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本編
04.視察
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ネッサに来てから一夜明け、今日は朝から領内視察の予定だった。
ハミルトン様が直々に案内してくださるということで、補佐官のダンのみを連れ、エントランスの外で待機していたのだが、本来、馬車が用意されるであろう場所には、荷車を取り付けられた2頭のロバがいる。それから、それとは別に馬が1頭。
補佐官を連れて行く旨は話しておいたはずだが、なぜ馬が1頭しかいないのだろうか。
こそこそと、ダンが声を潜める。
「もしかして、車椅子ごとロバに引っ張って貰うのでしょうか?」
快活な笑顔で白金色の髪をたなびかせ、ロバに直接引かれるハミルトン様を想像すると、あまりに滑稽な様相に笑いそうになった。が、ダンは堪えもせずにくすくすと笑った。
「バカなことを言うな。」
御者しかいないとはいえ、軽率な発言だ。
昨夜の酒が残っているのではあるまいなと疑い、睨み付けると彼はようやく口元を引き締めた。
「騎士たちの様子はどうだ?」
「どうって?副隊長がご報告した通り、特に問題ありません。」
「お前の視点から見てどうかを聞きたいんだ。」
エルガーはダンよりも礼儀を重んじる。ダンが軽んじ過ぎるという点はさておき。
私のせいで田舎への派遣を命じられ、騎士たちの中には、口にこそ出さないものの、本意ではない者も多くいたはずだ。
申し訳なく思ってはいるが、気立ての良いハミルトン様の為に、どうにか力を尽くしてほしい。
「変に気負っているのかもしれませんが、心配は無用ですよ。」
「根拠は?」
「我々が滞在させて頂く部屋ですが、6人部屋とはいえ、本来は上流階級の方々に用意されるような立派な部屋です。加えて昨夜の大変美味な晩餐会。騎士隊一同、不満どころかネッサに来たことを幸運に思っているくらいです。」
「そう、か。」
そう言われると、彼らへの罪悪感が少し薄れた。
「酔った勢いで、メイドや村娘と結婚をして永住したい、などと抜かしている連中までいる始末です。」
「迷惑になるような行動は慎めよ。」
「その点は副隊長が目を光らせるんじゃないですかね。」
だといいが。
一先ずは安心した。
騎士たちに心を尽くしたもてなしをしてくれたおかげで、彼らのモチベーションが上がったのだ。
ハミルトン様には感謝してもしきれない。
重い扉が開く音で、私とダンは後ろを振り返り、背筋を伸ばした。
「悪い、待たせたな。」
ハミルトン様はその言葉とは裏腹に、少しも悪びれた様子はなく、恐らく彼の為に作ったであろう、階段横から伸びる緩い坂道を下って来た。
手伝いに行こうと足を踏み出したダンを手で抑え、ハミルトン様が目の前までやって来るのを待ち、頭を下げた。
「おはようございます、ハミルトン様。」
白いシャツに皮ベスト。部屋着よりももっとラフな格好をしたハミルトン様を見て、呆気にとられた。
しかし彼は、私の装いの方が不服らしい。
「部屋に色々な服を用意させてたんだが、気に入らなかったか?」
「そういうわけではありませんが、隊服で十分ですので。」
「ふーん。まぁ、その方が乗りやすいか。」
ハミルトン様はぽつりと呟き、ロバの方へ向かうと、御者が荷車の後部に三角のスロープを設置した。
はっとした。
「ハ、ハミルトン様、その荷車にお乗りになるのですか?」
「そうだ。ちょっと手伝って貰えるか。」
まるで荷物ではないか。馬車とか、何か他の案はなかったのだろうか。
スロープを前にして淡々と私を呼ぶ彼に急いで駆け寄ったものの、車椅子を押す前にもう1度、確認を挟んだ。
「普段からこのようにご移動を?」
「ああ、案外快適だぞ。」
ならば何も言うまい。
「後ろ向きに乗せてくれ。」
「後ろ向きで乗るのですか?」
「前向きで乗りたいのは山々だが、奥に車輪を固定するベルトがあるんだ。前向きで固定してしまっては足がつっかえるし、大きく揺れた時に前に落ちそうで危ないだろ?」
確かに後ろ向きの方がスペースがあって安全そうだ。だが、そもそも車椅子ごと乗らなければならない必要があるだろうか。
ちゃんと座って乗りたいのなら、それこそ馬車にするべきだ。
「直にお座りになるのはお嫌ですか?」
ハミルトン様は困ったように笑った。
「クリスタル卿は無茶を言うな。俺は歩けないんだぞ?車椅子の乗り降りも一苦労なんだ。」
「私がお抱えします。」
「え?……は?」
先に荷車に乗り込み、奥の一角に肩に掛けていたマントを拡げて敷いた。
戻って降りると、ハミルトン様は未だ戸惑いの表情を浮かべている。
「せっかく騎士隊が来たのですから、手足のようにお使いください。」
「い、いや、それはありがたいが、荷車に乗るくらいで別に……。」
「鍛えておりますのでご心配なく。」
「いや、そういう話じゃ……。」
「失礼致します。」
「まっ、待て!……わっ!」
遠慮がちではあるが嫌がっているようには見えない為、問答無用でハミルトン様の膝裏と背に腕を回し、ふわりと抱き上げた。
戦場で何人もの負傷者を運んできたが、彼の筋肉が落ちているせいか、その誰よりも軽かった。まるでレディでも抱えているような体重に、少し心配になる。
当の本人はというと、「おお!」と歓声を上げて咄嗟に私の首にしがみつき、1歩1歩スロープを上がれば、次第に驚嘆の声が笑いに変わった。
「はははは!これはすごいな、クリスタル卿!」
私にしっかり抱きついた形で耳元で笑う為、ふわふわと顔に当たる白金色の髪がこそばゆい。
「降ろします。」
先程敷いたマントの上に、ゆっくりと慎重に下ろすと、ようやく首が解放された。
無礼をした自覚はあったが、これまで以上に楽しそうに笑顔を輝かせるハミルトン様に、人知れず胸を撫で下ろした。
こんなに感情表現豊かで少年のように笑う彼が、父と同い年というのだから不思議でたまらない。
「分かったよ、クリスタル卿。」
「何がですか?」
「世の中の御令嬢ってのは、こうやって逞しい騎士に惚れるんだな。」
本当に楽しそうに話すものだから、こちらまで頬が弛んでしまった。
「お気に召したのなら良かったです。」
ダンが車椅子を下から持ち上げたので、私は上で受け取り、そのまま引き上げた。
ダンの、「隊長さすがぁ。」やら「いけめーん。」やらの言葉を適当にあしらっていると、ショーンさんに呼ばれ、なるべく揺らさないように静かに荷車を降りた。
「何でしょうか?」
「普段はわたくしがお供させて頂くのですが、本日は卿がいるため不要とのことですので、ハミルトン様のことをよろしくお願い致します。」
「はい。」
「あまり長時間にならないようお気をつけください。」
「はい。」
「姿勢を変えられる時はゆっくりと、また、めまいや足のむくみはないか、こまめにご確認ください。」
「はい。」
「楽しい気分になると歯止めが効かず、どんどん調子にお乗りになるので、無理をしないようしっかり目を光らせてください。」
ショーンさんが注意事項を述べる中でも1番険しい顔を見せると、「おい。」とハミルトン様が荷車の上から口を挟んだ。
「人を子供のように……。」
「分かりました。」
「分かるな!」
子供のように口を尖らせるハミルトン様を見ると、ショーンさんの言葉の真実味が増す。
彼の言い付けこそ守るべきだと直感した。
「それではどうぞクリスタル卿はロバ車へ、補佐官様は馬をお使いください。」
なるほど、私が荷車なのか。ハミルトン様もこちらなのだから、当然といえば当然か。
ショーンさんの指示通りダンは慣れている馬にさらりと跨り、私は再び荷車に乗ってハミルトン様の隣に座った。
荷台に乗って移動するのは初めてだった為、御者が席につき、いざ動き始めると、ゆっくりとした景色の流れにいつの間にか口角が上がり、胸が高鳴っていることに、自分自身ですら気がつかなかった。
ハミルトン様が直々に案内してくださるということで、補佐官のダンのみを連れ、エントランスの外で待機していたのだが、本来、馬車が用意されるであろう場所には、荷車を取り付けられた2頭のロバがいる。それから、それとは別に馬が1頭。
補佐官を連れて行く旨は話しておいたはずだが、なぜ馬が1頭しかいないのだろうか。
こそこそと、ダンが声を潜める。
「もしかして、車椅子ごとロバに引っ張って貰うのでしょうか?」
快活な笑顔で白金色の髪をたなびかせ、ロバに直接引かれるハミルトン様を想像すると、あまりに滑稽な様相に笑いそうになった。が、ダンは堪えもせずにくすくすと笑った。
「バカなことを言うな。」
御者しかいないとはいえ、軽率な発言だ。
昨夜の酒が残っているのではあるまいなと疑い、睨み付けると彼はようやく口元を引き締めた。
「騎士たちの様子はどうだ?」
「どうって?副隊長がご報告した通り、特に問題ありません。」
「お前の視点から見てどうかを聞きたいんだ。」
エルガーはダンよりも礼儀を重んじる。ダンが軽んじ過ぎるという点はさておき。
私のせいで田舎への派遣を命じられ、騎士たちの中には、口にこそ出さないものの、本意ではない者も多くいたはずだ。
申し訳なく思ってはいるが、気立ての良いハミルトン様の為に、どうにか力を尽くしてほしい。
「変に気負っているのかもしれませんが、心配は無用ですよ。」
「根拠は?」
「我々が滞在させて頂く部屋ですが、6人部屋とはいえ、本来は上流階級の方々に用意されるような立派な部屋です。加えて昨夜の大変美味な晩餐会。騎士隊一同、不満どころかネッサに来たことを幸運に思っているくらいです。」
「そう、か。」
そう言われると、彼らへの罪悪感が少し薄れた。
「酔った勢いで、メイドや村娘と結婚をして永住したい、などと抜かしている連中までいる始末です。」
「迷惑になるような行動は慎めよ。」
「その点は副隊長が目を光らせるんじゃないですかね。」
だといいが。
一先ずは安心した。
騎士たちに心を尽くしたもてなしをしてくれたおかげで、彼らのモチベーションが上がったのだ。
ハミルトン様には感謝してもしきれない。
重い扉が開く音で、私とダンは後ろを振り返り、背筋を伸ばした。
「悪い、待たせたな。」
ハミルトン様はその言葉とは裏腹に、少しも悪びれた様子はなく、恐らく彼の為に作ったであろう、階段横から伸びる緩い坂道を下って来た。
手伝いに行こうと足を踏み出したダンを手で抑え、ハミルトン様が目の前までやって来るのを待ち、頭を下げた。
「おはようございます、ハミルトン様。」
白いシャツに皮ベスト。部屋着よりももっとラフな格好をしたハミルトン様を見て、呆気にとられた。
しかし彼は、私の装いの方が不服らしい。
「部屋に色々な服を用意させてたんだが、気に入らなかったか?」
「そういうわけではありませんが、隊服で十分ですので。」
「ふーん。まぁ、その方が乗りやすいか。」
ハミルトン様はぽつりと呟き、ロバの方へ向かうと、御者が荷車の後部に三角のスロープを設置した。
はっとした。
「ハ、ハミルトン様、その荷車にお乗りになるのですか?」
「そうだ。ちょっと手伝って貰えるか。」
まるで荷物ではないか。馬車とか、何か他の案はなかったのだろうか。
スロープを前にして淡々と私を呼ぶ彼に急いで駆け寄ったものの、車椅子を押す前にもう1度、確認を挟んだ。
「普段からこのようにご移動を?」
「ああ、案外快適だぞ。」
ならば何も言うまい。
「後ろ向きに乗せてくれ。」
「後ろ向きで乗るのですか?」
「前向きで乗りたいのは山々だが、奥に車輪を固定するベルトがあるんだ。前向きで固定してしまっては足がつっかえるし、大きく揺れた時に前に落ちそうで危ないだろ?」
確かに後ろ向きの方がスペースがあって安全そうだ。だが、そもそも車椅子ごと乗らなければならない必要があるだろうか。
ちゃんと座って乗りたいのなら、それこそ馬車にするべきだ。
「直にお座りになるのはお嫌ですか?」
ハミルトン様は困ったように笑った。
「クリスタル卿は無茶を言うな。俺は歩けないんだぞ?車椅子の乗り降りも一苦労なんだ。」
「私がお抱えします。」
「え?……は?」
先に荷車に乗り込み、奥の一角に肩に掛けていたマントを拡げて敷いた。
戻って降りると、ハミルトン様は未だ戸惑いの表情を浮かべている。
「せっかく騎士隊が来たのですから、手足のようにお使いください。」
「い、いや、それはありがたいが、荷車に乗るくらいで別に……。」
「鍛えておりますのでご心配なく。」
「いや、そういう話じゃ……。」
「失礼致します。」
「まっ、待て!……わっ!」
遠慮がちではあるが嫌がっているようには見えない為、問答無用でハミルトン様の膝裏と背に腕を回し、ふわりと抱き上げた。
戦場で何人もの負傷者を運んできたが、彼の筋肉が落ちているせいか、その誰よりも軽かった。まるでレディでも抱えているような体重に、少し心配になる。
当の本人はというと、「おお!」と歓声を上げて咄嗟に私の首にしがみつき、1歩1歩スロープを上がれば、次第に驚嘆の声が笑いに変わった。
「はははは!これはすごいな、クリスタル卿!」
私にしっかり抱きついた形で耳元で笑う為、ふわふわと顔に当たる白金色の髪がこそばゆい。
「降ろします。」
先程敷いたマントの上に、ゆっくりと慎重に下ろすと、ようやく首が解放された。
無礼をした自覚はあったが、これまで以上に楽しそうに笑顔を輝かせるハミルトン様に、人知れず胸を撫で下ろした。
こんなに感情表現豊かで少年のように笑う彼が、父と同い年というのだから不思議でたまらない。
「分かったよ、クリスタル卿。」
「何がですか?」
「世の中の御令嬢ってのは、こうやって逞しい騎士に惚れるんだな。」
本当に楽しそうに話すものだから、こちらまで頬が弛んでしまった。
「お気に召したのなら良かったです。」
ダンが車椅子を下から持ち上げたので、私は上で受け取り、そのまま引き上げた。
ダンの、「隊長さすがぁ。」やら「いけめーん。」やらの言葉を適当にあしらっていると、ショーンさんに呼ばれ、なるべく揺らさないように静かに荷車を降りた。
「何でしょうか?」
「普段はわたくしがお供させて頂くのですが、本日は卿がいるため不要とのことですので、ハミルトン様のことをよろしくお願い致します。」
「はい。」
「あまり長時間にならないようお気をつけください。」
「はい。」
「姿勢を変えられる時はゆっくりと、また、めまいや足のむくみはないか、こまめにご確認ください。」
「はい。」
「楽しい気分になると歯止めが効かず、どんどん調子にお乗りになるので、無理をしないようしっかり目を光らせてください。」
ショーンさんが注意事項を述べる中でも1番険しい顔を見せると、「おい。」とハミルトン様が荷車の上から口を挟んだ。
「人を子供のように……。」
「分かりました。」
「分かるな!」
子供のように口を尖らせるハミルトン様を見ると、ショーンさんの言葉の真実味が増す。
彼の言い付けこそ守るべきだと直感した。
「それではどうぞクリスタル卿はロバ車へ、補佐官様は馬をお使いください。」
なるほど、私が荷車なのか。ハミルトン様もこちらなのだから、当然といえば当然か。
ショーンさんの指示通りダンは慣れている馬にさらりと跨り、私は再び荷車に乗ってハミルトン様の隣に座った。
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