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となり
♠️(4)
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うっすらと青みがかった銀の前髪の下で、海のような瞳がゆらゆらと波立つ。
形の整ったほど良い厚みの唇は俺の左手で隠され、その手の腹を彼女の甘い吐息が刺激する。
無人の講義室の長机の下、時間が止まったように静かな空間で、心臓だけがドクドクと高鳴っていた。
「…キース。」
え、今、俺を愛称で呼んでくたのか?
「キース。」
いつもは愛称どころか、名前すら呼んでくれないジェニエッタ。ずっとそう呼んで欲しかった。それなら俺も…。
「キース!これ以上は起こしませんよ!」
「…は?」
目が覚めると、俺を見下ろしてくるエルの髪がゆらゆら揺れている。
「え?」
さっきまで近くにあった顔と似た顔に、脳内が混乱を起こしていた。
「休日だからと言ってずっと寝るおつもりですか?私は先に朝食に行ってますよ。」
「あ、あぁ。」
エルは制服に着替えていて、ジャケットのボタンをいつものように上から下まで全部閉めると、部屋を出て行った。俺はその様子を上半身を起こした状態で見送り、1人になったタイミングで悔しさから顔を両手で覆った。
夢かよ!
昨日の昼時の出来事を思い出す。夢で見たあの場面。
無意識とはいえ、無断で彼女の顔に触れてしまった。しかも唇に。左手にはまだあの柔らかい感触と吐息の暖かさが残っている。
気分を害してしまったかと焦ったが、ジェニエッタは透き通った声でありがとうと言ってくれた。ジェニエッタにありがとうと言われたのは、2年ぶり、6度目!俺にはとても大きな事態だった。
エルがさっさと部屋を出て行ってくれて助かった。鏡を見なくても顔が赤くなっているだろうと分かる。
休日ではあるが、来週から始まる試験に向けて図書室で勉強しようと思い、俺も制服に着替えて食堂に向かった。
エルは夜更かし三昧で、朝にそんなに強くない。そのエルに起こされたということは、すっかり遅い時間だということだ。朝食時間のピークはとうに過ぎ、人はまばらにしかいなかった。
俺は朝食のプレートを受け取り、エルの隣に座る。
「夜通し読んでるくせに、食事中まで本を開くなよ。」
「あれ?キースも制服なんですか?」
「図書室で勉強しようと思って。」
「ジェニーがいるかもしれないからですか?」
くそっ、いちいち本心を突いてくるな!
「すぐ赤面するの、分かりやすいからやめた方がいいですよ。」
コントロールできたら苦労しねぇよ!
いつも言いたい放題言ってくれやがって。どうにか四六時中冷静なエルの表情が崩れるようなことが起きてはくれないものか。
「エルは何で制服?」
「チャリティーパーティーの準備の手伝いを頼まれたので。あ、その関係で手芸クラブに顔を出すので、もしかしたらそっちにジェニーがいるかもしれませんよ。」
そうか、手芸クラブといえば、毎年孤児院に手作りのハンカチや靴下等の贈り物をしている。そして、それはジェニエッタが1年生の時に提案して以来恒例になったボランティア活動だった。
当時は、入学したての1年生がそんなに頭角を出したら目を付けられるのではと心配になったが、その完璧すぎる提案書と手芸の腕に、先生はおろか上級生までも感服させてしまった。
「お、れも、ついていって、いいですか…。」
「おや?勉強するのではなかったのですか?」
恥を忍んで言ったのに、エルはにやりと笑って首を傾げた。頭に来る野郎だ。しかし、背に腹は代えられない。ここは怒りを抑えろ、俺。
というか、なぜ試験前にそんなに余裕で毎回学年主席なんだ、化け物め。
「まぁ、ご勝手にどうぞ。」
俺をからかって満足したのか、エルは鼻で笑って食器を片づけ始めた。俺も残ったパンを急いで口に入れて続く。
校舎に入ると、ホールにカルーエルがいた。休日に校舎にいるなんて珍しい。むしろ初めてに等しいのでは。
カルーエルはエル待っていたようで、俺たちを視認すると歩み寄って来て俺に会釈したあと、エルに話しかけた。
「兄さん、ちょっといい?」
「珍しいな、キャル。勉強か?」
「ううん、違う。」
そこですかさず首を横に振るのはどうなんだ。なぜガンガルド家は勉強しない?
「来週、音楽科の演奏会があるでしょ?どうにかチケットを手に入れられないかなと思って。シャンテさんにも頼んだんだけど、やっぱり今からだと難しいって言われちゃって。僕、他に伝手とか無いし。」
「演奏会に行きたかったのなら早めに言ってくれないとな。」
「本当は行くつもり無かったんだけど、昨日姉さんにチケット貰ってさ、友達が行きたいって言うから僕も一緒に…あ。」
あ、と言う割に少しも焦った様子の無いカルーエルと目が合い、ジェニエッタからどの席のチケットを貰ったのか察しがついてしまった。まぁ、先に友人たちと一緒に行く約束をしていたのだから、仕方ないとは思う。
そんな俺とは裏腹に、エルの空気は少しピリついた。
「ジェニーから貰った?どの席だ?」
「2階席の最前列。」
カルーエルが答えると同時に、俺はぎろりとエルに睨まれた。
え、俺?これ俺が悪いの?俺は頑張って誘ったよ?!
弁明するように首を横にぶんぶん振ると、エルはふーと長く深い息を吐いた。
「先に友達と約束をしてたんだから、当然だと…思うけど…。姉さんも、悩んでたみたいだし…。そんなに怒らなくても…。」
俺には一切気を使わないくせに、エルの顔色に言葉を濁らせるカルーエル。いや、俺もそう思ってるから別にいいんだけど。それよりも気になることがある。
「ジェニエッタ嬢は、悩んでいたのか?」
ジェニエッタの事だ。即決で友人たちを取るだろうと思っていたが。もしかして、昨日ローズから隠れていたというのも関係する話だろうか。
「…そうみたいです。」
その若干の間はなんだ。気になる。
「何かあるならはっきり言ってくれていいぞ。そもそも演奏会に誘ったのはダメ元だったんだ。」
俺がそう言うと、カルーエルはじっと俺を見て、じゃあ、と話してくれた。
「どうやらチケットを押し付け合って鬼ごっこしてたみたいです。」
清々しいほどズバリ言うな。
「ジェニーがそんなことを…。」
エルは再び深い息を吐いて頭を抱えていたが、俺は嬉しさが込み上げて、抑えきれずに笑ってしまった。
チケットの押し付け合いのお蔭で昨日の事態が起こったのなら、演奏会に誘った甲斐もあったというものだ。俺から避ける為に俺と2人きりの時間ができてしまったというのなら本末転倒だろう、ジェニエッタ。
「あっははは!そういうことだったか、ははは!」
そんな俺を、2人は訝しげな表情で見つめてきた。
「…キース、笑っている場合ですか。今すぐ説得しに行くべきだと思いますが。」
「あははっ、いや、いいんだ。チケットの恩恵はもう貰ったよ。」
エルとカルーエルは不思議そうに首を傾げていたが、あのことは誰にも言うつもりはない。俺の胸中に秘めておこうと思った。
「カルーエル、チケットが欲しいと言ってたな。演奏会に行きたいなら、俺のチケットを渡すよ。」
「キース!」
「いいんだ、エル。俺の動機は不純だからな。カルーエルが演奏を聴きたいというなら、その方が奏者も演奏のし甲斐があるだろ?」
キースは納得いかなそうな顔をしたが、それ以上何も言ってこなかった。チケットを手に入れてくれたエルには悪いが、どう考えてもその方がいい。もし俺がジェニエッタと行けたとしても、緊張で演奏など聴いていられないだろうし。
それに、俺に対して最も無愛想なカルーエルが、俺に対してこんなに目を輝かせてくれることなどほとんど無い。ジェニエッタの弟は、いずれ俺の弟にもなるのだ。気を許してくれるのはもちろん嬉しい。
「本当に貰ってもいいんですか?」
「あぁ。隣の席だしちょうどいいだろう。寮の部屋にあるから、あとで届けるよ。」
「ありがとうございます!」
カルーエルに礼を言われたのは初めてだ。今まで俺に向けられたことが無かったから何とも思っていなかったが、確かにカルーエルの笑顔は可愛かった。ジェニエッタがカルーエルを天使と言うのも納得だ。
満足そうに校舎から出ていくカルーエルは、本当に勉強しないんだなと逆に感心した。
「エルもあんな風に笑ってたら可愛げがあるだろうに。」
「いつも笑っているつもりですが。」
「お前の笑顔は黒いよ。」
腹の色も。
「…キース、ここで別れましょうか。」
「えっ?!!」
すたすたと速足で歩き始めたエルを、俺は焦って追いかける。
形の整ったほど良い厚みの唇は俺の左手で隠され、その手の腹を彼女の甘い吐息が刺激する。
無人の講義室の長机の下、時間が止まったように静かな空間で、心臓だけがドクドクと高鳴っていた。
「…キース。」
え、今、俺を愛称で呼んでくたのか?
「キース。」
いつもは愛称どころか、名前すら呼んでくれないジェニエッタ。ずっとそう呼んで欲しかった。それなら俺も…。
「キース!これ以上は起こしませんよ!」
「…は?」
目が覚めると、俺を見下ろしてくるエルの髪がゆらゆら揺れている。
「え?」
さっきまで近くにあった顔と似た顔に、脳内が混乱を起こしていた。
「休日だからと言ってずっと寝るおつもりですか?私は先に朝食に行ってますよ。」
「あ、あぁ。」
エルは制服に着替えていて、ジャケットのボタンをいつものように上から下まで全部閉めると、部屋を出て行った。俺はその様子を上半身を起こした状態で見送り、1人になったタイミングで悔しさから顔を両手で覆った。
夢かよ!
昨日の昼時の出来事を思い出す。夢で見たあの場面。
無意識とはいえ、無断で彼女の顔に触れてしまった。しかも唇に。左手にはまだあの柔らかい感触と吐息の暖かさが残っている。
気分を害してしまったかと焦ったが、ジェニエッタは透き通った声でありがとうと言ってくれた。ジェニエッタにありがとうと言われたのは、2年ぶり、6度目!俺にはとても大きな事態だった。
エルがさっさと部屋を出て行ってくれて助かった。鏡を見なくても顔が赤くなっているだろうと分かる。
休日ではあるが、来週から始まる試験に向けて図書室で勉強しようと思い、俺も制服に着替えて食堂に向かった。
エルは夜更かし三昧で、朝にそんなに強くない。そのエルに起こされたということは、すっかり遅い時間だということだ。朝食時間のピークはとうに過ぎ、人はまばらにしかいなかった。
俺は朝食のプレートを受け取り、エルの隣に座る。
「夜通し読んでるくせに、食事中まで本を開くなよ。」
「あれ?キースも制服なんですか?」
「図書室で勉強しようと思って。」
「ジェニーがいるかもしれないからですか?」
くそっ、いちいち本心を突いてくるな!
「すぐ赤面するの、分かりやすいからやめた方がいいですよ。」
コントロールできたら苦労しねぇよ!
いつも言いたい放題言ってくれやがって。どうにか四六時中冷静なエルの表情が崩れるようなことが起きてはくれないものか。
「エルは何で制服?」
「チャリティーパーティーの準備の手伝いを頼まれたので。あ、その関係で手芸クラブに顔を出すので、もしかしたらそっちにジェニーがいるかもしれませんよ。」
そうか、手芸クラブといえば、毎年孤児院に手作りのハンカチや靴下等の贈り物をしている。そして、それはジェニエッタが1年生の時に提案して以来恒例になったボランティア活動だった。
当時は、入学したての1年生がそんなに頭角を出したら目を付けられるのではと心配になったが、その完璧すぎる提案書と手芸の腕に、先生はおろか上級生までも感服させてしまった。
「お、れも、ついていって、いいですか…。」
「おや?勉強するのではなかったのですか?」
恥を忍んで言ったのに、エルはにやりと笑って首を傾げた。頭に来る野郎だ。しかし、背に腹は代えられない。ここは怒りを抑えろ、俺。
というか、なぜ試験前にそんなに余裕で毎回学年主席なんだ、化け物め。
「まぁ、ご勝手にどうぞ。」
俺をからかって満足したのか、エルは鼻で笑って食器を片づけ始めた。俺も残ったパンを急いで口に入れて続く。
校舎に入ると、ホールにカルーエルがいた。休日に校舎にいるなんて珍しい。むしろ初めてに等しいのでは。
カルーエルはエル待っていたようで、俺たちを視認すると歩み寄って来て俺に会釈したあと、エルに話しかけた。
「兄さん、ちょっといい?」
「珍しいな、キャル。勉強か?」
「ううん、違う。」
そこですかさず首を横に振るのはどうなんだ。なぜガンガルド家は勉強しない?
「来週、音楽科の演奏会があるでしょ?どうにかチケットを手に入れられないかなと思って。シャンテさんにも頼んだんだけど、やっぱり今からだと難しいって言われちゃって。僕、他に伝手とか無いし。」
「演奏会に行きたかったのなら早めに言ってくれないとな。」
「本当は行くつもり無かったんだけど、昨日姉さんにチケット貰ってさ、友達が行きたいって言うから僕も一緒に…あ。」
あ、と言う割に少しも焦った様子の無いカルーエルと目が合い、ジェニエッタからどの席のチケットを貰ったのか察しがついてしまった。まぁ、先に友人たちと一緒に行く約束をしていたのだから、仕方ないとは思う。
そんな俺とは裏腹に、エルの空気は少しピリついた。
「ジェニーから貰った?どの席だ?」
「2階席の最前列。」
カルーエルが答えると同時に、俺はぎろりとエルに睨まれた。
え、俺?これ俺が悪いの?俺は頑張って誘ったよ?!
弁明するように首を横にぶんぶん振ると、エルはふーと長く深い息を吐いた。
「先に友達と約束をしてたんだから、当然だと…思うけど…。姉さんも、悩んでたみたいだし…。そんなに怒らなくても…。」
俺には一切気を使わないくせに、エルの顔色に言葉を濁らせるカルーエル。いや、俺もそう思ってるから別にいいんだけど。それよりも気になることがある。
「ジェニエッタ嬢は、悩んでいたのか?」
ジェニエッタの事だ。即決で友人たちを取るだろうと思っていたが。もしかして、昨日ローズから隠れていたというのも関係する話だろうか。
「…そうみたいです。」
その若干の間はなんだ。気になる。
「何かあるならはっきり言ってくれていいぞ。そもそも演奏会に誘ったのはダメ元だったんだ。」
俺がそう言うと、カルーエルはじっと俺を見て、じゃあ、と話してくれた。
「どうやらチケットを押し付け合って鬼ごっこしてたみたいです。」
清々しいほどズバリ言うな。
「ジェニーがそんなことを…。」
エルは再び深い息を吐いて頭を抱えていたが、俺は嬉しさが込み上げて、抑えきれずに笑ってしまった。
チケットの押し付け合いのお蔭で昨日の事態が起こったのなら、演奏会に誘った甲斐もあったというものだ。俺から避ける為に俺と2人きりの時間ができてしまったというのなら本末転倒だろう、ジェニエッタ。
「あっははは!そういうことだったか、ははは!」
そんな俺を、2人は訝しげな表情で見つめてきた。
「…キース、笑っている場合ですか。今すぐ説得しに行くべきだと思いますが。」
「あははっ、いや、いいんだ。チケットの恩恵はもう貰ったよ。」
エルとカルーエルは不思議そうに首を傾げていたが、あのことは誰にも言うつもりはない。俺の胸中に秘めておこうと思った。
「カルーエル、チケットが欲しいと言ってたな。演奏会に行きたいなら、俺のチケットを渡すよ。」
「キース!」
「いいんだ、エル。俺の動機は不純だからな。カルーエルが演奏を聴きたいというなら、その方が奏者も演奏のし甲斐があるだろ?」
キースは納得いかなそうな顔をしたが、それ以上何も言ってこなかった。チケットを手に入れてくれたエルには悪いが、どう考えてもその方がいい。もし俺がジェニエッタと行けたとしても、緊張で演奏など聴いていられないだろうし。
それに、俺に対して最も無愛想なカルーエルが、俺に対してこんなに目を輝かせてくれることなどほとんど無い。ジェニエッタの弟は、いずれ俺の弟にもなるのだ。気を許してくれるのはもちろん嬉しい。
「本当に貰ってもいいんですか?」
「あぁ。隣の席だしちょうどいいだろう。寮の部屋にあるから、あとで届けるよ。」
「ありがとうございます!」
カルーエルに礼を言われたのは初めてだ。今まで俺に向けられたことが無かったから何とも思っていなかったが、確かにカルーエルの笑顔は可愛かった。ジェニエッタがカルーエルを天使と言うのも納得だ。
満足そうに校舎から出ていくカルーエルは、本当に勉強しないんだなと逆に感心した。
「エルもあんな風に笑ってたら可愛げがあるだろうに。」
「いつも笑っているつもりですが。」
「お前の笑顔は黒いよ。」
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