「取ってしまうのか。花冠、似合っていたのに。」
「皇后陛下に被って欲しいと言われてそうしましたが、もう必要ないかと思いましたので。」
あぁ、子供らしい一面があったわけではなく、母上に言われて仕方なく被っていたのだ。
俺は一人掛けソファに座った。ジェニエッタの冷めた物言いに、一気に距離を縮めるのは悪手だと感じられたからだ。
要するに、びびった。しかし、8歳の女の子にこんなに冷たい声を出されれば、びびるのは俺だけじゃないはずだ。
狼狽えないよう皇太子らしく振る舞わねば、と気負えば気負うほど、何を話したらいいか分からなくなる。
ところが、意外にもジェニエッタの方から話しかけてくれた。
「皇太子殿下は、どんな女性がお好みですか?」
そう聞いてくるジェニエッタは、にこりと笑顔を浮かべていた。たとえ作り笑顔だとしても、歩み寄ってくれようとしているのだと俺は嬉しくなった。
「婚約者なのだから、皇太子殿下などと他人行儀ではなく、キースと愛称で呼んでくれ。」
「分かりました。では皇太子殿下は、どんな女性がお好みですか?」
あ、これ、呼んでくれないやつだ?!
あれ?歩み寄ろうとしてくれているのではないのか?だとしたらこの質問の意図はなんだ?
笑顔を見せられて気が弛んだところに不意打ちをくらい、頭が真っ白になってしまった。
皇太子として、そして婚約者として、なんと答えるのが正解だ?
「え………と……。」
「豊満なタイプがお好きですか?それとも華奢なタイプの方がお好きでしょうか?目は大きい方が好きですか?きれい系?かわいい系?」
俺が言い淀んでいると、次々と質問が投げ掛けられる。意図の分からない俺は混乱するばかりだ。
なんだ?つまりは、容姿の話だろうか?
「ジェニエッタ嬢以上に…か、可愛い、女の子は…いないと、思う…ぞ?」
とりあえず外見を褒めてみたが、作り笑顔の温度が冷めるのを感じ、返答を間違えたということに気がついた。
とはいえ、未だに正解は分からない。
「それでは、食べ物のお好みとかはありますか?」
今度は食べ物?
そこでピンときた。もしかしたら母上にそういう会話をするようにと言われているのかもしれない。花冠を頭に乗せていたように。
そう考えれば歩み寄ろうとする話題と、そうでない態度のちぐはぐさに納得できた。そうか、母上が気をきかせてくれたのだ。それなら正解を探して緊張することはないな。
「なんでも食べるようにと言われているからなぁ。食べられない物は無いよ。」
「…皇太子殿下、私は食べられる物とそうでない物の区別を聞いたのではなく、殿下の好む物を聞いているのです。」
ジェニエッタの瞳と語調に怒気が感じられるのは気のせいだろうか。じわりと額が汗ばむ。
俺は頭をフル回転させて答えを探す。
好みの食べ物と言っても、食の好みは他人に知られないように、何を食べても同じ表情でいるよう教え込まれているし、その関係で、おかわりなどは言うまでもなく、これを食べたいなどと要求したこともあまり無かった、そうなると自然と何かを好むという感覚事態が無くなっていた。むしろ、何を食べてもおいしい。
しかしそんなことを言ったら、きっとジェニエッタの機嫌が氷点下になってしまう。
最近また食べたいと感じたのはいつだったか。何を食べた時だったか。必死で記憶を漁り、1つ思い出した。
「…桃。」
好物というわけではなかったが、最近食べた印象的な果物だ。
先日、東洋の大国から使節団が来て、その者らから献上された品だった。甘くてみずみずしいそれはとても美味しく、良い香りがした。
ただ、この国では珍しく、今度はジェニエッタに伝わるか不安になった。
「東洋の、ですか?」
「知っているか、さすがだな。」
「食べたことはありませんが。」
「とてもみずみずしく、甘いんだ。香りも良くて、東洋では魔除けの効果もあるとされているらしい。」
「お詳しいですね。」
「先日来た使節団の者に挨拶した時、聞いたんだ。」
いつも逸らされる視線が真っ直ぐ俺に向けられるところを見ると、どうやら興味があるらしい。
また機会があれば今度は皇太子の婚約者として話ができるよ、と言っていいものかどうか迷う。
”桃…”と呟くジェニエッタを盗み見る。怒気が無くなったということは、俺の答えは正解だったのだろうか。
結局この日、それ以降の会話はあまり続かなかった
友人と呼べる者もいないのに、婚約者となると余計に勝手が分からず悩ましい。
しかし、しばらく経ったある日、ジェニエッタから嬉しい誘いがあった。彼女の親友、ローズ・G・ブルームンのお茶会に一緒に行かないかと言われたのだ。
* * * * *
まぁ、今がまさにその状況な訳だが。講義終了の鐘を無視して、先生の話は止まらない。
俺同様あくびが止まらない生徒陣の中、俺の隣にいるエルだけは、本来の講義内容よりも楽しそうにメモを取りながら聞いていた。
度々手を上げて質問をするせいで先生も喜び、話が余計に長くなる。
好奇心の化け物め、と心の中で罵る。
どうやら先生は夏に久しぶりの里帰りをしたらしい。どうして夏の話を11月の今話すのかというと、ちょうど講義で先生の大国の話がちらっと出たからだ。そこから、そういえば、と逸脱してしまった。
俺は話の終わりを待ちながら肩肘をついて、皮肉にも暇潰しに教科書を捲っている。そんな時だった。耳が勝手に"桃"という単語を捕らえた。
桃は、東洋の大国では邪気を払うと信じられており、昔はその実が不老長寿の果物として重宝されていたらしい。
そんな豆知識はさておき、桃と聞いて俺はふと昔のことを思い出した。
そういえば子供の頃に、ジェニエッタとローズにイタズラをされたことがあったなぁ。
あれはジェニエッタの皇太子妃教育が始まった頃の話だったか。ジェニエッタにとっては、婚約破棄を目論む作戦の1つに過ぎないのだろうが、そんなことを考えているだろうとは夢にも思っていなかった俺にとっては、少し特別な思い出だった。
* * * * *
皇太子妃教育の為に登城したジェニエッタを出迎えに行くと、ジェニエッタは一見快く俺のエスコートを受けているようで、その視線は酷く冷めていた。
無理に婚約を押し付けてしまった自覚はあった。
立太子された時から婚約者をどうするかという話が上がっていて、初めてジェニエッタに会った茶会もそれの一環だった。出席者の中から婚約者を選ぶようにと母上に言われた俺は、迷わずジェニエッタの名前を母上に告げた。
皇太子に対して物怖じせず、仮面を被ることなく素のジェニエッタとして接してくれた。それがどんなに冷たい態度であろうが、正直な姿勢が信用に値すると本能で感じたのだと思う。皇太子妃になる者は、彼女以外に考えられなかった。
まぁ、しかし、皇太子の婚約者に選ばれたとなれば、家族総出で喜んで貰えるなんて考えていたのは、俺のエゴに他ならない。家族総出で喜んだのは、むしろ皇家の方だ。
そんなわけで、ジェニエッタに冷めた視線を向けられるのは、仕方のないことだった。
徐々に打ち解けてくれればと、そう願っていた。
俺には自分の授業があるので妃教育を見ているわけにはいかないが、授業と授業の間の休憩時間になると、母上に温室に来るようにと呼ばれた。
母上の温室では色とりどりの花が植えられ、小さな噴水から流れ出る水音にはとても癒される。
その中でテーブルにお菓子を並べ、笑顔でお茶を飲む母上とジェニエッタは、まるで女神の絵画のような美しさだった。
この子と結婚するのかと思うと自然と胸が高鳴り、紅潮するのが自分でも分かった。
「キース、来ましたね。」
「お待たせしました、母上。」
「うふふ、待っていたのは私じゃないわ。」
母上はちらりとジェニエッタに目配せする。
ジェニエッタの頭には、ここの温室の花で作ったであろう花冠が乗せられている。大人びた印象だったが、ちゃんと子供らしい一面もあるのだな、と少し安心した。
「これからジェニエッタの教育後、少しでも2人の時間をとりなさい。キースの授業は時間をずらすよう言付けてあります。」
"2人の時間"という言葉にドキリとしたが、皇太子らしく顔に出さないように気をつけて、分かりましたと応えた。
俺の返事に満足そうに頷く母上は、ではあとは2人でゆっくりお話しなさい、とその場を後にした。
しばし沈黙が流れる。
ソファは一人掛け用の物が2つと2人掛け用が1つ。母上はジェニエッタと2人掛け用の物に並んで座っていたが、はたして俺がそこに座っていいものかどうか。
俺が悩んでいることを知ってか知らずか、ジェニエッタはそ知らぬ顔で花冠を外して、お菓子に手を伸ばす。
「取ってしまうのか。花冠、似合っていたのに。」
「皇后陛下に被って欲しいと言われてそうしましたが、もう必要ないかと思いましたので。」
あぁ、子供らしい一面があったわけではなく、母上に言われて仕方なく被っていたのだ。
俺は一人掛けソファに座った。ジェニエッタの冷めた物言いに、一気に距離を縮めるのは悪手だと感じられたからだ。
要するに、びびった。しかし、8歳の女の子にこんなに冷たい声を出されれば、びびるのは俺だけじゃないはずだ。
狼狽えないよう皇太子らしく振る舞わねば、と気負えば気負うほど、何を話したらいいか分からなくなる。
ところが、意外にもジェニエッタの方から話しかけてくれた。
「皇太子殿下は、どんな女性がお好みですか?」
そう聞いてくるジェニエッタは、にこりと笑顔を浮かべていた。たとえ作り笑顔だとしても、歩み寄ってくれようとしているのだと俺は嬉しくなった。
「婚約者なのだから、皇太子殿下などと他人行儀ではなく、キースと愛称で呼んでくれ。」
「分かりました。では皇太子殿下は、どんな女性がお好みですか?」
あ、これ、呼んでくれないやつだ?!
あれ?歩み寄ろうとしてくれているのではないのか?だとしたらこの質問の意図はなんだ?
笑顔を見せられて気が弛んだところに不意打ちをくらい、頭が真っ白になってしまった。
皇太子として、そして婚約者として、なんと答えるのが正解だ?
「え………と……。」
「豊満なタイプがお好きですか?それとも華奢なタイプの方がお好きでしょうか?目は大きい方が好きですか?きれい系?かわいい系?」
俺が言い淀んでいると、次々と質問が投げ掛けられる。意図の分からない俺は混乱するばかりだ。
なんだ?つまりは、容姿の話だろうか?
「ジェニエッタ嬢以上に…か、可愛い、女の子は…いないと、思う…ぞ?」
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とはいえ、未だに正解は分からない。
「それでは、食べ物のお好みとかはありますか?」
今度は食べ物?
そこでピンときた。もしかしたら母上にそういう会話をするようにと言われているのかもしれない。花冠を頭に乗せていたように。
そう考えれば歩み寄ろうとする話題と、そうでない態度のちぐはぐさに納得できた。そうか、母上が気をきかせてくれたのだ。それなら正解を探して緊張することはないな。
「なんでも食べるようにと言われているからなぁ。食べられない物は無いよ。」
「…皇太子殿下、私は食べられる物とそうでない物の区別を聞いたのではなく、殿下の好む物を聞いているのです。」
ジェニエッタの瞳と語調に怒気が感じられるのは気のせいだろうか。じわりと額が汗ばむ。
俺は頭をフル回転させて答えを探す。
好みの食べ物と言っても、食の好みは他人に知られないように、何を食べても同じ表情でいるよう教え込まれているし、その関係で、おかわりなどは言うまでもなく、これを食べたいなどと要求したこともあまり無かった、そうなると自然と何かを好むという感覚事態が無くなっていた。むしろ、何を食べてもおいしい。
しかしそんなことを言ったら、きっとジェニエッタの機嫌が氷点下になってしまう。
最近また食べたいと感じたのはいつだったか。何を食べた時だったか。必死で記憶を漁り、1つ思い出した。
「…桃。」
好物というわけではなかったが、最近食べた印象的な果物だ。
先日、東洋の大国から使節団が来て、その者らから献上された品だった。甘くてみずみずしいそれはとても美味しく、良い香りがした。
ただ、この国では珍しく、今度はジェニエッタに伝わるか不安になった。
「東洋の、ですか?」
「知っているか、さすがだな。」
「食べたことはありませんが。」
「とてもみずみずしく、甘いんだ。香りも良くて、東洋では魔除けの効果もあるとされているらしい。」
「お詳しいですね。」
「先日来た使節団の者に挨拶した時、聞いたんだ。」
いつも逸らされる視線が真っ直ぐ俺に向けられるところを見ると、どうやら興味があるらしい。
また機会があれば今度は皇太子の婚約者として話ができるよ、と言っていいものかどうか迷う。
”桃…”と呟くジェニエッタを盗み見る。怒気が無くなったということは、俺の答えは正解だったのだろうか。
結局この日、それ以降の会話はあまり続かなかった
友人と呼べる者もいないのに、婚約者となると余計に勝手が分からず悩ましい。
しかし、しばらく経ったある日、ジェニエッタから嬉しい誘いがあった。彼女の親友、ローズ・G・ブルームンのお茶会に一緒に行かないかと言われたのだ。
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