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となり
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「ここに、1枚のチケットがあります。」
私は図書室の一角で勉強をするいつもの4人に、先ほどキシュワント皇太子殿下に貰った演奏会のチケットを見せた。
皆が目を丸くする。入学してから3年間、殿下に演奏会に誘われたことはなかったから当然の反応だ。そもそも私たち4人はいつもシャンテから招待されていることを、殿下も知っていたはずだった。
私は1つだけ確認しておきたいことがあって、シャンテの前にチケットを置いた。
「どう思う?」
シャンテは不思議そうにチケットを手に取ると、すぐにはっとした。
「え、この席って、2階席最前列の中央?」
「そうらしいわ。」
「それって、アルボレ先生の席ってこと?」
ローズが眉を潜めて聞くと、シャンテがこくりと頷いた。
「アルボレ先生が席を譲るなんて、信じられないな。皇太子様だから譲ったってこと?」
シャンテも瞳に嫌悪の色が見える。
この反応、この件に関してはシャンテは白かしら。お兄様と繋がっているかもしれないと思ったけれど。
「殿下はそういう立場を利用しない方だと思っていたのに、なんだかがっかりね。」
「たぶん違うわ。」
ローズの発言に、私は首を横に振った。
「誰の席を譲って貰ったのか、殿下の口調は伝聞だったもの。」
「それじゃあ、御自身で手に入れたチケットではないということ?!」
今度顔をしかめたのはヘーゼだ。デートに誘うチケットを人任せにするなんて心がこもってない!と憤っている。ヘーゼは恋に夢見がちだ。
私を演奏会に誘っただけなのに、どんどん心象が悪くなる殿下は少し気の毒だった。
悪く言われると庇いたくのなるのは、彼が悪い人間ではないと知っているからだろうか。
それに、恐らく順番が違う。
殿下が私を誘う為にチケットの入手を頼んだのではなく、チケットを手に入れた者が私を誘うように促したと考える方が自然だ。
なぜなら殿下は、毎年演奏会は私が友人達と行くことを知っているし、何より物事を思い通りにする為に権力を奮うような強引な手を使う人ではない。
では、アルボレ先生が席を譲りそうな相手といえば、1番に思い当たるのはやはりエルお兄様だ。考えたくはないが、生徒ばかりか教師陣からも絶大な支持を得るお兄様ならばアルボレ先生を意のままに操ることは造作ないだろう。
校内新聞の取材の件からシャンテのことも疑っていたが、せっかくチケット渡したのに~、と文句を言う姿は、やはり白のように思える。
「だいたい、いつも私たち4人で行っていることを知っていて、どうして誘ってきたりしたの?」
ローズの言うことはもっともだ。
「今年で最後だから、一緒に聴きたいのですって。」
私はチケットを眺めながら先ほどの殿下を思い出す。
”…ジェニエッタ嬢と聴きに行けたら…嬉しい…。"
なぜこんなに突き放しているのに、そんなことが言えるのかしら 。生意気とかわがままとか、そう言われるように接しているつもりなのだけれど。殿下は理解不能だわ。
そしてその殿下の味方をするお兄様も、どんどん分からなくなっていく。
私がため息をつくと、傍観していたラミエラが口を開いた。
「私はなんだか羨ましく感じてしまうわ。」
この頃ラミエラはアンニュイな雰囲気をまとっている。原因は例の婚約者の浮気事件だろう。
結論から言うと、2人は婚約を解消して別れる事になった。ラミエラが浮気を許せなかったというよりも、彼が浮気相手にも恋人がいたという事実を知った時の反応が受け入れられなかったと聞いた。本気で浮気相手を好いていたように見えたと。
ラミエラは頭の回転が速く聡明で、私と違って女の子らしい愛嬌もあるというのに、そんな彼女を裏切ってまで浮気をするなんて。男という生き物は、何を考えているのか理解できないわ。
「殿下は子供の頃からジェニー一筋なのでしょ?なかなかできることではないと、彼の件で思い知ったわ。」
「まぁ、それはそうねぇ。」
ローズもラミエラに同調し、ヘーゼも目を輝かせてうんうんと頷いた。
おかしいわ。一筋という言葉に違和感を覚えるのは私だけかしら?
「ラミエラ、それは主に恋愛感情に使う言葉なのでは?」
「婚約者だもの。似たようなものでしょ?」
「全然違うわ。好きだなんて言われたことないもの。」
私の言葉に一同が固まった。皆一様に目を丸くして私を見てくる。
何かおかしいことを言ったかしら?
あ、そうか。そんな関係なのに婚約関係が続いているということが、嫌味に聞こえたのかもしれない。特にラミエラは敏感になっているはずだもの。
「もしかしたら恋愛感情が無いからこそ、殿下はこの関係を続けたいのかもしれないわね。」
国民からの人気も高いガンガルド家と皇室の絆を結びつつ、痴情で縺れるという心配も無い。そう考えると、確かに私は無理にでも良好な関係をキープしたくなる優良物件なのかもしれない。
私がそんなことを考えていると、ローズが覗き込むように恐る恐る口を開いた。
「…あの、ジェニー?念のため聞いておきたいのだけど、殿下はジェニーの事どう思っていると思う?」
「どうって、皇室に欲しい血筋なのでしょう。あと、私が皇后さまに気に入られているから、プレッシャーをかけられているのかもしれないわね。」
「ぷふっ!」
シャンテが吹出した。図書室だから多少いつもよりボリュームを抑えたのだろうが、声が出ていなくとも震える肩が憎たらしい。
「なぜ笑うの?」
「いや…はははっ、なんでもっないっ…くく。」
不服だわ。
「ジェニー、ふふ、さすがに鈍いと思うわよ。」
ラミエラの言葉に皆が頷く。
鈍いなんて初めて言われたけれど。
「殿下は、どう見てもジェニーに惚れこんでいると思うわよ?」
ローズまで、そんな事を言う。私には不可解な見解だったが、これにも皆が頷いた。でもそれは、ほとんどありえないと私は思っている。
「普通に考えて、こんなに無愛想で冷たく接してくる相手に惹かれるなんてことないでしょう?好みの顔ではあるのかもしれないけれど。」
「ジェニー、世の中にはそういう性癖の人だっているんだよ?」
「シャンテはお黙り!」
マゾヒズムの方でしょう?と言おうと思ったが、ローズの剣幕に口を閉ざした。
「あれ?でもそれじゃあ、なぜジェニーは殿下を避けるの?私はてっきり、殿下の好意が生理的に受け付けないのかと思っていたけど…。」
今度はヘーゼが皆の視線を集めた。シャンテは再び吹出してお腹を抱えながら肩を震わせている。
さすがにその認識は、殿下が可哀想よ。
「え?私は殿下がジェニーの容姿に惹かれて、無理やり婚約をさせたからだと思っていたけど。ローズもそう言っていたわよね?」
「そうよ、ラミエラ。だっておかしいじゃない。殿下はたった1度顔を合わせただけのジェニーを婚約者に選んだのよ?それもジェニーの意思も聞かないで。」
政略結婚というのはそういうものなのだろうが、急にお父様に婚約を告げられた時は、驚きすぎて言葉が出なかった。
あの頃は本当に落ち込んでいて、ローズの励ましにとても助けられたのを今でもしっかり覚えている。
でも、とローズは続けた。
「殿下がジェニーを異性として想っているのは間違いないわ。すごく分かりやすいもの。」
「おどおどして、すぐ顔に出るから?」
「そもそもね、殿下がおどおどするのはジェニーの前だけなのよ。私達と話す時とは違うのよ?」
そうなの?という意で他の3人に目を配ると、ふるふると首を横に振られた。
「俺達は殿下とさしで話すようなことが無いから、分からないよ。」
確かにそうね。
入学してから3年間協力してもらっていたからすっかり馴染みのあるイメージだったけれど、個々に殿下との接点があるわけではないものね。
「それで、どうするの?チケットを受け取ってきたということは、今年は殿下と行くの?」
「安心して、ローズ。受け取りはしたけれど、行くとは言っていないわ。」
一生懸命に誘ってくれたところ不憫だとは思うけれど、私の目的は殿下からの好感度を下げることだし、ここは心を鬼にしてこの緊急事態を避けなければ。
「ということで、……………ヘーゼにあげるわ!」
「えっ?!!」
私はヘーゼの前にチケットをばんっと置き、即荷物を持って逃亡した。
シャンテは奏者だし、ローズには普通に寮の部屋で返されそうだし、ラミエラは傷心中だし、ヘーゼしかいないの。許して。
あと、図書室では静かにしましょうね。
私は図書室の一角で勉強をするいつもの4人に、先ほどキシュワント皇太子殿下に貰った演奏会のチケットを見せた。
皆が目を丸くする。入学してから3年間、殿下に演奏会に誘われたことはなかったから当然の反応だ。そもそも私たち4人はいつもシャンテから招待されていることを、殿下も知っていたはずだった。
私は1つだけ確認しておきたいことがあって、シャンテの前にチケットを置いた。
「どう思う?」
シャンテは不思議そうにチケットを手に取ると、すぐにはっとした。
「え、この席って、2階席最前列の中央?」
「そうらしいわ。」
「それって、アルボレ先生の席ってこと?」
ローズが眉を潜めて聞くと、シャンテがこくりと頷いた。
「アルボレ先生が席を譲るなんて、信じられないな。皇太子様だから譲ったってこと?」
シャンテも瞳に嫌悪の色が見える。
この反応、この件に関してはシャンテは白かしら。お兄様と繋がっているかもしれないと思ったけれど。
「殿下はそういう立場を利用しない方だと思っていたのに、なんだかがっかりね。」
「たぶん違うわ。」
ローズの発言に、私は首を横に振った。
「誰の席を譲って貰ったのか、殿下の口調は伝聞だったもの。」
「それじゃあ、御自身で手に入れたチケットではないということ?!」
今度顔をしかめたのはヘーゼだ。デートに誘うチケットを人任せにするなんて心がこもってない!と憤っている。ヘーゼは恋に夢見がちだ。
私を演奏会に誘っただけなのに、どんどん心象が悪くなる殿下は少し気の毒だった。
悪く言われると庇いたくのなるのは、彼が悪い人間ではないと知っているからだろうか。
それに、恐らく順番が違う。
殿下が私を誘う為にチケットの入手を頼んだのではなく、チケットを手に入れた者が私を誘うように促したと考える方が自然だ。
なぜなら殿下は、毎年演奏会は私が友人達と行くことを知っているし、何より物事を思い通りにする為に権力を奮うような強引な手を使う人ではない。
では、アルボレ先生が席を譲りそうな相手といえば、1番に思い当たるのはやはりエルお兄様だ。考えたくはないが、生徒ばかりか教師陣からも絶大な支持を得るお兄様ならばアルボレ先生を意のままに操ることは造作ないだろう。
校内新聞の取材の件からシャンテのことも疑っていたが、せっかくチケット渡したのに~、と文句を言う姿は、やはり白のように思える。
「だいたい、いつも私たち4人で行っていることを知っていて、どうして誘ってきたりしたの?」
ローズの言うことはもっともだ。
「今年で最後だから、一緒に聴きたいのですって。」
私はチケットを眺めながら先ほどの殿下を思い出す。
”…ジェニエッタ嬢と聴きに行けたら…嬉しい…。"
なぜこんなに突き放しているのに、そんなことが言えるのかしら 。生意気とかわがままとか、そう言われるように接しているつもりなのだけれど。殿下は理解不能だわ。
そしてその殿下の味方をするお兄様も、どんどん分からなくなっていく。
私がため息をつくと、傍観していたラミエラが口を開いた。
「私はなんだか羨ましく感じてしまうわ。」
この頃ラミエラはアンニュイな雰囲気をまとっている。原因は例の婚約者の浮気事件だろう。
結論から言うと、2人は婚約を解消して別れる事になった。ラミエラが浮気を許せなかったというよりも、彼が浮気相手にも恋人がいたという事実を知った時の反応が受け入れられなかったと聞いた。本気で浮気相手を好いていたように見えたと。
ラミエラは頭の回転が速く聡明で、私と違って女の子らしい愛嬌もあるというのに、そんな彼女を裏切ってまで浮気をするなんて。男という生き物は、何を考えているのか理解できないわ。
「殿下は子供の頃からジェニー一筋なのでしょ?なかなかできることではないと、彼の件で思い知ったわ。」
「まぁ、それはそうねぇ。」
ローズもラミエラに同調し、ヘーゼも目を輝かせてうんうんと頷いた。
おかしいわ。一筋という言葉に違和感を覚えるのは私だけかしら?
「ラミエラ、それは主に恋愛感情に使う言葉なのでは?」
「婚約者だもの。似たようなものでしょ?」
「全然違うわ。好きだなんて言われたことないもの。」
私の言葉に一同が固まった。皆一様に目を丸くして私を見てくる。
何かおかしいことを言ったかしら?
あ、そうか。そんな関係なのに婚約関係が続いているということが、嫌味に聞こえたのかもしれない。特にラミエラは敏感になっているはずだもの。
「もしかしたら恋愛感情が無いからこそ、殿下はこの関係を続けたいのかもしれないわね。」
国民からの人気も高いガンガルド家と皇室の絆を結びつつ、痴情で縺れるという心配も無い。そう考えると、確かに私は無理にでも良好な関係をキープしたくなる優良物件なのかもしれない。
私がそんなことを考えていると、ローズが覗き込むように恐る恐る口を開いた。
「…あの、ジェニー?念のため聞いておきたいのだけど、殿下はジェニーの事どう思っていると思う?」
「どうって、皇室に欲しい血筋なのでしょう。あと、私が皇后さまに気に入られているから、プレッシャーをかけられているのかもしれないわね。」
「ぷふっ!」
シャンテが吹出した。図書室だから多少いつもよりボリュームを抑えたのだろうが、声が出ていなくとも震える肩が憎たらしい。
「なぜ笑うの?」
「いや…はははっ、なんでもっないっ…くく。」
不服だわ。
「ジェニー、ふふ、さすがに鈍いと思うわよ。」
ラミエラの言葉に皆が頷く。
鈍いなんて初めて言われたけれど。
「殿下は、どう見てもジェニーに惚れこんでいると思うわよ?」
ローズまで、そんな事を言う。私には不可解な見解だったが、これにも皆が頷いた。でもそれは、ほとんどありえないと私は思っている。
「普通に考えて、こんなに無愛想で冷たく接してくる相手に惹かれるなんてことないでしょう?好みの顔ではあるのかもしれないけれど。」
「ジェニー、世の中にはそういう性癖の人だっているんだよ?」
「シャンテはお黙り!」
マゾヒズムの方でしょう?と言おうと思ったが、ローズの剣幕に口を閉ざした。
「あれ?でもそれじゃあ、なぜジェニーは殿下を避けるの?私はてっきり、殿下の好意が生理的に受け付けないのかと思っていたけど…。」
今度はヘーゼが皆の視線を集めた。シャンテは再び吹出してお腹を抱えながら肩を震わせている。
さすがにその認識は、殿下が可哀想よ。
「え?私は殿下がジェニーの容姿に惹かれて、無理やり婚約をさせたからだと思っていたけど。ローズもそう言っていたわよね?」
「そうよ、ラミエラ。だっておかしいじゃない。殿下はたった1度顔を合わせただけのジェニーを婚約者に選んだのよ?それもジェニーの意思も聞かないで。」
政略結婚というのはそういうものなのだろうが、急にお父様に婚約を告げられた時は、驚きすぎて言葉が出なかった。
あの頃は本当に落ち込んでいて、ローズの励ましにとても助けられたのを今でもしっかり覚えている。
でも、とローズは続けた。
「殿下がジェニーを異性として想っているのは間違いないわ。すごく分かりやすいもの。」
「おどおどして、すぐ顔に出るから?」
「そもそもね、殿下がおどおどするのはジェニーの前だけなのよ。私達と話す時とは違うのよ?」
そうなの?という意で他の3人に目を配ると、ふるふると首を横に振られた。
「俺達は殿下とさしで話すようなことが無いから、分からないよ。」
確かにそうね。
入学してから3年間協力してもらっていたからすっかり馴染みのあるイメージだったけれど、個々に殿下との接点があるわけではないものね。
「それで、どうするの?チケットを受け取ってきたということは、今年は殿下と行くの?」
「安心して、ローズ。受け取りはしたけれど、行くとは言っていないわ。」
一生懸命に誘ってくれたところ不憫だとは思うけれど、私の目的は殿下からの好感度を下げることだし、ここは心を鬼にしてこの緊急事態を避けなければ。
「ということで、……………ヘーゼにあげるわ!」
「えっ?!!」
私はヘーゼの前にチケットをばんっと置き、即荷物を持って逃亡した。
シャンテは奏者だし、ローズには普通に寮の部屋で返されそうだし、ラミエラは傷心中だし、ヘーゼしかいないの。許して。
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